乙女ゲームに転生した体育会系男子   作:瓜売り

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麻雀編突入!!
麻雀のルールが分からない方でもきっと、多分大丈夫!!


麻雀編①
次からはちゃんと相談するよ


 7月も初旬になれば、夏が本格的に訪れたといってもいい暑さになる。

 

 カーテンの隙間からこぼれる朝日を浴びて、思わずタオルケットで顔を覆う。

 どうやら今日も絶好のテニス日和のようだ。

 

「主君、いつまで寝てるんですか。もうすぐ授業が始まりますよ」

 

 ドS執事に体を揺らされた俺は、少しだけ抗った後、寝ぼけ眼を擦りながら二段ベッドから這い出る。

 

 

 今日もまた、この乙女ゲーム世界での楽しい一日が始まるのだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒会に呼び出されたんだけど! 俺何かしたかな!?」

 

 放課後の教室で、俺は前の席に座っているマリアに相談していた。

 

 少し前の休み時間にクラス委員長からその件を伝えられたのだが、俺には全く覚えがなかった。

 いったい何の用で生徒会が俺を呼び出しているのか、皆目見当がつかない。

 

 今朝起きた時は楽しい一日の予感に満ち溢れていたが、今は憂鬱で面倒な一日になる気がしてならない。無視して部活動に行ったらダメかな……。

 

 

 俺に声をかけられたマリアは、一瞬ちらりとこちら振り返った後、プイっと背を向ける。

 

「さあ? 知らないわ」

 

 随分と素っ気ない返事が返ってきた。

 

 

 ……あ、あれ??

 

 

「もしかして、マリア怒ってる?」

 

「別に、そんなことないよ」

 

 マリアは背を向けたまま淡々と答える。

 

 

 元の世界で俺は"察しが悪い"だとか、"女心をわかってなさそう"などと評価されることが多かった。

 しかし、さすがの俺もこのセリフを聞いて、「そっか、怒ってないのか」―――と思えるほど鈍感ではない。

 

「もしかして、俺なんかやっちゃった?」

 

 今度は返事がない。

 

 

 

 ああ、このパターンか。俺はこの女性特有の怒り方に覚えがあった。元の世界にいる妹と同じタイプの怒り方だ。

 

 俺の妹は、俺より3つ歳下だった。歳が離れていることもあり、あまり喧嘩になることはなかった。だが、その分妹が一方的に不機嫌になることはよくあった。

 「別に何でもない」だとか「怒ってない」と素っ気ない態度で言うのだが、その言葉を鵜呑みにして放置していると段々と怒りがヒートアップするため後が怖いのだ。

 

 一度、妹が小学校高学年のときに怒りが爆発したことがある。当時中学生だった俺と親父は居間で正座をさせられ2時間近く延々と捲し立てられた。

 

 よく2時間も怒り続けられるなと関心をしたものだ。

 

 それ以来、妹が不機嫌なときは俺と親父がじゃんけんをし、負けた方が怒っている原因を聞きだして対処する、いわゆる爆弾処理を行うようにしていた。

 俺が大学生になり一人暮らしを始めてからは親父が1人で爆弾処理を請け負っているらしい。

 

 …親父、ご苦労様です!

 

 

 

 

 俺はマリアに対し、対妹で習得した爆弾処理作戦を遂行することにした。その名も『下手に出て、ひたすら聞き役になる』作戦だ。

 

 

「なあマリア、俺、鈍感だからわからないんだけど、何か怒らせるようなことをしたなら謝りたいんだ。だから、怒っている理由を教えてくれないか?」

 

 

 妹の場合ここからが情報を引き出すまでに時間がかかる。けれど、妹と違いマリアはあっさり話してくれた。

 

「ケイ君、1週間くらい学校休んでたじゃん? お父様が亡くなったって聞いてたから、私凄く悩んだんだよ。それなのに実は仮病で、しかもその後すぐにアンディ様と決闘してたでしょ。

 もう少し、私に相談とかしてくれてもよかったんじゃない?」

 

 

 どうやら、俺が山籠もり合宿を決行している間、マリアはずっと俺を心配してくれいていたようだ。

 決闘の件はマリアに相談する暇がなかったとはいえ、いつも相談に乗ってくれるマリアにいらぬ心配をかけてしまった。これは100%俺が悪い。

 

 俺は誠心誠意マリアに謝罪することにした。

 

「そうだよな、本当にごめん。俺もマリアに相談したかったんだけど、色々とタイミングが合わなくてさ。次からはちゃんと相談するよ」

 

 …あと、爆弾扱いしてごめん。

 

「わかってくれればいいよ。私はさ、ケイ君のこと親友だと思ってるから、できれば何かあった時に知っておきたいんだ」

 

「うん、本当にごめん」

 

 こうして俺はマリアとは仲直りができた。よかった、これで心配事はなくなった。

 

 

 

「ところで、ケイ君。生徒会に呼び出されたんだって?」

 

 まだあったな、心配事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はすっかり忘れていた本題に入る。

 

「そうなんだよ。放課後来てくれって言われててさ、でも心当たりが全然ないんだよな」

 

 俺の話をきいたマリアは眉をひそめる。

 

「いや、あるでしょ。心当たり。仮病で1週間学校を休んで、その後にこの国の王子様と決闘したんだよ。呼び出されない方がおかしいよ」

 

「それはそうだけどさ… その場合、普通は職員室に呼び出されるんじゃないのか?」

 

「他の学校ならそうかもね。でもうちの学園って生徒会の権力が強いでしょ? だから、その件で生徒会に呼び出されても不思議じゃないと思うよ」

 

 そうなのだろうか?

 

 元の世界の学校では、仮病で休んだり決闘したとしても生徒会に呼び出されるなんてことはなかったはずだ。

 

 …そもそも決闘した生徒なんて見たことないけれど。

 

 

 

 

 ふと、このゲームの世界の攻略対象の中に生徒会長がいることを思い出した。

 

 名前は、確か"ロジャー"だ。どこぞやの海賊王みたいな名前だったから憶えている。

 

 

 俺はマリアに"ロジャー"はどんな人なのか聞いてみようかなと思った―――がしかし辞めておいた。

 今更、最後の一人の攻略対象について知ったところで、攻略方法がわからなければ意味がない。

 

 この前の決闘で俺はアンディのことを真正面から殴り倒しが、それでも"アンディを攻略した"という判定にならなかった。

 俺の中の最有力候補であった『攻略=殴り倒す』が否定された今、このゲームの攻略方法がいよいよ分からなくなってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 そんなことを考えていると、なぜかマリアは自分からロジャーの話をし始めた。

 

「ケイ君のことだから、生徒会長のロジャーさんのことも知らないんじゃない? ロジャーさんはね、2年生でこの学園の生徒会長になった凄く優秀な方だよ。

 ただね、噂だけどロジャーさんは魔法が使えないんだって。この学園で魔法が使えないなんて珍しいよね。ケイ君も魔法が使えないから、もしかしたら仲良くなれるかもだよ」

 

 …だそうだ。

 

 魔法が使える人同士なら話は盛り上がるだろうが、使えない人同士で何を話すんだよ。

 

 

 

 今更四人目の攻略対象に会ったところで仕方がないのだが、生徒会室に呼び出された以上、無視をするわけにもいかない。

 

 俺は生徒会室に向かうことにした。

 

「ありがとな、マリア。また何かあったら相談するよ」

 

「うん、またね」

 

 荷物をまとめ教室から出ようとした直後、後ろからマリアが声をかけてきた。

 

「そうだ、ケイ君!」

 

 立ち止まって後ろを振り返る俺に、マリアはなぜか得意げに追加情報を提供してくれた。

 

「ロジャーさんもね、イケメンだよ!」

 

 

 …だから、それはどうでもいいって。

 

 




2026/4/20 加筆により麻雀編①が一話増えました。
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