ユウカとノアとパジャマパーティをするだけのお話   作:天野ミラ

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パジャマパーティをするだけのお話 後編

袋から着替えのパジャマを取り出す、色は青と白のよく見るタイプのシンプルなチェック。

無難なタイプでとても着やすいのが助かる。

 

”今上がったよ、本当にありがとね。”

 

「ああ、先生。シャンプーとかの場所分かりました?」

 

”うん、大丈夫だったよ。ユウカは今は料理中かな?”

 

「そうですね・・・ちょっと耳を澄ませてみてください。」

 

話すのをやめて耳を澄ましてみると、僅かに声が聞こえてくる。

 

「ぺき~ぺき~かんぺき~ふふふふふーん♪」

 

”かっ・・・カワイイね!それにしても、ユウカも鼻歌とか歌うんだ。”

 

「そうなんですよ~最近お料理中とか、機嫌のいい時は聞かせてくれるんですよ?」

 

それは良い事を聞いた、今度タイミングが良ければ耳を澄ましてみよう。

本人には教えてあげた方が良いのだろうが・・・しばらくはこのままそっとしておこう。

 

「走れソリよ~風のように~♪」

 

「そう言えば、もうそろそろクリスマスですね。」

 

”そう言えばそんな季節か~今年はケーキとか買おうかな。”

 

 

「計算は完璧~結果は上々♪」

 

”今度はユウカがアイドルをやってた時の曲だね。”

 

「あの時の写真、たっくさん撮ったのでよかったら先生にも見せてあげましょうか?」

 

”見たいなぁ!ところでさ、ノアもアイドルとか興味ない?似合うと思うんだよね。”

 

「私は・・・記録するのが役目ですから。でも、考えておきますね?」

 

 

「き・・・聞こえてたなら、聞こえてるって言ってください!ああ、もう・・・恥ずかしい・・・!」

顔を真っ赤にしたユウカがいつの間にか後ろに立っていた、どうやら気づかれてしまったらしい。

 

「あっ、ユウカちゃん。とっても可愛かったですよ♡」

 

「ノアっ・・・感想は聞いてないのよ・・・!」

 

そんなこんなで時間を潰していたわけだが、家主にばかり家事をさせてばかりというのも申し訳ないのでお皿をテーブルに運ぶ事にする。

 

 

ミトンで鍋を掴んだユウカが台所から歩いて来て・・・鍋敷きの上に載せる。

ぐつぐつと沸騰した鍋からは、白い蒸気と美味しそうな匂いが漂ってくる。

 

「寒い日なのでお鍋にしてみました!よそっちゃうのでお皿を貸してくれますか?」

 

蓋を開けるとふわりと鍋の匂いが室内に広がる。

自炊は出来ないことは無いけど、最近は忙しくてカップ麺とか冷凍食品に偏りがちだったから誰かの手料理を食べるのは何時ぶりだろうか・・・

 

「「”いただきます!”」」

 

具材は白菜と鶏肉・豆腐・長ネギ・シメジ・タラの切り身かな?と言う事は寄せ鍋か。

まずは汁の沁みた白菜から頂くことにしよう。

 

「ふふん、どうですか先生!」

 

”お、美味しい・・・!美味しいよユウカ!”

 

「かんぺき~な調味料配分と火加減ですから!これからは認識を改めてくださいね!」

 

”よっ、料理上手のユウカ!”

 

「ふへへ・・・もっと、もっとです!」

 

どや顔のユウカも可愛いななんて思ったり。

普段冷徹な算術使いなんて言われてるなんて信じられないくらい・・・あれはゲーム開発部が勝手に言ってるだけか。

 

”この調子でミレニアムの看板料理娘として売り出そう!”

 

「いや、そこまでは求めてないですけど・・・」

 

”えっ・・・?”

 

「あら、急に梯子を外されちゃいましたね?」

 

「現実的に考えて、流石にミレニアム名物として出すまでには至ってないです。そもそも、うちの学園の方向性と違いますし。」

 

”そっ・・・そっかぁ・・・”

 

「冷めちゃいますから、早く食べませんか?」

 

「確かに、ユウカちゃんの言う通りですね。」

 

 

 

洗い物くらいはさせて欲しいと頼み込んでみたものの、流石はミレニアムと言うべきか最新式の自動食洗器に仕事を奪われてしまった。

このままでは単純に家事もせず、ただ飯を奢ってもらったダメな大人になってしまう・・・と思ったが、宿を貸してもらっている時点で今更感が拭えないか。

 

 

「ふ~お腹いっぱいです。ユウカちゃんに毎日ご飯を作ってもらったら、太ってしまうかもしれませんね・・・」

 

「うっ、頭が痛い話題ね・・・考えないようにしてたんだけど。」

 

”でも本当に美味しいよね、毎日でも食べたいくらい。”

 

「せんせー・・・それ、意味わかってます?」

 

じとーっとした目線でユウカに見つめられる。

本当に毎日料理が食べたいくらいの意味合いで使ったのだが、確かに別の意味に取られてもおかしくない発言だった。

 

”ごめんごめん、つい思ったことを口に出しちゃっただけなんだ・・・”

 

「先生・・・その内、誰かに刺されても知りませんよ?」

 

”あはは・・・気を付けるね?”

 

 

腕時計の短針は既に12の針を回っている、何時もならそろそろ寝るくらいの時間だが・・・

 

「明日は折角のお休みです、夜も更けてきましたが・・・寝てしまうには少し早いと思いませんか?」

 

「折角のお泊り会なんですし、もう少しお話ししましょうよ、先生!」

 

”それもそうだね、面白い話ができるか分からないけど・・・”

 

”そういえば枕が4つもあるのはどうしてなの?ユウカって寝具に一過言あったり?”

 

「そういう訳じゃないんですけど、新素材開発部の試供品なんですよ。」

 

「そう言えば私も貰いましたよ、なんでも・・・「お顔を受け止める柔軟さと、銃弾すら受け止める強度を両立!」だとか。」

 

「冷静に考えて、銃弾すら貫けないとか・・・枕にそんな耐久性要ります?」

 

”面白い試みであるとは思うけど・・・”

 

「枕を盾にして、銃撃戦をするつもりなのかしらあの子達は・・・」

 

「備えあれば憂いなし、なんて言う位ですから・・・もしもに向けて備えておくことは大切かもしれませんよ?」

 

「まだ未使用ですし、先生もお一つどうぞ。シャーレの先生も愛用!なんて言えばあの子達も喜ぶと思います。」

 

”ありがたく貰っておくよ、それにしても商魂逞しいね?”

 

「そうでもしないと絶対採算取れないじゃないですか・・・せめて枕じゃなくて布団につけなさいよね。」

 

確かに寝起きを襲われても安全と言うのは少し欲しいかもしれない。

それでも頭が出ていたら一巻の終わりな訳だが、そう言う意味では寝起きに盾に出来る枕は案外合理的なのだろうか?

 

「そう言えば画期的な炬燵って言ってたけど、どんな機能があるのかしらね~?ノアは何か知ってる?」

 

「いえ、私も聞いた覚えがありませんが・・・」

 

説明書の類はついてないらしい、どうやら私の座っていた方向にボタンがあったのでおもむろに押してみる・・・と、炬燵の中心がいきなり開く。

 

「なっ、何を押したんですか先生!?」

 

”ボタンがついてたからつい・・・!”

 

「あら、これは・・・」

 

見覚えのある樽のシルエット、所謂黒ひげ危機一髪と言うやつだろうか。

しかし、黒ひげの代わりにマスコットのペロロが突き刺さっている。

 

「どう考えても炬燵に必要ないでしょこれ・・・!?」

 

「まあまあ、ユウカちゃん。せっかくですから遊んでみませんか?」

 

”子供のころにやった覚えはあるけど、懐かしいなぁ・・・”

 

「まあ良いですけど?」

 

何故か炬燵から出てきたペロロ危機一髪で遊ぶことにしたわけだが・・・

 

「ふふっ、本当にそこで良いんですかユウカちゃん?製作者の心理的に私はこっちの穴は危険だと思いますよ?」

 

「うっ、モンティ・ホール問題的に考えれば、ここは別の穴を選んだ方が確率的に正しいのよね・・・」

 

ユウカが青い剣を穴に突き刺す、ペロロは飛ばない。

どうやらアウトではなかったようだ。

 

「セーフ!計算通り、完璧ね!」

 

「次は先生の番ですよ?残る穴は5つ、確率的には20%です。」

 

”数多のガチャを切り抜けてきた私からすれば、20%程度・・・欠伸が出るよ。”

 

迷いなく正面の穴に剣を突き刺す、ペロロは・・・飛ばない。

 

「け、結構躊躇なく刺しますね・・・次は。」

 

「えいっ♪」

 

殆どノールックで突き刺された樽は・・・何のリアクションも起こさない。

 

残る穴は残り二つとなった、つまりこれでノアは勝利が確定する。

私とユウカの一騎打ちと言う形になったわけだが。

 

「ここまで残るなんて、どんな確率よ!?もしかして壊れてたり・・・」

 

そう言って、やや遠慮気味に剣が刺された瞬間。

<ペロ―ッ!!!>

 

「きゃっ!?」

 

奇声と共に大きな爆発音を伴って、文字通り射出されたペロロ人形は部屋中を飛び回る。

やがて燃料が無くなったのか、ポスっとクッションの上に落ちて動かなくなったペロロ人形を、衝撃のあまり私達は見つめている事しか出来なかった。

 

 

「なんてものを!つけてるのよ!あの子達は!」

 

「私も流石に・・・びっくりしました。先生はお怪我はありませんか?」

 

”大丈夫だよ、人には飛んでいかないように軌道を制御してたみたいだね・・・”

 

「そんな機能、絶対に炬燵のおもちゃに必要ないでしょ!?」

 

 

 

 

気を取り直して、まったりする事に決めた私達。

先ほどのペロロロケットで、割れたモノや壊れたものは無さそうなので一先ずは安心だ。

 

「ふ~やっぱり、まったりするに限るわね・・・」

 

「今年は色々な事がありましたからね、光輪大祭だってありましたし・・・」

 

”楽しい事も大変な事もあったけど、やっぱり一年で色々な事が起きすぎだよね。”

 

「コユキが少しくらい書類作業を手伝ってくれればいいんだけど。」

 

”まあ、人には向き不向きがあるからね。”

 

溶けた餅のように炬燵に突っ伏しているユウカを尻目に、蜜柑を剝く。

やはり冬の炬燵と言えば蜜柑は外せないだろう。

 

「先生、一つくださいよ~」

 

”良いよユウカ、それじゃあ口開けて?”

 

「あ~・・・美味しいですね~」

 

「先生、私にはくれないんですか?」

 

”ノアも?まあ良いけど・・・はい、あーん。”

 

「あーん。ふふっ、美味しいです。」

 

「先生、もう一つください~」

 

”何か、ヒナに餌をあげる親鳥になった気分だよ。”

 

結局、自分の分を食べるのにもう一つ蜜柑を剝くことになった。

 

 

 

 

「それにしても落ち着くわね~少しは仕事が減ってくれるとこうやって休めるんだけど。」

 

”まあまあ、忙しかったらまた手伝いに来るからさ。”

 

「・・・先生、セミナーの子になりません?」

 

「あら、それは名案ですねユウカちゃん。」

 

”名案ではないと思うよ?”

 

「冗談ですよ先生、言ってみただけですから。そろそろ遅くなってきましたし寝ましょうか。」

 

炬燵から立ち上がったユウカ、だが暖房が効いている筈の部屋にしては・・・

 

「くしゅん!少し寒くないかしら?」

 

「えぇ、計ってみた所・・・先ほどより気温が3度ほど落ちていますね。」

 

「どっ、どうして?外気温もそう変わってないし、この部屋に気温の下がる変数なんて・・・」

 

部屋の隅を見るとエラーランプを点滅させているエアコン・・・察するに、先ほど空を飛びまわった拍子にぶつかって壊れてしまったのだろう。最近エアコンの効きが悪くなってきたとユウカも言っていたし、時間の問題だったのかもしれない。

 

「あら、壊れちゃいましたね・・・」

 

「炬燵の中で寝るのは良くないと言いますが、流石にこの気温じゃ毛布一枚じゃ厳しいですよ。」

 

「じゃあ一緒に寝てしまえばどうでしょうか?」

 

「な、なにを言ってるのノア!?」

 

”流石にそれは・・・”

 

「おや、先生は複数の生徒と添い寝の経験があると聞いていますが・・・私達だとダメな理由があるんですか?」

 

「・・・本当ですか、先生?」

 

”や、止むを得ない都合があったんだよ・・・”

 

「今のこの状況も十分止むを得ない状況だと思いますが・・・ユウカちゃんもそれで構いませんか?」

 

「私は別に・・・その・・・構わないけど。」

 

「なら、折角なので位置はジャンケンで決めましょうか。」

 

”えっ?”

 

「行きますよ〜?出さなきゃ負けです!じゃんけん・・・ぽん!」

 

”えっ、えっ・・・!”

 

 

 

 

暗くなった室内、部屋の空気こそ冷たいものの三人入ってるだけあって布団の中は暖かい。

ユウカの部屋のベッドが大き目のダブルベッドで助かったと言える。

本当は、来客用の布団があればもっと良かったんだけど・・・

 

”どうして私が真ん中なのかな、不味くない?”

 

「一体何が不味いんですか?寒さに凍えながら必死に暖を取るなんて・・・まるで小説みたいで感動的なシーンじゃないですか?」

 

”そうは言っても・・・ユウカは大丈夫?”

 

「あっ、えっと。全然大丈夫・・・です。」

 

ユウカもやはり緊張しているようで、あまり大丈夫じゃなさそうだ。

眠気もあるのかさらに声色が幼く感じる。

 

「ユウカちゃんもこう言ってることですし・・・それとも、じゃんけんの結果に不満があるんですか?もしかして私の隣が嫌だったとか?悲しくて泣いてしまいそうです、シクシク・・・」

 

”もう突っ込まないからね?”

 

「それはそれとしてユウカちゃんが遠いので、もう少し詰めてください先生。」

 

”・・・突っ込まないからね。”

 

 

右にユウカ左にノアが居るので寝がえりは打てない、必然的に仰向けで寝る事になる。

ユウカは背中を向けてくれているが、ノアは・・・

 

”どうしてこっちを向いてるのかな?寝るんじゃなかったの?”

 

「珍しい先生とユウカちゃんの様子も観察・・・もとい記録しておこうと思いまして♪」

「先生は・・・5分前よりも心拍数が10回程上昇していますね。これはリラックスしているとはとても言い難い状況です。」

 

”当たり前じゃないかな?”

 

「深呼吸などしてみてはどうでしょうか?ほら息を吸って・・・吐いて・・・あっ、匂いはあまり嗅がないでくださいね?」

 

”ノアってそう言うところあるよね・・・”

 

シャーレに来た時もそうだったし、意外とお茶目な所がある。

この状況だとあまり洒落になってないんだけど・・・

 

「先生の・・・ヘンタイ。」

 

”待って欲しいユウカ、これは不可抗力で・・・。”

 

「ふふっ、冗談ですよ。」

 

 

 

それから暫くして、左の方からはすぅすぅという寝息が聞こえてくる。

ノアは、はしゃぎ疲れたのか、寝つきが良いのか分からないが・・・眠れたのなら良い事だ。

私は緊張していて、まだ寝つけて居ないのだから。

 

 

「あの、先生?まだ起きてますか?」

 

”起きてるけど、どうしたの?ユウカ。”

 

「今日は私達、少し先生に甘えすぎてしまったかもしれません・・・先生は、嫌じゃなかった・・・ですか?」

 

”むしろ、ユウカは普段からストレスを溜めこみがちだから、偶には今日みたいに頼ってくれると嬉しいな。”

 

「そう・・・ですか。今度はシャーレに遊びに行きますね。」

 

”うん、待ってるね。”

 

「その・・・おやすみなさい、先生。」

 

”うん、おやすみユウカ。”

 

 

 

 

 

 

何時の間にか意識は落ちていた、目が覚めたのは翌日の9時頃だったのだが。

 

 

 

”これさ・・・私かノアがノアの部屋に行けば解決だったんじゃ・・・?”

 

「そこに気づくとは流石ですね、先生♪」




ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

2人ともお迎えできたのでイベストとメモロビ見てきます。
書けば出る(ノア天井)

Twitterとか
https://x.com/AmanoMira43648
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