無はドンの火遁の合図によって率いていた援軍を本隊に向かわせた。だが完璧な隠密行動が可能な無は援軍に先んじて戦場へ向かい扉間を観察していた。
情報通りの飛雷神の術の時空間移動、更には穢土転生と互乗起爆札の凶悪な組み合わせ。
卑劣な部分はあるが扉間は実に合理的、完璧な忍と言えた。
(なるほど…流石はドン様が最も警戒する忍…)
だがチャクラを消し景色と同化する無塵迷塞により扉間が無を感知、視認する事は不可能だ。
その扉間は飛雷神で逃げたはずの己を直ぐ無が見つけたことから、相手も感知タイプだと感づいた。
であれば飛雷神で飛んだとて無が扉間を見失うことは無いはず。
見えない、感じられない無を倒すのはほぼ不可能…ならば無から逃げつつ強引に互乗起爆札を岩隠れの集団に送り付け岩の忍を減らしていくしかない、扉間は己のすべき事を定めた。
「全く厄介な奴よ…解!」
幸い岩の忍と木の葉の忍は互乗起爆札を警戒し穢土転生体を境に攻撃しあっている。木の葉の忍を爆破の被害に巻き込む心配は無い。
扉間は飛雷神が刻まれたクナイを巻物から補充する。無に捕捉されないためには飛雷神を小刻みに使い、無が扉間に追いつけない状況を常に作り続けるしかない。
そのためには大量のクナイが必要不可欠。無がいつ来るか分からないためクナイを補充した扉間は直ぐに飛雷神で飛ぶ。
(追いつかせはせんぞ。ワシの方が速い…!)
(ほう…、鬼ごっこのつもりか…!だがそれは浅はかだ、千手扉間、、、)
封印術が効く穢土転生と違い互乗起爆札への対抗策は存在しない。なんせ扉間の飛雷神はあらゆる場所からの奇襲を可能にするからだ。
最初から対策不可能だと知ってしまえば萎縮し士気が大きく下がってしまうだろう。
そのため岩の忍の大半は穢土転生、互乗起爆札についてドンから伝えられていない。
よってあの連続爆破は穢土転生体が引き起こしたと勘違いしている。
だからこそ岩の忍は穢土転生体に攻撃し続け、扉間に回収させる隙を与えないつもりだった。故に扉間への警戒が少し薄れる。
扉間は岩の集団へばら撒いたクナイへ飛び、再び互乗起爆札での集団爆殺に成功する。
己の想像通り無に捕捉されず敵を減らせている。順調、順調なはず。
だが連続爆破による岩の忍の悲鳴が聞こえる中、扉間にある懸念が浮かんだ。
(本当に奴を上手く撒けているのか?それならば良いが…)
無に捕捉されていないのは良い。
恐らく己を観察していた無は、扉間を倒さねば互乗起爆札を止めれないと分かっているはず。
普通の忍なら全力で扉間を追跡し殺しにかかるだろう。扉間もそう考えていた。
(だがワシの方が速い、それは奴も分かっているはず…。もしワシが奴ならどうする…?)
本当に己の推察が合っているのか、扉間が今一度思案し始めるが
「馬鹿な…塵遁だと!?ワシとしたことがぬかったか…!」
扉間が顔を歪める。
自身と消したいチャクラが触れていなければ無はチャクラを消せないため、扉間は塵遁のチャクラを感知出来た。
故に高い感知能力を持つ忍を完璧に殺すならチャクラを使わない攻撃で屠るか、触れた瞬間相手を殺せる
だが無はハナから扉間を相手にする気など無かった。なんせ扉間が飛雷神の術を使う以上無が追いつけるはずが無いからだ。
互乗起爆札は防げない。だが扉間を何とかしなければ被害を抑えられない。
故に無は発想を変えた。無が扉間を追うのではなく、扉間に無を追わせればいい。
「今更気づいても遅い。塵遁・限界剥離の術」
無から放たれた白い光の奔流が木の葉本隊の後方から薙ぎ払われる。木の葉本隊の後方から中心部に居た忍達は、気づくことなく破滅の奔流に飲み込まれ塵と化した。
突如後方の忍が消え去った事で大混乱が生じ、指揮系統も乱れ始める。後方に控えていた作戦本部が塵にされ、前線の部隊長クラスの指揮官しか生き残っていないからだ。
「影分身の術」
扉間は迅速に影分身を木の葉の本隊へ向かわせ、自らは無の元へ駈ける。
木の葉の忍を塵遁から守るため無を引き付けねばならなくなったからだ。
もし無がこれ程大規模の殲滅手段を持っていなければ互乗起爆札で岩の本隊を爆殺し続けていただろう。
だが塵遁を使えるとなると話が変わる。もし無を放置すれば岩の忍を殺し切る前に木の葉の忍が全滅するのは確定だろう。
「自分が逃げる立場ではないと気づいたか。お前が鬼だ千手扉間…!」
鬼ごっこの鬼は交代し、今度は扉間が鬼となり逃げる無を追いかける番だ。
だが扉間一人でステルス状態の無を仕留めるには手数が足りない。無を仕留めるには継続的な範囲攻撃が必要だがそのハードルもかなり高い。
原作の二代目水影は蒸危暴威の継続的な範囲攻撃、更には大ハマグリによる幻術で己の位置を無に感知させないことで互角の戦いを繰り広げた。
扉間の互乗起爆札は範囲攻撃として適しているが木の葉の本隊から無を引き離さなければ無差別には使用できない。
(此奴を相手するには少数精鋭、もしくは圧倒的な個の力でなければならん。でなければ今の様に味方を人質に取られてしまうか…)
実質無は木の葉の本隊を人質にすることで扉間を釘付けにしている。今は無の姿を確認出来るが再度無塵迷塞を使われれば扉間は感知不能となり、再び塵遁が何処からか放たれるだろう。
影分身を増やし対抗したいが既にこれまでの戦闘でかなりのチャクラを消費してしまている。
(こうなれば新たに穢土転生で戦力を補充するしかあるまい…)
そう考えた扉間はやっとたどり着いた無の前で突如飛雷神で飛んだ。
「なに!?」
扉間の引き付けに成功したと考えていたが違ったようだ。ならばと再び無は塵遁を作り上げるためチャクラを集め始る…が、動き出した木の葉本隊を見て大きな舌打ちを付いてしまう。
確かにこの間に再び塵遁を打たれれば木の葉の本隊は壊滅する…だが既に扉間は手を打っていた。本隊へ向かわせた影分身の指示によって木の葉本隊が岩の本隊へ突撃を始めたのだ。
両軍入り乱れての戦いでは塵遁を薙ぎ払う訳にはいかないだろう。扉間も岩の本隊を人質に取って無の塵遁を縛り付けた。
この隙に扉間は新たな生贄を拉致し再び黄泉から死者を呼び起こす。
「口寄せ・穢土転生」
扉間によって新たに六人が穢土転生されたが、此度呼び起こしたのは先ほどまでの名も無き忍達では無い。
背中には千手の家紋が付いており、亡くなった千手一族でも手練れだった忍達だ。互乗起爆札を仕込んではいるが、今回は無が相手であるため質を扉間は重視した。
しかしその時、扉間は馴染みのあるチャクラが地中を進むのを感知する。
(ドンめ…、あちらも不利という訳か…!)
あのうちはマダラがドンのゴーレムを見逃すはずが無い。つまりマダラは見逃さざるを得ない状況だと把握出来た。
急がなければ不味い。マダラが負けてドンがこちらに来ればまず勝ち目は無いからだ。
だがそれは無にも感知出来た、計画通りにドンはこちらにゴーレムを送ってくれたと。
「イシカワ様!準備が整いました!」
再び姿を消した無の呼びかけと同時にイシカワがゴーレムのもとへ向い始めた。
扉間にはわからないが無もゴーレムのもとへ向かっている。
扉間もあのゴーレムが何かの核を担っていると瞬時に察知し、既に印を結んでいる。
「水遁・水断波」
扉間が持つ最速最高威力の水カッターが放たれる。以前ドンのゴーレムはこの術で容易く切断されたためその威力はお墨付きのはず…が。
「チィ!」
間一髪間にあったイシカワの土遁・土矛によりゴーレムは守られた。
無事にゴーレムはイシカワ、無との合流に成功した。
無は印を結ぶイシカワとゴーレムに触れ、その姿、チャクラを完璧に隠蔽してしまう。
「土遁・軽重岩の術」
イシカワの軽重岩の術で軽くなったゴーレムは無とイシカワと共に空へ浮かび始める。
扉間も空に逃げたことを予想し空中へ無差別に術を放つが避けられ、ゴーレムを扉間の術の範囲外に逃がされてしまう。
ゴーレムは予め本隊と合流した際はイシカワに従うようプログラムされていた。
故にイシカワは無にゴーレムのチャクラの操作権を渡していた。
「金剛封鎖の術」
カパッと開かれたゴーレムの口から
原作にて扉間が我愛羅の砂をコントロールし足場を作ったように、術の操作権は術者が許可すれば自在に渡すことが出来るのだ。
それだけでは無い。この場の岩の忍全員が予めドンから僅かなチャクラを流し込まれているため、無は感知した忍が敵か味方か瞬時に判断できる。
つまりイシカワが飛行する三人の位置を調整し、無はドンのチャクラを持たない忍を感知し、確実にゴーレムで刺し殺せるのだ。
「これは!?」
扉間が驚愕するが当然だろう。扉間からすればいきなり木の葉の忍達が腹に大穴が空かせ次々と殺されていくのだから。
見えない鎖、無の感知による精密な操作。しかしこの一見完璧に見える無の無塵迷塞を使ったプランだが弱点も存在する。
故に何とか扉間は事態を把握出来た。
血だ。見えない鎖に付いた血で何かが空中を動き突き殺しているのが見て取れる。
無塵迷塞は水遁で生み出した水滴を物体に纏わせ、光の反射で透明化する術だ。そのため自らのチャクラで生み出していない血は
「無よ…抜かりは無いな?」
「ご安心を。全て予定通りです」
イシカワの言葉に無は自信を持って返す。
既に鎖は切り離した。ランダムで鎖を切り離し続け扉間に捕捉させないつもりだ。
それに鎖を扉間が見つけたとてそこは木の葉と岩の忍が入り交じる乱戦の中。そうそう大きな手は打てない。
更には戦場でチカチカと白い閃光が迸り始めた。白い閃光と共に木の葉の忍が塵と化していくため、間違いなく
扉間の予想通りに分裂した無が乱戦の中次々と木の葉の忍びを塵にし、暴れている。
無は分裂状態ではあらゆる能力が半分になり、塵遁を打つことが出来ない。
故に原作では分裂状態にて手元に集めた塵遁が突如解かれていた。
だがしかし…塵遁を手元には集められていた。
つまり
そして扉間は動けない。無の方へ向かおうと、無は透明化し扉間から離れ、再度襲撃を仕掛けるだけだからだ。
見えない、感知出来ない敵を相手にするには余りにも準備が足りなすぎる。
(撤退しか無い…。無の存在が想定外の誤算であった)
故に扉間は決断しなければならない。
穢土転生の互乗起爆札を起爆させ、味方ごと敵を爆散させてから撤退するか。それとも味方を見殺しにし、己とマダラだけ飛来神で撤退するか…。
扉間はどちらも選択したくはない。確かに全滅よりはマシだが遺恨が残ってしまう。
もし味方を見捨てたことが伝われば千手の人望は地に落ち、うちはに主権が渡ってしまうかもしれない。
しかし味方ごと爆散させる方が更に悪評が付くだろう。どちらも地獄。
だが味方を撤退させるには余りにも無の存在が大きすぎる。庇いながら戦えばまず殺されるだろう。
(だがワシとマダラであれば何とか守りながら撤退、あるいは奴を殺せる可能性はある…。奴らには砂との戦線も残っておる。深追いは出来んはずだ)
実は扉間の推測は合っている。無であれば二人を殺せる可能性があるが、逆に殺される可能性も大いにある。あのマダラが足手まといの味方を気にせず、広範囲攻撃を繰り返し始めるのをドンは否めない。岩隠れ次代の希望を失わせるわけにはいかない、故に無を向かわせはしないだろう。
(やるしか無いな…)
そう考えた扉間はマダラに持たせたクナイへ飛ぶ。撤退戦こそ一番危険だが、そうしなければ木の葉隠れの里は空中分解してしまう。
故に扉間は厳しい選択を取らざるを得なかったのだ。
突如須佐能乎の中に現れた扉間に驚くマダラ。だがそんなことをドンが気にしてくれるはずが無い。
「マダラにクナイを持たせていたか…。どうやら向こうも決着が着いたようだなァ扉間!塵遁・限界剥離の術」
ドンから放たれた塵遁は当然飛雷神で躱される。分かってはいたが便利な術だ。
そう思うも、すぐさまドンは元の戦場に飛び扉間を追いかける。
地獄は続き、木の葉の苦境は留まることを知らない。
だが岩隠れの里は決して油断しない。敵に千手扉間が居る限り…。
本当に難産でした。卑劣様強すぎ。
次回は撤退戦です。