また年末年始のどこかで更新できるかなと思ってます。
「あぁ~~家のクーラーが恋しい……。
「……お生憎様。『くーらー』とかいうクニヒコの家にあるらしいそんな便利な物はウチの国には無いし、氷は余程の事がなければ蔵から安易に持ち出すことはできないわ」
「へいへい。夢も希望も感じられない、分かり切った冷たい返事をわざわざどうも」
昼下がりになってから、暑さはますます厳しくなっていく一方だった。
さっきまでですらギリギリのところで耐えていたというのに、さらに追加で負担が大きくなるとあっては、いい加減我慢の限界が近い。
こうなると『涼』を求める身体の欲求に逆らうことは難しく、無い物ねだりと分かってはいても願望を口に出さずにはいられなかった。
「あーあ。こんなことなら向こうからこっちへ来る前に、アイスの一つや二つでも買って、持ってくれば良かったかもな」
「それ、仮に持ってきたとしてもここへ着くまでに溶けちゃってたんじゃないの? この
「いや、多分だけど大丈夫だったんじゃないか? ドライアイスと一緒に袋に入れておけば、炎天下でもある程度は持たせられるから、着く前に全部溶けるなんて悲劇が起きることは無いはず」
「ふーん、そうなのね。……その『ドライアイス』と『アイス』がどう違うのか、あたしにはよく分からないから想像つかないけど」
興味無さげという感じではないものの、割と素っ気のない口調で返事をしてくるアヤカ。
まあ自分の知らない単語が急に出てきて説明されれば、彼女がこう反応するのも無理はないだろう。
「今度こっちへ遊びに来る時にでも持ってきてあげるよ。……ぶっちゃけて言えば、今すぐにでも冷たい何かが欲しいとこなんだけどなぁ」
それとなく、アヤカに今からかき氷を用意できないかと改めて催促してみる。
「あのね……そんなに冷たいものが欲しいなら、今からでも
「いや待て待て。ドライアイス食えとか、何しれっととんでもないこと言ってんだよ。下手をしなくても食ったら俺死ぬわ」
が、ため息と一緒にアヤカから返ってきた言葉は、つれないどころか結構エゲつなくて内心ヒヤッとする。
そりゃ、ドライアイスがどういうものなのか彼女はよく分かってないのだから仕方ないと言えば仕方ないが、唐突に他人の
「待って。ドライアイスって食べるとそんなに危険な物なの……?」
「まあそりゃあ、食べることがそもそもの目的としてある物じゃないからな。食うどころか素手で直接触れ続けるだけでも結構――って、どうしたんだ? 急に怯えたような顔してこっちを見てきてさ」
「――えっ? ああ、えっと……その……ごめん。そんな危ない物を代わりに食べればいいんじゃないって言ったのは、さすがに無神経だったなって思ったから、それで……」
急にしおらしい態度になったかと思えば、割とガチ目なトーンでアヤカは謝ってきたのだ。
……そこまで気に病むようなことでもないと感じるのだが、一体何が彼女にそこまで申し訳ないと思わせたのだろう?
「……はあ、仕方ないわね。お母様に頼んで、かき氷を用意してもらえないか頼んでみるから少し待ってて」
「え、良いのか? というか、またえらく急だな。どういう心境の変化だよ?」
「さっきから冷たい物の話をしてくるから、あたしも欲しくなってきただけよ。それにクニヒコほどじゃないけど、あたしも暑さを我慢するのが辛くなってきてたのは確かだし」
最後にそう告げると、アヤカは正座から立ち上がって足早に部屋から出ていく。
外で控えていたフミさんとミチさんも彼女を追いかけて慌ただしく付いていったため、俺一人が離れの部屋に残される形となってしまった。
一体どういった理由でアヤカの気が変わったのかは気になったし、かき氷が欲しいと言った当人である自分が同行しないのはどうなんだとも思ったが、結局寝返りを打つことさえ億劫に感じるくらい身体がだるかったこともあって、彼女が戻ってくるまでおとなしく待つことにした。
――そうしてアヤカが戻ってくるのを待ち続けて、数十分が経った頃だろうか。
なんとなく外の様子が気になったことと、かき氷を確保して戻ってきたアヤカとばったり遭遇しないかなという淡い期待もあり、思うように動かせない身体を無理やり起こして縁側の廊下に出た時だった。
「――あれ? なんだ、これ……」
眩暈が突然してきたかと思えば、足の力が抜けていくような感覚に急に襲われる。
まともに立っていられなくなって倒れかけた身体を支えようと傍にあった柱に手をかけるものの、その柱を掴む手ですら思うように力が入らない。
激しい運動をしたわけでもないのに息切れがするし、意識も朦朧としてくるのが自分の視界が歪んでいく形で目に見えて実感させられた。
「待って……これ、ちょっとヤバい、かも……」
そう口にしながらどうにかして倒れないように踏ん張って立て直そうとするが、踏ん張ろうとすればするほどに意識は遠くなっていく。
どうやって力を入れればいいのかさえ分からなくなり、倒れかけた身体を支えきれなくなって前のめりに崩れ落ちてしまう。
――そして、倒れた時に感じた衝撃と鈍痛を最後に、俺は意識を失ってしまった。