岩隠れに栄光あれ   作:WBX

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以前投稿していた「岩隠れに栄光あれ」。こちらを予告無しに削除してしまい、大変申し訳ありませんでした。
自分の思い描くうずまきドンを思いきり落とし込めていなかったのです。
中忍試験編執筆中はどれだけ手加減するかを考えなければならず、執筆中に浮かぶ「コレジャナイ感」を払拭する事が出来ませんでした。
それは当然です。当時は思い切り妄想を書いていたばかりでプロットも作っていませんでした。
それでは自分の思い描くうずまきドンとズレてしまうのも無理は無かったです。
今作は筆者が思ううずまきドンを全力で描くために時代背景や、転生要素を加えることにしました。
岩隠れの里や塵遁、そして「黒ツチ」が大好きなのは変わっていません。
それでもよければ生まれ変わった「岩隠れに栄光あれ」を読んで頂けると幸いです。
 
それではどうぞ。



己の意思

 

 

 気づけば赤子として産声をあげていた。何もなせずに死んだ、後悔ばかりの人生だったと、赤子としての鳴き声をあげながら心は悲鳴をあげている。

 

 今頃男は何故赤子になっているのか疑問に思った。その疑問すら二の次になる程に後悔だらけの人生だった。

 

 男には前世の記憶があった。生まれは裕福で、中学から大学まで全て私立に入れてもらえるほど恵まれた家で育った。周りから見れば順風満帆な人生に見えたことだろう、なんの不満があるのだろうかと。

 

 だが男にとっては親に勧められた人生を歩んできただけであり、何一つ自分で頑張ったと言える人生ではなかった。

 男にとっては周りの頑張って今がある他人の人生の方が羨ましく感じてしまう。

 

 何一つ成せぬまま大学を卒業した。周りと同じように社会の歯車に組み込まれ回り続ける日々。

 だが、決して周りと同じと思う事は一度として無かった。だって周りと違い男は空っぽだったから。

 

 結局何もなせなかった、死ぬ最後まで後悔していた。俺の人生は俺のためにあるはずなのに、どうしてこんなにも空虚なのだろうと。

 こうして疑問に思う事で日々の自分を慰めるのが癖だった。

 

 (いや、本当は分かっていた…俺はただ逃げてただけだった。何か頑張れるものを探すより他人からの指示に従っている方が楽だったから…それで何も言われなかったから…)

 

 そんな男にも趣味はあった。漫画や小説を読んでいる間だけは、自分が持ちえない「己の意思」を持つ登場人物が心の隙間を埋めてくれる気がしたのだ。

 そして考えるのだ。自分がこの世界に居たら何をしたいの(……)かを。

 

 赤子の自分、未だ持つ人生の記憶、己の持つ著書の記憶から「転生」のワードがすぐ浮かんだ。

 まさか、まさかと心臓の鼓動が増す。何度願ったか、何度妄想したのか。人生の失敗者達が「己の意思」を見つけ、貫き通す旅路が始まったのかもしれないと。

 神が居るならば幾らでも祈ろう、そして誓おう。この旅路では今度こそ己を見つけ貫き通すと。

 自分を抱く女性の手の暖かさを感じながら、遠ざかる意識に身を任せた。

 

 

 

 

 

 転生を果たして1ヶ月がたった。 驚くべきことにこの世界がNARUTOであることが判明した。

 最初は忍、チャクラ等の聞き取れた言葉からNARUTO世界での誕生にテンションを上げていた男であった。

 しかし「木の葉」のワードが一切出てこないことに不安を感じ、戦、うちは、千手、挙句の果てには長男の初陣が近い等の言葉を聞き悟ってしまったのだ。未だ戦乱の時代、木の葉隠れの里創設前であることを。

 男…うずまきドンは、そんな時代のうずまき一族本家四男として生を受けた。

 

 (木の葉創設前…しかし『うちはタジマ』の名前が挙がっていたな。つまり柱間やマダラとは近い年代かもしれない…)

 

 ドンは考える。柱間、マダラと近い年代・・・つまりは己の人生の中で間違いなく木の葉隠れの里は設立されるだろう。このまま生き残っていけば木の葉の忍、もしくは同盟国の渦潮隠れの里の忍として、柱間、扉間の下で人生を歩むことが出来るのだと。

 

 (だが、俺は嫌だ…。今生で俺は自分で生き方を選ぶと決めたんだ。柱間、扉間の書いた筋道通りの生き方を送りたくない)

 

 そもそもドンが好きな隠れ里は岩隠れの里だった。岩を使う土遁も好きだったし、何より塵遁の存在である。

 ガード不可の最強術を浮遊しながら放つ土影達…マダラや柱間の存在で霞んではいたが、間違いなく忍界で最強の術者であり五影で一番好きな忍達だった。

 だがオオノキや無以外の岩隠れの忍はパッとせず、抜け忍のデイダラが活躍したことから岩隠れは決して強国としてNARUTOファンの間で扱われる事は無かった。

 

(どうせなら岩隠れを五大国最強の強国へ仕立て上げたい。強い岩隠れに俺は居たい…!)

 

 どうすればそんな世界を迎えられるのか…天井を見つめながら無限とも思える時間をドンは思考に費やした。

 これから始まる隠れ里結成の流れ、そこから始まる原作、暁、マダラ、そして黒ゼツとカグヤによる世界の滅亡の危機。自分がこの流れを変えてもいいのだろうかと…弱気になることもあった。

 だが、その考えは認められない。何故ならばこの旅路は己を貫き通すのだと決めたのだから。

 

 

 そして遂に結論をドンは出した。

 

────俺が強い岩隠れの里を作る。決して原作の筋道通りの世界では生きない…

 

 

 しかしその願望を成すまでに様々な壁が立ちはだかる。目下の問題はドンがうずまき一族であることだ。うずまき一族は火の国に居住しており、岩隠れの里が興る土の国との距離が遠すぎる。

 当然ドンに土の国での縁や伝手などありはしない。

 そのためドンは根無し草で土の国に行き、岩隠れの里を作り上げなければならない。傍から見ると無謀であり、ドンも厳しい戦いを強いられることになる。

 だが無理ではないとドンは信じている。この戦乱の時代は秩序ある里システムの時代より、力の影響が大きい時代。

 

────故にこの戦乱の時代を終わらせる。バラバラの一族同士が結束し、誰もが手を出せない巨大な忍の集団を形成し、自分”達”が安心して暮らせる居場所を作る───

 

 誰もが認める力さえあればドンの思想に感化され、協力してくれる存在は必ず現れるはずだ。

 柱間やマダラの存在によって木の葉隠れの里に協力することを決めた一族がそうであったように、『誰にも侵されない力』はこの一族単位の争いに終止符を打つのだ。

 

 (だからこそ、まずは力…。この戦乱の時代でモノを言うにはそれだけの力を蓄える必要がある。まずはこのうずまき一族の力をしゃぶりつくす…そして…!)

 

 

 その時が来たら俺はこの一族から出奔する…

 

 恩知らず、裏切り者と罵られる事だろう。当然それは甘んじて受け入れよう。

 だが、己の野望のためには必要なことだ。

 最後のピースがカチッとハマる。己の人生が歩みを始めだした実感が湧いてくる。

 止まっていた心に燃料がくべられ、何かが込み上げてくるのを感じる。

 ワクワクが止まらない…()を持つ充実感はこれほど甘露だったのか。

 自然と涙が溢れ、泣き声を上げてしまった。パタパタと誰かが走ってくる音がする、それだけ大きい泣き声だったのだろうか…。

 だが安心して欲しい。この涙はドンが不機嫌になったものでも、苦しいかった故に流したものではない。

 初体験故だ。歓喜の涙、それを初めて知り流した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 「ぐぁ"ぁ"…!っっっぐぅぅ…ッ!」

 

 地獄の様な苦しみからようやく解放された…。ドンは己の腹に刻んだ()()()を達成感と共に見つめていた。

 あの決意から早九年、遂にうずまき一族の技術をしゃぶりつくしその集大成が完成した。

 四男とは言えドンは本家である。あらゆる技術を学ぶことをドンは許された。

 術を貪欲に学ぶその姿勢は賞賛こそあれど批判の声は一切上がらない。この戦乱の時代で力を付ける行為は理想の子供そのものだったからだ。

 

 生まれつきチャクラも多く、術の習得スピードも速かったドンは六歳の頃には初陣を迎えていた。

 あれから三年。如何に平和の時代から来たとはいえ殺人への忌避感や倫理観は既にこの時代に染まってきたと言えるだろう。

 戦場は習得した技術の発表会だ、手加減しなくてもいい。戦場でドンは学んだ技術を洗練させていった。戦場で結果を出せば出すほどより強い術を教えてくれるため、常に全力で殺し合いをしていた。禁術すら子供に教えてくれるのはやはりこの時代ならではだろう。

 

 一族内ではドンを跡継ぎにとする声も上がり始めている。

 今うずまき本家の子供は次男とドンしか生き残っていない。より強い力が上に行く時代だ、当然である。

 しかし優れたドンを不快に思う次男の行動が最近はきな臭い。一昨日の戦場では次男の術の巻き添えになる所だった。

 

 (もはやこれ以上ここに居る理由もない…)

 

 既にここでは学びつくした。故にこれからは外で力を身につける時だ。

 今まで良くしてくれた一族には悪いが、ここらでおさらばだ。十分戦で結果を出したのだ。

 天才児が早死にすることだってこの世では珍しくないはず。平凡な次男でも千手と組めば生き残れるはずだろう。

 言い訳をツラツラと思い浮かべながら、その夜ドンは暗闇へ姿を消した。

 

 

 

 

 あれから更に六年が経過した。世間では千手柱間、うちはマダラの活躍が語られている。

 昔ちらっと柱間は見たことがあったが話すことは無かった。これから戦う(・・)事になる相手と仲良くなるのはやはり気が進まなかったからだ。

 

 六年でドンは飛躍的に強くなったと自負している。

 塵遁の開発、幸運なことにドンの性質変化が火、土、風の三つであったため死ぬ気で習得した。

 やはり一番好きな術なだけあって、習得後も応用(・・)を重ねていった。

 

 続いて仙術。NARUTOを語る上でこの技術があるか無いかでは雲泥の差である。とはいえ習得するための秘境を探すのに苦労した。

 三大秘境と呼ばれる内の湿骨林、妙木山は見つけられなかったが龍地祠を見つけることが出来た。白蛇仙人の下で()()な仙術を会得するために三年程要したがその価値は十分あっただろう。

 

 (遂に野望のスタート地点に立つことが出来た…。ここからは俺の力を見せつけて名を売っていかなければならない)

 

 名を売るにも()()()方法がある。だが、まずはシンプルに力で名を売っていくことが賢明だろう。

 個人の傭兵として活動し各地の戦場で名を挙げる。名が上がれば上がるほどデカい戦場へお呼びがかかることもあるはずだ。

 

 

 最低でも柱間やマダラと同じレベルで名を売らなければ木の葉より早く岩隠れを作れないだろう。

 これから名を売った後は土の国周辺の一族を纏める必要がある。

 力があるとは言え、よそ者の言葉をたやすく聞いてくれるはずがない。

 それだけ一族という土台の無い、根無し草である事はこの時代でハンデとなってしまう。

 

 (思ったより時間は無い…急がなければ…!)

 

 最速で結果を出さなければならない。

 だが、着実に己の野望へ向けて前進している。焦燥感と共にかつてない充実感も同時に心を満たしている。

 戦場の音がワーワーと聞こえてきた。生死をかけて争う地獄が近づいてきたようだ。

 だが同時に戦場は己の技術の発表会、好きなだけ暴れられる機会はここ数年無かったものだ。

 戦場が近づくにつれドンの瞳は爛々と輝き始めた。

 

 (あぁ、血沸き肉躍る…!やはりこうでなくては…!)

 

 マダラの気持ちも分かるものだ。両手を重ね合わせ、口元に笑みを浮かべる。

 白き()()が戦場に迸り、阿鼻叫喚の悲鳴が散りばめられた。

 

 岩隠れ始祖の伝説はここから始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━今日の戦は楽に終われそうだ

 

 目の前の敵をクナイで引き裂きながら扉間は思案した。

 戦は佳境を迎え、既に勝負は見えてきている。千手柱間を始めとした千手一族の猛攻によって此度の敵…昭島一族の戦線は崩れつつある。うちはの様に飛びぬけて強い一族では無いが、この辺りでは長年一定の影響力を持ってきた一族だ。

 

 扉間たちが属する森の千手一族はうちは一族と肩を並べる忍界きっての実力者集団である。

 千手に対抗する相手はうちはを雇う。最近では殆どの戦場の相手はうちは一族になりつつあった。

 だからこそうちは参戦の気配が見受けられない此度の戦は楽に感じてしまう。

 昭島一族も弱くは無いがうちはを相手にするほど神経を使うわけでもない…言っては何だが片手間に終わりそうだ。

 

 「水遁・水断波

 

 だからと言って全力を尽くさないわけではない。戦場で気を抜けばすぐさま死神の鎌に首を刈り取られる事は身に染みていることだ。

 素早く印を結び扉間が水遁を放つ。高速の水カッターが敵を薙ぎ払い、裂き殺していく。

 広範囲を攻撃可能で殺傷能力も高い。たとえ命が無事だったとしても手足の一本は持っていくことが出来る、扉間が開発した恐るべき術だ。

 

 (気の抜けてきた奴が増えてきおったッ!)

 

 背面から伝わってくる一族のチャクラの重みが減り始めた事が扉間を苛立たせる。

 遂に千手一族の中で油断が生まれ始めた。誰がどう見ても大勢は決しているため無理は無いだろう。相手はうちはでもないのだから。

 だがどんな時でもあらゆる可能性を考慮し、戦闘中でも広い感知をしている扉間だからこそ気づけた。

 この戦場に近づいてくる途轍もないチャクラの接近に…。

 

 「何か来るぞ!兄者!」

 

 空に火遁が撃ちあがり、同時に昭島一族が一斉に後退していく。

 何らかの合図だろうが扉達は動かなった。

 否…敵の罠かもしれないため迂闊に追撃を行なえなかった。

 昭島一族が後退した林から入れ替わるように赤髪の男が現れた。既に印が完成しているのだろう。

 燃えさかるチャクラが扉間には感じられた。

 

 「火遁・頭刻苦

 

 辺り一面に広がった火の海が千手一族を呑み込まんと襲いかかる。だが、当主の柱間は微動だにしない。己の頼れる弟が既に手を打っている事を確信しているからだ。

 

 「水遁・水陣壁

 

 扉間の口から吐き出された膨大な水が壁を形成していく。水の無いところでこのレベルの水遁を行使出来るのは、千手一族の中で最も水遁に長けている扉間だけだ。

 しかし…だからこそこの火遁の威力の凄まじさに扉間は瞠目してしまう。

 

 (この火遁の威力…!あのマダラと…!)

 

 千手一族最大の敵を彷彿とさせる火遁だが、流石は千手扉間である。元々性質変化の相性に勝っている事もあり火の海が猛烈な勢いで消失していく。

 このまま残された灯火を消し去らんとする扉間だがそれを許す男ではなかった。

 

 「風遁・圧害

 

 けたたましい風切り音と共に消え去りそうだった火種が再び業火へと変貌を遂げる。

 迎え撃っていた水壁は瞬く間に蒸発してしまった。

 再び火の海が扉間を攫おうと迫るがここで残された千手一族が動き出す。

 

 「「「水遁・水陣壁」」」

 

 重なり合う水壁が火の海を押し止め、大量の水蒸気が巻き上がった。すかさず千手一族の中で風遁を使えるものが水蒸気を吹き飛ばしていく。

 戦場で敵を見失う事は死に直結するためだ。

 

 水蒸気が飛ばされた事で術者の姿が明らとなった。

 その顔立ち、そして特徴的な()()()()()を見た千手一族にざわめきが生まれ始める。

 

 ━━━何故あいつが!! 死んだのではなかったのか!?

 

 ━━━ 奴はうずまきじゃ無いのか!?

 

 ━━━我らに何故…!?

 

 何故なら彼等は知っていたからだ。幼いながら大人顔負けの術で敵を薙ぎ払う場面を何度も見てきた。

  早熟でありながら研鑽を止める事のない彼を見習えと、よく幼子達に言い聞かせていた。

 この子が居ればうずまきも安泰だと渦の族長もよく言葉を漏らしていた…。

 だからこそ信じられなかった。あの()()()()()()が自分たちの前に立ち塞がっていることを。

 

 

 

 「ドン殿なのか…。生きていたのだな!!」

 

 柱間も当然ドンを知っていた。同盟を結ぶうずまきの麒麟児はそれなりに話題になっていたし、戦場でも顔を合わせたことがあった。

 残念ながら言葉は交わせなかったが、マダラ以外の数少ない同年代であるためそれなりに意識はしていた。

 だがこのような事態になってもドンの安否を喜ぶ柱間に扉間は溜め息を漏らしてしまう。

 

 「…貴様これはどういう事だ。何故我らを襲う」

 

 扉間の疑問は尤もだ。()()()と聞かされていたうずまきドンが生きており、千手一族を襲撃してきた。

 これはうずまき一族との同盟関係を疑わざるをえない事件だ。

 だが、うずまきが千手を襲う理由が思い浮かばない。忍界最強の柱間を裏切るのは何故だ?考えることを辞めない扉間だったがドンが答えを教えてくれた。

 

 「すまないな千手の皆。俺は死んだのではなくうずまきを出奔したのだ。己の理想のためにな」

 

 「理想だと?我らを襲うことが貴様の理想とやらに必要なのか?」

 

 「そうだ。俺の理想のためにはあらゆる闘争が必要となる。故にお前らを襲ったのだ…()()としてな」

 

 (そういえば最近巷で聞いておったな。凄腕の赤髪の傭兵がおると…)

 

 傭兵などこの戦乱の時代には幾らでもいる。千手とうちはの争いに着いてこれる程の腕は無いと判断し、扉間は無意識に思考から外してしまっていた。 

 尤も赤髪と言ってもうずまき程に紅い髪だとは思いもよらなかったが。

 

 「血を裏切り、傭兵に身を落としてまで叶える理想はさぞ崇高なものなのだろうな」

 

 「そうだ。それ程崇高な理想なのだ。この戦乱の時代に終止符を打つ事はな…」

 

 扉間の皮肉に返したドンの言葉で千手一族に衝撃が走る。

 この地獄の時代を終わらせる?

 それが出来ない事をこの戦乱の時代が証明しているのでは無いか!

と千手の面々の顔が怒りに染った。

 だが唯一柱間だけはその理想に憤怒することは無かった。

 

 「…ドン殿。その理想は、俺も持つものぞ!だが、俺だけでは足りぬ…足りぬのだ!俺も協力する!一緒に”地獄”を止めようドン殿!」

 

 ドンの理想が己と同じものであるならば手を取り合えるはずだ。もしドンが仲間になるのならばマダラやイズナを捕らえて降伏させる事が可能かもしれない。そうすれば千手とうちはの争いは無くなり、里を作れるかもしれない…!

 しかしそんな柱間の思いはドンには届かない。いや、届いているがドンは受け取らない。

 

 「悪いな柱間…。同じ理想とはいえ、俺は自分で叶える」

 

 「何故だ!?俺達で叶えればお前が叶えることと一緒だろう!」

 

 「違うな…。お前達と共に叶えるのでは意味が無い」

 

  躊躇ない断りに柱間は言葉を失う。マダラ以来の平和への賛同者でありながら何故この手を取ってくれないのか…。

 うずまき一族も柱間の言葉であれば耳を傾けてくれるはず、襲撃を受けた事は長として水に流す。柱間が如何に説得してもドンが首を振ることは無かった。

 

 「もういい兄者。彼奴の叶える平和に我らとの争いが含まれているのであれば戦うしかない。兄者が殺せぬのならワシらが彼奴を殺す!」

 

 扉間の言葉と共に周りの千手一族も前傾姿勢となり、直ぐに動けるよう戦闘準備を整えた。

 後は柱間の号令がかかれば何時でもドンを襲える。

 柱間の決断を固唾を飲んで待つ一族の面々。扉間はジリジリとチャクラを練り上げていく。

 

 

 「兄者!」

 

 扉間の呼び掛けに沈黙で答え、ドンに今一度懇願の視線を向けたがドンの目付きが変わる事はない。

 強い決心がそこに見えた。

 肩を落とし目を閉じた。暫くして目が開かれると森の千手一族の長としての顔へと変わっていた。

 

 「者共…かかれぃ!」

 

 柱間の号令と共に千手一族が動き始める。

 

 「「「水遁・水龍弾」」」

 

 水遁を得意とする集団が一斉に術を放った。幾匹もの水龍がとぐろを巻きながらドンヘ襲いかかる。先程の火遁の威力から単発での水龍弾では意味をなさないと判断したためだ。

  しかしドンは空中へ飛び上がるとそのまま土遁・軽重岩の術で空中を浮遊した。空中をスイスイと飛び回るドンに水龍が当たるはずもない。

 

 「馬鹿な!!空を飛ぶだと!?」

 

 原作の世代であれば、幾度の戦争の経験から岩隠れの優れた忍が空を飛ぶ事など周知の事実だ。           

 だが今は隠れ里が出来る前の時代、遠く離れた土地、ましては戦うことも無い忍の事など知る余地も無い。

 

(如何に空を飛べようと奴は一人…我らの術で牽制しつつ本命の兄者が波状攻撃を仕掛ければ殺せぬ相手では無い…が)

 

 「土遁・ゴーレムの術

 

 ━━━やはりそう簡単にはいかんか…

 

 扉間の嫌な予感は的中した。空中を飛び回るドンが土遁の印を結びゴーレムを繰り出した。

 ゴーレムが()を結ぶことで再び次のゴーレムが生み出されていく。 

 ()()()すらまだ無い時代である。自立し攻撃する術は岩分身、水分身等の弱い分身系統しかメジャーではない。

 だからこそ数が重要になってくる。数を揃えるために一族、同盟で纏まって戦うのがこの時代のセオリーだ。

 

 「さて、これで数の利は封じたな…。ではやろうか柱間ァ!」

 

 「木遁秘術・樹界降誕

 

 地中で猛烈な勢いで大量の生命の源が発現、下から広大な樹木が生え渡った。辺り一面が巨大な樹木の密林となり、柱間の意のままに従う。

 木々に生命を吹き込み意のままに操る柱間だけに許された性質変化…木遁。

 この木遁をもって原作の柱間はマダラと互角以上に渡り合い忍界最強と称されたのだ。

 樹木が一斉に変化し、先端が鋭利な槍そのものとなった。

 一斉にドンを刺殺さんとするが高速で旋回し続けるドンには当たらない。

 

 ──────やはり波状攻撃が必要か…。

 

 「木遁・木分身の術

 

 柱間の体から六体の木分身が生み出された。木分身は他の分身系統の術とは違い常に情報を共有しながら戦う事が出来る。

ドンがいくら飛び回ろうと柱間含めた十四の目から逃れることは出来ない…。

 しかし柱間の意図に気づかないドンではない。すかさず印を結び更にゴーレムを生み出していた。

 千手一族の一人がゴーレムを土遁で殴り壊した。しかし残りのゴーレムの内の一体が印を結ぶと土片がパラパラと持ち上がり破損した部位に集まり、やがて再形成された。

 

 戦いは長引いている。

 

(このゴーレム供を何とかしなければ形勢は動かん!)

 

 「「「「「「木遁・木人の術」」」」」」

 

 更に…「「「「「「木遁・木龍の術」」」」」」

 

 六体の巨大な木人と六匹の巨大な木龍が生み出された。ゴーレム達が印を結び火遁を放つも木人が木龍の盾となった。途轍もない業火だというのに中々燃やしきれない。火の海の中で木人と木龍は前進し続ける。

 しかし、上空から突如業火が木人に降りかかる。

 

 「火遁・業火滅失

 

 ゴーレム達を巻き込みながらドンが放った灼熱は木人達を完全に燃やし尽くした。ゴーレム達もドロドロに溶けて無くなったが再び生成すればいい。

 そう考えていたドンだが木人達によって完璧に守り切られた木龍らがドンに襲い掛かる。

 

 「土遁・土龍の術

 

 地中から巨大な土の龍が六匹現れ、木龍と相対する。木龍が襲い掛かり土龍が迎え撃つ。お互い絡みつきながら取っ組み合った…が遂に木龍が土龍に噛みついた。

 木龍はチャクラを吸収する性質を持つ。チャクラを含むものに触れるだけでチャクラを奪い取り、そのチャクラを持って大きく成長し襲い掛かる。あの尾獣でさえ抗えない木遁の本質が垣間見える術である。

 

 

 「馬鹿な…!何故木龍が大きくならんのだ!?」

 

 木龍は完全に土龍を捕えている。

 だというのに木龍が大きくなる気配が感じられない。

 捕らえている土龍の体が小さくなる気配が感じられない。

 しかし木龍がチャクラを吸収しているのは術の手ごたえで把握している。

 

────何故このような事が…!

 

 柱間が疑問に思っていると扉間の張り上げた声が聞こえてきた。

 

 「兄者!奴の土龍のチャクラを感知してみろ!」

 

 すぐさま土龍のチャクラを感知すると、土龍のチャクラが()()()()()()()()()()事に気づいた。

 

「これはッ!」

 

 感知した土龍からは三つのチャクラが感じられた。一つ目は生み出したドンのチャクラ、二つ目は木龍から()()()チャクラ。そして三つ目は…

 

 「これは封印術!?土龍が封印術を帯びているのか!」

 

 ドンによって土龍に練りこまれた封印術のチャクラだ。

 うずまき一族の封印術を学びつくしたドンは生み出した術に封印術を帯びさせる事に成功していた。触れたモノのチャクラを土龍の中に封印し続ける封印術。これを土龍に帯びさせることで木龍にチャクラこそ奪われるものの、木龍のチャクラを封印し続けることで拮抗を保つことが出来たのだ。

 

 しかしここで扉間がゴーレムとの乱戦から抜け出し、大量のチャクラを練り始めた。何かするつもりだと感じたゴーレムは扉間を集中的に狙おうとするが周りの一族達が許さない。

 チャクラを練り終わった扉間が遂に動いた。

 

 「皆地面へ伏せろ!水遁・水断波

 

 通常の水断波とは桁が違うチャクラが練りこまれたそれは広範囲に広がった戦場全てに届く。

 高さを変えながら二回転した扉間によってゴーレム達は頭部、胴体、下半身と三つにばらされてしまった。拮抗状態にあった木龍と土龍も分断され、破片がバラバラと崩れ落ちる。

 全てのゴーレム達を片付けた扉間によって千手一族の敵は残されたドン一人となった。

 既に日が沈みかけている。戦場には似合わない綺麗な夕焼けがドンの目に映った。

 

 (ひとまずこれで終わりにするとしよう…)

 

 何を場違いな風情をこんな時に感じているんだ…空中をふわふわと舞うドンが苦笑を浮かべ、()()を合わせた。

 またしても次の術を繰り出そうとするドンに千手一族は警戒を深める。

 もはや強い忍程度には捉えられない。柱間レベルの忍として相手をしなければ浄土へ送られてしまう・・・そう考えざるを得なかった。

 

 離されたドンの両手の間に白く輝く美しい円柱が現れた。夕暮れとあって夕焼けよりこちらの方が明るいか。大人であっても何か神秘的なものをその術から感じ取ってしまう。

 だが、感知タイプにとってそのような馬鹿げた感想を思い浮かべる余裕など無かった。

 

 身を守るために数人の千手一族が土遁で壁を形成した。

 複数で作った分厚い壁は雷遁くらいでなければそう易々と突破できまい。

 

 「防ぐな!離れろ!」

 

 扉間の声に反応し、その場から離散出来たのはドンを柱間レベルと正しく捉えていた忍だけだった。

 残念ながら壁を作った数人の忍はその場から動くことは無かった。自らの術に自信を持って居るが故に…。

 

───また戦おう。お前達との闘争は実に心躍った。

 

 

 「塵遁・原界剥離の術

 

 閃光が一閃した後にはドンの姿は消え、巨大な円柱型の痕跡だけが残っていた。

 形成された土壁や残された忍等は塵となり、跡形もなく消し飛んだ。

 全ては塵となった。分子レベルで分解するこの術を防ぐ方法などこの世には存在しない。

 

 後に忍五大国きっての強国…岩隠れ最強の術への対策は避ける事だけだと二代目火影の扉間は結論付けた。

 

 塵遁・限界剥離の術…扉間をもってして破壊力は最強と評すしかない術が千手一族の脳内に刻み込まれた瞬間だった。

  




転生要素を加えてみました。
こちらの方が書ける幅が個人的に広がり書きやすかったです。
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