岩隠れに栄光あれ   作:WBX

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第二話です。


強さ

 

 

 柱間率いる千手一族を退けたことでドンの勇名は忍界に広く轟いた。それほど千手一族は今までドンが戦っていた忍一族とは比べ物にならない集団だったからだ。

 それまで凄腕の傭兵としてドンの名が挙がっても雑魚狩りの賜物と揶揄する者達も居た。

 だが彼らの評価も一変する事となる。本物だ、間違いなく本物の強者であることが証明されたのだ。

 

 ドンが死んだと嘘の公表をしたことや、みすみす出奔させた事でうずまき一族は大きく名を落とした。 ”あの千手柱間に匹敵する忍を手放す事とは如何なることか” と千手含めた同盟関係にある一族から批判を受けてしまった。

 

 尤もうずまき一族としてはドンが勝手に出奔したことに気づいてはいたものの、ドンを疎んじていた次男によって”死亡"したと公表されたのだ。本家の嫡男争いが起きぬように。

 

 そして千手一族に対抗できる傭兵が使われないわけがない。あの戦い以降ドンは規模の大きい戦場にも参戦するようになった。当然千手は勿論、あのうちは()との戦にも呼ばれることとなる。

 ドンの”名を売る”という目的は間もなく達成出来そうだ。火の国を出た他国の忍一族にもその名は広く知られている。

 

 (そろそろ火の国を出ても良いかもしれん…)

 

 計画第一歩目は最終段階を迎えつつあった。

 

 

 

 

 

 

 「火遁・業火滅却

 

 「火遁・頭刻苦

 

 二つの火遁がぶつかり合った。威力、規模共に拮抗しておりどちらも退くことは無い。術者二人とも凄惨な笑みを浮かべこの状況を心から楽しんでいる事が伝わってくる。

 

 このレベルの火遁に近づくことなどそうは出来ない…並大抵()の実力者では。

 しかし突如術者の片方…ドンの足元から巨大な木の手が現れドンに掴みかかる。

 すぐさまドンは空中に飛び上がり宙を舞った。

 足元で生えた木々にドンは苦々しい顔を隠せない。何故こうも不幸ばかりが続くのだろうか。

 

 「柱間ァ!貴様何故ここに居る!?」

 

 「ようやく役者が揃ったか…。遅いぞ!柱間ァ!」

 

 「すまぬマダラ!ちと腹が痛くてのう…」

 

 今回ばかりは流石に不味いかもしれない…そうドンは考えてしまう。端を発したのは土の国へ向かっている途中にてうちはマダラに襲撃された事だった。

 だが意外にも襲撃してきたマダラはうちは一族を引き連れていなかったのだ。

 マダラ単独ならば問題無いと交戦に踏み切ったが柱間まで来るとは予想していなかった…。

 

 マダラに加えて柱間…この二人を同時に相手取るなら今までの殺さぬ()戦い方が通用するのか?いや…下手すればこちらが殺されてしまう。

 

 岩隠れの里を忍び五大国随一の強国にしたいドンだが、柱間とマダラの作る木の葉隠れの里に勝たなければ意味が無いと考えている。

 そしてこの二人の何方でも欠ければ木の葉隠れの里は創設されないだろう。

 だからこそ柱間、マダラとは本気で戦っても決定打は打ち込まなかった。

 勘のいい扉間なら何かしらの違和感を既に抱いているだろう。

 

 「…何故お前達が組んでいる」

 

 べったりと仲の良さげな雰囲気を醸し出す二人を一見しドンが問うた。

 だが話はそこからだ。マダラがドンを襲撃するのは納得出来る…だが柱間と組んでいるのは予想出来なかった。

 両一族から買った恨みには身に覚えがあり過ぎるが、あの千手憎しのイズナが柱間との共闘を許すとはドンには思えなかった。

 マダラと柱間の独断か、それとも一族単位での共謀か。

 いずれにしても情報は必要である。ドンを狙う親玉が存在するのは確かなのだから。

 

 「恨みを買いすぎたなドン…。火の国の大名はこれ以上国内の戦を激化させる事を望んでおらんぞ」

 

 どうやら火の国の大名から付け狙われているようだ。確かにドンが参戦することで戦の規模が大きくなってきている。

 大きな火種はうちはと千手だけで十分というのが火の国の所存らしい。

 早めに出る杭を打ちに来たか。

 

 「うちはと千手を組ませてでも俺を消したいか…。よくイズナが許したなマダラ!」

 

 「俺の弟を舐めるなよドン。大局から見てもお前を消すことには賛成してくれたさ…」

 

 (ふっ。賛成はしても納得しきれていないという訳か)

 

 千手憎しのイズナである。例えどんな密約や報酬があろうと兄弟を殺した千手一族を許すことは無いだろう。イズナが生きている限りうちはと千手の真の和解は不可能であると改めて納得出来た。

 大方マダラが隙を見て柱間も殺すとでもほざき説得したのだろう。

 マダラの瞳が一瞬揺らいだのをドンは見過ごさなかった。

 

 「では始めようぞ!木遁・花樹界降臨

 

 柱間によって地面から木の根が一斉に芽生え急速に成長し始める。辺り一面は巨大な樹木が無数に絡み合った地形へ変貌を遂げた…そして樹木の先端から巨大な花が開花し、無数の花粉が蔓延し始める。

 

 「風遁・大突破

 

 「火遁・業火滅失

 

 (ッ!読まれていたか!写輪眼で印を…)

 

 ドンが花粉を吹き飛ばそうと風遁の印を結んでいるのをマダラの写輪眼は捉えていた。

 どれだけ早く印を結ぼうとこの眼の前では全ての術が丸裸にされてしまう。うちはマダラが見逃すはずが無い。

 ドンの風遁に火遁をぶつけたことで火遁が威力が増しながらドンに攻め入ってくる。

 花粉もその背後から迫ってきている。

 柱間が生み出した木々を燃やし尽くしながら火遁がドンを飲み込んだ…がマダラの目がドンを逃すことなどありえない。

 

 「下だぁ!柱間!」

 

 大規模火遁による視界不良に加え、マダラに燃やされた木々を再度生成していた柱間の足元の地中からドンが襲い掛かる。

 柱間もすぐさま反応し距離を取ろうとする。何度もドンと戦ったことでこの状況の不味さは理解している。

 決してドンの手に触れられてはならない(………・)。これは千手一族では鉄則となっている。

 しかし残念かな、柱間がドンの間合いから逃れることは出来なかった。土遁・軽重岩の術でスピードを上げられるドンにとってこの距離は既に射程圏だ。

 

 「終わりだな柱間ァ!」

 

 顔を強く引き攣らされた柱間にドンの手が触れてしまう。その瞬間、ドンの手の平から白い(・・)閃光が迸った。

 

 「ぐぁ"ぁ"…ぬぅ! う"ぅ"ぅ"…!」

 

 柱間の右足が根元から消失していた。たまらず地面に崩れ落ちる。

 だが痛みに顔が歪んだ柱間と同じくドンの表情もまた歪んでいた。

 

 (…殺すつもりは無かったが軌道を逸らされたな。あの状況でよくやるものだ)

 

 土壇場で柱間が生成した木遁がドンの腹を突き上げ体勢を崩したのだ。くの字に崩されたためドンの手の平は腹ではなく右足へと向いてしまった。 

 柱間は重傷だ。右足を失っては如何なる屈強な忍であっても戦線復帰は絶望的だろう。

 だが流石は忍の神と評される千手柱間。印を結ばずとも既に右足の傷が再生し始めている。

 

 後に生まれる柱間の孫、千手綱手の様に膨大なチャクラで細胞に刺激を与え高速で細胞分裂を行い、あらゆる傷を再生させる事が出来る。

 多少の寿命は削れるだろうが生命の象徴のような不思議細胞の持ち主だ、何てことはないだろう。

 

 「柱間ァ!」

 

 マダラが柱間を救うために須佐能乎の手でドンを薙ぎ払った。躱したドンだが柱間との距離は離されてしまう。

 須佐能乎によってドンは柱間に近づくことが出来ない。

 手こずっている間に柱間の傷が再生しきってしまった。

 

 「助かったぞマダラ…。奴に触れられてはならんぞ!」

 

 「そんなもんわかってるさ!お前と一緒にすんじゃねぇ!」

 

 柱間が味方だからだろうか。どことなくマダラの口調から族長としての威厳が消え去っている。 

 敵対関係で無いことが大きいのだろう、柱間は笑みを浮かべながら軽快な軽口をマダラと交わす。

 だがそんな二人の目は至って真剣だ。幾度となくドンと戦った経験からマダラ、柱間共にドンの両手に細心の注意を払いながら戦っている。

 

 ───当然だろう。なんせ触られた瞬間その部位を塵にされてしまうのだから

 

 

 ドンもまたそんな二人が警戒する己の両手にちらりと視線を向けた。六年の修行において一番の難関はこの術の習得であった。

 間違いなくドンが会得したこの術によりこの世界の塵遁は大きく躍進した…そう確信している。

 同時にこれまでの苦労が頭の中で追憶され、我が師への畏敬の念も呼び起こされる。

 

 

 (この術…仙塵掌(せんじんしょう)を会得出来たのは仙術を身に付けられたからだった。白蛇仙人には感謝しなければな…)

 

 

 

 

 

 ドンにとっての最強の術は塵遁・限界剥離の術だ。同じ塵遁以外では相殺出来ない。実質ガード不可なこの術への対策は輪廻眼を除けば躱すことしか存在しない。この術が好きだからこそ岩隠れの里が好きになったと言っても過言ではない。

 

 だが、NARUTOの作中では穢土転生体を除けばまともに塵遁が当たることは無かった。

 如何に最強の術と言えど結局は当たらなければ意味がない…塵遁最大の弱点はその命中力の低さに通ずるものがある。

 尤も開発者の無はステルス状態から塵遁を放つため命中率など気にした事は無かっただろう。

 やはり扉間世代の面子は何処か様子がおかしい者ばかりだ。

 

 ドンは何度も、何度も、何度も塵遁の命中率の悪さを改善すべくアプローチを続けた。己の信じる最強の術…それが欠点を有したままであるなどドンには許せなかった。

 四代目火影が作った螺旋丸の様に塵遁は未だ未完成の術だと考えることにした。

 

─────俺が塵遁を完成させる…

 

 決心したドンがまず考えたのは形態変化であったが…これは断念した。塵遁はただでさえ火、土、風の三つのチャクラを混ぜ込むことから緻密なチャクラコントロールを要求される。

 時間をかければ形態変化出来たが戦闘中にそれを行うのは困難を極めると結論付けた。

 

 その他多くの試みを思案したが全てダメだった。そして最後に考えたのは塵遁を身に纏う事だった。三代目、四代目雷影の雷遁の鎧のように塵遁を纏う事が出来ればあらゆる攻撃を塵にし無効化出来る。

 加えて触れるだけで殺せる最強の鎧になると思い至った。

 だがこれも難しかった。雷遁の鎧も緻密なチャクラコントロールが必要な上に塵遁を身に纏えばドンの肉体が塵となるだろう。雷影達の強靭な肉体があってこそ雷遁の鎧を纏えるのだ。

 

 しかしここでドンの頭に疑問がよぎった。

 

 (雷遁の鎧を纏うには強靭な肉体が必須…だがそもそも雷遁の鎧の仕組みとは何なのだ?…雷遁チャクラを放出した後に全身に滞留させている?)

 

 雷影達の体を見ていた限り体が常に雷遁を帯びていた。

 常にあれだけの雷遁チャクラを放出していてはチャクラがあっという間に切れてしまうだろう。

 恐らく雷遁チャクラを放出した後は体の表面に滞留させているのだろう…だからこそそれに耐える強靭な肉体が必要なのだとドンは考えた。

 

 (であれば滞留させるのではなく、一瞬(・・)だけチャクラを放出するのであれば問題はないのか?)

 

 チャクラの放出だけであれば何とかなりそうだ。

 例えば火遁は口から吐いているように見えるが厳密には口元に密集したチャクラ穴から術を放出している。

 火遁使いも熟練度が上がっていけば口元に火傷を負う事無く術を行使することが出来る。つまりコントロールさえ出来ていればチャクラ穴から肉体に触れることなく術を体外に放出することが可能なのだ。

 

 (つまり一瞬でもチャクラ穴から塵遁を放出することが出来れば触れるだけで相手を殺せる最強の矛になる…通常の塵遁と違い発射するのではなく直接触れるだけで良いなら命中率の心配をする必要もない…!)

 

 ━━━━━これだ…!

 

 ドンの口元がゆっくりと弧を描いた。

 だが先は長い。まだまだ課題が多い事にドンは気づいていた。

 そもそも一瞬でチャクラ穴からチャクラの放出が可能な部位は火遁で慣れ親しんだ口元か、普段使いの両手くらいしかなかった。

 戦闘中に相手にキスするわけにもいかない。よって手から放出することを目標とした。

 

 しかしここからが大変だった。

 

 手から放出するにも問題があった。塵遁を放出するのだ…他の術と違い一度でもミスれば手が塵となってしまう。

 闇雲に修行も出来なかった。

 

 だがこの習得に役立ったのが仙人モードだった。仙人モードで全身のチャクラの流れを完璧に感知し続けることで術の暴発のリスクを無くして修行する事が出来る。

 だからこそ白蛇仙人の元で完璧(・・)な仙術を会得するのに三年もの時間を費やしたのだ。

 更にこの緻密なチャクラコントロールを体に染みこませるためにも膨大な時間がかかった。だがドンは妥協しなかった。

 そして遂にドンは完成させたのだ…塵遁を応用した術仙塵掌(せんじんしょう)を。

 

 今では通常(・・)の状態でも両手のチャクラ穴からならば瞬時に仙塵掌(せんじんしょう)を繰り出すことが可能だ。

 こうして触れただけで相手を殺せる、あの雷遁の鎧をも超える最強の矛が完成した。

 嬉しいことに仙塵掌(せんじんしょう)は体を軽くしスピードを上昇させる軽重岩の術との相性が最高であった。

 

 原作のオオノキも軽重岩の術で高速で旋回し拳岩の術で相手を殴りつけていた。

 しかし自重を軽くしているが故に威力が乏しい場面がチラホラと見受けられた。これをオオノキは瞬時に加重岩の術で拳の重さを上乗せする事で解決していた。

 だが仙塵掌(せんじんしょう)であれば触れるだけで相手が塵と化すためそのような事は必要ない。

 つまり更に自重を軽くする超軽重岩の術によって重さを捨てされば、雷遁の鎧同様のスピードで戦闘する事も可能だ。

 

 

 

 

 

 

 

 目の前の柱間とマダラに視線を戻す。

 だが未だに超軽重岩の術との併用は誰にも見せたことは無い。

 彼らを殺す気が無かったこともあるが、奥の手の仙人モードを見せることになるからだ。

 そう易々と己の手は明かせない。

 

 (写輪眼を得るまでカカシの千鳥が未完成の術であった事と同じだ。仙人モードでなければ超軽重岩の術のスピードに俺の反射神経が追いつかなくなる…)

 

 仙人モードによる高感度の感知と併用しなければ超高速での戦闘に対応が出来ない。写輪眼の無い千鳥と同じくカウンターに対処する事が難しくなるため普段使いには出来ない戦闘スタイルだ。

 尤も雷影達は雷遁で全身の神経を活性化させることで対応可能らしい。ずるいと思うのはドンだけだろうか。

 

 柱間が印を結ぶと同時にマダラも動き始めた。マダラは写輪眼で柱間の印を見ることで柱間の意図を瞬時に読み取り行動に移したのだ。

 写輪眼の開眼者が一人味方に居るだけで連携の難易度が大きく下がるのも納得が出来る。

 加えてマダラは柱間の印を全て見なくともある程度の行動を予測できる。長年戦ったことで柱間の印の情報はマダラに蓄積されているのだ。

 

 「木遁・大槍樹の術

 

 ドンの足元から複数の大樹が出現した。先端は槍の様に鋭利であるためドンは跳躍しいつものように宙を舞った。

 しかしそんなこと柱間には読めている。ドンが飛んだと同時に生えたばかりの大樹から小枝達が芽生え、ドンに向けて射出された。

 飛ばしたスピードもさることながらこれまた先端が鋭く尖っている。加えて更に…

 

 (これら全てが挿し木の術の苗だと…!死角も無い、柱間め…何というえげつない術を…!)

 

 柱間の用意周到さに毒づきながらドンは印を結ぶ。

 ドンは避けるそぶりを一切見せずその体で全ての小枝を受け止めた。甲高い金属の様な音が鳴り響き小枝はドンの体に弾かれた。

 全身を黒く染めたドンの体は鋼鉄のような硬さを誇っている。暁の角都も愛用していた土遁・土矛の術だ。

 あらゆる物理攻撃を物ともしないこの術は雷遁以外にはすこぶる強く出られる。尤も限度(・・)はあるが。

 

 しかしその瞬間ドンの左右から青い影が迫ってくる。マダラの須佐能乎が数珠の様に繋がった勾玉を打ち出したのだ。

 柱間が作った隙で確実に仕留めるために影分身まで結んで機を伺っていやがった。やはり兄弟(・・)の様に息の合う奴ら。全く持って忌々しいとドンの悪態は続く。

 

 空中で姿勢を変え硬化させた両手でそれぞれの勾玉を掴み取った。タイミング的に避ける事は不可能とは言えこんな事をしたくは無かった。

 ガリガリと鈍い音を立てながら土矛の術で硬化した手が削られていく。やはり土矛の術と言えど限度(・・)はある、須佐能乎クラスの攻撃では分が悪いか。

 そう判断したドンは仙塵掌(せんじんしょう)で勾玉を塵に変えた。

 だが一息つく暇もありはしない。既に次の勾玉が控えている。

 

 「まだまだあるぞ…ハハハㇵㇵㇵ!」

 

 狂ったような笑みを浮かべたマダラによって勾玉の爆撃がドンに襲いかかる。

 恐らく影分身の術を使用したのだろう。

 二体の須佐能乎から打ち出される勾玉を両手で払い続けるもこれではキリが無い。下からは柱間の木が迫ってきており逃げ場も無い。

 飛んで逃げたいが二体の須佐能乎の爆撃がそれを許さない。

 

 (…不味いな。まずはマダラの方を何とかしなければ本当に死にかねん…!)

 

 「これで終わりぞドン!」

 

 柱間が勝ちを確信したがそうはいかない。

 ドンの背中から黄金の鎖…金剛封鎖が飛び出し柱間が生み出した一本の大樹へと突き刺さった。

 鎖が大樹に練りこまれた柱間のチャクラを封印したことでこの大樹にドンが襲われる心配は無い。

 鎖がドンを大樹の方へと引き寄せ始めた。二体の須佐能乎が方向を変えるため弾幕が一瞬止んだ。その瞬間を見逃すドンではない。

 

 「塵遁・限界剥離の術

 

 直ぐに両手を合わせた後に二体の須佐能乎それぞれに片手を向ける。当然マダラも避けるが両手をクロスさせながら塵遁で薙ぎ払ったことにより影分身を解除し須佐能乎を引っ込めざるを得なかった。でかい的になるだけだからだ。

 斜線上の木々も消し去り柱間のステージを半壊させることにも成功した。

 すぐさま鎖を消し宙を飛ぶことでやっとこさ死の陣形から逃れ体勢を整えることが出来た。

 

 

 「…随分と息の合った連携だったな。仲が良さそうだなお前らは」

 

 思わず零れたドンの言葉に柱間は笑みを、マダラは怒りを浮かべ思い思いに言葉を並べる。

 

 「ふざけんなぁ!こいつと相性がいいだと…冗談でも許せねぇぞドン!」

 

 「やはり傍から見ればそのようなのだな。扉間にも言われたぞマダラ!ハッハッハッ!」

 

 

 喜ぶ柱間はともかくマダラも一見怒っているがよくよく見ると照れが隠しきれていない。何だかんだ柱間と相性が良いのは本人もわかっているのだろう。

 インドラとアシュラのようにこいつらも兄弟みたいな感覚を無意識に持っているとドンは睨んだ。

 

 

 「…すまんなマダラ。詫びとして伝えるが俺は火の国を出るつもりだ。これ以上お前達と戦うつもりはない」

 

 ドンの言葉に柱間とマダラの顔も怪訝な表情へと変わった。

 散々傭兵として戦を掻きまわし、火の国を滅茶苦茶にしたコイツが今更他国に行くと?

 そもそも理想のために闘争が必要だと聞いていた柱間にとっては、ドンが何をしたかったのか本当に理解出来なかった。

 

 「そもそもドンは何をしたいのだ。この戦乱の時代に終止符を打つと言っておきながら争うばかりではないか」

 

 柱間が疑念の視線でドンに問う。

 柱間の疑問は最もだ。争いを止めるために争いをすることでこの時代は続いているのだ。相手を黙らせるために争いを起こすこの時代の業と、ドンが行っている闘争は何ら変わりは無いのだから。

 

 マダラが目を見開いてドンを見やった。

 マダラにしてみれば初耳だ。ドンが平和を望んでいるなど知らなかったし、今までの戦闘からもそんな気高い理想を微塵も感じ取れなかった。

 故に柱間と同じ疑念をマダラも抱いてしまう。

 

 「お前に平和を語る資格があるとは思えんがな。それにそんな事は不可能だとこの時代が証明している」

 

 あのうずまきドンが平和を語る⋯。それは許されない事であり、出来るはずが無いとマダラは確信している。ドンの行動が火の国(・・)に平和をもたらすはずがないのは今までの行動を見れば明らかだ。

 

 「マダラ、確かに今の俺の行動は矛盾している。そう思うのは無理は無い…だが俺の名は確かに忍界へ広まった。後々これが必要になってくるのだ」

 

 柱間にもマダラにも意味が分からなかった。

 名を売ることが平和に繋がる…?うちはと千手である自分達の名も忍界に轟いている。だが戦は減るどころかその力を求めて増えるばかりである。

 ドンの思惑がはっきりしない。

 他国に出たとしてもドンの名前に群がる権力者達がドンを利用して大きい戦争を繰り広げる事しか想像出来なかった。

 

 「柱間…こいつはここで殺すべきだ!争いをばら撒くこいつこそこの時代の癌そのものだ!」

 

 マダラも同じことを考えたのだろう。結局のところドンが生きているせいで争いが長期化することは目に見えているのだ。

 柱間も同意見でここでドンを殺すことが忍界の為になると判断せざるを経ない。

 

 ドンの視線からは確かに強い決心を感じる。確かに平和を築くのだろう。だがそれだけでは無い。その先を見据えた何かを抱いているのが柱間にはわかった。

 平和を望む柱間だからこそわかる。()はついていないと。

 平和を望むだけなら柱間の手を取ればいい。だからこそその手を取らないドンに疑念を抱いてしまうのだ。

 

 俺達に匹敵する力のドンがこのまま他国に出たらどうなるのだろう。

 きっとドンの抱く平和までの長い道のりで多くの犠牲が出てしまうだろう。

 また人が、忍が、そして幼子らが死ぬのだ!

 そのような事を許すことは出来ない。故にドンを野放しには出来ない。

 

 「すまぬドン…!他国までお主の理想の被害に合うのは忍びない。ここで俺たちがお前を殺す!」

 

 柱間から許可が出た。そう考えたマダラは須佐能乎を顕現させその腕を振り上げた。

 ドンも空中へ飛び旋回し始めた。柱間によって再び地面が木々に覆われ始めたからだ。

 

 「木遁・木分身の術

 

 柱間から四体の木分身が生み出された。木分身は旋回するドンに向けて挿し木を連打し牽制をかけ、マダラも勾玉を打ち出すがやはり当たらない。空を飛べることは莫大なアドバンテージであり容易に攻撃を命中させることは出来ない。

 だからこそ先ほどの様に殺陣の陣形にドンを落とし込み、ドンの身動きを封じたうえで波状攻撃を仕掛けなければ殺すことが出来ないと扉間から伝えられていた。

 

 「塵遁・限界剥離の術

 

 飛行する間にドンが塵遁を完成させ再び薙ぎ払ってくる。マダラも柱間も躱すがドンの狙いが分かり切っているため苦い顔を隠せない。再び柱間が整えた木々のフィールドが塵と化した。

 柱間の木遁は一度木々を生み出し己の有利な場所へと変えてからでないとその真価は発揮できない。はっきり言って仙術(・・)を会得していない柱間ではドンに勝つことは不可能だろう。

 

 

 (正直もう飛んで逃げてもいいが…)

 

 木々を薙ぎ払ったことで一旦安心感が芽生えたドンである。顔からも余裕を感じ取ることが出来、下の二人とは雲泥の差と言えよう。

 もう逃げるのも手だがここで柱間、マダラ相手に打ち勝てば土の国でのネームバリューが更に上がる、今少し戦闘を続けようか迷っている所だ。

 ドンは柱間の木分身が放つ挿し木を旋回しながら避け思考に耽る。

 

 ────だからこそ気づけなかった

 相手が勝利を確信した時こそ生まれる油断を付け狙う存在を…

 原作からその危険性を十分熟知していたはずなのに

 

 思考に気を取られこちらに飛んでくる挿し木をギリギリ(…・)で躱した瞬間だった。

 

 

 「飛雷神切り!

 

 突如現れた扉間によって腹を切り裂かれた。

 

 「ぐぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!」

 

 墜落しかけるドンだが足元には柱間の木々がまた生えている事を思いだし、気力を振り絞り高度と体勢を維持しきる。

 傷はそこまで深くは無い。足場の無い空中では腰を入れて刀を振り切れないからだ。

 だが激痛が走ると共に体が少し痺れ始めてきた。

 高所から綺麗に地面へと着地した扉間を怒りの籠った目で睨みつけた。

 目に映った扉間の刀からは血とは異なる液体が滴り落ちている。

 

 「ゴホッ…ゴホッ…これは…毒か…!」

 

 傷口から血が噴き出し激痛が全身を駆け巡る。しかしそんな中ドンが抱いたのは迸る怒りの感情だった。

 己の短慮を呪う、真実とは目に映るものだけでは無いことに改めて思い知った。

 扉間が居ないと思い込んでいた己に怒りが止まらない。

 侮っていた。イズナが来ないなら扉間も居ないだろうと安心しきっていた。

 扉間はイズナとは違う。うちはとの共闘等にくだらないプライドを持ち込まないのはわかっていたはずなのに。

 

 (俺を殺すチャンスを扉間(こいつ)が逃すはず無いだろうがぁぁぁ!)

 

 己への怒りで我を失いそうになる。だがそれは扉間の思う壺だ。

 ドンはようやく無やマダラが言っていた扉間の本質に気がついた。

 なるほど、やはりこやつは卑劣な奴だと。

 

 更には飛雷神の術…。既に開発されていたのは知らなかった。少なくともドンとの交戦では使うところを見たことが無かった。

 扉間のことだ…どこならドンに飛雷神を決められるか観察していたに違いない。そのため限界まで飛雷神を秘匿していたのだ。

 恐らく先ほどの柱間が放った挿し木…あれは飛雷神の術式が刻まれたクナイを包みこみ鞘としての役割を果たしていたのだろう。

 

 (柱間が放つ飛翔物全てから扉間が飛んでくる可能性がある…!?冗談では無い!)

 

 

 何をしてくるか分からない恐怖が扉間にはあった。

 扉間が生きている間は他国の忍は枕を高くして眠れなかったのだろう。無があれだけ嫌っていたわけだ。

 原作の扉間の頼もしさは読者故に感じていた一面性でしかない。

 敵になるとこうも姑息に感じるのか。マダラのあの言いようは尤もだ。

 

 

 今まで上手くいきすぎていた、己の超えるべき敵の強さとはこういうベクトルもあるのだと身に染みる勉強になった。

 熱も出てきた。体が熱い。呼吸も浅くなりそうだ。

 やはりマダラや柱間以上に扉間が厄介だと感じる。こいつが持つ頭の柔軟性はこの時代出身であるが故のモノだろう。生きる知恵と言ってもいい。

 最後に扉間が浮かべるしたり顔を強く睨みつけドンはその場から飛び去った。

 

 




卑劣様ってやっぱ凄すぎます。
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