乙女ゲームに転生した体育会系男子   作:瓜売り

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テニス編① 堂々完結!!


…よろしくって?

 私立相合高校は男子、女子と共にテニスの超強豪校だ。

 

 春の選抜、夏の選抜、そしてインターハイ。日本の高校テニスにおける全国大会で男女ともに最多優勝を誇るほどだった。

 

 そんなテニス部の練習メニューの中には、ごく稀に男子と女子とで試合をすることがあった。これは女子テニス部のための練習となる。つまり俺たち男子は女子の練習相手という位置づけだ。

 

 日本人は体が小さく、世界にでると相手プレイヤーのフィジカルの強さに驚かされる。だからこそ、女子テニス部員は仮想"世界レベルのフィジカル"として男子テニス部員と試合をするのだ。

 

 俺は女子テニス部員と関われる数少ないチャンスだったのでドキマキしたのを覚えている。

 もちろん、期待していたようなことは何も起きなかったが。

 

 

 女子テニス部員とは合計3試合した。結果は6ー1,6-0,6-2。

 俺の3連勝で終わった。

 

 この話は決して「俺ってめっちゃ強かったんだぜ!」という自慢話ではない。

 当然、対戦相手の女子も全国強豪校のテニス部員だ、彼女たちが弱いというわけでもない。

 

 これはスポーツにおいて、男女のフィジカルというのはそれだけレベルが違ってしまうという話だ。

 

 技術や戦略はフィジカルのレベルがある程度釣り合わないと発揮できない。

 

 このフィジカルの差ことが、オリンピックやワールドカップ、4大大会、ほぼ全てのスポーツ大会で男女が別競技として扱われる理由となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――なんて考えていた時期が俺にもあったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 つい数分前まではこの試合をリハビリ代わりにして、パワーは控えめの技術戦に持ち込もうと考えていた俺だったが、そんな思考は完全に捨て去っていた。

 

 

 やらなきゃ……やられる!!

 

 

 サービスライン上に立った俺はラケットを強く握る。

 

 あんなジャンプサーブを見せられたんだ、こちらもお返しをしないと気が済まないというものだ。

 

 

 俺はラケットを上方に振り上げると、高い位置に上げたテニスボールの正面側を強くこすりつけながら相手コートにねじ込んだ。

 

「あら、スピンサーブね」

 

 お蝶先輩は俺のサーブの弾道を予測し、瞬時に移動してフォアハンドリターンの構えをする。

 

 ―――――直後、俺のサーブはワンバウンドしてお蝶先輩の予想した軌道から大きく右にずれて跳ね上がった。

 

「ひゃッ!」

 

 お蝶先輩は咄嗟にラケットを出して顔を守る。

 

「今のサーブはいったい…」

 

「ふふふ、今のはツイストサーブですよ、先輩!」

 

「ツイストサーブですって!?」

 

 お蝶先輩の反応を見るに、どうやらこの世界でもツイストサーブは珍しいらしい。テニスの王〇様の主人公に憧れて以来ずっと磨き続けた甲斐があるというものだ。

 

 ツイストサーブはスピン系の跳ねるサーブだが、スピンサーブとは違いリターンから見ると左方向―――つまりは、フォアハンドでリターンしたお蝶先輩の()()()()()()()飛び跳ねるサーブなのだ。

 

 

 そんなサーブを女子相手に本気で打つなって?

 

 ……やかましい!! 本気の勝負に男子も女子もあるかぁ!!

 

 

 

「ツイストサーブ…。面白いですわね」

 

 お蝶先輩は闘争心に燃えた目をギラつかせる。そうだよな、本気の勝負はこうでなくちゃ。

 

 

 俺の打つツイストサーブはスピンサーブと同様に跳ねるため相手を後方に下げる効果がある。また、空中や着弾時に大きく曲がるためリターンの打点が絞りづらくなる。けれど、これらは所詮二次的な強みだ。

 

 ツイストサーブの一番の強み――――それは、珍しいことだ!!

 

 

 ただ珍しいだけかよ―――と思われるかもしれないが、対人戦のスポーツにおいては『珍しい』や『見たことない』というのは大きな強みになる。

 それこそ、『珍しい=カッコいい』と思っている中二病のマリアとは、似ているようで全然違うのだ。

 

 

 俺のツイストサーブはお蝶先輩に通用した。だが、お蝶先輩のジャンプサーブはまだ攻略できていない。それはつまり、この試合はどちらが相手のサーブを先に攻略するかにかかっているということだ。

 

 

「いいサーブを打ちますわねケイ。ですが、あたくしも負けていないわ」

 

「俺だって負けませんよ。この勝負、絶対に勝ちます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「6-4で あたくしの勝ちですわね」

 

 お蝶先輩は涼し気な笑顔で試合結果を告げる。

 

 

 

 

 …ま、、負けた。……なんか普通に負けた。しかも女子相手に。

 

 

 

 ショックで頭がチカチカする。

 

 

 

 乙女ゲームに転生してからのこの肉体は、まだ鍛えてる途中だし!

 テニスラケットも、部室のレンタル品だし!

 

 と言い訳を考えている自分に気づき、さらにショックを受ける。

 

 

 

 結局、あの強烈なジャンプフラットサーブにやられた。

 

 フラットサーブは回転があまりかかっていないため、ラケット面にちゃんと当てさえすればそれなりの打球で返球できる。

 実際、タイミングと目が慣れてきた後半はそこそこの頻度で返球することができた。しかし、それでも彼女のサーブゲームの奪取にまでは至らなかった。

 

「よい試合でしたわ。あなた、噂通りに上手で関心しましてよ」

 

「は、はは、ありがとうございます」

 

 俺は乾いた声で何とか返事をした。正直、負けるとは考えていなかったので精神的なダメージがかなり大きい。

 

「ケイ、あなたのツイストサーブは確かにいいサーブでした。ですが、どうして頑なにツイストサーブばかり打ちましたの?

 ケイなら他のサーブも打つことができるでしょうに。あなた、一辺倒に同じサーブばかり打つから対応しやすくってよ」

 

 

 う…。 正論パンチに思わずふらつく。

 

 

 お蝶先輩の言う通り、俺はツイストサーブ以外もスピンサーブやフラットサーブも打てる。スピンサーブはツイストサーブよりも打点が高い分、何なら威力が増す。

 

 しかし、ツイストサーブは俺が子供のころ憧れた漫画の主人公が使う必殺サーブだ。俺のプライドが他のサーブに逃げることを許さなかったのだ。

 

 

「もしツイストサーブに拘りがあるのでしたら、今の考え方は改めなさい。本当に拘りたいサーブなら、一辺倒で使うのではなく他のサーブと織り交ぜてより有効的に使うべきよ。…よろしくって?」

 

 

 ぐは…。 ド正論パンチに俺はKOされた。

 

 

 

「…お蝶先輩、 また試合していただけますか?」

 

「もちろん、よくってよ」

 

 

 こうして俺は苦い思いと共にテニスのライバルを手に入れた。

 

 

 

 

 

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「なんで悪役令嬢と仲良さそうにテニスしてるの……」

 

 自室で不貞腐れていたマリアは同室の先輩に愚痴を吐き、甘いものを食べたことで慈悲の心を取り戻していた。

 そして思ったのだ―――圭太が悪役令嬢にいじめられる前に忠告してあげようと。

 

 

 

 圭太はテニス部の練習がない日は外で自主練をしている。

 

 そう聞いていたのでテニスコートに向かってみたのだが、そこでマリアが目にした光景はなんか楽しそうにテニスをしている圭太と悪役令嬢の姿だったのだ。

 

「悪役令嬢に嫌われないとラファエル様に助けてもらえないのに。わけわかんないよ!」

 

 圭太がこの乙女ゲームの世界に転生してから2か月半、徐々に原作ストーリーのヒロインとは違う動きをする圭太にマリアは困惑するしかなかった。

 




2026/4/20 一部加筆修正したため、テニス編①が2話に分かれました。
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