◇◇◇
ワシと真依が何故映画館にいるのか…理由を語るには数時間遡らなければならない……。
「たかたんビーム…お願いしますッッッ!」
「はあ〜〜い♡たんたかたぁあ〜〜ん♡」
「わぁ〜〜〜♡『時間でーす次の方どうぞ〜〜』」
ワシは東堂と合流した後東堂がワシの為に買ってきたチケットを真依に渡し、高田ちゃんの握手会に来たんや。
(ムフフフ…高田ちゃんとの握手会去年の交流会以来なのん…まっ 顔が変わってるし一度しか会ってないから高田ちゃんはワシのこと覚えてないだろうけど…まっ 頑張って推しますy)
「あーっ タフ君来てたんだーっ♡」
(えっ 分かるんですか?)
花沢は思わず驚愕すると共に歓喜する。一度しか会ってない、かつ顔も変わっている花沢を高田が認識してくれているだなんて、彼女のファンとして名誉に尽きるであろう。
「高田ちゃん…勝利の呪文を頼む…」
「はぁ〜い♡ たんたかた〜ん♡」
「はうっ」
(あーっ やっぱり高田ちゃんは可愛いなあt
『ぐるるるる……』
な なんだあっ)
花沢が真依の方を見ると真依が鬼の形相で花沢の袖を力強く掴みながら高田を威嚇している。
「ま…真依ちゃんなんでそないな恐ろしい顔すんねん…アハ…アハアハ…まさかワシが高田ちゃんのことを一番好きだなんて思ってるワケじゃないでしょ…?真依ちゃんが一番好きに決まっとるヤンケ何をムキになっとんねん」
「……………」
「な…なんでそない疑わしい顔すんねんアハアハ」
花沢は真依を宥めようとしても真依の顔は未だ不満な感情を孕んでいる。女性の嫉妬ほど恐ろしいものはない。
「時間でーす。次の方どうぞ〜」
ザッザッ
「………」
スッ…
係の人に花沢は運ばれて真依の番が来てしまった。真依は高田を睨みつけているが依然高田はニコニコと笑っている。
「何…ちゃん?」スッ…
ガシッ
「真依よ」
「ふぅ〜〜……ん……」
真依は睨みつけたまま高田に素っ気なく答える。高田は真依の手を据えた目で見つめている。
「真依ちゃん…お疲れ?」
「ん……ま…まぁ……最近色々忙しかったかr
『スッ』
??!!」
真依が答え切る前に高田が真依の耳元に近づいいたので真依は目を見開く。
「それじゃあ…元気になったらまた来てね…覚えてるよ…真依ちゃん♡」
「ッッッ!!」
「はいっ 時間でーす。」
高田に耳元で囁かれて、真依の心が思わず震える。時間が来て真依が少し放心状態その場を離れようとする。
「真依ちゃーん!花沢君とお幸せにねー♡」
「なっ?!」
去り際高田にそう言われ、真依は高田の方を振り向くが、高田は既に穏やかな笑顔でファンと握手をしていた。高田は真依と花沢の指輪を見て交際関係にあることを察していたのだ。
◇◇◇
「どうだった……高田ちゃんは?!」
「………まぁ……ええ」
東堂が真依に尋ねるも真依は力なく答えている。高田への印象がまだ抜けきっていないのである。
「アオヤン!ワシ今から高田ちゃんがゲスト俳優として出てくる『ミミズ人間3』を今から観に行くんダァ…一緒に観に行って貰おうカァ」
「ブラザー…!誘ってくれるのは嬉しいんだが…実は今日高田ちゃんがバラエティ番組に出るからリアタイしなきゃいけないんだ…だから…すまない……」
「全然いいですよ(ニコニコ ムフッ 次は交流会で会おうね…アオヤンの顔を整形手術してやるよ」スッ
「ああ!俺も花沢を殺ってやろうと思ってるぜ!ハハハハハ!」スッ
ガシッ
(個握…悪く…なかったわね……)
花沢と東堂が握手を交わして別れている横で、真依は高田の魅力に取り憑かれ、彼女のファンになりかけていた。
「真依は映画行くのん?高田ちゃんがあんまり…その…気に入らないならえっと…別に行かなくてもi『行くわよ』えっ 行くんですか?」
花沢はてっきり真依に睨みつけられることを恐れていたが真依の予想外の応答に自分の耳を疑う。
「別に高田さんが気になるとかそんなんじゃないから…一応言っとくけど……」
「ふぅん…あぁそう…」ニヤニヤ
「な…っ何よその顔!本当にそんなんじゃないから!!」
「映画視聴開始だ!GOーっ!!」
◇◇◇
そして現在に至る。
花沢が映画上映中に騒いでいる『おそらく同世代だ』の学生に注意しようと顔を向けると特級呪霊が学生達に触れて異形の姿に変えていた。
(ふ…触れたら発動するタイプの術式か…しかも意外と即死する…)
(下手に動くのは危険ね…)
花沢と真依は数メートル先にいる呪霊に気づかれないように呪力を潜め、互いに耳打ちしている。
(しかし…あの呪霊がこっち側の存在に気づいている可能性もあるのです…呪霊もあの一体だけとは限らないしなっ ヌッ )
(明かりが前の大画面の光しかない映画館の中じゃ呪力探知でしか呪霊の数と場所を探れない…かといって無闇に銃を撃てば発砲音でこちらの居場所を知らせてしまう……)
(しかし……あの呪霊の少し前方に非術師がいるんだ…早めに仕掛けねば更に被害者が増えることとなるんだ悔しいだろうが仕方ないんd……なにっ)
花沢が作戦を練って頭を抱えていると目の前に解決の糸口がデカデカと映し出された。
(真依!銃を撃て!)
(えっ…で…でもそれじゃあ居場所g……あーなるほどね)
真依は花沢の意図を察して静かにリロードする。真人は三人の学生を異形の姿に変えるとペロリと舌なめずりする。
「さぁ〜〜て……」
「今じゃあっ」
『うおおおおっ 死ねっ ミミズ人間!!』
『「ダァソ」』
映画で『主人公がミミズ人間を殺すべく発砲するシーン』と同時に真依が発砲。弾丸は真人の頭部に向かって正確に軌跡を描いている。
「そろそろおっぱじめようじゃないか…呪術師…」
(チィッ やっぱり気づいてやがっt な なんだあっ)
ギュソ
( 灘神影流"弾丸滑り"??!! なんでじゃーっ なんであの呪霊が弾丸滑りを使えるんじゃあっ)
真人は頭を高速で回転させて弾丸を受け流す。次の瞬間、映画館の中が暗闇に包まれる。スクリーンの映像を映すカメラの前に何か障害物が置かれているらしい。
「とは言ったものの呪力量測ってみるに今の僕じゃ君たちには到底敵わないね!アディオース!」
真人はその言葉を捨て台詞に映画館の出口の方に向かって出ていく。しかも中から化け物の様な鳴き声が聞こえる。あの呪霊の仲間がいるのだろう。
「真依! 大丈夫かあっ!」
「マイ・ペンライ! アンタに視覚を遮断した状態での訓練をどれだけ行わされたと思ってんのよ!」
「ワシはあの呪霊を追うっス!真依は出来るだけ映画館の中の呪霊を祓うんだあっ まっ 敵わないと感じたら逃げても仕方ない本当に仕方ない!」
そう言って花沢は出口の方に全速力で駆け寄り真人を追った。
◇◇◇
「漏瑚…君はガルシア・シリーズという特級呪物を聞いたことはないかい?」
「"ガルシア・シリーズ"ってなんやそれワシは知らんで」
聞いたことのない呪物の名前に呪物を集める事を趣味とするすっかり猿を植え付けられた漏瑚は興味を持つと同時に治りたての首を少し傾けた。
「今から五百年ほど前…"怪物を超えた怪物"と恐れられた特級呪詛師がいた……その男の名前は鬼龍…呪霊操術を有しているにも関わらず己の身体能力でのみ敵を蹂躙することを信念とする不覊奔放の武人。(ううっ 説明的なセリフ)」
タフ・シリーズのキャラの一人、鬼龍は花沢の術式で原作で仮死状態の時の際にこの世界に来ていた。
「そんな彼と同じ時代に、日本の全人間の呪力を集めた呪霊を見てみたいなんて物好きな女性がいてね……彼女にとってその目的を叶える為に"呪霊操術"は必須だったんだ……しかし鬼龍は他人の野望など一切興味のない性格をしている人間だ……彼と協力関係を結ぶことはとても不可能だと考えたんだ」
「(な…なんかヤケに詳しくない?)で、その女はどうしたんです?」
「で、その女性は彼に近づいて肉体関係を結び、彼の遺伝子を受け継いだ子供を自らの操り人形とすることにしたんだ。最初の子の術式は呪霊操術じゃなかったから、呪術を用いてその子のわざと遺伝子をばらけさせて個体差のある複製体を呪霊操術を持っている個体が出るまで作製することにしたんだ……その数…31体。呪術の名前は"M"の代行さ。」
(なんか…五百年前にしてはヤケに名前が洋風っぽくない?)
(で…その五百年前の鬼龍の嫁にして31体目の複製体、ガルシア31号、別名 マーシオ"ジェット"内藤が私…肉体を乗っ取る術式を持つ悪名高き羂索よ)
羂索はガルシア計31体を呪物化させて所有し、つい一年前程に31号の内藤を受肉させ、その内藤を乗っ取ったのだ。
因みに羂索がタフ語録を認知しているのは鬼龍が出てくる漫画が現れてその存在を知ったからであり、今もタフ・シリーズと他の猿漫画も愛読している。羂索は幾ら計画の為とはいえ鬼龍に今も恋心を抱いていた。
「そして、ガルシア2号も受肉してあり、真人と同行させている。」
◇◇◇
「じゃ!ガルシア、後は頼んだよ〜!」
「……………」
「う…嘘やろ…こ…こんな事が許されていいのか……」
(なんでガルシアがこの世界におんねん?!!)
花沢がガルシアに呆気に取られている隙をついて真人はその場を逃走する。
「……あの!!」
「ん?」
「その…あなたの力について…知りたいんですけど……」
(へぇ〜…僕が見えるんだ)
そして逃走していた真人と、暗闇の映画館からなんとか抜け出した吉野がでくわした。
羂索のキモさに戸惑ってるのが俺なんだよね