さてここで袁燿のことについて話そう。
彼女は姉である袁術と同じ袁逢の子。
正真正銘の姉妹である。
だが彼女は姉とは大きく異なっている。
「ああ・・袁燿様は今日も美しい」
もともと袁術自体が美少女であることもあり、その血を受け継いだ彼女は袁術がそのまま大きくなったかのようであった。
そして身長は170cm台であることもあり姉と妹がそのまま逆であるかのようだ。
スタイルも出ているところは出ており、無駄な肉がまったくない。
黒子(ほくろ)というものが存在しないのか、人から見える体は全て雪のように白い。
「傾国の美女・・袁燿様のための言葉だよなあ」
傾国の美女。彼女はそう呼ばれていた。
彼女が視界に入れば誰もが足を止め、まるで術にかかったかのように見惚れる。
そこには男も女も大人も子供も関係なかった。
ただただ誰もが美しいと呟くのだ。
「袁燿様はただ綺麗なだけじゃないのが素晴しいよなあ」
彼女の誇れるところは美しいだけではない。
彼女はまさに才能の塊と言えた。
武器を持てば負け知らず、頭を使えばまたこれも負け知らず。
世に言う才色兼備であった。
袁燿はその美貌と才能により誰からも好かれていた。
「それに比べ・・」
家臣たちが彼女の隣にいる少女を見る。
「はあ・・袁術様は・・」
家臣たちはそろってため息をつく。
顔こそは美少女であるが彼らに幼い子が好きな趣味はないのかまったく見惚れる気がない。
ただただ彼女を妹と比べる。
武もダメ、知もダメ。それどころか常識すら危うい。
だからこそ家臣たちは彼女を無能と呼ぶ。
母体に良い所を全て置いてきて妹に取られただの、袁術自体が偽の子供だの影でさんざん言われている。
姉と比べられるからかさらに袁燿の評価は毎日が絶頂である。
「だけど・・」
家臣たちが皆そろって袁燿の顔を見る。
その顔はキリリと整い美しい。
だがその顔がプルプルと震えている。そして・・
「お姉様ああああーーーーー!!!!!!!!」
突如袁燿が袁術に抱きついた。
「く、苦しいのじゃ~~!姫羽!離れるのじゃ!」
「いーえお姉様、私は溜めているのです。お姉様分を溜めているのです。
これが無くなると私が私で無くなります」
「なんじゃそれは!?」
「まあ気のようなものです。う~ん・・お姉様~~~~♪」
袁燿が袁術の頬に自分の頬を押し当てスリスリとしている。
その顔はまさに至福。ここは楽園かといった表情だ。
「まったく姫羽はまだまだ子供じゃの。もっと妾を見習うのじゃ」
「いーえ!私は大人になりません!
大人なんてお断りです。私はいつまでもお姉様から離れませんー!」
「よ!自分のことを棚にあげて姉ぶる美羽様も人のこといえないぞ♪」
「うははー、もっと妾を褒めるのじゃー♪」
傍に控える張勲の目もまた袁術に対してキラキラと輝いていた。
彼女たちは毎日この光景を繰り返していた。
そしてそんな彼女たちをまた家臣たちは毎日見つめていた。
「袁燿様もあれがなかったらなー」
「ああ。姉の事大好きすぎだろ」
「ちょっと異常なくらいだよな。まあ張勲様もだが・・」
「でも・・」
・
・
・
「やっぱり美しい・・」
袁燿の姉に対する想いは並大抵のものではない。
同姓への友情、異性への愛情より繋がりの深い血の繋がり。
それと同等の張勲もまた彼女にひけをとらない。
袁術は人が一生に受けるであろう愛をすでにもらっていた。
まだ若いながらにこれ以上ないほど受けていた。
たった二人から・・・・・
袁燿
生まれた年も死んだ年もわからない謎多き男。
武官なのか文官なのか・・まあ袁術自体がダメですからね。
袁術が死に一族が没落した後、かつて配下だった劉勲の下へいくも、劉勲が孫策に負けて捕らえられる。そして自分の姉妹である袁夫人が孫権の後宮に入ったので彼も朗中となった。ちなみに袁燿の娘は孫権の子の孫奮の室となった。
つまり彼は袁術から孫策へそして孫権に仕えたことになる。