生徒会室の扉を開けると、そこには四人の学生がいた。
「失礼します、1年B組のケイタです。あの、生徒会室に来いと呼び出されたのですが」
誰に声を掛けたらいいかわからなかったので、何となく部屋全体に名乗る。
すると、テーブル席に座っていた一人が立ち上がった。彼はクラスメイトの"カルロス"だ。俺のクラスの学級委員長にして、俺を生徒会室に呼び出した張本人である。
「おお、ちゃんと来たかケイ!」
カルロスは俺が来たことに反応すると、後ろの大机の前に座っている水色髪の少年に声をかけた。
「会長、こいつは俺のクラスメイトで、あの噂のケイです」
あの噂の? 噂って何だよ、不穏な枕詞をつけて紹介するなよ。
「初めまして、君が噂のケイ君だね。僕はこの学園の生徒会長のロジャーだよ。よろしくね」
どうやらこの水色髪の少年が生徒会長の"ロジャー"のようだ。
ロジャー、いやロジャー先輩は2年生なので俺より先輩にあたる―――が、どうにもそうは見えない。
少年のような可愛らしさの残した顔に小柄な体型、穏やかそうな雰囲気を全身で醸し出している。
…しかし、今まで金髪や銀髪の人も見てきたので慣れたつもりだったが、水色の髪は実際に近くで見るとインパクトが凄い。
前々から思っていたが、この学園は生徒の髪の色がカラフル過ぎる。元の世界の生徒指導教師が見たら指導を諦めて辞職するレベルだ。
ロジャー先輩は席を立ち、こちらに歩みよってきた。
「君の噂はそこのベルティや、あとはラファエルからもよく聞いているよ。ラファエルは僕の友人なんだけど、彼は最近君の話題ばかり話してくるんだ」
どうやらロジャー先輩はラファエル先輩から俺の噂を聞いていたらしい。
嫌な予感しかしない…。
ラファエル先輩とは、チェスでボコボコにされた後、アンディとの決闘を止めに入った彼を言い負かし、挙句に彼の目の前で弟を殴り倒したのだ。
ラファエル先輩は表情や態度にこそ出さないが、俺のことを嫌っているに違いないだろう。
正直、テニス部の練習中も出来るだけ関わらないように気を付けているところだ。
ロジャー先輩は近づいて俺の顔をじっと見つめてきた。
「あの… ロジャー先輩?」
「ああ、ごめんね、じっと見つめちゃって。ただ、君のことが少し気になってね。もしかしたら君は僕と
ロジャー先輩は意味深なことを言った。
…同じ側?
俺と同じ側ということは………、つまりこの先輩も体育会系なのだろうか。
初対面の印象は優しそうで穏やかそうだったのでそうは見えないが、本当はバリバリのアスリート気質なのかもしれない。
もしくは、中学時代"独裁者"と呼ばれた俺のように、スパルタ教育上等のリーダーなのだろうか。
「うん、やっぱり君は僕と同じな気がする。どうだいケイ君、君も生徒会に入ってみないかい?」
ロジャー先輩はなぜか俺を生徒会に勧誘しだした。
「すみません、興味ないです」
当然、俺は即答で断る。
ロジャー先輩には申し訳ないが、俺は生徒会の活動などしている暇はない。
このゲームの世界を攻略する方法はわからないままだが、それでもいつ元の世界に帰っても困らないようにテニスの練習は欠かせないのだ。
申し訳ないが、そういう活動は文化部の人たちで勝手にやっておいてくれ。
ロジャー先輩は俺の返事を聞いて「そうか」と頷いた。
「わかったよ。じゃあ、生徒会メンバーと活動内容について紹介するね」
そう言うと、ロジャー先輩は生徒会の説明をし始めた。
あれ? 俺、ちゃんと断ったよな…?
「まずは彼が"スタン"。生徒会の副会長さ」
ロジャー先輩は大机の近くに立っている男を指さした。スタンは身長は2m近くある大男でガタイがよく、寡黙そうな雰囲気を醸し出している。まるでボディーガードのような男だ。
「次に、彼女が"ミルカ "。彼女は魔法関係の問題や相談事を担当している、マジカル書記だ」
会長、副会長に次いで、急にファンシーな名前の役職がでてきた。マジカル書記ミルカ、…なんだか魔法少女のアニメに出てきそうな名前だ。
ミルカはオレンジ色の髪を伸ばしたかわいらしい見た目をした女子生徒だった。
「最後にカルロス、君のクラスメイトだったよね。彼は国や地域からの依頼を管理している、外交書記をしているんだ」
今度は、まるで政治家の役職名のようだ。
ロジャー先輩はパンッと手を叩き「以上の四人だよ」とメンバー紹介を締めくくった。
「僕たち生徒会は、学校の行事を取り仕切ったり、国や地域からの依頼をこなしている。あとは、学生達が風紀を乱したり、問題を起こしたりしないように監督もしているんだ」
「はあ、そうですか」
俺はロジャー先輩の説明に対し適当に相槌を打つ。
生徒会に興味なんてないからさっさと要件を済ませたい。
「ところで、ロジャー先輩。俺はいったい何の用でここに呼び出されたんですか?」
「ああ、そうだったね。君への要件はモンスター討伐の報酬の受け取りの話さ」
モンスター討伐の報酬?
俺は「覚えがないですよ」という言葉が口から出そうになった―――がふと思い出した。
確か山合宿の時にノバクがモンスターを倒せば報酬が出ると言っていた気がする。
「これが今回の報酬だよ。ノバク君はもう受け取りに来たから、これは全部君の分だよ」
そう言ってロジャー先輩はお札の束を渡してきた。この学園で独自に発行している1万ドン札だ。それが札束として束ねられている。
「今回、ノバク君と君とで合計200万ドンの報酬だからね。君とノバク君に半分ずつ渡しているよ」
俺は手渡された札束を改めて見る。
200万の半分ということは、この札束は100万ドンもあるということだ!
「……おええ! 100万ドン!? こんなにもらっちゃっていいんですか!?」
その札束の余りの分厚さに、思わず変な声が漏れてしまった。
俺が驚いていることに対し、ロジャー先輩は逆に驚いたようだ。
「あまり相場と変わらないはずだよ? 業者に依頼すればもっと高くつくからね」
そうだったのか。どうやらモンスター退治というものは儲かるらしい。
この世界に転生してからお金を欲しいと思ったことがなかったが、最近ちょうど欲しいものができたばかりだった。
そう、俺が欲しいのは"自分用のテニスラケット"だ。
以前、お蝶先輩と試合をして負けたのだが、その敗因の一つは部室にあるレンタル用ラケットを使っていたことだと思っている。
道具を言い訳にするなよと言われるかもしれないが、やはり良いプレーをするには良い道具は必要だ。
「随分と嬉しそうだね、もしかして何か買いたいものでもあったのかな?」
札束を嬉しそうに眺める俺を見てロジャー先輩は提案をしてきた。
「実は生徒会の手伝いをすると内容に合わせて報酬がでるんだ。もし、もっとお金が必要ならケイ君も生徒会の手伝いをしてみないかい?」
欲しいものはテニスラケットだけだったので、別にこれ以上稼ぐつもりはないが、興味が湧いたので一応聞いてみた。
「生徒会の手伝いって、どんなのがあるんですか?」
「そうだね、例えば非公認部活動の取り締まりかな。この学園では度々、生徒会の認可を得ていない怪しい部活動が活動しているんだけど、学園内の風紀の為にも我々生徒会はそれらの正体を暴いて解散させる必要があるんだ」
なるほど、怪しい部活動か…
俺は一つ、ものすごく心当たりがあった。
「あの、魔法劇薬部って部活動があると聞いたんですが、それって非公認部活動ですよね」
山合宿でノバクが謎のドリンクを作ってもらってた部活動だ。かなりインパクトの強い名前だったので覚えている。
「魔法劇薬部? ああ、あの部活動はちゃんと生徒会の認可を得ているよ」
「得てるの!? …魔法劇薬部って生徒会公認だったのかよ!!」
思わずツッコんでしまった。魔法劇薬部で公認が下りるのなら、もう他の非公認部活動も放っておいていいだろ。
俺はロジャー先輩の誘いを再度断って1万ドン札の札束を手に生徒会室を後にした。
さっそくラケットを買いに行くぞ!!
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生徒会長ロジャーのルートは生徒会室に呼び出されるところから始まる。
初めにロジャーから生徒会への勧誘を受けるが、それは受けても拒否してもあまりストーリー上の変化はない。
生徒会長のロジャーには秘密がある。
実は、彼は魔法が使えないのではなく、『闇魔法の使い手』なのだ。
ロジャーは恵まれない家庭環境に加え、闇属性のため周囲からは「呪われている」や「疫病神」と呼ばれながら幼少期を過ごしてきた。
いずれ、
そのとき、ロジャーは
圭太が今までの攻略対象と上手くいかなかったのは、優秀な攻略対象達と対峙した時に彼のプライドが邪魔をしてしまうのが原因かもしれない。
「男の人って、変にプライド高いからなあ… でもロジャーさんは他の攻略対象と違って守ってあげたくなる系の人だからね」
今度こそ圭太も、攻略対象のイケメンの魅力に気づくだろう。
マリアはニヤリと微笑んだ。
ケイが「生徒会は文化部が勝手にやってろ」的なことを言ってますが、気にしないでください。
次回もよろしくお願いいたします。