亀のような更新速度になりますが、コツコツと書いていきたいです。
「撤退だマダラ。岩の本隊にドン以外の塵遁使いが居る。これ以上の戦闘は本隊が全滅しかねん」
飛雷神でマダラを木の葉の本隊へ合流させた扉間は簡潔に告げた。
マダラは戦場を見渡す。両軍入り混じった戦場、かなりの木の葉の忍が殺されたのが見て取れる。今も宙から延びる鎖により多くの木の葉の忍が刺殺され続けていた。
マダラの写輪眼には鎖の出処、ゴーレムと共に飛行する二人の忍がはっきりと映っている。宙を舞う術、空を舞う忍の厄介さはマダラもよく知るところだ。
「お前の写輪眼なら見えるはずだ。全身を包帯で包んでいる男、あ奴がドンの秘蔵っ子の塵遁使い、名を無という」
扉間は戦の経緯を伝える。無の出現、塵遁による木の葉の忍の大量殺害、このままでは木の葉本隊は全滅しかねないと。
扉間の頬を汗が伝う。木の葉本隊は扉間がマダラを説得出来ねば全滅してしまう。だが岩隠れの忍に一族を殺され続けたマダラにとって撤退は不本意だろう。
更にはイズナを殺した己にもマダラの私怨は向いているはず。精神が幼いマダラが撤退を飲んでくれるか、扉間にも予想出来ない。
加えて一つ気になる点があった。マダラと合流した際に見えたドンの顔に、くっきりと仙術の隈取が見て取れた。兄の柱間によく似た風貌、風格。どうりでマダラが不利なわけだ。
(あの顔の隈取り。兄者と同じ仙人に至っていたか⋯)
これも想定外。扉間は仙人が扱う術の威力、規模を熟知している。兄の柱間はその力を持ってしてマダラを下し木の葉隠れの里を興した。
「扉間⋯、お前が付いていながら何たる事だ⋯!お前が⋯、お前が居ながら⋯⋯!」
扉間に連れられ、木の葉の本隊へ合流したマダラの心は荒れに荒れていた。その血走った目からは無念を果たせなかった己への憤りが感じられる。
イズナが託した一族の仇。取らずして何が族長、何がうちは最強の忍と言えるだろうか。
マダラに託されたイズナの目が扉間を射殺さんと睨みつけた。
しかし鬼の形相でマダラに詰められる扉間もまた、マダラを鋭い目つきで見つめ返す。マダラの気持ちも理解出来る⋯が、そのエゴに木の葉の忍を巻き込ませない。
扉間はマダラの怒りに正面から向き合い、かつてのライバルの目を見つめる。
己の判断は間違っていない。確信をもってマダラと目で語り合った。
分かっている、マダラも理性では分かっている。あの塵遁を使う忍が岩の本隊に居る、その危険性はマダラへ大きな警鐘を鳴らしている。
あの扉間がそう判断したのならば、撤退すべきなのは間違いないのだろう。
握りしめた拳を振るわせ、マダラは扉間から目を逸らした。
だがそれを素直に認められるかどうかはまた別の話。
イズナを殺した扉間、あの扉間なら何とか出来たはずだと思わずには居られない。扉間を誰よりも憎むマダラが柱間以外で最も扉間を認めている人間だというのは何とも皮肉な話だろう。
だが時間は待ってはくれない。マダラと扉間が飛んだ岩と木の葉の主戦場にドンが向ってくるのを扉間は感知した。
扉間は既に動いている。無の塵遁で消し飛んでいない山中一族へと接触、即座に心転身の術の応用によって全軍への撤退の指示を出した。木の葉の忍はジリジリと扉間達がいる後方へ下がり始めている。
しかしここは両軍入り混じった戦場であり、未だ岩の本隊と死闘を繰り広げている忍も居る。
ならばこそ彼らを下げるべく、扉間は鬼札を切る。
(この保険⋯、出来れば切りたく無かった⋯⋯。兄者も間違いなく反対しただろう)
今から行うのは人として最悪な行為だ。誰しもが扉間を卑劣と罵り、侮蔑するだろう。だが木の葉の忍を守るために手段を選ぶ余裕など無い。
そんな覚悟を決めた扉間の下へ一人の青年が飛雷神で運び込こまれる。
「すまんなマダラ⋯。お前の気持ちは理解出来る。だがそれと心中は出来ん。何故ならワシとお前にはこの場の木の葉の忍の命運がかかっておるのだ」
「ッ!」
扉間は決して優先順位を間違えはしない。
里を守る。この一点を貫き通す。
有無を言わせない扉間にマダラは更なる怒りを込み上げる。
俺はまだやれる、お前は黙っていろと口を開こうとした。
だが扉間が連れてきた青年を目にした途端、マダラの顔が凍りつく。チャクラを見切るその眼はマダラへある真実を伝えてしまう。
戦場に来たからだろうか、青年は俯いていた。一見戦に怯えるごく普通の者に見えてしまう。
だがあの扉間が連れてきた者がそんな普通の存在であるのか。
否、特別だ。青年は戦になど怯えていない。常に己に怯えて続けていた。
マダラの写輪眼は青年の
青年はチャクラの化け物、尾獣を宿す人間。後に人柱力と呼ばれる存在であった。
忍世界であらゆる経験を積んだマダラもこれ程悍ましい術は見たことが無かった。恐らく、あの化け物を身体に封印させたのは目の前の扉間だろう。
このような業を扉間が独断で行うとは思えない。間違いなく柱間も知っているだろう。
その通りだ。写輪眼は尾獣をコントロール出来る、かつての所業を鑑みて扉間はマダラへ伝えぬよう柱間を説いた。
(このような術、聞いたことが無かった。柱間も俺に隠していたとは⋯ッ)
マダラは口元を酷く歪ませ、青年を観察する。
扉間は青年の意識を手刀で飛ばし、急ぎ印を結び準備を進める。その印を写輪眼で盗み見たマダラにはそれがうずまき一族の封印術に関するものだと理解出来た。
何故扉間がうずまき一族の封印術を扱えるのか⋯。原因は傭兵を始めたドンの後始末にある。
ドンによる被害が大きくなるにつれ、うずまき一族はその責任として多くの封印術を千手一族(扉間)に公開した。
彼を知り己を知れば百戦殆うからずと言う。
始めはドンへの対策のため封印術の研究が始まったが、マダラが九尾を従え千手一族を襲ったことで目的も多様化していった。尾獣の凄まじさを目にした扉間はその力を利用出来ないか検討し始める。
兄である柱間は反対したが扉間の意見を跳ね除けるには決して至らない。
何故なのか。
それは柱間かマダラの2人でなければ制御出来ない存在をいつまでも放置し続けることは出来ないからだ。
扉間にとって尾獣の管理は急務であった。
柱間やマダラが存命なうちであれば様々なトライも出来る。
柱間も説き伏せれ実験へと協力していた。
その結果生まれたのが人柱力。扉間は人の身体に尾獣を封印しコントロールしよう考たのだ。
青年は初の人柱力としてその身に四尾を封印され、今の今まで軟禁状態で観察されていた。精神の不安定化が報告され、暴走の危険性が高いと判断された故に。
扉間が術の準備をようやく終えた。青年の皮膚には封印の術式が表面化し、黒い文字列が血管のように張り巡っている。腹部の封印の大本がボコボコと膨らみ、中の四尾が外へ出ようともがき始めた。
「頼むぞマダラ!」
その呼びかけと共に扉間とマダラ、青年が戦場から飛び立った。
「このチャクラは⋯!」
戦場へ飛んでいるドンは突如現れた大きなチャクラに眉をひそめる。
仙人モードのドンは戦場から少し離れた林に三っつのチャクラを感知、内二人はマダラと扉間であった。
もう一人のチャクラに覚えは無い。だがその中には膨大で荒々しいチャクラが感じられる。
そのチャクラが人から抜け出し、四本の尾を持つ巨大な猿の形に落ち着いたところでドンは悟った。
「尾獣だとッ⋯! 扉間、お前まさかッッ!」
肌を突き刺す異様な雰囲気はかつて五尾と戦った時と同じ感覚である。
四尾のチャクラが猛り、暴れようとしたところでそのチャクラが落ちつき、本軍の方へ駈けだした。
原作のリンのように敵国に送り込まれ、人間爆弾として人柱力を使用する。外道ここに極まれりだ。
「四尾は木の葉が確保していたとはな⋯! 道理で探しても見つからないわけだ」
原作において、尾獣は一尾を除いて柱間率いる木の葉が回収し各国に分配していた。
故に土の国に元々暮らしていたのは五尾だけだったのだろう。
「これはチャンスとも言える⋯。 四尾を木の葉から買う必要も無くなるわけだ⋯!」
尾獣は国のパワーバランスを保つのに必要不可欠、回収出来れば大きな収穫となる。
だが四尾の封印、木の葉の本隊を殲滅。両方の達成は難しいだろう。
こちらに無が居ようとも、マダラと扉間が健在である以上足元をすくわれるかもしれない。
二兎を追う者は一兎をも得ずと言うように、片方にドンは絞るつもりだ。
本能のままに戦場で暴れだした四尾を視界に捉え、ドンは加速した。
突然現れた巨猿に戦場は大混乱に陥り、忍達は自軍の陣地の方へ後退し始める。
後退する岩の忍を目にした四尾は口元へチャクラを集め始め、大きく背を反らせた。
「不味いな⋯っ!」
口元に集まったチャクラが圧縮、四尾の口に飲み込まれ、尾獣玉が放たれた。例えドンやイシカワの土遁であろうと、尾獣玉を防ぐには至らない。
破滅の光線が岩の忍を飲み込もうとする瞬間、ドンが射線に割り込んだ。
「塵遁・限界剥離の術」
仙人モードにより威力を増した塵遁が尾獣玉とぶつかり合う。
流石は十尾の一部、尾獣玉は唸りを上げ塵遁を押し進める。
だが、膨大なチャクラを使いドンは塵遁を照射し続け、遂に尾獣玉を押し込み始めた。
だが後少し、後少しという所で一本のクナイが投げつけられる。
「頼んだぞ、無!」
相手が勝利を確信した時こそ生まれる油断を付け狙う、扉間の危険性をドンは無に説き続けた。
故に寸分の狂い無く、そのクナイへ飛んだ扉間の斬撃を分裂した無は防いでみせる。
(チャクラを感知出来んのがこれ程厄介とはな⋯!)
扉間は改めて無を評価する。チャクラを消し、宙を舞い、どこからでも攻撃できる無の機動力はある意味ドンを上回っているだろう。
襲撃に失敗した扉間はすぐさま飛雷神でクナイから離脱し、次のチャンスをうかがい始める。
無が稼いだ時間を使い、遂にドンの塵遁は尾獣玉を分解しきった。
だが追撃のために見上げた四尾、その目の巴模様を見てドンは口元を苦々しく歪てしまう。
尾獣のコントロールにおける人柱力など木の葉に必要ないだろう。そう思って仕方ない光景がそこにある。
うちはの瞳力、その神髄は四尾を掌握しきっていた。
文字数はどれくらいのが良いでしょうか。あんまり長いと書きにくいんですよね。
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全て目を通しており、気になったものに返信する予定です。