もしも袁術に妹がいたら   作:なろうからのザッキー

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今年最後の更新かな。
ボーナスで戦国恋姫買いました。
それで今回あとがきに自分なりのレビューを書こうと思います。
ネタバレがあるので嫌な方はあとがきを見ないでくださいね。



勝敗

孫権の部隊は兵が降伏し孫権も捕らえられたことにより消滅。

シャオはやはり呉の者たちと戦うことはできないため姫羽の判断により孫権をそのまま捕虜を拘束しておく天幕へと連れて行く役を設けた。

兵たちから呉の者同士を、しかも姉妹であるシャオにその役を設けるのは危険なのではと声が上がったが姫羽はそのまま実行した。

護衛の兵はわずか3人。帯刀しているシャオからすれば孫権の縄を切り3人の護衛を屠るなど簡単なことであろう。

 

シャオは確かに孫権の妹。そして呉の姫だ。

だがそれと同時に今は袁術軍の武将であり美羽の親友という立ち位置でもあるのだ。

姫羽は見たかった。シャオがどうするのか。

 

己の家系、血をとるか友をとるか。

家族の愛情か友情か。

呉を選べば美羽は親友を失い酷く悲しむであろう、それと同時にこちらに害をなす存在だ。

姫羽は迷わずたたき切る。

だが逆にここで何も起こらず孫権を移送すればもう信用しても良いのではないか。

不思議と姫羽はそう思えた。シャオの人柄、性格がそう思わせるのだ。

やはりそこは孫家の人間。幼いながらも一本芯が通っているのだ。

 

(今は信じるしかないか・・でも願わくばお姉様が私と七乃以外の人間で初めて心を許した相手。

どうかお姉様を泣かせないで、シャオ)

 

姫羽は祈るような気持ちでこの場を後にした。

 

 

 

ここは中央。激戦区という言葉がまさに相応しい一帯となっていた。

そこらに転がる死体の山。

袁術軍と呉の兵の築かれる屍の絨毯。

そこで二人の将が戦っていた。

 

「ぐっ・・強い」

 

「ははは!こんなものか孫呉の将は!」

 

暗殺部隊を率い中央の大盾部隊を大混乱に陥れた周泰。

そして袁術軍の猛将華雄である。

この二人の戦いは実力に差があり華雄が押していた。

確かに周泰の武もそこらの者よりも圧倒的に強い。

だが彼女が真に実力を発揮できるのは森の中などの奇襲やゲリラ戦。

平地での真っ当な勝負では彼女の特性をうまく生かせない。

いや、そもそも全力でも華雄に勝てるかはわからないのだ。

 

「まさか華雄がここまで強いとは意外です・・」

 

「雑魚が!私をなめるなよ!」

 

華雄の武は虎牢関のころよりもずっと成長していたのだ。

この成長に周泰が苦悶の声を漏らす。

 

「私はずいぶん恵まれた環境にいるものだ。

あの天下無双と神に愛された才を持つ二人に囲まれているのだからな」

 

「なるほど・・それはいやでも強くなるというものですね」

 

「ふっ、自分に嫌気が差してくるがな。

何度やっても勝てないというのは心が折れる」

 

「天とは残酷なものです。

神というものが存在するのなら意地が悪い。才能というものを人に与えたんですからね。

凡人からしたらやっかい極まりない」

 

「貴様には隠密という才があるだろう?」

 

「中途半端に強いと逆に辛いものです。

中毒のようなものでつい上を目指してしまいたくなります。

ですが、いかんせん微妙な強さなので困ります」

 

二人は武器を交えながら会話を交わす。

だがやはり二人の力量には差があり周泰が防戦一方であった。

周泰が肩で息をしながらぼやく。

 

「これだから凡人は困ります。

たまには物語の主人公のようにかっこいいことしたいんですけどね。

一騎打ちで格上の相手に打ち勝つなんてことを」

 

「現実を物語と一緒にしてはいかん。

ただひたすら残酷な世界なのだ」

 

「はは、そうですね」

 

「だが、憧れるぐらいはしてもいいだろう。

私は物語を読むのは好きだ。お気に入りのものもある」

 

その言葉に周泰は少し意外そうな顔をした。

この武一辺倒で、鍛錬にしか興味のなさそうな人間でもそんな一面があるのかと。

 

「悪者を倒したら次は新しい悪者が出てくる。

そして負けて修行をして悪者を倒す。そしてまた新しい悪者が出てくる。これの繰り返しだ」

 

「男の子向けの作品ですね」

 

「我ながら似合わんとは思うがな。いいものだ」

 

そう口にした華雄は武器を構える。

周泰は上がった息を治すように一つ深呼吸をする。

二人の間に緊張が走る。

 

「彼らは何度負けようと立ち上がる。

敵を倒すために修行して最後には必ず勝つ」

 

二人が走り出す。

そしてお互いの武器を激しくぶつけ合う。

華雄の力強い攻撃。周泰は自分の身軽さを利用した手数の攻撃。

どちらも退かない。

だがしかし現実はこんなものだ。周泰がだんだんと押し負ける。

 

「私は何度も心折れた!凡人は決して天才に勝てん!

人より何倍も修練を積もうが決して乗り越えられん壁だ!

だが折れた心が治るたびに心は太くなる。

いつか私も物語の主人公のように最後には勝てるのではと夢を見させてくるのだ!」

 

華雄の言葉に熱が入る。

凡人の中の凡人。華雄は自分でそれを理解しているのだ。

恋と姫羽と過ごし時がたつごとに日増しにその気持ちが増す。

10回やって10回負ける。その結果が才というものの存在を物語る。

 

政務に忙しい姫羽、鍛錬をする時間よりも食事や寝ているか動物と戯れているほうが長い恋。

そんな二人よりも圧倒的に彼女は鍛錬をしている。

いつだって彼女は己を鍛えている。

だが絶対と言っていいほどに彼女は勝てない。

心が折れないほうがおかしいだろう。

 

だが彼女は何度でも立ち上がる。

なぜなら彼女は凡人だから。

物語の主人公に恋する女の子のように憧れる。

物語に夢を見るのだ、彼らヒーローに自分を投影させて。

凡人はいつまでたっても凡人なのだ。

ならば凡人の限界を目指すまで。

 

「つっ・・ぐ・・」

 

周泰はたまらず苦悶の声を漏らす。

このままではまずい。確実に自分が負ける未来が見える。

この女の武器には魂がこもっている。

いったいどれだけの血と汗が詰まっているのだ。

 

自分はとうに諦めた。

呉の君主である孫策には絶対に勝てない。

それどころか同僚の甘寧にも勝てないとほとんど諦めている。

だからこそ自分はひたすら違う道で勝とうとこの隠密の技術を磨いた。

でも心の奥底では武人の魂が煮えたぎっている。

勝ちたいと自分だって思っている。だが到底無理だとそうそうに諦めた。

 

「明命!」

 

「思春殿」

 

「助けに来たぞ」

 

同僚である思春殿が援軍に来てくれたようだ。

私が勝てないとそうそうに諦めた相手。

 

「敵が二人に増えたか。はっはっは!

おもしろい!武人たる私の心が燃える。

苦戦上等だ。逆境こそ戦の華よ」

 

なんて女だ。私だったらこんな状況になったら生き延びる道をまず探す。

初めて打ち合う相手で貴女ほどの人なら思春殿が私より強いとわかるだろう?

私は二人を相手に真正面から当たるなんて発想はない。

なぜ笑えるのか?

 

「明命。蓮華様が捕らえられたようだ。

お前は敵の本陣へ向かい蓮華様の居場所を探せ」

 

思春殿はこの場を引き受け私を一人で行かせようとする。

 

「思春殿・・」

 

「なに。死にはしない」

 

「貴様も凡人か」

 

「ああ」

 

二人が武器を構える。

どちらも楽しそうに笑みを浮かべている。

 

「天才にどうあっても及ばんなら凡人で頂点を目指すまで。

努力で最強を勝ち取る。凡人最強はこの私だ」

 

「おもしろい女だ」

 

そうか。天才の領域は天才に任せればいいのか。

ならば同じ土俵の人間と競い合うのか。

そこで最強を目指すのか。自分の努力の結果をあかすのか。

いつの日か天才と渡り合える日を夢見て。

 

私もその世界に憧れる。

だがすぐにくじけた私はそこに相応しくないだろう。

聖域を侵すような気がする。

 

自分を凡人と評した思春殿も華雄のように諦めず研鑽したのだろう。

どんどん私と武の差が開いていった。

凡人と凡人の戦い。

天才にはわからない苦悩と努力の詰まった戦い。

凡人の限界への挑戦。

 

そこに相応しくない私は私の限界を目指す。

これが私が挑む修羅の道。

不覚にも心が打たれてしまった。

私もこの女のように目指してみたくなってしまった。

人が行ける限界への道。

 

「思春殿。ここはお任せします」

 

「ああ。任せたぞ明命」

 

「全力を尽くします」

 

私はこの道の頂点を目指す。

私の才がどこまでかわからないが心が折れても治るたびに太くなるらしい。

ならば半永久的に立ち上がって見せる。

 

周泰はこの場を甘寧にまかせその場を後にした。

その立ち去る姿はまさに風のようであった。

彼女の隠密の才はもうとっくに凡人の限界に達していたのだろう。

そしてついに壁を破ったのだ、天才への領域の。

 

 

 

「う、うわあああーー!」

 

こちらは右翼。

一人また一人と孫呉の兵が屠られていく。

人の命とはこんなにあっけないものかと思えるほど圧倒的な戦いがあった。

 

「・・弱い」

 

まさに一方的な戦であった。

彼女は言葉通り一騎当千。

この現実に黄蓋は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「まったく困ったものじゃ」

 

彼女の口調は落ち着いてはいるものだが内心では酷く狼狽している。

戦況はこのまま何もしなければ劣勢が色濃く出てしまう。

兵たちの士気は今でこそまだ戦えているがこのままでは地に落ち壊走が目に見えている。

 

「あら、ずいぶん困った状況ね」

 

「策殿・・」

 

「呂布をなんとかしなきゃまずいわ」

 

孫策は本陣でずっと待機していられる性格ではない。

周瑜もそんな彼女の性格を理解している。

本心では大将らしくどっしりと構えていてもらいたいものだが土台無理なことだったのだ。

ならばと呂布のいる右翼へと彼女を送り出した。

 

「正攻法じゃ勝てないわ。祭」

 

「わかっておる」

 

黄蓋は多幻双弓(たげんそうきゅう)という自身が持つ弓を構える。

狙いはもちろん呂布。彼女の額を狙う。

呂布は現在も兵たちを相手に大奮闘している。

 

「任せたわよ」

 

孫策は黄蓋にそう言い残し呂布の元へと向かう。

その間黄蓋はギリギリと音を立てて弓を引き絞っている。

 

(この一矢でしとめてみせる)

 

一発でしとめなければこの戦いは苦戦必死。

だからこそ全身全霊をかけてこの数秒に精神を限界まで集中させる。

 

(呂布・・さらばじゃ)

 

黄蓋は自分が射れる最高の一矢を呂布へと向けて放った。

狙いは一寸の狂いもなく呂布の額へと吸い込まれる。

 

(いった!)

 

黄蓋は確信を得る。

だがしかし無常にもその矢は違う体に突き刺さる。

 

「・・さっきから気持ち悪い」

 

「ば、馬鹿な!」

 

呂布は兵の首を右手でつかみ片手で持ち上げその矢を受け止めさせた。

彼女にはわかっていたのだ。

 

「・・そこ」

 

呂布は自分の背後へとつかんでいた兵を投げ捨てる。

 

「ちっ・・」

 

投げられた兵の体は腰から真っ二つに切られる。

そこから孫策が姿を現す。

彼女ははなから黄蓋の矢はきっと防がれるだろうと直感を感じた。

だからこそ意識を正面の黄蓋に向けさせ彼女は呂布を後ろからたたき切ろうと考えていた。

だがそれも無駄だったようだ。

 

「どうしてわかったの?」

 

「・・二人だけ殺気の質が違う」

 

「兵たちと儂らのか」

 

「・・コクッ」

 

「私たちが自分で場所を教えていたのね。

まあ、でもこんなことができるのは彼女だけか」

 

規格外の存在である呂布に孫策と黄蓋は落胆する。

これが呂布かと。

 

「さて、場所はばれちゃったわけだし・・あとはこれしかないわね」

 

「あんまり年寄りをいじめるでない」

 

二人は武器をあらためて構える。

その二人をみた呂布も肩に柄をのせるように構える。

 

「・・お前ら強い。だから少し楽しみ」

 

無表情ながらも呂布の口角はわずかにあがる。

彼女も純粋に戦いというものが好きなのだ。

 

「二対一だからって手加減はしないわよ」

 

「・・構わない。そのほうがおもしろい」

 

「ずいぶんと余裕じゃ・・な」

 

黄蓋が矢を放つ。

その一射が合図となったのか三人の戦いは始まった。

こちらは中央のような凡人と凡人の戦いではない。

天才しか存在しない戦い。

 

まるで暴風のような戦いであった。

ブオンブオンと呂布の方天画戟が奮う風切り音があたりに響く。

当たれば即死。かすれば体が吹き飛ばされるであろう。

常に首に死神の鎌が添えられているかのようだ。

 

だが孫策はこの攻撃をかわす。

武器では決して防がない。防ごうとしないのだ。

なぜならこの音を聞くだけで呂布の怪力が知れる。

受け止めればその衝撃で手がやられてしまう。

だからこそ彼女はよける。

 

「す、すげえ・・」

 

「呂将軍!呂将軍!」

 

「孫策様ー!」

 

この戦いに周りの兵たちは魅入られてしまう。

人知を超えた戦い。

彼らでは絶対に到達しえない戦いが彼らの目をひきつける。

自然とこの三人以外闘うものはいなくなった。

まるでこの三人の戦いのためのステージのように彼らの周りを円を囲うように兵たちが観戦する。

 

「しっ!」

 

「・・ふっ!」

 

黄蓋が矢を放つ。

だがそれを呂布は武器で打ち落とす。

 

「はあー!」

 

「・・甘い」

 

孫策が死角から攻撃する。

だがそれもまた呂布は防ぐ。

 

孫策が接近戦で呂布をその場に釘付けにし、その間に黄蓋は移動しながら矢を放つタイミングを見計らう。

そして矢を放った後に呂布が防いだすきを見つけ孫策が攻撃をする。

二人の呼吸は完璧であった。

だがその完璧の上をいくものが呂布だ。

 

「なんという奴じゃ」

 

「たまったもんじゃないわね・・」

 

攻撃が通らないことに焦る二人。

対して呂布は涼しげだ。

 

「・・そろそろ終わらせる」

 

今まで防戦一方だった呂布が今度は自分から動き出した。

彼女は黄蓋へ向けて走り出した。

 

「させない!」

 

「・・どけ!」

 

呂布が大きく武器を奮う。

その攻撃をよける孫策。

 

「策殿!」

 

自身の背後から聞こえた声に孫策はとっさにその場でしゃがむ。

孫策がしゃがんだ瞬間に呂布の目の前に矢が迫る。

黄蓋は孫策の背後に移動し矢を放ったのだ。

その意図を孫策は一瞬で判断したのだ。まさに阿吽の呼吸。

 

「・・ぬるい!」

 

だが呂布はその矢を空中で掴む。

二人の阿吽に呂布は天性の才で追いつき、追い抜く。

そして呂布は掴んだ矢をそのまま孫策へ突き刺す。

 

「ぐぅ!?」

 

孫策も持ち前の直感でとっさに飛び退くがその矢がかする。

そしてそのままゴロゴロと地面を転がり黄蓋の方へ逃げ延びる。

その額には冷や汗が一滴流れ落ちる。

 

「なんという奴じゃ」

 

「あはは・・笑えてくるわね」

 

この女は本当に人間か?

今まで見た誰よりも強い。

天下無双の称号は想像よりもずっと高かった。

 

これはまずい。

孫策と黄蓋の頭の中では何十手も先の展開を描きこの場を打開する策を描いていた。

だがどの結末も犠牲なくしては突破しえない策だ。

こんな結果を自分たちは望んでいない。

だからこそどうすることもできない。

だがそんなおり

 

突如として地面が燃え上がった。

その火は孫策と黄蓋二人と呂布の間を断つ炎。

 

「もっとだ!もっと火を!」

 

そこに響くは孫呉の名軍師周瑜の声。

千本にも及ぶ火矢によりこの火の壁はだんだんと厚さを増して行く。

 

「雪蓮!祭殿!無事か!」

 

「冥琳!どうしてここに?」

 

「やはりお前が心配になってな。

祭殿と二人とはいえあの呂布と戦っているのではと思ってな。

案の定だ。やはりお前は戦っていたか。

呂布とは戦ってはいかんといっただろ」

 

「でも、戦わないと部隊が壊滅してたし・・」

 

「軍師とはどんな状況になってもいいように幾重にも策を巡らしているものだ。

お前には敵の兵を少しでも減らしてもらおうと思っていたんだが。

まあこのことも想定して火計部隊をつれてきたんだが。

さあ退くぞ、敵はこの火を消化するか迂回することでしか進軍はできん。

左翼の部隊がやられたのだ、袁燿が本陣へ迫っている」

 

「蓮華がやられたか・・よし、撤退するわよ」

 

こうして孫策、黄蓋、周瑜の部隊は本陣へと撤退を開始しようとする。

だが・・

 

「ただでは逃がさないですぞ!」

 

またも燃え上がる平原。

この火は三人の部隊を逃がさないように行く手を阻む目的でやられたようだ。

 

「軍師とは未来を己の手で作る者。

孫策が来たときからねねはこのときを待っていたのですぞ!

恋殿のそばには常にこのねねが控えているのですぞ」

 

ねねが500人の部隊を従えて小高い丘の上から登場する。

敵の君主孫策が黄蓋の部隊に合流したときにねねは孫策を討つために自分の部隊を火計を起こすために行動したのだ。

だがここで周瑜という思わぬ敵将も登場し、そして彼女も火をおこしたために戦場は大火災が起きている。

そこかしこに火が燃え移り火の海となっている。

 

「ぐ、大変なことになってるわね」

 

「ああ。本陣に穏と亜莎がいるが・・敵は袁燿だ。早く戻らなければ」

 

「じゃがこのあたり一面の火の海ではなかなか難航しそうじゃのう」

 

「めんどうですが火を大きく迂回して戻るしかないでしょう」

 

周瑜のいうとおり彼女たちは火に囲まれている状態だ。

まだ燃え広がっていない場所を縫うように移動しなければならない。

これは大きな時間のロスとなるがいたしかたない。

彼女たちは火をよけるように帰還する。

 

 

こちらは呉の本陣。

ここには陸孫と呂蒙が控えている。

彼女たちは頭脳労働専門としてこの本陣で待機している。

 

「冥琳様戻ってきませんね」

 

「そうですね~敵にも軍師はいるわけですしやはり不測の事態が起きたと見てよさそうですね~」

 

「冥琳様がいない今私たちがこの本陣を死守しなければ!」

 

呂蒙はこの大役にすこし力が入りすぎているようだ。

そんな彼女を陸孫は優しく緊張をほぐそうとする。

だがここからはそんな時間もなくなってしまう。

 

「敵、袁燿部隊本陣付近に接近!」

 

「わかりました。迎撃します。

亜莎ちゃん。私は迎撃部隊を率いてここをでますね」

 

「ええー!?そんな私一人ですか?」

 

「はい~♪本陣に誰もいなくなるわけにはいけません。

敵に接近をゆるしすぎても火をかけられる可能性があります。

だからこそ迎撃部隊を出してでも近づけさせるわけにはいかないんですよ~」

 

「わ、わかりました・・」

 

呂蒙は不安に駆られる。

自分で大丈夫だろうか?なにもおこらなければいいが・・

 

陸孫は平原を馬に乗って駆ける。

彼女にも武の心得は多少はある。だがそれも一般兵よりほんの少し強いという程度なのだ。

つまり自衛程度でしか戦えない、馬を乗りこなし剣を振って戦うなんてことはできない。

陸孫は兵の後ろで指示を飛ばす。

 

「皆さんがんばってくださーい。

しばらく耐えれば周瑜様が孫策様をつれて戻ってきます。

袁燿部隊はたった一部隊です~、挟撃されては退くしかできません。

それまでがんばってくださ~い」

 

陸孫が兵たちを鼓舞する。

自分たちは耐えればいい。そうすれば生きる可能性がグンとあがると兵たちも気持ちが高ぶる。

 

「報告します!本陣付近に300人程度の小勢の伏兵が出現!

こちらから遊撃部隊を出しますか?」

 

「本陣付近ですか・・」

 

陸孫は考える。

こちらは迎撃として出撃して本陣から結構離れている。

ここから遊撃しにいって駆逐して戻ってくるには時間が結構とられる。

確実に殲滅するためにはやはり700~800程度の兵は必要だ。

敵に何か策があると考えるのが賢明だろう、やはり倍は兵を持っていくべきだ。

 

だがこの部隊からそれほどの数の部隊をだせばここを維持できる自信がない。

敵は猛将といっていい袁燿なのだ。私は軍師。

指揮する者の性能として彼女が暴れまわれば敵の士気があがりこちらが下がる。

私はただ後ろで指揮するだけなのだ。

仕方ない・・

 

「呂蒙に伝令を。

本陣から迎撃部隊を出してください、と」

 

陸孫はそう判断した。

自分の部隊から出せない以上本陣から出すしかない。

敵はなんの意図をもった伏兵かわからないのだ。

放っておくわけにはいかない。

 

そして本陣で伝令を受けた呂蒙。

 

「伏兵・・そんな小勢でどうするつもりですかね。

本陣へ奇襲するには少なすぎる。なにより奇襲なら私たちにばれた時点で失敗ですが・・やはり何かを仕掛けていると考えるべきですかね」

 

考えたところでわからない。

ならば

 

「兵を出します!兵の数は400と400の二部隊で出してください!

第一部隊で敵に接近!火計や落とし穴の存在が無ければそのまま第二部隊も突撃、そして包囲殲滅です」

 

呂蒙は敵兵の迎撃を出すことにした。

そして第一部隊が敵と衝突したがとくに敵に策などはなし。

敵は防御一辺倒だ。そのまま第二部隊も敵へ攻撃することととなった。

だが敵は戦闘する意思がないのかそのままじりじりと後退していく。

 

 

こちらは陸孫部隊。

ここで絶望的な知らせが届く。

 

「あたり一面火の海ですか・・」

 

周瑜たちの状況が届く。

このままでは本陣へ戻ってくるにはかなり時間を要する。

それまで私たちの部隊だけで耐えられるだろうか?

いや、耐えるしかないのだ。

 

「皆さ~ん!敵を切ろうなどと思わないでください!

敵の攻撃をすべて防御するだけと考えてください!

時間を稼いでくださ~い!」

 

陸孫はなんとしても耐えることを選んだ。

 

 

呂蒙は悩んでいる。

 

(敵の狙いはいったい?これではただ注目を集めるだけの伏兵だったとしか・・まさか)

 

ここで呂蒙は敵の意図に気づいた。

 

「周辺へ斥候を放ってください!

恐らく敵がいるはずです!そして戦う準備を!

ここまで気づけなかったのは失策でした」

 

呂蒙は気づいた。

あの小勢の伏兵は私たちに注目を集めるだけの存在だと。

そして私たちに悩ませるのが目的だと

だがやはり遅かったようだ。

 

「敵の奇襲です!敵の数2000!

敵は・・張の旗印!張勲です!」

 

「ちょ、張勲!?そんな馬鹿な!

だってあの人は本陣で・・」

 

確かに張勲は本陣で情報を集めていた。

だが中央の大盾部隊が突破された時点で本陣をたったのだ。

これもすべて彼女の策。

彼女は騎馬兵を連れ袁術軍後方から孫呉の本陣まで戦場を大きく迂回し奇襲部隊となった。

 

そして両軍は激突する。

軍師対軍師の戦い。

お互い武器を奮い兵を切るのが仕事ではないのだ。

 

「残念ですが敵に勝ち目はありませんね。

確かに注意をあの伏兵に向けたのはよかったです。

意図が読めず完全に無警戒であったならこの奇襲もうまくいったでしょう。

ですが私は読めました。こちらの勝ちです」

 

呂蒙の口元はにやりと笑みが浮かぶ。

勝った。こちらはあの奇襲部隊よりも兵が多い。

準備も整っていたし完全に普通のぶつかり合いでの戦い。

ならば兵力が多いほうが勝つ。敵は猛将でもないのだ。

 

心配することなどないだろう。

呂蒙は緊張していたのかフーッと大きく息をもらす。

そして力の入っていた体をほぐすために体を大きく動かした。

そのとき建業の城が視界に入る。

そこにはあちこちから煙が上がっていたのだ。

 

「ちょ!?えーっ!?なんで!?どうして!?えっ!えっ!」

 

呂蒙は酷く混乱した。

町が燃やされている?敵が侵入した?町を燃やすなんてなんていうやつら。

民の虐殺でもしているのか?

頭の中でぐるぐると最悪の光景が浮かぶ。

混乱しているのは彼女だけではない。

 

「お、俺たちの町が燃えてるぞー!」

 

「そんな・・」

 

兵たちは状況を理解した。

自分たちが住む町が燃やされているのだ。

 

「お、おっかー!!」

 

一人の兵が戦場から離脱して町へ戻ろうとしたのだ。

だがさすがにそれはまずい。

 

「ま、まってください!」

 

呂蒙がそれを止める。

だが兵がそれを拒む。

 

「呂蒙様!後生です!俺にはおっかーしか家族がいないんです!

お願いします!確認したら戻りますから!」

 

「そ、それでもだめですー!許可したら皆行くじゃないですか!

そうしたら本陣に誰もいなくなっちゃいますよ!」

 

「どうしてもだめですか・・」

 

兵はあきらめたのか落胆する。

そしておもむろに剣を腹にあてる。

 

「この悪魔め!人の心を持たぬ悪鬼よ!呂蒙!

貴様が俺を殺したのだ!皆も気をつけよ!呂蒙こそ極悪非道の鬼ぞ!」

 

兵は混乱しているのか?

意味不明の言葉を述べそして・・

 

腹に剣をさした。

そこからは血がどばどばと流れる。

血が噴水のように噴き出す。

 

「貴様の一族・・末代まで祟ってくれるわ・・」

 

そう呟きバタリとその場で倒れる。

兵はびくびくと痙攣したのち動かなくなった。

 

あたりはシンとしている。

何が起こったのか理解できないようだ。

だが一瞬の静寂の後一人の兵が首を呂蒙の方に向ける。

そして呂蒙もそちらに視線を向け目が合う。

 

そしてハッとあたりを見回すと兵の皆が呂蒙の方を向いていた。

呂蒙に向けられる数千にも及ぶ目の数。

 

「い、いや・・」

 

呂蒙の頭は完全に混乱していた。

 

「わ、私のせいなの?私が殺したの?

戦いなんかじゃなくて・・ただ死なせちゃったの?」

 

呂蒙はその場でしゃがみこみ頭を抱えている。

そのただならぬ様子に兵が声をかける。

 

「りょ、呂蒙さま?」

 

「だってしょうがないじゃない・・一人を許可したら・・」

 

呂蒙にはまったく聞こえていないのかぶつぶつとその場でつぶやき続けている。

彼女には許容できなかった。

戦による戦いでの死は仕方ないと諦める事ができる。

だが今回はどうだろう?

兵を一人自害させてしまったのだ。

戦いではない、そして自分を睨み付けるように罵倒し死んでいった。

呂蒙の頭の中であの時の光景がぐるぐると回りループし続けている。

 

「お、おい!」

 

「突撃ー!」

 

「も、もうだめだ!逃げろー!」

 

この場を任されているのは呂蒙一人。

だがその彼女は廃人のようにその場でぶつぶつとつぶやき続けている。

完全にこの場は崩壊していた。

そんな軍団を制圧させるのに猛将など必要ない。

ただ兵を指揮する能力があればいいだけなのだ。

軍師ならばなお簡単だろう。

張勲にとっては大人と子供の戦いのようなものだった。

 

そして張勲は制圧された戦場を歩く。

 

「もう大丈夫ですよ~♪ご苦労様でした」

 

その言葉にむくっと一人の呉の兵が起き上がる。

不思議なことにその兵は呂蒙の前で自害をした兵だ。

だが彼はピンピンしている。

 

「いえ、どうやらうまくいったようですね」

 

「どうやら呂蒙は完全にだまされたようですね。

まだあそこでがたがたと震えていますね~♪

新人さんには荷が重かったようですかね、人を一人犬死させてしまった事に耐えられないとは。

 

彼女は人を剣で切り殺した事がないんでしょうか?

人の命の重みをこの場で知って使い物にならなくなるなんて本当にお馬鹿さんですね~」

 

そういって張勲は呂蒙のもとへ歩き出す。

その傍らには先ほどの兵だ。

 

「は~い♪袁術軍の大軍師張勲さんですよ~♪」

 

張勲は呂蒙ににこにこの笑顔で話しかける。

だが彼女の言葉は呂蒙にまったく聞こえていない。

それに張勲は苛立った。

 

「この悪鬼め!」

 

「ひっ!?」

 

張勲が発した言葉は先ほど呂蒙の前で壮絶に命をたった兵と同じ言葉。

その言葉には呂蒙はすぐに反応し、がたがたと奮え張勲のほうをむく。

この反応がたまらないのか張勲はくすくすと笑い隣にたつ兵の腹に手をいれる。

そして手を抜くとそこには剣により穴が開いた胃があった。

その穴からタラタラと血が流れ落ちている。

 

「ひっ、ひい!!」

 

「あはは、まだ現実が見えていないんですかね~

これはこの方の胃ではありませんよ。

戦死した袁術軍の兵のお腹を開いて胃を取り出したんです。

それで縫合用の糸で縫い合わしたんですよ、中には血をいっぱい入れて。

彼にはそれをお腹に入れてもらって、さんざん貴女を罵倒して死んでもらったんですよ。

どうでした?貴女の様子を見るに彼の演技は相当なものだったようですね」

 

「え、演技・・?」

 

張勲の言葉に呂蒙はやっと気づいた。

これはすべて策であったと。

最初から仕組まれていたのだ。

本陣の兵の中に袁術軍の兵を紛れ込ませていた。

そして、内部から混乱させる。よくある常套手段の一つだ。

 

「呂蒙というまだ未熟な軍師がいると知っていました。

ならばそこを狙うのは当然でしょう?

せいぜい混乱すればいいとは思っていましたがここまで崩壊するとは思いませんでしたよ。

まあ軍師は武将とは違い自らの手で人を切り殺す機会なんてないですからね。

あなたはまだまだ人の命というものに向き合えていなかった、それが敗因でしたね。

そして貴女は優しすぎた。思いつめすぎですよ。

軍師は冷酷で、非情であるぐらいがちょうどいいんです」

 

そして張勲は兵に告げ呂蒙を縄で縛った。

呂蒙は自分が手のひらで踊らされた事実に呆然としながらつれられていった。

 

「さて、今頃建業に逃げ延びた兵たちはどんな顔をしていますかね~♪」

 

呂蒙の兵たちであり、本陣が壊滅したことで多くの兵が逃げ延びた。

そして煙が上がっていた町へと戻ってくる。

 

「な、なんだこりゃ?」

 

そこでは民たちが焚き火のように火をつけ野菜を焼いていた。

それをうまそうに皆が食べている。

その煙が黙々と上がっている。誰が火をつけたのだろうか?

燻っているのかもくもくと黒煙が上がっているものもある。

 

「どういうことだ!貴様ら!今は戦のまっただ中なんだぞ!」

 

たまらずこの戦中であるということを忘れたかのような状況に声を荒げる兵たち。

だが民は何を言っているのかというような表情を浮かべる。

 

「え?これは孫策様が許可したと聞きましたが?

この戦では勝敗がわからないから、食べられるうちに食べておけと聞きました。

なんでも戦で震えている我らを安心させるためと・・」

 

「何を言っている!我らが孫策様がそのような弱気なことを言うか!」

 

「し、しかし手に野菜をたくさんもった者が数十人一斉に現れて・・皆孫策様から野菜を受け取ったと」

 

「芋や人参を黄蓋様が手渡しで渡してくれたと俺は聞きました・・」

 

その言葉を聞いて兵たちは理解した。これもまた敵の策だと。

そんな彼らに数人の民が近づく。

 

「ぬかったな!孫呉の兵ども!」

 

突如懐に隠していた短剣を突きつける数人の民たち。

その光景に先ほどまで野菜を食していた民が驚きの声をあげる。

 

「貴様ら袁術の・・」

 

「君主や重臣が民と仲が良すぎるのも考え物だな。

みなすぐに信じてくれたぞ」

 

「俺らも野菜を持って忍び込むとは張勲様に見捨てられたと思ったがな」

 

「伏兵に気をとられすぎたようだな。

すべてはこのためよ」

 

呂蒙は伏兵に気を取られすぎていたようだ。

火計や落とし穴、そして奇襲を悟らせないためではない。

建業への注意をそらすためであった。

 

なんとも馬鹿げた策。

だが普段から孫策や黄蓋の人となりを知っている建業の民。

彼女たちはお祭り好き、人とのふれあいが好きな人間。

だからこそこの建業が戦火にさらされる恐怖に皆が奮え家に閉じ困った彼らを癒すためにしてくれたのだと信じてしまった。

本当に間者が火を放てばいろいろと問題が浮上すると張勲は考えたのだ。

だからこそこの信じられないような方法で煙を上げることにしたのだ。

こうして建業の制圧に成功した。

 

「たやすく制圧できましたね。

周瑜と陸孫。彼女たちを引き離せてよかった。

まあ、周瑜に関しては恋ちゃんがいて孫策の性格ありきでのものでしたが。

 

旗を掲げそして戦場に知らしめてください。

この戦我らの勝利であると!」

 

そして戦場中に知らしめられる戦の終わり。

袁術軍による敵の本拠地の占拠。

完全な勝利であった。

 

 

 

こちらは場所は変わり戦いが続いていた。

だが兵との戦いではない自分との戦いだ。

 

(ここにはいませんか・・)

 

周泰。彼女は袁術軍の奥深くまで侵入している。

甘寧にいわれた通り孫権の居場所を探しているのだ。

だが彼女はそれだけでは終わらせない。

 

「ふっ!」

 

兵を一人羽交い絞めにする。

物陰に隠れ兵が後ろを向く時を待っていたのだ。

そして持っていた短刀を兵の首にふれる寸前にまで近づける。

 

「答えなさい。孫権はどこにいる」

 

「し、知らない」

 

答えないならばと短刀を兵の首に軽く刺す。

そこからは血がたらりと一滴零れ落ちる。

 

「答えないならばこのまま首に沈んでいくまで」

 

ズブズブと少しずつ短刀の先が首を進んでいく。

兵の首の中へと短刀がズンズンと沈んでいく。

この女は平気で人を殺す人間だと兵はたまらず声を上げる。

 

「わ、わかった!言う!この先だ!

だからやめてくれ!」

 

その言葉を聞いた周泰は兵を一発で気絶させる。

短刀に意識が集中していた人間を気絶させるなど彼女にとっては楽なものであった。

人の体を彼女は理解している。どこの間接を逆に曲げれば激痛がはしるかなど彼女は知っているのだ。

衝撃を与えれば気絶しやすい場所など彼女にとっては基礎知識なのだ。

 

そして彼女は先に進んでいく。

それらしき場所にでた。

だがそこで見たのは天幕の前に立つ一人の少女。

 

「小蓮さま?」

 

「あれ?明命?」

 

「どうしてここに?」

 

「私はね~、ここでお姉ちゃんを守ってるの」

 

「蓮華様をですか?ならばちょうどいいです!

私は蓮華様を救出に来ました!小蓮様も一緒に脱出しましょう」

 

シャオの言葉に明命は喜んだ。

だが彼女の言葉の意味は違ったようだ。

 

「ううん、違うよ。お姉ちゃんを連れ出そうとする孫呉から守ってるんだ」

 

「え?」

 

「残念だね。明命のことは結構好きだったんだけどな」

 

そう言ってシャオは己の武器、月華美人(げっかびじん)を構える。

周泰にとってそれは見慣れた武器。紛れも無いシャオの武器だ。

なぜそれを構える?

 

「ど、どういうことでしょう?」

 

「私はもう孫呉に戻らない。この袁術軍、美羽の配下だよ」

 

「何を言ってるんですか!小蓮様は孫呉の姫ですよ?

紛れも無い孫家の血筋を引くお方!

それがどうして敵軍の将に!よりにもよって我々を苦しめた袁術に!」

 

「私を苦しめたのは誰?絶望に落としたのは誰?

それは紛れも無くお姉様、孫策だよね?」

 

そう告げるシャオの目は酷く冷たいものだった。

周泰も知っていたのだ。孫策自身があの日、シャオを突き放した話をしたのだ。

孫家では人質を要求されると思っていたのだがその実要求は南海覇王。

だから断ったと。

 

「し、しかし・・それは孫家にとって代々受け継がれる家宝。

小蓮様もいずれ受け継ぐ物なのです。知っておいででしょう」

 

「わかってる!でもね・・でもやっぱり、それでも言ってほしかった」

 

搾り出すかのように小さな声でシャオは言った。

周泰もその気持ちはわかる。孫呉の姫とは言え自分よりも幼い少女なのだ。

だがシャオはすぐにその表情を変えた。

無理やり作ったかのような笑顔をむけた

 

「あ~あ、やっぱり世の中って厳しいね。

家族同士で戦わなくちゃいけない。お姉様のことだって本当はそこまで嫌ってない。

南海覇王のことだってわかってるよ。

そして今の世は乱世だってこと」

 

「わかっていながら戦うのですか?」

 

「うん。私は決めた。

乱世には乱世のしきたりがある。

家を捨て家族同士で戦うなんて日常茶飯事だよ。

私はもう孫家には戻らない。

 

莫逆の友、袁術を支え彼女の天下を一緒に見たい。

孫家では手に入らなかった友を彼女自身が私に与えてくれた。

姫っていう身分では決して手に入れることはできなかった」

 

シャオの言葉を聞いた周泰はもう無理だと悟ってしまった。

彼女の目にはとても硬い決意が見えたのだ。

 

周泰が昔に思いを馳せる。

幼くいつもはしゃぎ年相応に天真爛漫にはしゃいでいた印象しかなかった。

孫策、孫権といるためにシャオが君主になるなどまだまだ先。そんな思いもあったのだろう。

だからこそシャオは将来大丈夫なのだろうかという思いもあった。

 

そんな彼女が今はどうだろう?

いっぱしの将の目だ。

以前配下であった自分にも武器を向けている。

親しき者でも主のために刃を向ける一軍の将。

いったいどうやったら彼女をここまで大人にさせたのだろう?

あの袁術がどうして・・?

 

そして自体は大きく変わった。

 

「建業の制圧完了!ついに我らが勝ったぞー!」

 

建業の制圧を継げる兵が声を上げあちこちに触れ回っている。

陣中では兵たちの喜びの声が上がっている。

 

「戦いが終わったね」

 

「はい」

 

「明命は逃げないの?

今なら情けで見なかったことにしていいよ?」

 

「ははっ、先ほどまで私に刃を向けていたのに逃がしてくれるんですか?

袁術のためならば捕縛したほうがいいでしょうに」

 

「うう~、でも明命のことは嫌いじゃないし・・」

 

「小蓮様も成長なさったんですがまだまだですね。

だからこそ・・貴女の成長が見たくなります」

 

そして周泰はその場で座り込み胡坐をかく。

 

「何してるの?」

 

「もはや孫呉に未来はないでしょう。

二度も同じ相手にやられ、壊滅しました。

そして私は小蓮様の未来がみたい。

貴女をここまで成長させた袁術を見てみたいのです。

私は暗愚の袁術しか知りません。

私の目がいかに節穴だったか己の目を見直したく思います」

 

「そっか・・うん、わかったよ。

シャオも明命と一緒に働きたい!

美羽にうまいこと口ぞえするね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

こうして周泰は自ら縄についた。

自分が知っているシャオと今のシャオは大きく違う。

ここまでシャオを変わらせた袁術を自分が知っている袁術と同じと思うのは愚計だろう。

自分もひょっとしたら成長できるかもしれないと少し楽しみに思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




それでは戦国恋姫のレビューを書こうと思います。
嫌な方は見ないでくださいね。

まずゲームの基礎は無印恋姫といったところでした。
真・恋姫ではなく無印恋姫です。
自分てきには設定、ストーリーは結構好きですね。ですがいかんせんライターの方があわないといいますか設定やストーリーをもっといかせた書き方があると思いましたね。
しかもヒロインがちょろインすぎる。ほぼ一目ぼれやかわいいとかいっただけで落ちるのはいかがなものかと。
その影響があり、主人公の性格がやばいですね。
「女の子だぁ?ぐははははっ!せやから事情をしらん奴ぁ口出すなぁ、言うてんや!」
その女はなぁ、俺らの仲間を散々斬りまくって、片っ端から金目のもんを奪っていった鬼女やぞ!」
「せや!男やら女やら関係あらへん!そいつは仲間の仇なんじゃ!」
「分かったら兄ちゃんも引っ込んどれ!俺らぁ、その女ひん剥いて、股からかっさばいたらんと、腹ぁ、収まらんのじゃ!」
剣丞「ふーん・・・・」
「おう、おまえも分かってくれたか。・・・って!なんやねん その気のない返事は!」
剣丞「うん、あまり興味ないから」

これはいかがなもんかと、一刀君が泣くぞと思いました。
女が大正義で男は悪みたいな・・
あと、愛紗や恋に鍛えられ朱里や雛里に戦術書に書かれていないところまで解説されたのにそれがあまり生かされていない。生かされているのは明命に鍛えられたサバイバル経験ばかりでしたね。

お家流についてはもうFateの宝具でしたね。
この存在があるので戦国と三国どっちが強いかを考える楽しみができない。
一葉の三千世界というゲートオブバビロンでめった刺し、小波の擬似携帯電話とメテオ、美空の神様召還。これで三国勢はやられますね。
戦国乙女のイエヤスちゃんでもこんな魔法は使えなかった・・
でも作者はFateが好きなのでこういうのもありっちゃありでした。

鬼については問題なし。
これはこれでOKでした。最初は鬼なんて出すなよと食わず嫌いでしたが以外にすんなりと受け入れることができました。でもやっぱり剣丞が弱い。
小夜叉があんなにザクザク殺せるのに恋と愛紗に鍛えられた剣丞があまり強くないのが目立ちます。

三国勢の名前が出るのがめちゃうれしかったです。
春蘭の等身大華琳様人形の話とかうれしかったですね~性格が雪蓮に似てるとか。
一番だめだと思ったのはやはり非18禁であるためにいきなり話がぶった切られるところですね。18禁版出るのが確実で見え見えでいきなりシーンが飛びます。
だから話がなんかおかしいんですよね。
無理やり抜いて話がおかしくなるくらいなら最初から18禁で出せばいいのにと思いました。

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