岩隠れに栄光あれ   作:WBX

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第六話です。
補足とドンの言動に違和感を覚えた為再投稿しました。



悪意

 

 

「また同胞が一人岩の忍にやられたぞ。これでも奴らを信じろと言うのか柱間…!」

 

 再び起きたうちは一族の殺害、その報告を受けたマダラが火影室へ怒鳴り込んだ。

 事の始まりは雲と霧との戦争が始まっておよそ一ヶ月、戦地へ里の精鋭が送り込まれたのを境にうちは一族の者が殺害され始めた。

 勿論うちはも黙っていない。組織的に守りを固め襲撃者へ反撃、返り討ちにする事に成功した。

 

 ところがその襲撃者は岩隠れの額当てをしていたのだ。何かの間違いでは困るため日向の白眼、うちはの写輪眼、その他感知タイプの忍が検死を行ったが確かに木の葉の忍では無かった。

 しかし同時に岩隠れの忍と言う確証も無かった。

 

 ───木の葉と岩を争わすための罠かもしれない

 

 冷静な意見も挙がり、それとなく岩へ連絡を取ることになった。しかし帰ってきた返書では、岩も此度の事に覚えが無いそうだ。

 そのため柱間はマダラを諫め真犯人を見つけ出そうと日々奮闘した。

 マダラも溢れ出る怒りを押し殺し自らパトロールへ買って出て解決の糸口を見つけようとしていた。

 

 だがそれでも襲撃が続き、遂に決定的な事が判明してしまった。

 何とうちは一族の者が襲撃者の一人にドンが居たと報告してきたのだ。

 その者は老齢だがその分戦闘経験豊富なやり手であり、一族からの信頼も高い男だった。

 写輪眼には確かにドンの顔とチャクラの色が映っていたと、その目に血眼にして証言していた。

 

 事の重大さ故に木の葉上層部は真偽を確かめるべく、検証班を脳内に入らせ記憶を読み取らせた。

 その結果は黒。確かにドンがうちは一族を襲撃し、写輪眼を抉り取って逃げる場面が確認出来たそうだ。

 激昂したマダラが今にも岩へカチコミそうなのを皆で必死に抑え、柱間は岩へ抗議の文書を送り付けた。

 あくまで争いを起こさぬよう話し合いで決着させたいのが木の葉上層部の意見であった。

 

 しかし岩は相変わらず知らぬ存ぜぬと変わらぬ返書を寄越した。当然マダラ、うちは一族はそれに激怒する。

 写輪眼の瞳力はうちは一族が一番よく知っている。それを欺くなど到底ドンであっても出来はしない。

 それに出来ているなら先の火の国の戦で自分達を欺いているはずだからだ。

 検証班も「写輪眼はチャクラを色で見分ける以上ドンのチャクラの色を間違えるはずが無い」と結論付けた。

 

 木の葉が雲と霧との戦争に手を焼いている内に岩は写輪眼をかっさらおうとしている、誰しもそう考えてしまった。

 だが霧と雲に加えて岩まで相手にする余裕は今の木の葉には無い。なんせ岩にはあのドンが居る、他の岩の戦力を加味すれば最悪負けかねないのだ。

 

 何処か釈然としないがドンならうちはを襲撃し、写輪眼を岩のために強奪しかねない怖さがある。

 己の計画のために平気で火の国、己の一族を踏み台にした男だ。そんな奴の倫理観は信用出来ない、そう考えるのが普通だった。

 

 「…しかしマダラ、木の葉はただでさえ雲と霧との二方面での争いを強いられておる。これ以上戦線は抱えられん、岩にはあのドンも居るのだぞ…」

 

 岩との戦を何とか回避したい柱間だがそんな事をマダラ、うちは一族が許すはずが無い。

 『一族を守る』、そのイズナとの約束を果たすためにマダラは千手と結び木の葉隠れの里を設立したのだ。

 一族を守れない…ならイズナの死は…、弟の死は何だったのだ。マダラがそんなことを許せるはずが無かった。

 

 「ッ! ふざけるな柱間…俺の同胞の死は里を守るために見過ごされるってか? 冗談じゃない! 誰もが安心出来る居場所を作る…それが俺達の作った里のはずだろうが!」

 

 一族を守るために里を作ったのに、里の都合で一族が見捨てられるなど本末転倒だとマダラは激怒した。

 柱間もマダラの言いたいことは痛いほど分かる。だが、それは受け入れ難かった。

 そのためにより多くの者を戦場へ送らなければならない。また人が死ぬ、大勢死ぬ。

 木の葉隠れの里を預かる火影として報復を許すわけにはいかない。大のために小を切り捨てる理由がそこには存在した。

 里が出来たことで生まれた歪み、闇の部分が垣間見えた瞬間だった。

 

 (だがこのままではマダラの想いは、うちは一族は…ッ、俺は、俺はどうすればよいのだ…!)

 

 未だ悩める柱間にマダラが更なる追い打ちの言葉を掛けようとしたその時だった。

 

 「そこまでだマダラ、兄者。ワシに考えがある。要は木の葉の犠牲が少なくなれば良いのであろう?」

 

 言葉を遮った扉間をマダラがギロリと睨みつけた。可愛い弟を殺した憎き男、その冷酷さ、合理主義は柱間が生みだす甘さを程よく締め付けるいい塩梅を里にもたらしていた。

 

 だがこの扉間なら何とかしてくれるかもしれない、そんな頼もしさを不覚にもマダラは感じてしまった。

 どうせ此度も悪辣な考えを張り巡らしているのだろう。だがその卑劣さ、悪辣さが敵に向かうならこれ程頼もしい奴はいない。

 他の一族の者もその意見には同意するだろう。

 

 「何をするつもりだ扉間…。それ次第で俺は岩と戦えるんだろうな…!」

 

 マダラの射殺すような視線を物ともせず扉間はマダラへ頷いた。

 扉間も今回の事件に釈然としていない。本来ならもっと検証を重ねたいところだが、これ以上手をこまねけばうちは一族は反乱を起こしかねない。

 

 里を第一に考えるなら大のために小を切り捨てるべきだ。

 里こそが要であると柱間、扉間は理解している。

 だがマダラは違う。その力は強大だが些か幼い心を持って居るのが玉に瑕だ。

 力を持った子供程何をしでかすかわからない怖さがある。

 

 これがおとなしく離反してくれるならまだマシだろう。

 だが反乱まで発展すれば他里に付け込まれかねない。

 そうなれば木の葉は外と内から攻められ滅亡の危機に瀕す事となる。

 しからば背後を常に警戒しながら戦うより、戦力差を何とかして岩と戦をする方がリスクが低い。

 

 (それに岩の動きが本当の可能性もある…。マダラの言い分も間違っている訳では無い…)

 

 土の国は豊かだ。火の国と同様に他国から奪う必要は無く、守るだけでいい国だ。

 なら攻めるとしても国境沿いの守りはドンによって固く閉じられているはず。

 幾らマダラでもその守りを食い破り、里の奥深くまで入り込むのは難しいだろう。

 ならドンに国境沿いで食い止めて貰いマダラの溜飲を下げさせる。

 しかしこれでは万が一マダラが敗れれば木の葉に逆進行を受けかねないため、もう少しスパイスを加える必要がある。

 上手くいけば早期に和平を結ばせる(…・)事が可能かもしれない。とにかくうちはの反乱だけは防がねばならないのだ。

 

 

 「ワシが何とかしてみせる。それに試したい術もあるのでな…」

 

 扉間の眼力からは確固たる自信が滲み出ている。やる時は必ずやる男、その目には既に辿るべき道筋が映っていた。

 マダラもその目を見て一先ず矛を下ろし、今暫く結果を待つ事にした。

 

 (うちはを切り捨てる方が里の為には良い…だが兄者が許さぬだろう。岩との戦は致し方無い…か)

  

 やはりうちは程愛情深い一族はいない…、情を抱けば抱くほど脆くなる愛に呪われた一族。

 その愛の喪失による矛先が何時里に向くか分からぬ以上、うちはは里で最も危険な一族として扉間に認識される事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日岩隠れの上層部は皆一様にドンに集められ、会議室にて缶詰にされていた。

 お題は少し前から送られ始めた木の葉からの抗議書…皆心当たりは無く全くの濡れ衣である。

 うちは一族を襲撃して何の意味があるのだろうか。写輪眼なんぞ岩の者には馴染もないため必然的にうちはを知るドンが一応疑われた。

 

 「俺も全く(・・)知らんぞ…。そもそも木の葉に向かう暇何ぞあるわけ無いだろうに」

 

皆の予想通りの回答だった。ドンが土影の激務を常にこなしており、空いた時間は無との修行や青ツチとのデートにしか当てていないのは周知の事実である。

 これで木の葉の里の中心部でうちはを襲撃する暇などありはしない。

 誰にも心当たりが無い為この抗議書が本物か疑う声も挙がり始めた。

 

 「我々は雲と霧からの参戦要請も断っておるしのぅ。木の葉を刺激して戦の火種を作る何ぞする訳が無いじゃろうて…」

 

 イシカワの言う通りだ。そもそも岩は雲と霧からの参戦要望を断り戦争を静観している。

 長年に渡る争いを終わらせ皆手を取り合って里を興したのだ。

 これからの未来、一族を守るために作った里に新たな戦を求める者はほぼ皆無と言っていいだろう。

 せっかく国も順調に育ち余裕が生まれ、皆が優しさで手を取り合えるようになった。

 そんな岩を陥れる此度の事件…

 

 「やはり何者かの陰謀でしょうなぁ、苦戦している雲と霧…奴らが岩も参戦せざるを得ない様工作をしたのでは…」

 

 苦々しく語られたゲンの考えは一理ある。今のところ雲と霧だけでは木の葉を攻め切れていない。

 強力な血系限界を多く有する木の葉は二国と十二分に戦えているのだ。

 決定打に欠ける雲と霧が、柱間やマダラと互角に戦うドン…岩隠れの里の参戦を望むのは必然と言える。

 

 (恐らくは黒ゼツ、白ゼツの仕業だろうな…。成り代わりの術で俺に化けたか)

 

 動き始めた悪意に目を細める…。やはり黒ゼツ、奴には戦の規模を拡大させ悲しみをばら撒く事がメリットになる。

 たった一人の男、マダラを絶望に叩き落すためにこの忍界をぐちゃぐちゃにするつもりだろう。

 邪悪な意思の存在が蠢いているのはドンにしか知り得ない事だ。

 

 (とは言っても黒ゼツの事なんぞ誰にも話せんしそもそも証明出来ん。傍から見たら根拠の無い戯言を並べる狂人にしか見えないからな…)

 

 

そのため木の葉には『此度の件は知らぬ事』と返書するしかなかった。実際真実でもある。

 既に事態は動き始めている。木の葉がこれ以上手をこまねくわけがない。むしろ良くここまで静観してくれたものだ。

 早く手を打たなければならない。うちはの写輪眼を狙った以上マダラは来るだろう、それまでに国境の守りを更に固くしなければならない。

 

 「…聞け!木の葉との国境沿いの守りを更に固める事とする。今の守りではマダラは抑えきれん。奴に対抗出来るのは俺だけだ」

 

 本格的な戦争が始まることで皆に激震が走った。またか、また争いが始まるのかと顔を暗くする者が現れ始めた。

 岩隠れには落ち度は無いはず、何故我らが攻められなければならないのか。

 あの地獄が更に大きく広がる絶望が彼らを襲っているのだ。

 

 「皆が苦しい様に俺も苦しい…。この世は不条理だらけ、未だ平和とは程遠いのかもしれない。だが少なくとも我らの里は楽園であった。皆もそれは分かっているはずだ」

 

 そうだ、そうであった。ドン、そして皆で作ったこの里は確かに楽園だ。

 我らの子らが笑顔で学び、健やかに成長できる夢のような場所だった。

 本当に求めた場所は確かに作れたのだ、それだけは皆も大きく頷けるはず。

 

 「だから守るのだ。この世は未だ地獄だろうと、我らの里はまさしく夢のような平和の揺り籠なのだ。そして、それを守るために我らは里を興した。そうであろう!」

 

 「そうだ!我らが小石だったあの頃とはもう違う…。その意思()、結束力の大きさは既に雲泥の差よ!」

 

 ドン、ゲンの言葉を足掛かりに皆一斉に決意を露わにする。

 既に自分達は大きな石よ。その大きく硬い意思()でもって未来の小石らを支えるのだ。

 皆が一つとなったこの里は決して割れない、砕けない。

 我らが流した血で幼子が血を流さぬのなら本望なのだ。

 

 「では皆の者、準備を急げ」

 

 ドンの一声で一斉に動き始める。皆覚悟を決めた強い意志をもって。

 

 

 

 

 そして一ヶ月が経ち、遂にマダラ率いる木の葉の忍が岩との国境に集った。

 見計らったように砂隠れも木の葉へと軍を進め遂に四方を木の葉は囲まれるこ事となる。

 だがそんな状況で岩との戦を扉間が許すはずが無い、間違いなく何か仕掛けてくるのは間違いないだろう。

 決して油断はしない。ドンは前回の過ちからそう覚悟していた。

 

 「くくくッ…漸くここまで来れたぞドン…。先ずは貴様が抉り盗った同胞の目を渡せ…話はそこからだ」

 

 マダラが喜びを噛み締めながらドンへ言葉を投げかける。やっと、やっと岩隠れの里まで来れたのだ。

 これまで受けたうちはへの辱め、鬱憤を晴らす時が来たと写輪眼をギラつかせている。

 

 「聞けマダラ…。俺達岩隠れは何もしていない。恐らくは何者かが仕組んだのだ…俺達を争わせるためにな」

 

 ドンの潔白を訴える言葉もマダラには届かない。当然だろう、うちは一族が誇る写輪眼を欺くなどそう出来やしない。

 記憶まで読み取ってドンの犯行を確定させたのだ、発す言葉全てが軽く聞こえ耳障りに感じてくる。

 

 せめてこの第一声が過ちを認める発言ならば少しは見直していただろう。同胞の目を返し、その腹を裂いて自害するならばこのまま引き返してやってもいいと思っていた。

 

 「ここまで来て認めないとはな…。お前はもっと芯を食った男だと思っていたがとんだお門違いだったな」

 

 やはりマダラには届かない。イズナが残した一族を愚弄したドンを許すはずが無い。

 うちはを愚弄し、木の葉まで愚弄するドンの蛮行は既に木の葉でも広まっている。

 戦の回避は不可能。やはり戦うしか無いとドンは悟る。

 

 マダラ率いる木の葉の忍にうちはの者は殆ど居ない。ドンが本当に写輪眼を欲しているなら易々と戦場でくれてやるわけには行かないからだ。

 更にはそのマダラを監視する役割も備えた扉間も着いてきている。

 マダラと扉間、この二人を相手にするには一筋縄ではいかない、特に扉間の動きには注意しなければならない。ドン率いる岩隠れの忍にはそれを徹底させている。

 

 「ドン、前回ワシがくれてやった毒で死なぬとはな…。うずまきの奴らも驚嘆しておったわ」

 

 扉間はあの毒でドンが死ななかったと聞きうずまき一族を再び糾弾した。

 毒は偽物を掴まされたと思ったが、あの慌て様なら本当だったのだろう。

 扉間も用意周到にドンを殺すべく立ち回っていたがドンも同じだったようだ。やはり一人で土の国を束ねただけはある。その計画性、用心深さは認めなばならない。

 

 「…お前みたいなのが居るからな…。だがうずまき一族には悪く思っている。お前達の方から伝えといてくれ」

 

 ドンの言葉にマダラも扉間もせせら笑う。お前が木の葉にいれば火の国の戦は四年は早く終結できていただろうに。その元凶が何を今更…と。

 

 「どの面下げてうずまきを語るのか…! この裏切り者がッ…」

 

 その一声を最後にマダラが高速で印を結び始め、同時に扉間も動き始める。

 ドンもその動きを察知し印を結び始めた。

 お互いの印が完成し術が解き放たれる

 

 「火遁・業火滅却

 

 「土遁・大地動核

 

 マダラの口から放たれた業火がドン含める岩隠れの忍を飲み込むかと思われた…が、マダラを中心とした地盤が突如大きく下へ沈降した。

 業火は沈降した土壁によって阻まれドン達へ届くことは無い。マダラが地盤の高い場所へ行くため跳躍しようとするがそうはさせなかった。

 

 「土遁・山土の術

 

 山程の巨大な岩が地中から現れ、両端からマダラを押しつぶしにかかる。岩は余りにも大きいため跳躍ごときでは逃げる事は出来ないだろう。

 普通の忍なら成すすべも無いが、敵は相手はあのうちはマダラだ。

 マダラを押しつぶしたはずの大岩の中心部から亀裂が走り、青い剣によって大岩はバラバラに切り裂かれた。

 須佐能乎が顕現し、既にマダラの眼は万華鏡写輪眼へ変わっている。

 

 マダラを覆う青い須佐能乎は以前とかなり変わっている。イズナを失いその眼を移植したことでその姿を変え、強さは桁違いに跳ね上がっている。

 一種の美しさを醸し出す須佐能乎だがそんな感情は一瞬で置き去りにされた。

 

 「影分身の術

 

 扉間が影分身を結びクナイを両手からドンへ弾き出した。飛来神の術式が刻まれたそれは存在するだけでドンの心を脅かす。

 すぐさま宙へ飛び上がり旋回し始める。

 

 「頼んだぞお前達!」

 

 まずはマダラを岩の忍達から引き離す必要がある。

 ドンの本領、広範囲の殲滅攻撃を発揮するためだ。

 更にマダラの攻撃で味方が巻き込まれぬためにも、ここから離れなければならなかった。

 ドンの一声と同時にイシカワ率いる岩の忍が一斉に印を結び始める…が、そうはさせない。

 何時の間にか設置されてたクナイへ扉間の影分身が飛んでおり、水遁を放とうとしている。

 

 扉間が印を完成させ術を放つ直前、突如そこから飛び去った。

 飛び去った扉間の足元をよく見れば泥だらけになっている。もう少し遅ければ沼に囚われていただろう。

 扉間が妨害した術者、イシカワを見て目を窄めた。土遁・黄泉沼により岩の忍達への妨害は叶わない。すなわちそれは術が完成してしまった事を意味する。

 

 「「「「土遁・裂土転掌」」」」

 

 地面に亀裂が走った。地盤が捲りあげられて生まれた土の大波がマダラへと襲い掛かる。宙へ飛んで避けようにも須佐能乎の足をドンの土龍に絡み取られてしまっている。

 土の波はそのままマダラを遠くの戦場へと押し流してしまった。

 本来であれば扉間も本隊から引き剥がしたいが奴には飛雷神がある、それは不可能だった。

 

 「扉間を頼んだぞ(……・)イシカワ!」

 

 ドンへイシカワは大きく頷き返し、扉間と向き合った。

 本来の岩隠れ里初代土影、そして未来の木の葉隠れの里二代目火影…その戦いの火蓋が今切って落とされた。

 

 

 

 

 

 「俺を引き離したかドン…。砂利が邪魔なのはお互い同じようだなッ…!」

 

 マダラが嘲笑を浮かべながら遠く離れた戦場へ振り返った。ドンと同じようにマダラも本気を出すには味方が邪魔だったようだ。

 尤も味方を砂利と言い表すところがこの男の本質を示している。己の一族以外への関心は相変わらず低い、柱間も苦労しているだろうて。

 

 「……大切な仲間、家族達だ。決して砂利などではないな」

 

 パンッ!と叩かれたドンの両手が離されると白く輝く円柱が手中に現れた。やっと本気を出し始めたドンにマダラも狂気的な笑みを浮かべ須佐能乎の剣を振り下ろした。

 空中で(ひるがえ)り剣戟を躱す。そのまま旋回し遂に術が解き放たれる。

 

 「塵遁・限界剥離の術

  

 須佐能乎を消したマダラによってやはり塵遁は躱された。

 そのままドンは超軽重岩の術をかけてマダラへ突っ込む。

 塵遁が当たらない以上仙塵掌(せんじんしょう)で直接塵にするつもりだ。

 

 (マダラ相手にインファイトは分が悪いが試したい事もある…)

 

 マダラはドンの顔に浮かび上がった隈取に目を見開いた。仙術、あの柱間が使っていた奥の手をドンも隠し持っていた事に気づいたからだ。

 顔に浮かぶ笑みは更に凄惨なモノへと変貌した。

 あの柱間も使った仙術だ、一体何をしてくるのかと胸の高鳴りが収まらない。

 「ハハハハハ!仙術…、お前まで使えるとはなッ!やはりお前と柱間は俺を楽しませてくれる…!」

 

 そのまま格闘戦が始まり、仙人モードと併用して初めて扱える超軽重岩の術を組み合わせたドンの高速の攻撃を全てマダラは躱していく。超軽重岩の術を併用したドンの動きは本来目で追えるようなものではない。

 だがマダラの眼は万華鏡写輪眼、その瞳力でドンの動きは全て見切られてしまう。だからこそマダラ相手に格闘戦は分が悪いのだ。

 柱間はドンの高速の動きに付いていける眼を持たないがマダラは違う…。

 

 「その高速移動は見たことが無いなァ!だがこの眼の前には全ての動きが無に帰す、そう学ばなかったかドン!」

 

 原作でもサスケは尾獣チャクラモードや雷影の高速移動を写輪眼で容易く見切っていた。

 うちは一族で歴代最高の瞳力を誇るマダラが言っている事は本来は正しい。そう。本来は…。

 動きを見切ったマダラが遂に反撃に移り、ドンの腹へ右の抜き手を突き刺そうとした。

 だがその瞬間白い閃光が迸りマダラの絶叫が響き渡った。

 

 「ぐぁ"ぁ"ぁ"ぁ"…ッッ…!」

 

 マダラの右手首から先が消し飛んでいた。抜き手の直前、ドンが腹から発した仙塵掌(せんじんしょう)によってその手は塵と化したためだ。

 ドンは通常の状態では両手からしか仙塵掌(せんじんしょう)を発せない。だが仙人モードになれば全身のあらゆるチャクラ穴から仙塵掌(せんじんしょう)を放つことが出来る。

 敵の攻撃を常に感知し、攻撃される部位を予測する、そしてチャクラ穴から針の穴を通すコントロールでその部位から仙塵掌(せんじんしょう)を放つ。

 

 それはあらゆる物理攻撃に対しての最強カウンターと化す。

 いくらマダラであろうと初見(・・)では見抜けないはずだ。

 追撃をかけようとドンが接近するが須佐能乎の拳が地面から突きあがり、一瞬動きが止まってしまった。

 

 (チィ!今しかチャンスが無いというのに…!)

 

 ドンの願い虚しくマダラの左眼の万華鏡写輪眼の模様の回転が止まった。時が僅かに巻き戻りマダラの右手が元に戻った。

 マダラの左眼の万華鏡写輪眼の固有能力。ほんの僅かな時間だが時を巻き戻すが可能だ。

 だからこそ追撃で右手を巻き戻せぬようにしたかった…。

 脂汗を流しながらマダラがドンを見やる。その笑みを崩すことは無い。

 

 「くくく…!そうかッ。貴様は仙人モードになればそれを全身から放てるのか。俺と柱間を相手によくぞここまで隠し通せたなァ!」

 

 ドンはこの初見で仕留めたかった。

 火の国に居た時代、ドンは柱間には優位に戦えていた。

 塵遁で柱間のステージを塵にしながら戦える以上、その本領を発揮させないため有利に事を運べたからだ。

 対してマダラはその眼で塵遁、仙塵掌(せんじんしょう)、その他の術を見切りドンの有効打を決して貰わない。

 だがドンは空を飛べるためマダラのあらゆる攻撃を躱す事が可出来た。

 つまりお互い有効打を打てない千日手となっていた。

 

 勿論ドンが本気を出せば勝てただろう。何故ならドンは莫大なチャクラを溜め込んでいるためマダラが戦闘を続行出来ないまでチャクラを使わせる持久戦に持ち込めば良かったからだ。

 実際今もチャクラ切れまで粘ればマダラに勝てる、しかしそれでは扉間に相対するイシカワ達への援護に行けない。

 

 (やはり簡単には行かんか…。幾らイシカワとは言え扉間相手にそう長く戦えるとは思えん、援護に行きたいところだが…)

 

 念には念を、そう思ったドンは空へ火遁を二発打ち上げた。火遁二発は援軍要請の狼煙だ。

 早めに待機させている援軍を呼んだ方がいい、そう決断した。

 援軍は比較的近くで待機させている。最初から本隊に混ぜる事も考えたが、マダラの火遁等の大規模忍術で一撃死した場合取り返しがつかない。

 ドンも皆を守るつもりだがやはりリスクが多いためその選択肢は取れなかった。

 

 「誰が来ようと同じことだ…認めたくないがあの扉間の卑劣な術の前で岩の本体は全滅するだろうな。ハッハッハッハッハッハ!」

 

 マダラが壊れたように笑う。弟を殺した卑劣さが存分に敵へ向けられている。その容赦のなさに岩の忍への憐れみの感情を覚えてしまうほどだ。

 しかし一方でドンはやはり、と感づいている。あの扉間が開発した最強最悪の術…穢土転生が使われるのだと。

 現代でNARUTO史上一番最悪の術を聞けば穢土転生と答える者が最も多いだろう。

 それほど厄介かつ、終盤に起こった出来事の元凶と呼べる術なのだ。

 

 だが一応対策は託した。それでは不十分とはいえ援軍と合流すれば何とかなるはず。

 そう考えるドンだが不穏なマダラの一言でその顔を顰めてしまう。

 

 「既に希望など無いと気づいていないのか…扉間め、ここまで隠し切って成し遂げるとはな」

 

 笑い切ったマダラが嘲りながら伝えてくる。

 頭の中で疑問符が躍る。何故だ、未だ希望はあるはずだ。ならば何故このような事を…?

 ここまでマダラが言うからには更なる手を扉間は打っているのか、嫌な汗がドンの頬を伝った。

 

 「…どういう事だ…、奴は一体何を…?」

 

 ドンが悩む顔を見てマダラは上機嫌に笑う。

 そうだ、その顔が見たかった。だが、それではまだ足りない。うちはを汚した罪人の顔はもっと悲惨な顔でなければならない。同胞たちの眼を抉られる苦しみはその程度では無いのだから。

 これを伝えればその顔は更に悲痛に歪むだろう。予想と確信を抱きながらマダラはドンへその事実を伝えた。

 

 「もうじき砂も国境を超えるだろう…岩との…な」

 

 それは青天の霹靂だった。元々雲と霧から送られた木の葉への参戦要請には砂隠れも参戦すると書かれてあった。 

 雲と霧が木の葉を引き付ける間に砂と岩が背後から襲う、その手筈であった。

 砂隠れにしてみれば木の葉の豊かな土地は喉から手が出るほど欲しいものだろう。

 その計画に疑う余地は無かった。

 

 その砂が木の葉ではなく岩を襲うのは理解が出来なかった。目の前の手負いの獲物では無く未だ元気な猛獣を襲う理由が見当たらないからだ。

 だとすればどうやって、どうすればそんな事を起こせるのか。

 普通なら敵の虚言だろう。だがマダラの表情と扉間の能力への信頼がそれを打ち消してしまう。

 

 「…まさか、そんな事が…!?」

 

 だとすれば不味い。岩の主戦力はこの主戦場と援軍へ連れてきている。

 勿論ある程度の戦力は残してあるが砂の全力の侵攻を止めれるほどではない。

 ドンが駆け付けたい…が、そうすればマダラによってこの場の岩の忍は全滅するだろう。

 些か厄介なことになったとドンの顔が苦々しく歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂隠れの侵攻。その劇報は岩の上層部を悩ませ、新たな部隊の編制、戦力の練り直しが行われる事となる。

 主力が欠けるが迎え撃つしか生き延びるすべはない。この国の幼子、民を守るために彼らは戦う。

 

 軍の再編成が行われる中、青ツチは自室で両手(・・)のメンテナンスをしていた。

 上機嫌に染まる顔から悲壮感は感じられない。久々の戦場とあって気分は実に上昇している。

 

 「ふぅー。これで終わり!久々だから気合入れちまったぜ」

 

 両手(・・)も実に喜んでいる。最近はドンのアレしか咥え込んで無かったが、やっと本来の使い方をされそうだからだ。

 

 「ごめんな、最近は変なのばっか咥えさせて。でもアイツがいけないんだぜ!ウチもアイツがあんな変態野郎とは思いもよらなかったんだ!」

 

 両手(・・)に話しかけているが誰も不審に思う事は無い。

 この家が特殊な訳ではない。ただ青ツチの知り合いは皆それを当たり前に受け入れていた。

 

 「ただまぁ、安心してくれ。これからは楽しくなりそうだからな。アハハハハハ!」

 

 主戦力としてに戦場へ連れていかれなかった鬱憤がやっと晴らせる。悲壮な里で唯一明るいのはやはり何処かおかしい女だからか。

 青ツチの声に応えたのか、両手の平(…・)が嬉しそうにゲッゲッと鳴いた()

 




マダラの左目の能力は少し時間を巻き戻すそうです。
外伝の柱間との戦いで使用していました。
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