もしも袁術に妹がいたら   作:なろうからのザッキー

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反董卓連合

姫羽たちが荊州支部の黄巾族本隊を討伐した事で分隊は南陽から撤退。

荊州を北上していった。

だがその分隊はその先の劉表軍によって駆逐された。

 

その他の黄巾族は袁紹軍、曹操軍、そして黄巾族討伐に力をいれている公孫瓚。

そして義勇兵を募り、公孫賛と共に最近活躍し始めた劉備軍によりついにその力を失った。

 

久方ぶりに大陸に平和が訪れたかのようにみえたが・・

 

 

その知らせに姫羽はこれから起こるであろう数々の戦いを想像せずにはいられなかった。

漢の皇帝、霊帝の死。

 

霊帝の死後、朝廷内では権力争いが勃発。

最終的には董卓が献帝と名乗った劉協を傀儡とし、自らを相国という位に付き、朝廷内を牛耳った。

 

そして、第二の権力闘争が開始される。

反董卓連合の檄文が各地で割拠する諸侯に飛んだのである。

 

そして姫羽たちのもとにも袁紹からその知らせが届いた。

 

「ふむ。わからんのじゃ。

七乃、麗羽姉さまはなんといっておるのじゃ?」

 

「えっと~、とりあえずみんなで悪い董卓さんをこらしめちゃいましょー

お~っほっほっほってところですかね」

 

「なんと!悪者とな!」

 

「ええ。これによれば洛陽で好き放題やって民を苦しめているみたいですよ~?

うちも結構税は高いほうですけど、ここよりも高いなんて相当じゃないですかね?」

 

「それはいかんのじゃ七乃!」

民を苦しめる悪党はこの名門袁家一族袁公路がこらしめてやるのじゃ!」

 

「うちも民を結構苦しめてるんですけどね~

でも悪いところは見て見ぬふりですよね~、いよ!この悪魔、悪党、美羽様!」

 

「もっと褒めてたも!褒めてたも!」

 

「お待ちくださいお姉様」

 

いつものように美羽と七乃の漫才が繰り広げられていたがそれを姫羽が割って止めた。

 

「どーしたのじゃ姫羽?そなたも妾を褒めたいのかの?」

 

「私もなでなでしたいです~♪・・っと、そーじゃなくてお姉様。

この書簡の通り董卓は本当に悪党なのでしょうか?」

 

「違うのかの?また麗羽姉さまの暴走かの?」

 

「ふむ・・いろいろ考えられますが・・

とりあえず一番は嫉妬でしょうね。

董卓はあの権力争いで劉協様を我が物とし、最終的には一番いいところをかっさらっていきました。

あの気質の高い麗羽姉さまのこと、黙って見てなどいられないのでしょう。

ですから、意図的に悪政の噂を広めたのかそれとも事実か・・」

 

「もし悪政の事実が無ければただの寄ってたかっての弱いものいじめですからね~

下手したら朝敵になっちゃいますね~」

 

七乃も事実に気づいたのか少しまじめ顔で思案している。

美羽はよく分かっていないようだがとりあえず自分も考えるふりをしている。

そして何を考えればいいのかわからないと判断したようだ。

 

「じゃあどうすればいいのかの?」

 

「そうですね、ここでの議題は反董卓連合に参加するか否かですね」

 

「姫羽様。私としては参加した方がいいとおもうんですけど~」

 

七乃がその場で手を挙げて姫羽へと体を向けて発言した。

 

「七乃。その利点と不利点を言ってみなさい」

 

「はい~♪まずは名門袁家一族である麗羽さまが発起人ですからね~

当然同族としては必ず参加しなければいけない雰囲気ですよね。

そしてこの大陸中の諸侯が集まった大戦争。

活躍すれば美羽様の名前が大陸中に広がる事間違いなしです!

まあ不利点としては兵をただ失うだけですね。

その他にも無駄骨、遠征ですから兵糧の大量消費といったところでしょうか」

 

「その通りね。

名声を得るまたとない好機。

しかしこの状況ではいつ群雄割拠の乱世が起きてもおかしくない・・

そのために参加せず軍備などをさらに増強しておくのも悪くない。

 

お姉様。お姉様はどうお考えですか?」

 

「ほえ?妾かの・・?」

 

七乃、姫羽の二人の目が美羽へとそそがれる。

そして美羽は困ったような顔を浮かべている。

彼女は困った。話をまったく聞いていなかった。

 

だが、妹はそんなことなどつゆ知らず。

期待のこもった顔でこちらを見ている。

そして彼女は

 

「うむ。妾も参加するのじゃ!」

 

「わかりました。さすがお姉様、私も同意見です」

 

「じゃーなんで先ほど止めたのじゃ!」

 

「それはあくまでも兼軍師としての立場上です。

勢いだけで物事を決めていては視野が狭まります。

反対意見を述べることで一度流れを止め、頭を冷静にさせるためです。

 

それではお姉様。連合の日までに仕事を終わらせるために私は戻ります。

お姉様も体調を崩さぬようお気をつけください」

 

そして姫羽が一礼をしこの部屋から去った。

 

「お嬢様~どうして参加することに決めたんですか?」

 

七乃がふと疑問に思い美羽に対してそう意見をもとめた

 

「うむ!もちろん暇だったからじゃ!

最近は七乃と二人で暇だとつぶやいてばっかりだったからの」

 

「はあ?」

 

「まったく姫羽は少々頭が固いところがあるのじゃ。

もっと柔軟に生きるべきだと妾は思うがの」

 

「お嬢様は少々やわからすぎですけどね~。

でも、そんなところもかわいいぞ♪」

 

「ふっふっふ、そうじゃろそうじゃろ♪」

 

 

そして姫羽、七乃を責任者として軍備を整えた。

先日の美羽の命を狙った不貞の輩を見せしめのため首を晒し、規律を保ったため今はまだ下手に動くものはいなかった。

無事、この戦のための準備は何事も無く進みそして南陽を出立した。

反董卓連合による董卓撲滅の戦いが始まる。

 

 

「ほおぉおおお~!たくさんおるの~」

 

「そうですね。袁紹、曹操、馬騰、公孫瓚など有名な者たちがこれほど多く集まる機会はそうありませんからね」

 

「兵の数も多いですからね。

美羽様、迷子になっちゃだめですよ?

さ、おててつなぎましょ~ね~」

 

「あ!七乃ずるい!

お姉様?ここは我ら袁姉妹が仲の良いことを見せつけ、諸侯に安泰ということを知らしめましょう!」

 

「おぬしら妾は大人じゃ!」

 

美羽もさすがに恥ずかしいのか顔を赤くし先に一人でずんずんと進んでいった。

だがその行動がかわいいと二人はさらに盛り上がった。

しかしその歩いていった先で美羽は誰かとぶつかったようだ。

 

「むぎゃ!?」

 

「あ!ご、ごめんね~痛くなかった?ごめんね~」

 

美羽はぶつかった弾みで尻餅をついた。

そして美羽とぶつかった女性は美羽へと手を差し出す。

だが美羽はその手を取らなかった。

 

「む、大丈夫じゃ。妾は大人じゃ」

 

「そう~えらいね~でもここはちょっと関係者以外立ち入り禁止っていうか・・」

 

「なら大丈夫じゃ。妾もこの反董卓連合の関係者じゃ」

 

「え!?あ、す、すみません!私ったら全然世間に強くなくて!

あ~、えっと!私は劉備。字は玄徳です!」

 

美羽がぶつかった相手は劉備であった。

彼女もまたこの反董卓連合へと参加していたようだ。

 

「りゅうび・・?知らんの~・・妾は袁術。名門袁家の袁公路じゃ」

 

「え、あ、あの袁術さん!

あ、あはは。知られてないんだ・・そうだよね・・・私たちなんてまだまだ弱小だもんね・・」

 

劉備はあきらかに落ち込んでいた。

彼女の理想は大きい。

だが有名なあの袁術軍にはまだ自分の名前すら知られていないとは先は長そうだ。

 

「桃香様ー!!」

 

一人の黒髪の長身の女性がこちらへと走り寄ってくる。

 

「お姉様ー!!」

 

対してこちらも自慢の妹が美羽に向かい走り寄ってくる。

 

「まったく、これから軍議だと言うのにどこをほっつき歩いておられるのですか」

 

「お姉様心配したじゃないですか・・もう、お尻の所をよごして。

だから手をつなぎましょうといったじゃないですか」

 

突如参加した二人に怒られる二人の主君。

 

「ごめん・・」

 

「すまんの。じゃがおぬしが妾を子ども扱いするからじゃ」

 

二人は少し反省したのか、若干うつむく。

 

「ところでお姉様。こちらの方は?」

 

「うむ。え~っと・・・」

 

ニコニコ

 

劉備はニコニコ顔で美羽へと視線を向ける。

とりあえず劉備からしたら名前を覚えてもらうことが第一だ。

それも名門袁家。

 

「・・忘れた」

 

「え、えーー!?ついさっき教えたばかりじゃないですか!?」

 

「うむ。忘れたものは仕方ないのじゃ。そんなことより蜂蜜水が飲みたいのじゃ!

さ、姫羽。戻るとするかの」

 

美羽は少し考えたがすぐに結論をだした。

彼女の頭の中は戦のことなどほとんど抜け落ちていた。

とにかく今は蜂蜜水が飲みたい。

そういえば今日はまだ一杯しか飲んでいない。

帰ろうと美羽は劉備たちに背を向け歩き出そうとした。

 

「そんなことだと!!!」

 

黒髪の女性が怒り出す。

その声に美羽は驚き体を反転させた。

 

「この童(わらべ)は桃香様の名前を教えてもらいあまつさえ忘れそんなことだと!

それにその態度!貴様!どういう教育をしているのだ!

見たところ貴様の妹だろ!姉として恥ずかしくないのか!

そこに直れ童!!私が教育してやる!!」

 

「ひぃーーーー!!!ガタガタブルブル」

 

美羽はあまりの迫力に姫羽の後ろに隠れ震えている。

そして目にも少し涙がうかんでいる。

 

「童ですって・・お姉様を童?

この女・・お姉様を馬鹿にしたわね・・」

 

今度は姫羽が声を震わせ黒髪の女性をするどく睨む

 

「ひぃーーーー!!!」

 

今度は劉備が黒髪の女性の後ろに隠れる。

 

そして黒髪の女性と姫羽が互いに近寄りあい、顔をあと数センチという所まで接近させる。

二人の身長はほぼ同じ。

互いににらみ合う。

いつ斬りかかってもおかしくない。まさに一触即発。

 

その状況に劉備も美羽も黙って震えながら見守るしかなかった。

 

だが突如としてそのにらみ合いは収まった。

 

「はいはい、そこまでだお前ら」

 

「公孫瓚・・」

 

「白蓮殿・・」

 

公孫瓚が二人の間に突如として割って入ってきたのだ。

 

「たく愛紗、お前も少しは短気を治した方がいいぞ?

それじゃいつか身を滅ぼす。

お前がつっかかった相手はあの傾国の美女、袁燿だぞ?」

 

「え、袁燿!?あの袁家の・・絶世の美の・・」

 

姫羽はそういわれ得意げにフフンと髪をなびかせる。

 

「だが袁燿。お前もだ。

どうせお前の事だ、あらかた袁術のことで何か言われて腹が立ったんだろ?

いい加減姉馬鹿を治せ」

 

「そ、そういわれてもお姉様をこんなにも!

ほら、お姉様かわいそうにこんなに震えて・・」

 

そういって姫羽は美羽を抱きしめる。

 

「まあ・・見ても通り袁燿はこんなやつだ。

姉を溺愛していてな。だから・・ちょっとは多めに見てやってくれ」

 

「はあ~・・わかりました。

確かに私も短気が過ぎたのかもしれません。

袁燿殿。私は関羽。同じ姉を持つ妹の身としてお互いに思うところあるでしょう。

どうか無礼をお許しください」

 

そういい関羽は姫羽のもとへ歩み寄り頭を下げた。

 

「私こそ少し頭に血が上りすぎていました。

劉備殿、驚かせてしまい申し訳ありません。

そして関羽殿こちらこそ恥ずかしいところをお見せしました」

 

姫羽も二人に向け頭を下げる。

 

「これにて一件落着だね~♪」

 

二人が頭を下げたところを見た劉備は突如朗らかな声でそういった。

その声を聞いた二人からは完全に怒りは消え、二人は顔を見合わせともに笑いあった。

 

「劉備殿は良き才を持っていますね。

貴女のその性格、笑顔、民を導くものとしてはどうしても手に入れたい才です」

 

「そ、そんな~私なんてたいしたことありませんよ!」

 

そう言われた劉備は顔の前でブンブンと慌てて手をふる。

その行動を見た姫羽は再び笑った。

 

「フフフ、さ。お姉様そろそろ戻りましょう。

軍議に間に合わなくなりますからね」

 

「う、うむ!その前に蜂蜜水じゃ!」

 

「はいはい。それでは失礼します」

 

そして二人はこの場を去った。

途中姫羽は後ろに振り返ると劉備はまだ手を大きくブンブンと振っていた。

そして姫羽も一度手を振り替えし、そしてまた歩き出す。

 

(劉備・・なるほど。あれが義勇兵だけで生き残れた力か。

天然で備えた仁徳といったところかしらね。

彼女はひょっとしたら大きな敵に成りえるかも知れない・・)


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