乙女ゲームに転生した体育会系男子   作:瓜売り

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 体育大学3年生の体育会系主人公が乙女ゲームの世界に転生するというお話です。
 基本はただのギャグコメディーです。

 ぜひ、最後まで読んでいただけると幸いです。



はじまり
あと、乙女ゲームって何?


 文系か理系かと聞かれたら体育会系と答える。大学生の俺の鉄板ジョークだった。

 

 俺、圭太(けいた)は小学4年生から始めテニス歴12年。高校、大学共にスポーツ推薦で入学したスポーツエリートだ。

 

 私立相合高校、男子テニス部では部長を務め、シングルスでは全国ベスト16、ダブルスではベスト4の結果を残した。また、団体戦ではチームを全国優勝に導いている。

 

 高校卒業後はプロになる道は選ばずに体育大学に進学した。

 だが、まだプロになることを完全に諦めたわけではない。

 

 鳴り物入りで入部した関東体育大学では2年間結果を出せずに焦ったが、地道に続けたフィジカル強化トレーニングが実を結び始めていた。

 

 

 俺の躍進はここからだ! そう思っていたのに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、魔法には属性が備わっており、人によって扱える属性は……」

 

 青い髪をした女教師が短い杖を振って空中に図解を浮かべる。図は4つのマークとそれぞれの関係性が矢印で示されていた。

 

 俺はその様子を寝ぼけ眼でチラリと見ては、思わずため息を漏らす。

 

 

 

 俺の目の前で行われている授業は魔法学というらしい。どうやらこの世界には魔法というものがあり、学問として扱われているようだ。

 

 

 高校を卒業したはずの俺が、まさか15歳になってまた授業を受けることになるとは………。

 

 

 

 俺の通うウィンブル学園には、魔法学の他にも王国の歴史や政治、経済学的な授業もある。

 

 俺はこの学園に通い始めてから2か月しか経っていないが、既にほぼすべての授業についていけなくなっていた。

 

 『乙女ゲームの世界』に転生してから早2カ月――――これでも初めは元の世界に帰るためのヒントがあるのではないかと授業は真面目に聞いていたのだ。

 けれど、今では聞くだけ無駄だと悟り、放課後のトレーニングのために体力温存に励むようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 体育大学で鍛えた筋肉は見る影もなくなり、身長も高校1年生の頃と同じくらいに縮んでいた。これが転生というものらしい。

 おかげでテニスどころか、自主トレーニングでフィジカル強化をやり直す羽目になっている。

 

 

 どうせ理解できない授業を聞き流しながら、俺は改めてこの『乙女ゲームの世界』に転生してすぐのことを思い出していた。

 

 

 

 

 大学3年だった俺は夏休みを利用して久しぶりに実家に帰省していた。生まれてから18年間住んでいた自分の部屋が、いつのまにか親父の荷物置きになっていてショックだったのを覚えている。

 

 仕方がないのでゴルフ用品や釣り用具を端っこに追いやり、布団を敷いて寝た。

 そして目が覚めたらウィンブル学園の男子寮にいた。しかも15歳に若返ってだ。

 

 以上……。

 

 

 

 

 

 ああ、あと、この世界の2段ベッドで目を覚ました時、枕の横に手紙が置いてあったんだった。

 ご丁寧に小奇麗な封筒に入っており、銅色のシールで封までされていた。

 今のところ元の世界に帰る手掛かりはこの手紙しかない。

 

 

 手紙の内容はこうだ。

 

 

 

 

 

 ------------------

 

 圭太 様

 

 ようこそ乙女ゲームの世界へ。

 あなたは乙女ゲームのヒロインに転生しました。

 

 あなたが元の世界に戻る方法は一つ。

 それはこのゲームの4人の攻略対象のうち、誰か1人を攻略することです。

 

 攻略対象はこの4人です。

 

 第一王子 ラファエル

 第二王子 アンディ

 執事   ノバク

 生徒会長 ロジャー

 

 あなたが誰を選び攻略するのか。

 あなたの物語を見届けます。

 

 ------------------

 

 

 

 

 

 この手紙の内容を信用しているわけではないが、今のところ元の世界に帰るための手掛かりはこれしかない。

 

 それにしても……、ヒロインに転生って何?

 俺、男だよ? ヒロインって男でもいけるのか!?

 

 

 

 あと、()()()()()()()()

 

 

 

 俺は今までテニス一筋だったから、ゲームというものを余りしてこなかったのだ。

 マ〇オとドラ〇エは小学生のころに少しだけやっていたが、それ以外のゲームはほとんど知らない。

 

 大学生になって初めてスマ〇ラをしたが、あまりに下手すぎて部活仲間にバカにされたことならある。そのあと麻雀で倍返しにしてバカにし返したのはいい思い出だ。

 

 話がそれてしまったが、ゲームに詳しくない俺は当然乙女ゲームがどんなゲームかは知らない。

 ―――知らないが、このゲームの世界で攻略対象4人のうち誰か1人を攻略しないといけないらしい。

 

 

 

 

 ところで、攻略とは何をすればいいのだろうか?

 

 数少ないゲーム知識を振り絞ってみる。

 

 マ〇オもドラ〇エもそうだったが、最後は魔王を倒してゲームクリアだった。つまり、ゲームにおいて攻略とは倒すという意味だろう。

 

 だとすれば、俺はこの4人のうち誰かを()()必要があるということになる。

 

 そうと分かれば、あとはどの程度までボコボコにすれば(こうりゃく)したことになるかが問題だ。

 

 最悪、攻略対象の命を奪う必要があるのではないかと嫌な想定も頭をよぎる。いくらゲームの世界とはいえ殺人はしたくない。

 ただ、乙女ゲームという名前なのだから女の子もプレイするはずだ。であれば、流石にそこまでしなくても攻略したことになるだろう。

 

 なので俺は攻略対象4人の内、誰かと喧嘩をして殴り勝てばゲーム攻略になる――――と考えている。

 

 

 

「誰か一人を殴るなら……… 執事のノバクだな」

 

 ぼそりと独り言が漏れる。

 

 

 そもそも、俺は4人の攻略対象の内、ノバク以外には会ったことすらない。

 

 それに、この世界に転生してからの2か月間で、ノバクの態度には思うところがあったのだ……。

 

 

 ノバクという男は同級生にして俺の執事だ。なんでも、俺がこの学園に入学する直前に俺の親父によって雇われたらしい。

 もちろん親父というのはこの世界での親父―――つまりは赤の他人にあたる。

 

 そして、ウィンブル学園は全寮制で2人1組の相部屋なのだが、ノバクは俺のルームメイトでもある。

 

 

 そんなノバクだが性格は性悪で、端的に言えば『ドS』なのだ。

 

 

 執事なのに俺の身の回りの世話は一切しないし、俺がピンチに陥ると颯爽と現れて、ニヤケ顔でその様子を眺めにくるのだ。

 

 今朝だって、寝坊している俺を余所に自分だけブレザーに着替え朝食をとり、今から起きても絶対に間に合わないというタイミングを見計らって起こしてきた。

 

「おはようございます主君。今朝の朝食は美味しいパンケーキでしたよ。今なら学食も空いているのでぜひゆっくり味わってください。では、私は授業がありますので」

 

 

 そう言って、パジャマ姿の俺を置いて部屋を出たのだった。――――俺だって授業あるわ!!

 

 ……ちなみに、パンケーキは確かにおいしかった。どうせ授業に間に合わないからと、誰もいない学食で6枚も食べてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――と、いつの間にか魔法学の授業は終わっていたらしい。教室からぞろぞろとクラスメイト達が出ていく。

 

 ノバクを攻略すると決めた俺は、教科書を学生バッグにつめて寮の自室に向かった。

 

 

 今朝の寝坊の件について本当はもう怒っていない。そもそも朝起きるのが遅い自分が悪いからだ。ただ、今回はノバクを攻略する(喧嘩を売る)こと自体が目的だ。

 

 

 

 自室の前に辿り着いた俺は、扉の前に立つとわざと眉をひそめ目つきを悪くする。

 

 そしてドアノブを回し、叫びながら扉を開けた。

 

「おいノバク! てめぇコラ! ワレェ…」

 

 喧嘩腰で勢いよく部屋に入ったが、部屋のテーブルに置いてあるものを見て勢いが止まる。

 

 ―――テーブルには白く細長い布が敷かれており、その上に小さな刃物が10本近く並んでいたのだ。刃物の種類はナイフだけでなくクナイや手裏剣もある。

 クナイや手裏剣を見るのなんて、小学校の修学旅行で忍者村に行って以来人生2度目だ。

 

 

 

 テーブルの前に座っていたノバクは俺の声に驚いた後、バツの悪そうな顔をする。

 

「主君、帰られたんですね。 …すみません、テーブルの上を散らかしてしまって。」

 

 今片づけますね、と言いながら慌てて刃物類を服やズボンの隙間にしまう。

 

 突然の刃物展覧会に面を食らった俺はか細い声で問いかけた。

 

「ノバク、えっと、今の刃物は…?」

 

「いえ、その…」

 

 ノバクはバツが悪いようで少しの間顔をそむけたが、観念したのか目を合わせる。

 

 

「暗殺用の武器となります」

 

 

 暗殺…

 

 そうか暗殺か。

 

 確かにナイフはともかく、クナイや手裏剣なんてほかに使い道はないよな。うんうん。

 

 

 

「えっと、その、なんだ。 暗殺って執事の仕事だったりするのか?」

 

「いえ、流石に執事は暗殺の仕事などしませんよ。暗殺はその……私の趣味のようなものです」

 

 

 そうか、趣味か……。

 

 そうかそうか。暗殺が……。

 

 

「ところで主君。部屋に入りながら私の名前を叫んでいましたが何か御用ですか」

 

「ん? その、なんだ… 今朝のホットケーキ、ノバク君の言う通り美味しかったよと伝えたくてな」

 

「はあ、そうですか。ところでそのノバク君という呼び方は…」

 

 俺はノバクの言葉を無視し2段ベッドの下の階に潜り込む。

 

 

 

 さて、攻略対象は残り3人に絞られた。……これからどうしよう!?

 

 




 最後まで読んでいただきありがとうございます。
 登場人物の名前にとんでもなく見覚えがあるかもしれませんが、実在する人物とは一切関係ありません。
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