嵐ガ丘へいらっしゃい   作:ひねもす@HAMELN

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#08「陣設営」

博士「ヒースクリフ。勇ましい名をもらったな。

やはり、名前は大事だ。

ずいぶん男らしく成長したように見えるぞ」

 

ヒースクリフ「外見は変わってねえだろが。

工兵隊連れてきてんだろ?そろそろおれにも6フィートくらいのボディをくれよ」

 

博「今回はすぐ帰るつもりだから、ここで手術する余裕はないな。

どうする?帰りたいなら連れて行ってやってもいいが」

 

ヒ「ちっ。じゃあ、また次でいいよ」

 

博「フン。ここは住みよいか。

あの娘たち全員たらしこんでいるんだろう。

母親入れて4人もいれば、あと1年くらいは飽きずに回せるか。

それともどうする、早めに売るか?」

 

ヒ「外道だな、あいかわらず。

ところで何をやらかすつもりなんだよ、ここで。

おれに出番はあるのかい?」

 

博「主役は決めてある。

おまえは、彼のアシスタントをしてやれ。目立つんじゃないぞ」

 

ヒ「いてもいなくても構わねえってか。

じゃあ、娘たちと外野でゆっくり見物でもするかな」

 

博「好きにしろ。ところで欲しいのは使用人のリストだ。

いま何匹くらいいるんだ?

家主に尋ねても、まったく把握してなくてな」

 

ヒ「無理もねえよ。

あんたの送りこんだ最古参がバトラーやってる。その下にコック・フットマン・メイド。

ガーデナーってのが最底辺で、地下でひたすらピート掘ってる」

 

博「ききわけのよくない、口減らししたいガーデナーは、どのくらいいるものだ」

 

ヒ「人数までは、わかんねえ。

アンダー・ガーデナーのねぐらは臭いんだ。潜ってみるのもごめんさ」

 

博「腕力があって、醜ければ尚いいんだがな。

まあいい。アッパー・ガーデナーを減らせば、踏みつけられていたやつらが光を求めて這い上がってくることだろう」

 

ヒ「怪物でも造るつもりかい?

土地だけは広いからな。暴れまくらせるにゃ最適のロケ地かもしれねえが」

 

博「ま、そんなところだ。

明日からさっそく調達と改造手術を始める。おまえは普段どおり邸内で生活して、メイドたちが不平でも漏らし始めたら、うまく宥めろ」

 

ヒ「食事の質を落とされたくないから、調理場周辺には手をつけないでいてくれると嬉しいな」

 

博「心得ている。わしらだって、そいつらのつくる料理を食べて過ごすわけだからな。

せいぜい、怨まれないようにするさ」

 

ヒ「立ち去るときも、跡を濁さず頼むぜ。

さてと、そろそろ眠いんだが、まだ尋ねたいことはあるかい」

 

博「じゃあ、私たちもベッドインしようかね。それでは、おやすみ」

 

翌日からさっそく博士は使用人たちのエリアで働き始めた。

装甲車でやってきた武装作業班はアーンショーの家族と顔を合わせることなく、邸内外に様々な仕掛けを施していく。

子供たちは窓越しに荒野のそちこちへ小さな砦がつくられるのを見る。

発電機と照明装置を備え、どんな天候下でも周囲に潜む怪しい敵をサーチしロックオンできる、頼もしい防御陣地だ。文明ってすごい。

しかし、こんなものが必要な催し事とは、いったい何だろう。

 

日に何台も往復して資材を積み下ろししていく軍用トレーラーの勇姿に見惚れながらも、不安半分、期待半分。

ヒースクリフは静かに微笑むばかりだった。

娘たちとのロールプレイングは続いていたが、そこにヒントがあるのか無いのか、さっぱり読み取れなかった。

 

10日ほどして、新たな来客がゾロゾロと訪れた。

まず、ギリシャ彫刻かと見紛うばかりの美青年。名前は、ヘンリー・クラーヴァル。娘たちの手を恭しく握り、洗練された挨拶をしてみせた。

ブランウェルは、彼こそ紳士のお手本だと目を皿のようにして見つめ、ロックウッドは較べられることに耐えきれず客間へ引きこもった。

食事どき以外は自室から出てこないママさえもが、おめかしして応接間に現れ、頬を赤らめ、なかなか戻ろうとしない始末。

パパは先週からずっと緊張しつづけて顔をこわばらせているので、何を考えているのか察し難かった。

ヒースクリフもポーカーフェイスを貫いた。

 

その次に、団体様の群れ。

邸内へは入らず、外に用意された陣地へそれぞれ割り振られる。かれらの乗ってきたバンには、テレビ局のロゴマークがついている車体も散見される。大型の業務用カメラが陣地の窓辺に設置され、いやが上にも緊張が高まっていく。

やがて、時が満ちた。

博士が記者団に囲まれ、スピーチを始める。

 

「世界中の皆さん。全ヨーロッパを恐怖のどん底に突き落とした殺人鬼が、本日、報いを受けます。

私は奴を何度も追い詰めましたが、そのたび、取り逃がしました。奴は罪なき女性や子供をさんざん手にかけましたが、それ以上に私への憎悪も募らせてきた。

奴は私のいる所に必ず現れます。

そして、私のせいであるかのように犯行を重ねます。

そんな血塗られた旅も、今日で終わりです。

この荒野は、最終決戦場として申し分ない。さあ、怪物よ、出てこい!

決着をつけようじゃないか!

私はここにいるぞ!見ているんだろう?

出てくるがよい!」

 

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