新エリー都のバッタ怪人   作:真序章

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タイトルが定まんない……!!


#3 約束

 

「……いやぁ、偶には重い荷物を枕にしてみるのも良いもんだな。」

「ンナ!」

 

 新エリー都にあるとある大きめの公園……近頃のいろいろ遊びづらくなった公園事情からすれば、ここは民家も近くにないし、広いし、ボールの使用も咎められない、良い公園だ。

 

 平日ではあるが、休みが取れたのかレジャー感覚で、シートを並べて弁当を食べている家族連れも多い。

 

 そんな場所からは少し離れて、比較的静かな場所……大きな木の下で、翔悟はバイクを止めて、ホッパーと共に荷物を枕にして青空を見上げていた。

 

 こんな何でもない所でも、どうって事ない青空でも、見上げていれば、気付けることもある。

 

「……っ!あの雲……鶏みたいだな。」

 

 ……くだらないような気づきでも、何も気づかず通り過ぎてしまうよりかはマシだろう。

 

 こうして、只管にのんびりと時間を過ごすって言うのも……悪くはない。寧ろ旅の醍醐味の一つはソレだと翔悟はそう、思う。

 

 それに、こうしている間は……自分がバッタの怪物なんて事は忘れてしまえそうだ、今日は頭も痛くならないし、このまま寝てしまおうか?

 

 そんなことを考えていると……突然、翔悟のスマホに着信が入る。翔悟はスマホを取り出して画面を見るが……

 

「ンナ?」

「?知らない番号からだ……」

 

 翔悟は小首を傾げるが、一応通話に出てみる。

 

「はい、もしもし?どなたですか?」

『……久しいな、翔悟。』

「!!」

 

 ……その冷静な女性の声に、翔悟は聞き覚えがある。最近は聞けてないが、学生時代によくよく聞いていた相変わらずの堅っ苦しい喋り方。

 

 確か、今では公的機関のH.A.N.Dで六課と言う組織の長をしていて……英雄とも言われる虚狩りの称号を年少ながらも受け取った人物……

 

「あれっ……星見さん!?」

『あぁ、幾年ぶりだろうか……』

 

 翔悟はガバっと体を起こして、嬉しそうに話をする。

 

「いやぁ、ひっさしぶりですね!大体……」

『4年と3ヶ月と24日ぶりだ。……朝露を得ようとする蝸牛(かぎゅう)が煉瓦を渡る刻が如く、永き時間だった。」

 

 ……相変わらず、難解な喩えをするクセは変わっていないらしい。翔悟は目を細めながら笑いながらも苦言する。

 

「はは、相変わらず何言ってんのかわかんねぇですよ!」

『……朱鳶には何時も伝わるのたがな。』

「朱鳶さんの貴方への理解度凄いから……」

 

 ……昔っから、雅の難解な喩えを理解するのは朱鳶だった。翔悟は本当にチンプンカンプン……ニュアンスをある程度理解できるくらいだ。

 

「……あれ?でも、なんで俺のケータイの番号知ってるんです?」

『朱鳶から聞いた。』

「あぁ、なるほど。」

 

 ……まぁ確かに、雅にバレるルートとしてはそれくらいしかないだろう。むしろ、朱鳶関係なく連絡先を入手していたら……なんか……怖い。

 

「でも、どうしたんです急に……」

『……何、お前が折角戻ってきたというのに私に連絡を一向に寄越さないからと痺れを切らして電話しにきたわけではない。』

「……えっと……なんかぁ、そのぉ……すみませんでした。」

『何故謝る。怒ってなどいないさ、怒っては……唯、4年と3ヶ月と24日の刻、連絡も取れず寄越さずのお前が、漸く帰ってきたと思えば私にも朱鳶にも一切の連絡を寄越さず、お前が偶々朱鳶を見つけて声をかけなければいつの間にか何処かに行ってしまいかねなかった事になんて、怒っては居ない。』

「……胃が、苦しいです。」

『ケータイが壊れていたと言っているらしいが……データは移せなかったのか?』

「……まぁ、その……完全にバッキバキにいってて……俺ぇ現金派だったんでそんな苦労しなくて、忘れてって言うか……」

『……お前も相変わらずのうつけっぷりには感心する。変わってないな、お前は。』

「俺、そんな変わってない……?」

『全く。』

「そっ……かぁ。」

 

 翔悟はなんとも言えずに口を紡ぐ……すると、通話の奥で雅は少しため息をつくと、翔悟へ語りかける。

 

『朱鳶とも話をしていたのだが、今度食事でも行かないか?三人で……折角お前も帰ってきたんだ、積もる話もあるだろう?』

「!!……良いですね、行きましょっか。」

 

 ……4年ぶり、そうなれば三人でご飯を食べに行ったのはそれ以上の時間前ということになる。しかし、三人でとなると……懸念点がないわけでもない。

 

「でも、大丈夫なんです?星見さんに朱鳶さん、忙しそうだし……休み合いますかね?」

『無理してもなんとか合わせる。』

「自信満々だぁ……まぁ良いですけど。」

『……しかし、お前は相変わらず『課長!こんな所に……』……済まない、時間のようだ。』

 

 通話の奥から聞こえてくるのは、誰かの女性の声。課長と呼ぶからには、六課の人間であろうか?

 

『少し待ってくれ、詳しい日程は追って合わせて連絡する『?電話ですか?珍しい……』……少し友人とな、翔悟、それではな。』

 

 やがて、プツリと通話が切れる……相変わらず、結構マイペースな人だ……いや、それを言えば翔悟も大概なのだが。

 

「ンナァ?」

「いやぁ、まさか星見さんから連絡くれるなんてなぁ……あ、電話帳登録しとこ。」

 

 翔悟はそんな風に呟いてスマホを操作する。……しかし、4年か……そうかそれほど時間が経っていたのだ。それ即ち――翔悟がバッタ怪人となってからも同等の時間が流れたということでもある。

 

 そして、それだけの時間……翔悟は自分と同じくバッタ怪人を殺し続けてきた。戦い続けてきたのだ……しかし、食事、ご飯ときたか……

 

「ご飯……か、そういえば()()()()()()()()()()()()()()()

 

 翔悟は懐かしそうにそう呟く。

 

 暫くと言うのは数日単位ではない、数カ月単位の話だ……正直翔悟は、睡眠だってマトモに取ったのはいつか覚えていない。

 

 夜中はバッタ(怪人)狩りに勤しみ……寝ようとしても、近くにバッタ(怪人)が現れれば、頭に響く痛みでそれどころではなくなる。

 

「……ご飯も食べなくて生きていけるなんて、つまらない身体になったモンだな。」

 

 今の翔悟には、人間の、いや生物の三大欲求は必要ないとされている。

 

 睡眠も必要なし、食事も必要なし、無論、どれも必要無しと言うだけで出来ない訳ではないが……本来、生物、ひいては種の維持に必要な三大欲求が、すべて『娯楽』と化しているのは……幸運か不幸なのかは、誰にもわからない。

 

 お腹は空かないし、眠くなることもない……だが、食べようと思えば食べられるし、寝ようと思えば寝れる。

 

 少なくとも、明らかに人間離れなのは間違いない……だが、人間は失った物に渇望を見出すもので、翔悟はあの空腹感と眠気という感覚が、何故だか愛おしくおもえてくる。

 

 強いて利点をあげるなら、飯と寝床に使う代金を銭湯に使える事くらいだろうか?

 

 飯を食わず、眠らずとも生きていけるとしても、身体を清潔に保つことは銭湯等を使わなければ成し得ないからな、銭湯には出来る限り毎日入っている。

 

「……どうなってるのかなぁ、俺の身体。」

 

 翔悟も、今の自分の体の事を完全に把握しているわけではない。

 

 一つ思えるのは今の自分の身体は、飯も食べず、不眠不休で戦える今の身体は戦う為だけの生物兵器としては、非常に良くできているということだ。

 

 ……実際、ここ4年間は戦い詰だった。自分と同じバッタ怪人を、只管に探しては殺し、探しては殺し、休むまもなく戦い続けた事も一度や二度ではない。……移動時間とバッタ怪人との戦いだけで一年を追えた事もある。

 

 常人であれば狂うか、自死を選ぶほどの毎日……そうやって戦い続けられたのは、今の自分の身体があってこそだ。この――改造された身体があってこそ……あぁ、忌々しい。

 

 ……考えるのはよそう。兎に角、今ある平和を謳歌しておこうじゃないか……そうだ、折角だ。このまま青空の麓で眠りでも……

 

「まぁ、いいや……久々に休めそう―――ッ!」

 

 

 そんな甘い話はないと言わんばかりに、翔悟の頭にズキリと痛みが走る。……これは、近くに自分と同じバッタ怪人が居ると言う合図だ。休もうとしたら、すぐコレだ。

 

 おちおち眠りにつけももしない……無視して居眠りをこくことも頑張れば出来るが、そうも行かない。翔悟は立って進まなければならない。そうすると、決めたのだから。どんな罪を背負っても、戦わなければならないのだから。

 

 ……仮に戦わなければ、多くの人間が死ぬだけだ。翔悟は、それを知っていた。バッタ共が人を襲い貪る光景を知っていた。だから、戦うのだ。

 

「……さて!行くかぁ……ホッパー。」

「ンナ!」

 

 翔悟は愛機のバイクである『サイクロン号』へとまたがると、ホッパーがまた翔悟の背中にしがみつく。翔悟はアクセルを踏んで、自身の感覚が示す方へと走る……

 

「……っ?この感じ……ホロウの中か。」

 

 翔悟はそう呟いて、サイクロンのスピードを上げるのだった。

 




翔悟:Q.24時間戦えますか?A.はい。(ガチ)

課長:なんで戻ってきてるのに連絡よこさんねん(キレ気味)

サイクロン号:イメージはシン・仮面ライダーのサイクロン号。自立稼働可能。
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