奇怪な生物の目撃談や神隠しなど奇妙な噂が絶えない地方都市・闇宮市やみみやし
この土地は古くから異界に近い場所と言われている。
御剣マキナの通う高校も闇宮市にあった。
私立御厨栖学園みくりすがくえんである。
町の中心地にありながら深い森に周囲を囲まれた学園はどこか神秘的な雰囲気を湛えていた。
朝の授業開始前、2-A組の教室では生徒たちは同級生と談笑したり、自習をしたり各々が思い思いに過ごしていた。
そんな中、マキナは机に座り無表情で前方を見つめていた。
瞬きもせず、まるで人形のように動かないが、クラスメート達は自分のことに夢中で気に留める者はいない。
常人には難しい技だが、目を開けたまま睡眠を取ることで昨夜の魔獣との戦いの疲れを癒してるのだ。
「マキナちゅわーーーーーーーーーん!! おっはよ~~~~~」
陽気な声と共に、一人の女子生徒が後ろからマキナに抱き着いた。
ウェーブのかかった茶色の髪に、あどけない顔立ちの少女だ。
「はっ!!」
マキナは立ち上がると、少女の片腕を掴んで背負い投げした。
ドターーーーーーーーーーン!! と凄まじい音と共に少女の体は床にたたきつけられた。
「んっ・・・あれ?ちょっと歌音、大丈夫?」
歌音は突然の出来事に何が起きたかよく分からなかった。
床に仰向けになった状態のまま、やけに高く感じる天井を見つめている。
マキナは睡眠中も常に危険に備え、臨戦対戦を取っているため、条件反射的に級友を投げ飛ばしてしまったのだ。
「大丈夫……全然、痛かったけどね」
床に倒れたまま、少女は苦笑いして言った。
彼女の名前は相馬そうま歌音かのん、明るい性格のマキナの親友だ。
マキナは手を差し伸べて歌音を起こした。
「いつも言ってるでしょ、私が寝ている時は気を付けてって……」
マキナが少し恥ずかしそうに言った。
仮にも居眠りをしていた上に、寝ぼけて友達を投げ飛ばしてしまったのだから。
「いいよ。私の方こそごめん、でも最近、疲れてるみたいだけど大丈夫?」
歌音が心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。私がタフなのは歌音が一番よく知ってるでしょ?」
そう言ってマキナは微笑んだ。
「ねえ、私も怪物退治手伝おうと……ふごっ!!ふがふが」
歌音が口を滑らせた瞬間、マキナは口を塞いだ。
当然、妖魔の存在も、マキナが妖魔と戦っていることも世間には秘密だ。
そして、その秘密を唯一、知る親友が歌音である。
「気をつけて!」
「はっ……はひっ」
歌音は口を塞がれたまま返事をした。