世界観の違いに吐きそう 作:異能大好き侍
俺こと
なぜ俺には
なにもない平凡な日常は、疲れる。
中学一年生の夏、偶然見つけたチート系主人公の活躍には心惹かれたものだ。
結局俺がそうなることはなかったが。
そして三年経った今、俺は未だに中二病から抜け出せずにいる。
端的に言うと、俺は異世界に行きたいのだ。
「面人。聞いているのか?」
「……ぁい。」
俺の名前を呼んだのは担任の
今は入学式が終わりホームルーム。
若干の睡魔と格闘していた俺は曖昧な返事を返す。
先生から不満足気なため息が漏れる。
先生も連日の事務作業で疲れているのだろう。
俺の座席は一番後ろだが、そこからでもはっきりと隈が見えた。
そんな先生に申し訳なさを感じつつ、俺は再び睡魔に負けた。
隣の幼なじみが呆れた視線をこちらに向けてくるのは無視だ。
こういうのは気にしたら負けである。
時は流れ、放課後。
「貴方は呪いを信じますか?」
目の前に
「どうした急に、そんなことよりゲーセン行かない?」
コイツの問いかけは無視するのがベター。
俺の幼なじみこと親友こと狂人のコイツの名前は
コイツの名前に覚える価値があるかどうかは微妙なところだが。
初めて会ったときからそうだった。
いつも神やら幽霊やらを語っている。
そして、コイツのタチの悪いところはその擬態力にある。
コイツは授業などの他人の目があるところではまるで常識人かのように振る舞っているのだ。
俺がいくらクラスメイトにそれを訴えたって誰も信じやしない。
だからコイツの戯れ言はないものとしてあつかうのがベターなのだ。
「やだ。今日こそは一緒に肝試しに行ってもらうよ。」
「なんでお前はそこまで肝試しに行きたいんだよ?」
「行きたいからに決まってるじゃないか。」
俺のまっとうな意見を常識はずれの論理で押し通してくる。
コイツは3ヶ月前からこんな調子である。
このまま断り続けたらコイツはどうなってしまうのだろう。
そんな気味の悪い未来を予想できてしまい、俺は首を縦に振るしかなかった。
時はさらに流れ、現在午後8時。
俺達は第4交差点前の廃墟に来ていた。
曰く、昔ここで大規模なトラック巻き込み事故があったとか。
門限はとっくに過ぎているが、「勉強会」という体で延長している。
目の前の廃墟を一言で形容するなら、骸骨。
時が経ち、劣化したコンクリートが強い恐怖感を演出していた。
「素晴らしい。ここまで濃厚にオカルトを肌で感じたのは初めてだよ。」
そのままアイツは廃墟に飛び込むように走って行った。
俺も走るが、アイツは速い。どんどん距離が開いていく。
そんな俺には気にもとめずにヤツは廃墟を走破していく。
「…あっ」
最初に春が止まった時、嫌な予感がした。
だって俺の目に写る春は本物の狂気を孕んでいたから。
春が蹴破る勢いで目の前の扉を開け放つ。
中にはひとつだけ、まるでRPGにでも出てくるような宝箱があった。
「……は?」
春の落胆の声と同時に、あの異様な雰囲気は消え去った。
俺はそんなアイツに安堵したが、まだ残っていた問題にも気がついた。
この場違いな宝箱はどうしようか。
アイツは動かなくなってしまった。
この場に於いて開けるかどうかの選択権は俺にある。
こんな怪しい箱、十中八九何かの罠である。
そもそもなんで廃墟に宝箱があるんだよ。
そんな否定的な心情に反して俺の体は宝箱に触れていた。
体が命令通りに動かない。
体が箱を開けようとするのを止められない。
今すぐにアイツにクレームを入れたくなるが、そんなことをしている場合ではない。
(考えろ、このままじゃなにか良からぬことに巻き込まれてしまうのは明白。
そもそも体の制御が効かないんじゃどうしようもn)
無駄なことを考えている間に、箱は中身を覗かせた。
なぜか俺は失神した。
なぜか俺は自分の家の自分のベッドの上で起床した。
なんで?
俺は確かに廃墟で箱を開けてしまった筈だ。
まさか夢?
可能性はある。
だから俺は
時は流れ、通学路。
俺は人生二度目の危機的状況に陥っていた。
目の前にあるのは見間違いでなければトラック。
そして信号は青。
完全にトラック側の過失である。
走馬灯が浮かぶが、俺は凡人故そこから何も思い付かない。
そして、俺は死んだ。
筈だった。
推測だが、俺は神様転生をするのだろう。
その証拠に俺はトラックで死んだから。
そんな俺の予想を裏付けるように、女神らしき人が姿を現す。
「どうも、女神です。この度は不慮の運命によって亡くなられた、
面人 航太様に転生後のご案内をしに参りました。」
油断は禁物である。
こういう時、提示される条件をしっかりと吟味して決めるべきだからだ。
一見安牌そうなチートスキルを選んでも、地雷なことはある。
「貴方様は呪いによりお亡くなりになられましたので、選択肢が通常よりも少なくなっておりますが、ご了承ください。」
「呪い?」
「はい。貴方様には『暴走トラックによって一日一回は死ぬ呪いがかかっています。」
「……ハッ」
心当たりしかない。
選択肢を見る。
・呪われてから死ぬまでの記憶を改竄したうえで解呪し、元の世界 に生き返らせる。
・呪いを有効活用し、別の世界を救う。
選択肢は2つしかなかったが、俺の選択は決まっていた。
「後者を選ぶ。」
「了承致しました。それでは貴方様がこれから救う世界について、説明をさせて頂きます。」
幼なじみには狂人と言ったが、俺はそれを言えた立場ではないかもしれない。