もしも袁術に妹がいたら   作:なろうからのザッキー

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呂奉先

汜水関が落ち、董卓軍は虎牢関へと撤退していった。

連合軍による汜水関の内部調査を行ってみるも、食料、金品、武具などは全て無くなっており、どうやら引き上げる際に全部もっていったのだろう。

汜水関には華雄と張遼がいたという報告があったため、張遼は華雄が出撃した後すぐに引き上げたのだろう。

姫羽と七乃は袁術軍の陣営で捕らえた華雄に尋問していた。

華雄は今、両手を後ろで縛られ、足も縛られている状態だ。

 

「では貴女に聞きたいことがあります。

私たちに降る気はありませんか?」

 

「ふざけるなよ。私の主は董卓様だけだ!

私をそこらの安い者共と一緒にするな」

 

「あら~ご自分がこんな立場でもたいした度胸ですね」

 

華雄の口調はとても厳しいものであった。

簡単に降れと言った姫羽に対して怒りが募ったのだろう。

それだけで華雄の忠義が見て取れる

 

(華雄の忠義はたいしたものね。

困ったわ・・うちは優秀な将が少なすぎる。

実質七乃と私しかいないのよね。

どうしても華雄が欲しいけど今は華雄を説得するのは無理。

諦めるしかないか)

 

姫羽は現段階での華雄の説得は無理と判断した。

喉から手が出るほど欲しい将だが焦っても仕方がない。

 

「ごめんなさい。貴女の義を軽く見てしまってたわ。

では、質問をします。洛陽は今どのような状態ですか?」

 

「何故貴様に答えねばならん。

答える義務など毛頭ない」

 

「何故そこまで董卓に忠義を誓うのですか?

董卓は悪逆非道、帝を傀儡にし、洛陽で悪政をおこなっているのでしょう?」

 

その言葉を聞いたとたん華雄の目の色が変わった。

 

「貴様ー!!殺してやる!!

董卓様を悪逆非道だと!?ふざけるのも大概にしろ!

あのお方はとても優しいお方だ!

悪政どころか民にも慕われ、末端の兵にまで気をかけておられるのだぞ。

そんな方に貴様らは寄ってたかって連合を組み、あまつさえ・・・くだらぬ噂を・・」

 

華雄の目は濡れていた。

光を反射しキラキラと輝く美しい涙。

決して偽りのものではないだろう。姫羽はそう判断した。

ならば・・、隣にいる七乃が口を開く。

 

「董卓さんは権力争いに飲まれたという事ですね。

そしてこの騒動は董卓さんが処刑されるまで終わらないと思います」

 

「華雄・・」

 

華雄の気持ちが伝わったのか姫羽の表情も曇る。

ここまで忠義を誓っている相手が権力争いによって処刑されるかもしれないのだ。

悪性の事実などなく、冤罪なのだ。

華雄も状況を理解しているのかあれからずっと泣いている。

 

「姫羽様・・」

 

「七乃、今は華雄を一人にしてあげましょう。

私たちには私たちの負けられない戦いがある。

今は目の前の虎牢関よ」

 

姫羽と七乃は華雄を一人にしてあげる事にした。

そして二人は歩きながら話す。

 

「七乃。私たちも前方に出るわよ」

 

「え!?洛陽まで後方で待機するんじゃないんですか?」

 

突然の方針の変更に七乃は困惑した顔をする。

 

「最初はそう思っていたけど・・

やっぱり将がどうしても不足しているのよね。

この反董卓連合のあとのことを考えると・・」

 

「そうですよね~、やっぱり避けられませんよね。

いずれ必ず来る戦い。そのためには人材が少なすぎますよね」

 

「ええ。それで・・」

 

「呂布・・ですか?」

 

七乃の表情が急に真剣に為る。

その顔を見た姫羽はすこしバツが悪そうに視線をそらす。

 

「ダメです。呂布は危険すぎます」

 

「やっぱりそうかしら?」

 

「当たり前です。呂布の相手なんてしてはいけません。

ほっとけばいいんですよ!

どうせ曹操さんとか孫策さんあたりも同じことを考えてますよ。

そしてあの人たちは呂布にこてんぱんにやられるのを待ちましょうよ。

そうすれば私たちに被害は無く、敵になりえる人たちに損害がでます」

 

そしてそう七乃に進言されたときに美羽がいる天幕に到着した。

二人が戻ってきたのを確認すると美羽が二人に近寄ってきた。

 

「姫羽~七乃~どこに行っておったのじゃ?

妾を一人にするでない。退屈で退屈で死にそうじゃったぞ」

 

「美羽様申し訳ありません。

ほ~ら、だっこしましょうね~」

 

「これ!妾は大人じゃ!そこまでせんでよい!」

 

「あ~照れてる美羽様もやっぱり素敵ですねー!

いよ!かわいいぞ!この小悪魔、腹黒!美羽様!」

 

「もっともっと褒めるのじゃ~!」

 

二人がいつもの漫才を繰り広げているころ。

その場には姫羽の姿は無かった。

 

姫羽は馬に跨り百人ほどの部隊を率い前方へ進軍した。

百人程度の小規模な部隊であれば他の軍団の邪魔にもそうならないだろうと判断した。

 

「私たちはこれより先陣部隊に追いつく。

私たちもここで手柄を上げ袁術軍の名を天下に知らしめましょう!

誰かある!」

 

「はっ」

 

「いそぎ先陣の軍団に通達してください。

袁術軍の袁燿が百名ほどを引きつれ貴方たちとともに戦いますと。

そのため混乱せぬようにと」

 

「御意」

 

そう告げられた兵は急ぎ前方へと馬を走らせていった。

姫羽たちが到着するころにはすでに激しい戦闘が行われていた。

 

「報告します!どうやら呂布と張遼の部隊が打って出てきた模様!」

 

「なるほど・・確かに彼らは援軍の可能性などない孤立無援。

ならば篭城せず打って出てきた方がいいと判断したようね。

出るわよ!諸侯たちに袁家の威光を知らしめるわよ!」

 

姫羽たちは勢い良く前方へとでる。

そしてそこで戦っていたのは

 

「・・弱い」

 

赤毛の背の高い女であった。

姫羽も背が高い方であるが彼女の方が少し大きいようだ。

だが今はその背の高さがさらに大きく見える。

 

(何・・この威圧感・・勝手に体が凍りつく)

 

「・・次はお前?」

 

(この迫力・・覇気・・そして彼女の周りだけ死体が多すぎる)

 

「その武、呂奉先殿とお見受けします」

 

コク

 

彼女が一度頷く。

どうやら彼女があの呂布で間違いないようだ。

その事実に姫羽は体が凍りつきながらも心がざわつく。

 

(呂布。あの天下無双の・・戦いたい!今なら戦える!

私の武が天下に通用するかここで試してみせる!)

 

「私は袁術軍、袁公路が実妹袁燿!

貴女に一騎打ちを申し込みます!

この私の武をごらんあれ!!」

 

姫羽が双剣を構える。

 

「・・来い」

 

「ならば推してまいる!」

 

姫羽が呂布へと走りより右手は上から下へ、左手は左から右へとそれぞれ違う軌道で斬りつける。

 

「・・甘い」

 

だが呂布は方天画戟を円を書くように振り回しその攻撃を防ぐ。

彼女にとってはそれは防御の体制であろうが姫羽にとっては違った。

 

(なんて重い・・こちらの武器が吹き飛ばされそうだったわ)

 

呂布の豪腕は並のものより遥かに抜きんでていた。

そういえば聞いたことがある。

呂布は三万もの黄巾兵を打ち破ったと。

普通であれば体力が持たない。

実際に三万人を斬ったわけではないにしろ追い払ったのだ。

追い払えるほど体力など持たないだろう。

だが彼女はやりとげたのだ。

 

(常識が通用しなさそうね・・)

 

「ならば!この神速の攻撃についてこれるかしら!」

 

姫羽は右手と左手の双剣で横殴りの雨の如く突きを放つ。

彼女もまた才能の塊といわれるほどの人物。

体力もそこらの者たちより優れている。

その突きの速さは尋常ではない。

二本の剣で数十秒にわたる、嵐の如き攻撃。

 

「な!?」

 

「・・・・」

 

だが呂布はそれ以上であった。

今までならばこれでたくさんの将を蜂の巣にしてきたのだ。

しかし呂布は方天画戟の刃や柄をつかいすべて防ぐ。

はたして動体視力がすぐれているのか、将としての勘で防いでいるのか。

どちらにせよ彼女には通用しなかった。

 

「・・・つまらない」

 

「そ、そんな!?」

 

つまらない?

私の攻撃がつまらない?

彼女にとって私は所詮そこらの一兵卒と同じ扱い?

 

「・・・弱いものは死ね」

 

突如呂布は方天画戟を上に掲げそれを振りおろす。

 

ガキーーーン!

 

「くっ!?」

 

姫羽は剣をXの形にしその一撃を防ぐ。

だがいかんせん攻撃が重い。

彼女の手がビリビリと痺れる。

 

「・・死ね」

 

呂布が先ほどまでとうって変わって攻勢に転じた。

 

(呂布はさっきまで手加減していたの?

防御に徹して私の実力をはかり遊んでいたの?

そんな・・この私が・・・・)

 

姫羽は必死に防御に徹する。

体と同時にそれは姫羽の心までも攻撃してくる。

今まで自分は才能の塊として周りよりずっと優れてきたのだ。

常に勝つ。だが今はどうだ。

 

「ぐっ!がっ!」

 

顔を苦痛にゆがめ、必死に呂布から距離を取り、全神経を集中して攻撃を防ぐ。

まさに防戦一方。

完全に押されているのだ。

 

そして迫り来る恐怖

 

(私が・・負ける?死ぬ?)

 

もはや姫羽から勝つという概念が消えうせていた。

 

(そんな・・嫌よ!まだ・・まだお姉様と一緒にいたい!

七乃とももっと一緒にお姉様のお話をしたい!)

 

姫羽の顔が恐怖でゆがむ。

そして心から湧き上がってくる生への渇望。

 

姫羽は後悔した。

あの少し前までの意気揚々と呂布に戦いを挑みたがっていて自分を。

なんと情けない。

 

(私は・・まだ死ねないのよ・・)

 

「・・お前、よく生き残った。でももう終わり」

 

呂布が迫り来る。

姫羽は必死に周りを見渡した。

 

周りにいるのはたくさんの軍の兵ばかり。

赤や青、金や緑。

だが少しばかり緑の兵が多いようだ。

そしてその中にいた存在に気づく。

少しばかり背が高く、そして美しい髪をもつ女性を。

 

「か、関羽殿ーーーーー!!!!!!」

 

姫羽が力の限りそう叫ぶ。

呂布も突然姫羽が大声で叫んだ事で表情には出ていないが驚き、動きが止まる。

 

「その声は袁燿殿?どうされた?・・呂布!?」

 

関羽が声を聞いたのかすぐにこちらに来てくれた。

 

「関羽殿、恥を忍んでお願い申し上げます。

どうか私と一緒に戦ってください!!」

 

姫羽が頭を下げる。

 

「な!?一緒にですと!?

見たところ袁燿殿は呂布と一騎打ちをしていた様子。

呂布とはいえ二人で一人の将に戦いを挑むと?」

 

「わかっております!

武人としてそれは恥ずべき事。

ですが私は慢心しておりました。

呂布は絶対に一人で挑んではいけない相手。

どうかお力を!」

 

姫羽が力の限り懇願する。

関羽は困っているようだ。

呂布の噂は聞いている。

だがいいのだろうか?

二人で寄ってたかって一人の将に挑むなど。

 

「・・・二人まとめて来い」

 

呂布がそう言葉にした。

その言葉を聞いた関羽はそれで心を決めたのだろう。

 

「いいだろう。その意気はよし。

二人で戦いを挑む事を許可した自分の愚かさをしれ!」

 

関羽も青龍堰月刀を構える。

そして自分の力を見せ付けるように走り出し、その勢いと体重を乗せた斬撃を呂布へと浴びせる。

 

「でぇやああああーー!!」

 

「・・・弱い」

 

「なっ!?」

 

だがその関羽の気合の入った攻撃も呂布になんなく止められる。

関羽自身も今の一撃はかなり手ごたえがあるはずだが、呂布にはそれはものともしない。

普通の攻撃を受け止めるかのようだった。

だが関羽の悲しそうな表情を見たからか。

 

「・・ちょっとだけ重かった」

 

「うっ、慰めの言葉はいらん」

 

「関羽殿。私たちは二人。数の利を生かすのです」

 

姫羽は呂布の後方へと回った。

対して関羽は呂布の正面。

 

「行きますよ!呂布!覚悟!」

 

「はあああああー!」

 

今度は前方後方からの攻撃。

 

「・・効かない!」

 

だが呂布はその場で一回転するように方天画戟を振り回す。

 

「くっ」

 

「なんという力だ・・」

 

「・・まだ終わらない」

 

呂布はそのまま関羽を集中的に攻撃し始める。

方天画戟を前後左右、力の限り振り回す。

 

「ぐっ・・重い、くそっ・・」

 

「関羽殿!!」

 

各個撃破を防ぐため姫羽は呂布へと襲い掛かる。

 

「・・甘い」

 

「があ!」

 

だが、呂布はそれを防ぐ。

後方へと蹴りを放つ。

その蹴りが姫羽の腹へと辺り、姫羽はその衝撃で後退する。

 

「関羽殿・・なんとか粘ってください・・」

 

「ダメだ、このままでは持たん!

まさかここまで武に差があるとは・・」

 

関羽も呂布の武を見誤っていたようだ。

この事実に姫羽はさらに自分を責める。

七乃の言うとおり、呂布には手を出すべきではなかった。

自分よりも七乃のほうが目が肥えているようだ。

 

「このままでは・・私のせいで関羽殿までも・・・」

 

姫羽は辺りを見回す。

そして、そこで勇猛果敢に呂布の兵を倒している少女を見つけた。

今は少しでも強いものの手を借りなければ。

 

「そ、そこの者!そこの赤毛の!」

 

「うにゃ?鈴々か?」

 

「その名が真名か知らぬが手を貸してください!

このままでは関羽殿が!」

 

「愛紗がどうかしたのかー!?

わかった!いまいくのだ!」

 

そしてその赤毛の少女がこちらへとやってくる。

 

「鈴々!?」

 

「愛紗!?このー!愛紗から離れるのだ!」

 

鈴々と呼ばれる少女が呂布へと攻撃を放つ。

 

「・・軌道が甘い」

 

だが呂布はその攻撃を方天画戟で受け止める。

 

「食らえ!」

 

その隙を見逃さず関羽が突きを放つ。

 

「・・・こっちも甘い」

 

呂布はその突きを状態を逸らす事で避け、関羽へと蹴りを放つ。

 

「ぐあっ・・」

 

関羽から苦悶の声が上がる。

 

「呂布!背中ががら空きよ!」

 

姫羽はその隙を見逃さず切りかかる。

 

「・・・っ」

 

姫羽の重さよりも手数に全てを掛けた双剣の連撃。

右手左手をそれぞれまったく違う方向からの攻撃。

ついに呂布に一手を与える事に成功した。

 

「・・・死ね」

 

「ああああ!!」

 

姫羽はその攻撃を横に転がるようにしてなんとか避ける。

そこで全員の攻撃が止んだ。

 

「すみません。貴女の協力のおかげで呂布にやっと一撃を与える事に成功しました」

 

「構わないのだ!愛紗が危なかったのだ」

 

「鈴々すまんな。言っておくが呂布を他の者と同じと思うなよ。

私たちとは桁違いだ」

 

「三人でやっと呂布に手が届くようになりましたね。

今こそ呂布に膝をつかせてやりましょう」

 

「はい!呂布!名乗るのが遅れたが私は劉玄徳が一の家臣!関雲長だ!

貴様に正義の鉄槌を与えてやる!」

 

「同じく!張翼徳!観念するのだ!」

 

「袁術が実妹袁燿!貴女を武の頂から引き摺り下ろしてみせます!」

 

「・・呂奉先。三人まとめてかかってこい」

 

四人は誰も動かない。

数では圧倒的に有利なのだが呂布の武を知っているだけに下手に動けないのだ。

このままでは時間だけが無駄にたってしまう。

 

そこで姫羽が動く。

ジリジリと呂布を支点に円を描くように動き呂布の後方へと回る。

それを見て関羽もジリジリと動く。

その動きを見た呂布は張飛へと襲い掛かった。

 

「来るのだ!」

 

「・・弱いものは死ね」

 

呂布が力の限り方天画戟を上から下へと振り下ろす。

 

「鈴々!呂布の攻撃を受け止めるな!」

 

「にゃ!?わっ、とと・・」

 

張飛はぎりぎりその攻撃を避ける。

そして方天画戟は地面へと叩きつけられる。

 

「ば、馬鹿力なのだ・・」

 

クレーターのように地面には穴が大きく開く。

呂布の攻撃は重すぎる。

関羽も自分で受けてわかったのだろう。

あの攻撃を受け続けるのは手への負担が大きすぎるのだ。

 

「関羽殿!私たちは手数で攻めましょう!」

 

「ああ!」

 

二人で呂布の背中へと切りかかる。

だが尚も同じように呂布はその場で一回転するように方天画戟を振り回す。

それによって張飛、関羽、姫羽へと牽制する。

 

「ぐっ」

 

「手が・・」

 

二人はその攻撃を防ぐ。だが

 

「鈴々もいるのだー!!」

 

張飛は自分の身長の低さを生かし、しゃがみその攻撃を避けていた。

 

「うりゃりゃりゃりゃー!!!」

 

「!?・・く・・」

 

張飛の突きが呂布のわき腹をかする。

これで呂布に二度目の攻撃が通用した。

 

「はああああー!!!」

 

関羽が呂布に隙が出来ているうちに青龍堰月刀を力の限り振り下ろす。

その攻撃を呂布は方天画戟を上段に構える事で防ぐ。

 

「お腹ががら空きですよ!」

 

姫羽は呂布の腹へと突きの連打を浴びせる。

だが呂布は方天画戟を縦にして柄の部分を動かし続け防ぐ。

 

「今度は足なのだーー!!!」

 

「くうっ・・」

 

張飛が呂布の足先を斬りつける。

上段中段下段。この三方向への攻撃はさすがの呂布も対応できなかったようだ。

 

「ふふ・・さすがに貴女の顔にも焦りの表情が見えてきましたね」

 

「・・気のせい」

 

「最強を守り通してきた意地ですか?

どちらにせよ、三人いれば貴女にも通用するとわかりました。お覚悟!!」

 

三人が武器を再び構える。

だがその時

 

 

「放つのです!!!」

 

突如その場に声が響く。

呂布と三人の間に大量の火矢が降ってくる。

 

「恋殿!撤退するのです!

霞殿が敗れました!!」

 

「ちんきゅ・・わかった」

 

「お、おまちなさい呂布!逃げるのですか!?」

 

「・・それでいい」

 

そういい残し呂布は撤退していった」

辺りはゴウゴウと火が燃え盛る。

どうやらこれ以上先には進めないようだ。

 

「ふう・・」

 

三人の緊張が解ける。

 

「あ、あぶなかったのだー!」

 

張飛がごろんとその場に寝そべる。

 

「ああ。私もだ。己の武の未熟さをしった」

 

関羽もその場に座り込む。

二人ともかなり体力を消耗したようだ。

すこしだらしない格好だ。

 

「え、袁燿殿・・」

 

「え?」

 

だが姫羽はその場で正座し、懐から扇を出しパタパタと仰いでいた。

 

「綺麗なお姉ちゃんは寝そべらないのかー?

一番疲れてるんじゃないの?」

 

「私は袁家の者です。

いつなんどきでも優雅であれ。

名門たる袁家一族の品位を落とすわけにはいきません」

 

「だが・・袁燿殿のいとこの・・」

 

「麗羽姉さまにとってはあれが正解なのでしょう。

雄雄しく華麗に前進ですから。

優雅どころではすまないのが麗羽姉さまなのです」

 

なにはともあれ。

三人は疲れ果てていた。

この場からしばらく動けないであろう。

三人は忙しく消化活動に励む兵たちを見ながらしばし談笑をしていた。

 

 

 

 


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