それはあなたかもしれないし、あなたじゃないかもしれない。   作:茶漬四郎

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コミケお疲れ様でした


B型のアプローチ

 兎田ぺこらと言う人物についてどういう印象を受けるだろうか。大人びていて、人とは距離を取り、こだわりを持ちマイペースと言うB型の典型的な人物である。

あなたは中堅実況者である。いつしか進む道も手に持つものも完全に違ってしまったが、同じ道を進む、実況、配信が好きな活動者だ。

今日は活動者たちが集う立食会に来ていた。今や大きな市場となり、そのシェアを牛耳るほどになった彼らに新しい風を吹き込ませたいという主催者の意思の元、皆集まったのである。

各事務所のタレント、関係者が集まり、ドレスコードもちぐはぐなカラフルな会場は配信業界らしい色彩に染まった。

場の空気が温まってきたころ、あなたはどこからか視線を感じるようになる。さりげなく辺りを見渡すと、ぴょんと生えた長い耳が、ピクリとこちらを感知したように動いたのが見えた。

彼女が兎田ぺこらだ。

この配信者との付き合いもだいぶ長くなる。デビュー前から人づてに連絡を取っていたり、年に数回やり取りをしたことがある。今ではドジャースの球場にお邪魔したりと何かと身近に出て来ることも多々ある。あなたは思わず随分大きな存在になったなと、つばを飲み込んだ。

 彼女のサブ垢を自身のプライベートアカウントでフォローしたのは長い間秘密であったが、いつのまにか周囲にばれていた。どうやら内通者がいるようだ。

そんな大物にこちらから声をかけるのは気が引けたが、チキンを冷ましたことのある彼女の事だ。多少は許してくれるだろう。

あなたは少しかしこまって「よッ」とぺこらに声をかけた。

彼女は上目づかいにこちらを見ると、麻呂のようなポムポムとした眉毛がいじらしそうにもそもそ動いた。そして向こうも「よっ」と短く返す。

「アワード選ばれたそうじゃないすか。おめでとう。」と言ってあなたは手に持っていたグラスを目の前に差し出す。ぺこらもそれに倣いコン、と口をつけたグラスを当てて小さく乾杯した。

「ありがとう」と小さい声が聞こえる。

「ってゆーかあーたさ。」何故か目線を向けずに口を開く。

そして言葉を区切ってこちらを向きながら火を噴き始めた。

「同業者のサブ垢をプライベート垢でフォローするってどうなん。」

「えぇ…なんで。おかゆさんは喜んでくれたぞ。」狼狽えながら答えるので精いっぱいだ。しかしその返しにぺこらは瞳を見開いて「えっ」とショックを受けたようだ。

それからクイッと小さな口でラム酒を半分まで飲むとその火力はさらに大きくなる。

「あーたさ、ぶっちゃけ、ホロメンの事狙ってんの?」

晴天の霹靂とはこのことである。「いやいやいや」と否定の言葉がマシンガンのように放たれる。

「殺されてしまうで。」

「ふーん。」

姿勢はそのままだが、言葉の圧がすごい。

「やっぱおかゆ先輩なん?」

「ネコカブリーナは好き。いきなりステーキで好きになった。」

「じゃあ誰だ?フレア?あーた乳好きか。」

「ダーリンっていいよね。邪じゃないけどヨコシマエナガにはなりたいとは思ってる。」

「…え。他…まさかマリンか。」

宝鐘マリンである。

思わず「おっふう」と声が漏れる。そこを突くようにぺこらは活き活きとしだした。

「いーい女だけどさ。やめときな。重いだけだよぉ?母ちゃんみたい。可愛いし、胸もでかいけど、尻に敷かれてしまうよぉ。心配だよ、あたしゃあ。」やれやれ気味に言い終える。

あなたはブンブンと手を振り否定する。

「じゃあ誰よ。」とぺこら。

「アンタの口から言ってごらんなさい。」

あなたは「うーん」ともったいぶって「シオンたん」と答えた。

「シオン先輩!?」言葉を被せるな。

「期待すんな。」

「え?」

「シオンちゃん大人だよ?子供のふりしてるけど、ちゃんとレディーだよ?」

「えー、じゃあ鍋を。」

「お」

「綺麗に使ってるホロメンいる?」

バシッと自らのモモをはたく。

「いるわけねーだろ!そんな奴!大喜利にぶち込んだろか。」

空気が熱くなってきたのであなたはそろそろ本題に入ることにする。

「でも実際はさ。」

「ハア」

「リスナーとプロレスしたり、サプライズ用意してくれたり、心配してくれるホロメンで。」

「ハア」

「ポエムも痛くて、うさ耳着けてるタレントなんだけど。」

「…」

「ぺこらママっていう。」

睨まれた。兎が肉食なんではないかと今までの常識を疑うほどに。

「ぺこらさん?」

「ちょっと待って。今アンタをどうやって炎上させるか考えてるぺこだから。」

「お父さんが二人になるって…変かな?」

「いや、変だろ。お兄ちゃんたちと気まずくなるわ。」

「俺は家族の多様性をだな。」

「そんな多様性ぺこランドでは認めませぇん。」

ぺこらはそう言うと下を向いて何やらブツクサを呪文のようなことを口ずさみだした。

「野兎なんだな。一応。」

「ん?どーしたペーさん。」

彼女はピッと指をあなたに向けて力強く言い放った。

「アンタをただの野ウサギにはさせないからな。覚悟しとけよ!」

 

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