JUTOUGH   作:魚の肝

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・時系列は伏黒が1年になった直後の話なんだよミノタウルス…

今話はちょくちょく花沢のセリフは語録じゃなくなるし…長いし…地の文少ないし…勃起不全




THE.BATTLE.BEFORE.02 焼肉・前編

 

 

 

 ◇◇◇

 

 パフェを食べに行ったバカ目隠し(五条先生)に代わって、急遽今日初めて会った自分の腹違いの兄、花沢先輩と手合わせをすることになった。

始めこそ戸惑っていたものの稽古場に着いた頃には身体全体をほぐしており乗り気であることが伺えた。

 

 

 「どんな攻撃でもワシにぶつけてくれ なんぼでも受け止めたる ワシめっちゃタフやし」

 

 「………お願いします」

 

 ズッ…

 

 「?」

 

「玉犬」

 

『ハルルrrrrrr…!!』

 

 『グゥぅrrr……ヴァフッ!ブァツヴァフッ!』

 

 「ほう 式神使いか…」

 

伏黒が両の手で犬の形をした掌印を結ぶと彼の影が延びてそこから二体の白と黒の額に紋章が刻まれた犬の式神を召喚し、突撃させた。

 

 

 ビュッ ビュッ ガキィィソ

 

 「おーっ 怖っ」

 

 花沢の先ほどのヘラヘラとした雰囲気は跡形もなく消し去っており、玉犬の爪と噛みつきの猛攻をニヒルな笑みを浮かべて余裕に対処しそれでいて常に自分を視察して掌印を結ぶスイミングを完全に見切られている。

 

 「しゃあっ!モンスター・シュート(玄腿脚)!」

 

           ドゴッ 

 

     「ガッ……」    

 

               ガシッ 

 

「!?」

 

                    「しゃあっ」

 

ビュソッ 

 

 

 

 バチバチバチッッ

 

                「ギェェアア!!」

 

 

 勝負が始まる前に予め外で召喚して待機させておいた鵺の存在にもバレていたようで、白の玉犬を蹴り技でダウンさせ、襲いかかってくる黒の玉犬を背負い投げして背後に飛行する鵺にぶつけて二体同時に撃沈。

 

 

  ドソッ

 

 「なにっ」

 

ボッ

 

 

 「はうっ」

 

 

 一瞬でも翻弄させようと伏黒が脱兎を召喚しようとする間もなく花沢が足で地面を踏み鳴らしたと思えば地面が波打ち、謎の遠距離技で宙に打ち上げられていた。

 

 (クソッ…………今の俺じゃ文字通りでも足もでない……完敗だ…乙骨先輩が『タフ君は僕よりずっと強いよ』なんて言った時は流石に欺瞞だろとも思ったが…あながち間違ってないのかもな……)

 

 

花沢の"幻突"の衝撃で部屋の壁に盛大に打ち付けられ、兄との実力差を痛感しながら、そして………

 

 

 

 

 

 

(ん?そういや先輩全然大胸筋で攻撃受けてなくねーか?全部避けてんじゃねーk

 

 ガクッ

 

 

 今更気付いた花沢への不満を抱きながら気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「やるやん!攻撃の手数は俺より多いかもしれん…しゃあけど…残念ながら本体のフィジカルがないわっ

 

『…………』

 

 

あっ 結構強めに"幻突"打ち込んだから…あんま動かない方がいいでやんす」

 

 目が覚めやいなや先輩が俺に身体能力のダメ出しをして来る。確かに先輩に一発でのれてしまっている。フィジカルに関しては今後伸ばさなければならないと痛感している。まぁそれはそれとしてだ。

 

「………花沢先輩…貴方前に俺の攻撃大胸筋でなんぼでも受け止めたるみたいなこと言っといて全然受けてないじゃないですか」

 

「俺に当てられない攻撃なんて俺は攻撃とは思っていない。蝿がただ周りを飛んでいるようなものとしか思っていない。」

 

 一聴すると子供じみた屁理屈イラッとするが、実際攻撃を当てられず無傷であるし俺が気絶するまで肩で呼吸してる様子も無かったので筋自体は通ってはいる。それはそれとしてドヤ顔でその暴論を振り翳しているのがウザさに拍車をかける。

 

 ガサ……ゴソ………プス……

 

「!?」

 

 そんな青筋をたてている俺の腕に、先輩は自分のベルトのバックルを開けて針を取り出し、何の声掛けもなくいきなり刺し込んでゆく。突然の出来事に少々戸惑ったが、差し込んだ部分に痛みが無いことに気付いてすぐに落ち着き、先輩の行動を理解する。

 

 「……鍼治療…ですか?」

 

「ご名答 よくわかったね 俺がいつもバックルに針を忍ばせているのはそのためだ これは武器ではなく…人の命を繋ぐための針なんだ」

(いや知らねーし)

 

 先輩はそう言いながらも針を差し込んでいく手を辞めない。そして数分後針を抜き取ると大分身体の痛みが収まり微弱ではあるが身体を動かせる様になっていた。

 

 「…ありがとうございます」

 

 「あんまり大っぴらに身体を動かすなよ 悪魔で応急処置なんだからな

今日はもう安静にしておけ…鬼龍の様に…」

 

 (鬼龍って誰だ…?)

 

 「よっこいしょっと」

 

「?!」

 

鬼龍という突然先輩の口から発せられた知らない人物に意識を少し取られていると俺は先輩に背負われていた。一瞬今日会ったばかりの腹違いの弟への対応とは到底思えない先輩のパーソナルスペースの狭さに唖然とさせられる。

 

 「ちょっと…!流石に自分で歩けますよ!」

 

「細カイコトハ気ニスルナ 素直になってお兄ちゃんに甘えればええやん…それに

部屋でじっくり恵と色々話したいしなっ (ヌッ」

 

 「! やめろオオ」

 

「ククク"兄弟愛"ってのは温もりを伴うものなんだ…(ニタァ〜」

 

 結局先輩になす術もなくおんぶさせられ道中他の人間にその様子を見られ、ただでさえ恥ずかしくて堪らないのにパフェを食べ終わった後ホクホクして帰ってきた五条先生にバッタリ鉢合わせし、『もうすっかり仲良くなったみたいだね〜!』とおんぶされている様子を写真に撮られまくった。最悪だった。

 

 ◇哀しき現在…

 

 

◇◇◇

 

 そんなこんなで俺の部屋に着いた。最初こそ早く帰ってくれと念じていたが、先輩が『ぶっちゃけ五条ボーって性格アレっスよね?』と話題を持ちかけてきて、そこから案外簡単に話が合うようになり、話題が自分らの家族についてに切り替わった。

 

 

 

 実を言うと…俺は自分の親父に余り良い印象を抱いていない。

 

 『少し出掛けて来る』と告げたと思ったら数日帰って来ない日もあるし…家にいる時はほとんど横になりながらテレビを見ているか、新聞で競馬の予想をしていたイメージしか無い。家事はほぼ俺と姉でやってた気がする。一ついい思い出があるとすれば、俺の誕生日に偶々親父がパチンコで大勝ちし、食べ放題形式の焼肉屋に連れて行って貰った位だ。

 

 俺が先輩にそう告げたら

 

 「まぁそうだろうな」

 

 と苦笑いをしていた。

 

 そして先輩曰く、俺たちの親父は術師殺しだったらしく、過去に五条先生を殺しかけたが返り討ちにあって死んだらしい。まぁそんなことを聞いたって『ふぅんああそう…』としか思えないし先輩もそういう感じで喋っていた。

 

 「因みにそれって親父が言ってたんですか?」

 

「はい!あの世でオトンが言ってましたよ(ニコニコ」

 

「せ…先輩あんた…

 

「あっ 恵今

 

 『変なクスリでもやっているのか?』

 

って思ったでしょ?」

 

「なにっ」

 

「シンクロニシティ(老害書き文字)」

 

 こうして話している内に何度でも言うが本当に先輩と血が繋がっているんだなと感じる。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 事が起きたのは時計が10時を回ってからだ。先輩と俺が五条先生と親父の愚痴をめいっぱいした後、先輩が自分の母親についてポツリポツリと話し始めた。

 

 「俺のオカンはな…こんな俺を女手一つでしっかりと育ててくれたんや…

 

毎日毎日色んな仕事掛け持ちして…少しでもお金稼いで帰ってきたら俺にタフを読み聞かせして世話してくれて…

 

 本当に今になっても頭が上がらへん人なんや…でもそんな生活で身体にガタきとったんやろなぁ…ぽっくり死んでしまった。

 

 気づいたのは起きて直ぐの頃や。最初こそ勘違いだとか夢だとは思ったんやが…

 

 一瞬も動かないオカン

 

 触れた時の金属を思わせる冷たさ

 

 オカンの開き切った瞳孔

 

 オカンの周りを漂う羽虫

 

 死後硬直した身体とその異臭

 

 俺の必死に心臓マッサージしながら泣き叫んだ声にに気づいて駆けつけて、そのオカンを見た時の近所の人の突き刺すかの様な悲鳴

 

 オカンと俺の家に入ってきて当時俺が大袈裟とも感じるほどの調査を行い、俺を『母親が死んだ』ことが確定したことを裏付けるかのように残酷に慰めてきた警察官らや、パトカーのサイレン音

 

 その怒涛に理不尽に、受け入れる余裕すら与えない五感全てに雪崩れ込んでくる要素一つ一つが無慈悲に俺がその時必死に抱えこんだ幻想を剥ぎ取って行った(語録無視書き文字)」

 

 

 俺はその時掛けられる言葉が見つからなかった。この時の花沢は言葉を察する毎にマネキンの様な黒目は白目を覆い、明るい雰囲気が朽ち果てて末期の病人の様な雰囲気を漂わせていたのだ。こんな話をしても辛いだけだろうになんで口にするのか…しかしこの時の俺は何かを察して止めようとしなかった」

 

花沢が続ける。

 

「極め付けに…数年後、『TOUGH』の連載が終了した。

 

両親がいなくなって、孤児院で生活していた…いや延命治療をしていたいうべきか…俺にとって唯一の生きる目的だったんだ…それが…終わってしまった。

 

 俺は…もうその時また昇ってくるであろう"陽"を諦めていたんだ

 

 母親に会いにいこうとしたんだ…でも高い所を飛び降りたりするのは怖かったから…都会の道で女引っ掛けてるガラ悪い大男に痰飛ばして喧嘩を売ったんだ…思いっきり喧嘩して、負けたらそのまま死のうと思ってな…

 

でも俺は返り討ちにした。勿論俺も顔面をボコボコにされて血だらけだったが…

 

 あの時…大男と殴り合ってた時の命をヤスリでザリザリ削ってたかの様なあの時のあの感覚がなんとも心地よくてたまらなかったんだ。

 

 そして極度の戦闘狂いになったその日から、闘っては闘いとの末に出来た戦友達と馬鹿やって過ごしていたんだ。そんな時に俺は…めっちゃくちゃ生きいてたんだ…しかも"TOUGH"の続編も公開されてはーっ完全復活だっ!したんだっ(語録だいぶ無視書き文字)」

 

 「……………」

 

「…で、なんやかんやあって俺は呪術師になって新たな友達も出来て好きな人も出来て恵に会えて今に至るんだよね、すごくない?」

 

「波瀾万丈の人生すぎるでしょあんた」

 

「ムフフフフ…

 

 でもね、今俺はお前に出会えてとっても嬉しいんダァ…

 

 ずっとあの日から俺にはもう身内はいない思ってた…一人ぼっちだと思ってたから…な…」

 

その時先輩は大きく声を震わせて息を吐きながら片手で顔を覆っていた。その指の隙間からは雫が滲み出ていた気がする。

 

 「まぁ…そういうわけでだ…恵…困った時や、死にそうになった時は…何としてでも助けてやる…!これはお前の兄としての俺の使命であり、もう身内に辛い思いをさせたくなんかないという俺と死んだ俺たちのオトンの願望でもあるんだ…!(語録無視)」

 

 「…………!」

 

この時俺が完全に先輩に心を許したと言えば嘘になるが、心を許すきっかけの一つであったと間違いなく断言出来る。

 

 俺とこの人との間に阻まれた幾多の鍵がついた壁…この人はその壁を一つ一つこじ開けて真剣に寄り添おうとしていたのだから。

 

 

 

 

 




次回で特別編最終回なのん
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