Attack3 『ズレてる?』
「…………ふうまさんは対魔忍として活動されてから、どれくらい経つのですか?」
「小さなものを含めれば10年ぐらいだけど、危険な任務と言える任務に着いたのは最近だな。ここ半年ぐらいで独立遊撃部隊の隊長をアサギ先生から任されて――」
ふうまと雷の2人は道中航空機に乗りながら現地へと向かっていた。
仕事を始める前のリラックスと言わんばかりに少しばかり身の上話を交わす。
「俺も気になることがあるんだが……」
「…………答えられることならなんでも」
「アサギ先生に支給された対魔忍スーツは私服の下に着ているのか?」
「…………なぜ、そのようなことが気になるのですか?」
「支給された俺達のこのスーツは普通の服と違って、防弾性能以外にも衣服がこすれる音も軽減させるんだ。だから雷さんもその私服を脱いで対魔忍スーツでの活動をしてもらいたいんだが……」
「…………」
「……雷さん?」
ふうまの言葉に雷は服の襟を正す。
そしてなかなか普段着を脱ごうとしない雷に対し、ふうまの表情も不安が積もるような顔を始める。
「…………対魔忍スーツは出撃前に五車学園へ置いてきてしまいました。申し訳ない」
「置いてきた!?」
「…………井河校長先生から頂戴した贈呈品を破損させるなど恐れ多いことですから」
「……あのな、雷さん。あれは消音効果の他にも、雷さんの命を守るためのスーツでもあるんだ……だから、壊れても組織の経費で修理してもらえるし、とにかく次からは着用してもらえるか?」
「…………対魔忍の指示とあらば次回は着用させて頂きます」
『対魔忍を守護りたい』と言いながら既に対魔忍を呆れさせているが、ふうまの表情としては簡単な任務とはいえ、こんな現場に慣れていないことが明白な素人を任務へ投入するのは無茶苦茶ではないかと言いたげに前髪を弄っている。
彼は再びアサギから渡された資料に目を通す。
囚われている対魔忍がいるのは、人身売買オークションで競り落した人物の邸宅。郊外にある一般的な豪邸だ。
闇オークションを通じて対魔忍を購入した経緯もあり、警備員として雇われオークが2人警備しているらしいが、この救出任務であればふうま単独でも事足りるぐらいな実に簡単なもの。
ゆえにふうまとしても、アサギが実際にふうまに『何を求めているのか』も薄々は察し取ったような顔をして、資料を閉じる。
「…………」ヌギヌギ
「!? 雷さん?! 雷さん!?」
ふうまが資料から雷へと視線を戻した時。
男性の目の前で堂々と上着を脱ぎ、スポーツブラ姿で更に下着までも脱衣し始める雷に対し、ふうまは叫び声をあげる。
「…………?」
「なぜ脱いでるんですか!?」
「…………先輩からの指示があったのと、〈隠密〉に自信はないので全裸になって普段の服の摩擦音を軽減させようと」
ふうまも紫のように頭を抱える。
きっと脳裏には雷と同郷の“青空日葵”の顔が彷彿しているに違いない。
「俺、男なんですが!?」
「…………あ。……申し訳ない。おばさんの身体で」
「いや、そういうことを言いたいわけではなくてですね……?」
「…………では先輩としては、衣服の摩擦音のしない全裸と、普段着どちらで任務に従事することを指定してくださりますでしょうか? わたしは〈隠密〉は苦手ですが……」
「普段着でお願いします。隠密が苦手でも対魔忍スーツがないのなら、普段着のままで大丈夫です」
「………承知いたしました」
ふうまの言葉で、雷は脱ぎ始めた服を着直す。
対魔忍から指示次第では自らの身体も厭わず差し出しそうな彼女へ、ふうまは扱いに困ったような表情を作る。
豊満だが重力によって垂れた乳房と引き締まったウェスト&腹筋。そして脈動する太い血管のような浮かび上がる筋と、女性とは思えない武人のような大量の古傷痕が見え隠れするのを、顔を背け見ないようにする。