綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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無人島試験編
#15 体は剣で出来ている


 

 

背中を走る悪寒もとい霊感。

俺が背後を取られたのはいつぶりだろうか。

 

「言っている意味が分からないな。逆に何をしてるように見える?」

 

坂柳の指示とは言え、女子の客室で女子の荷物を勝手に漁ろうとしている俺。

まして、これが彼女の荷物であるのならなおさらだ。

客観的に見るまでもなく俺が開き直っていい理由などない。

 

一見、暴挙にも見える俺の言動は得体の知れない存在を前に好奇心が働いたわけじゃ無い。

俺が堂々と振り返り、彼女を視界に収める。

影だけでなく幸まで希釈したかのような少女が思わず一歩後退った。

 

「分かりやすく言おうか。俺が気付かなかったという事は君は最初からここにいたという線が濃厚だ」

 

俺はこの部屋には誰もいないという前提で動いていた。

だから、入口付近には細心の注意を払っていた。下着泥棒の名誉を頂戴する訳にはいかないからだ。

 

だが、その一点集中の策は唯一の裏目を引いた。

最初から部屋にいた彼女が警戒網を掻い潜ってしまったのだ。

 

「まだ、俺がこの場で何をしているかの説明が必要か?」

「…さ、坂柳さんのバックは一番左です」

 

よりにもよって一番左か。

この理論は駄目だな。知名度だけが一人歩きして査読されてる量が多いだけ。

汎用性と実用性は皆無に等しく、エビデンスとなる心理学も当てにならない。

 

「正直者に免じて、君がベッドの側に潜んでいた理由は訊かないでおく」

 

彼女が俺に対して畏怖を感じたところで立場は完全に逆転した。

俺は彼女の進言に従い、一番左のバックから目当ての薬と水を取り出す。

立ち尽くすように固まった彼女を放置するのも気が引けるが、今は故意に抽象的な指示を出して俺を泳がした奴に文句の一つは言ってやらないとな。

 

「坂柳。不毛な悪戯をする元気があるなら俺は帰るぞ」

「あら、お気に召しませんでしたか?山村さんの下着は」

「隠す気がないどころかあたかも誘導したかのような発言とはな。後は山村に看病してもらうんだな」

 

まあ、山村と呼ばれた彼女が坂柳の看病役を買ってくれるかは微妙なところだ。

山村と呼ばれた彼女は俺がバックに手をかけようとした時、本気で動揺していた。

俺と山村は同じく坂柳に弄ばれた被害者だろう。

 

「仕方ないじゃないですか。体は動きませんが頭は元気なんです。山村さんもこちらに来ていただけますか」

 

あどけなさが残る笑顔でそんな事を言われ、俺は言葉を失った。

子供の元気に振り回される大人みたいな対応を求められても応えられそうにない。

そのはずなのに、文句を言う気にもなれなかった。

 

山村が申し訳なさそうに俺達の元に来ると、俺に一つ会釈した。

謝るべきなのは本来俺であるはずなのに。…いや、元を辿れば坂柳が謝るべきなんだが。

 

「山村悪かったな。萎縮させるように問い質して」

「…い、いえ、私が悪いんです。綾小路君に悪意が無いのは最初から分かっていたのに…」

「ふふ、そうですね。どちらかと言えば悪意があるのは山村さんの方でしょう。私達の会話を聞いていた上で綾小路君を悪者にしようと試みた」

「おい諸悪の根源。話をややこしくするな。誰だって自分の下着が見られそうになったら嘘の一つは咄嗟に出るだろう」

 

責められた山村が今にも海に飛び込んでしまいそうな絶望を顔に浮かべたので俺はすぐに弁護しておく。

一方、上体を起こした坂柳は俺が持ってきた水で酔い止めの薬を飲んで、余裕の表情を浮かべた。

そんな即効性のある錠剤はないはずなんだが。

 

「歴史は繰り返すものですね。私は本来賞賛されるべきなのに悪者扱い。悲劇の連鎖です」

「寝言は寝て言え」

「綾小路君が私の可愛い寝顔をどうしてももう一度拝みたいという気持ちは重々理解できますが、残念ながらそのリクエストに応えることは出来ません」

「…聞いてやるから早く話せ」

 

一瞬とはいえ坂柳の無防備な姿に見惚れていたのは事実。

それを悟られていたとは到底思えないが、これ以上は藪蛇だ。

 

「私の誉れは山村さんが証明してくれます。…聞かせてくれますよね?貴方が気配を消して居留守を使った訳を」

「…そ、それは」

 

俺が坂柳を連れて入室した際にノックをしたが反応はなかった。

しかし、山村が居留守を使った理由を自白させたとして、それが坂柳の無実の証明につながるかのだろうか?

例え山村から出た理由がどんなものであれ彼女に責任など微塵もないように思える。

 

観念したように俯いた山村はボソボソと

 

「さ、坂柳さんが男を連れ込んだんだと勘違いして……」

 

中々の爆発力を誇るトンデモ発言を放った。

 

…彼女は奇怪な妄想力をお持ちのようだ。

北の国もびっくりの火力だが、坂柳の前ではそれも不発弾に終わる。

弱点を見つけたかのように目を光らせた彼女は不敵に笑って

 

「実際には体調の優れない私を綾小路君が介抱してくれただけですが、この際それは関係ありません。もし、貴方の想像通りの展開だとして、この場で事が始まってしまえばどうするつもりだったんですか?」

 

万が一にもあり得ないであろうイフストーリー。

ここまで丁寧に説明されれば、俺や山村も坂柳が描いた道筋が段々と見えてくる。

坂柳は言葉を失って青ざめていく山村にさらなる追撃を浴びせた。

 

「いえ、聞くまでもなかったことですね。貴方はいつもと同じで何も出来ない。十中八九息を殺し身を潜めて他人の性交渉が終わるのをじっと待ち、事なきを得ようとするでしょう」

 

他人の行動原理を分析して思考をトレースする。

これは言葉で言うほど簡単な事じゃない。人間を公式に当てはめる事は出来ないからだ。

しかし、坂柳はそれをかなりの高精度でやってのける。

 

「しかし、それは可笑しな話ではないですか?それならば最後まで黒子を徹していただかないと。自分の貞操だけ必死に守ろうとするなんてご都合主義がすぎるでしょう?」

「…も、申し訳ございませんでした」

 

心を完全に折られてしまった山村は地面に手をつき頭を下げた。俗に言う土下座というやつだ。

もうこれ以上は追及しないでくれと背中が寂しく語っていた。

 

「ふふ、綾小路君に問い詰められた時といい潔いですね。私の潔白が明らかになった以上、貴方の役目は終わりです。もう退室していただいて構いませんよ」

 

何度も何度も謝罪の意を込めた会釈をしながら山村は足早に退室していった。

自分が謝って事が済むなら、率先して頭を下げる。自分に自信がない人に顕著に見られる特性だ。

 

「山村を庇う理由もなかったから口を挟まなかったが、これのどこに賞賛できる要素があるんだ?」

「私達の邂逅に第三者の介入は野暮。綾小路くんの要望通りですよ」

 

…堀北の気持ちが少し分かった気がする。

意図を曲解して滅茶苦茶されるとこんなやるせない気分なんだな。

 

「ですが、彼女はだめですね。伏兵として能力はありますが、想像力に欠ける。私に居留守を使ってタダで済むと思っていたのが驚きです。私と綾小路君を見て男女関係を結びつける妄想力をもう少し有効に活用していただきたいものですね」

「クラスメイトといい関係が築けているようで何よりだ。さて、宣言通りに俺も帰らせてもらう」

 

豪華客船での特別な時間を無駄にはしたくないからな。

 

「では、最後に一つだけよろしいですか?」

「拒否するのが無意味なことは学習済みだ。簡潔に頼む」

「そうですね。ではどこから話しましょうか。あれは私に物心というものが朧げにつき始めた頃、父に連れられて山奥のとある施設に向かったんです。そこは天才を人工的に…」

 

…面倒なので俺はツッコむ事を諦めた。

天邪鬼な坂柳が認めることはないだろうが、彼女のかまってちゃんな言動は病人が精神的に疲弊することによる寂寥感からくるものだ。

 

それに他の皆が豪華客船で楽しんでいる中、一人で客室に取り残されるというのも同情の余地がある。

…どうやら、俺が余計な事をしたせいで乗船する羽目になったそうだしな。

 

「ですから、私と綾小路君は幼馴染と呼ぶに値する関係で……聞いてますか?」

「聞いてるよ。坂柳は天才だな。えらいえらい」

「そこはかとなく馬鹿にしてますよね?綾小路君にはまず、私がどうして天才なのかを骨の髄まで教え込む必要がありそうです」

 

だから、少しくらいは思い出話に付き合ってやるのもいいだろう。

 

自身のオリジンストーリーを嬉々として語る彼女の声に耳を傾けながら、クルージング1日目の朝は過ぎていった。

 

 

 

 

『生徒の皆様にお知らせします。間もなく島が見えて参ります。暫くの間非常に意義ある景色がご覧いただけるでしょう』

 

豪華客船の向かう先は学校が所有しているという無人島。

そこではプライベートビーチでBBQするのは勿論、ディスカバリーチャンネルごっこも出来るという。

 

船内アナウンスを聞いてデッキに出ると、多くの生徒が集まっていた。

そこには真剣な表情の堀北もいる。

旅行を楽しむようなタイプでもなさそうだが、相変わらずの仏頂面だ。

 

「久しぶりだな。椎名」

 

俺はそこで偶然にも同じタイミングでやってきた椎名に声をかける。

何週間ぶりかの会話だったが自然に出来ていると思う。

そして今は、景色を見る事も忘れ彼女から投げかけられた質問に対してぐるぐると思考を回していた。

 

「綾小路君なら無人島に一つだけ持っていけるとしたら何を持っていきますか?」

 

それは無機物有機物を問わず何でもありなのか。

島への滞在期間はどのくらいを想定されているのか。

…いや、椎名が聞きたいのはこんな事ではないはずだ。

 

「…友達だな」

「てっきり本って答えると思ってました。理由を訊いてもいいですか?」

「死因から逆算した時に、餓死よりも孤独死の確率が高い気がしたからだな」

「なるほど。理由まで聞くと納得ですね。綾小路君らしい答えです」

「椎名はやっぱり本か?」

 

オウム返しで投げかけた質問に椎名は島を眺めながらゆっくりと思案し始める。

まるでこの質問のために、島の周辺をゆっくりと航行しているのではと錯覚してしまいそうだった。

暫くして、椎名が髪を靡かせながら丁寧に俺に向き直った。

 

「最初は死ぬなら本に囲まれて死にたい。そんな風に考えていました」

「読書家にとっては栄誉ある最期だな」

「ですが綾小路君の話を聞いて私も友達が一番かなと思いました」

 

俺の考えに100%影響されたという訳でもなさそうだ。

椎名には椎名なりの考えがある。彼女の表情がそれを物語っている。

 

「最期くらいは誰かの物語ではなく自分の物語を紡ぐべきだと思ったんです。私はかけがえのない友達とその島での生活を記録として残したい」

 

どうしてこんなにも彼女の言葉は脳にすんなりと入ってくるのだろうか。

脳裏には椎名と二人で無人島に漂流して、時間を大事に大事に刻んでいくイメージが構成されていく。

 

だからこそ、気になった。

俺が言った友達と椎名が言った友達が同じ方向を向いているような気がしてならなかったからだ。

 

「椎名、その友達とは―」

「あ、ひよりんと綾小路君だ。いや〜、無人島楽しみだねっ」

「おはようございます。櫛田さん。今日はいつにも増してパワフルですね」

「あはは。流石にこれはテンションあがっちゃうよね〜。今から1週間無人島0円生活に挑戦できるくらいには元気かも」

 

アロハシャツにサングラス。トロピカルジュースまで片手に装備されている。

櫛田は余す事なくこの生活を満喫しているようだ。

 

「無人島か。何も起きないといいけどな」

 

そんな不穏な一言が俺の口から漏れたのは、櫛田の上機嫌に水を刺してやろうという悪意地が働いたからだろう。

番組のCMみたいなタイミングで割り込んできやがって…。

 

「え?どういう意味?」

「ふふ。無人島では何かが起きる。ミステリーのお約束ですよ。櫛田さん」

 

十角形にデザインされた館があったり、先住民族に生捕りにされて謎の儀式が始まったり。

そんな事が起こっても不思議じゃない。…ミステリーなら。

 

『これより、学校所有の孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後。全員ジャージに着替えて、所定の荷物と携帯電話をお忘れなきようお持ちください』

 

「え〜なんで、ジャージ!?」

「先生の意図を読むなら水着だと風紀が乱れるからとかでしょうか?」

「いや、それも違うと思うぞ…」

 

嘆く櫛田と天然発言をサラリとかます椎名と別れて俺は部屋に荷物を取りに戻った。

 

 

 

 

現代人の必需品であるスマホを没収され、さらには私物の持ち込みがないかも隈なくチェックされる。

厳重すぎる手荷物チェックにDクラスの皆の夢はすっかり覚めていた。

 

この後、何かがある。そう思わずにはいられなかったからだ。

これは一度地獄を経験した事による強みだ。

 

「貴方が言っていた事が現実味を帯びてきたわね」

「堀北か。さっき、デッキでCクラスの連中に絡まれてなかったか?」

「…気付いていたのに何もしないのね」

「なんだ、助けて欲しかったのか?」

「貴方が困っている人を見て見ぬふりする人だという皮肉よ」

「それは最初から分かっていた事じゃないか?」

 

バスでは足の悪いお婆さんをスルーし、学力が低い生徒には救いの手を差し伸べるどころか蹴落とした。

ここだけ切り取れば中々の外道だが、俺にも俺なりの価値観がある。

 

「減らない口ね。まあ、そのことはいいわ。今はそれよりも目の前のことに集中すべきだもの」

「気負いすぎるなよ。空回りして倒れられても困る」

「素直に忠告として受け取っておくわ」

 

杞憂に近い心配をすんなりと受け入れられるくらいには体調が万全のようだ。

堀北の事だから船の上で活字を追うような自殺行為はしてるかと思ったが予想が外れたな。緊張感を持っている証拠だろう。

 

 

 

 

「ではこれより本年度最初の特別試験を始める」

 

Aクラス担任である真嶋先生の言葉を受け入れられたのは全体を見て半分に満たないだろうか。

 

Aクラスの坂柳と葛城。

Bクラスの一之瀬に神崎。

Cクラスの龍園。

 

クラスの代表格と呼ばれる人物達の顔に不安は見受けられない。

 

「期間は今から1週間。君たちにはこれからの1週間、無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお……」

 

俺は淡々と続ける真嶋先生の長い話を聞きながら並行して要約していく。

最近ではAIが議事録を自動で作成してくれるツールなんかが出てきてはいるが、痒いところに手が届かないのが実情だ。

所詮は仕事のできない人間のお助け道具であって、能力のある人間にとっては下位互換でしかないのだ。

 

・試験専用ポイントが各クラス300ポイント与えられ、そのポイントを使い必要なものを購入出来る

 

・残ったポイントは2学期の以降のクラスポイントに加算される

 

・スポット占有によるボーナスポイントやクラスのリーダー当てによる50ptの加点が存在する。逆にリタイア-30ptリーダー外し-50ptのように減点も存在する。

 

まあ、馬鹿に説明するために大まかな要点だけを抑えるならこんなもんだろう。

その他にも攻略の糸口になりそうな細かなルールはあるがそこら辺は玄人向けだ。

 

「説明は以上だ。質問等は各クラスの担任が受け持つことになっている」

 

全体での説明が終わり、クラス単位での話し合いがそれぞれ始まった。

いきなり始まった特別試験。茶柱先生は当然のように質問の嵐に巻き込まれる。

 

そして、そこにはAクラスへの想いが人一倍強い幸村の姿もある。

奇しくも櫛田が冗談で言っていた0円無人島生活を決行しようとする幸村とそんなの無理だと感情論で全否定するの女子達。

試験開始早々、中々のカオスである。

 

「高円寺、少しいいか?」

「ふふ。どうしたのかな?綾小路BOY」

 

高円寺の発音はやけに耳に残る。

BOYの発音を文字起こしするとしたら『ぶぅぉうぉぉぃい』になるだろう。いや、今はそんなことは関係ない。

 

他のクラスが各々の戦略に打って出てる中、俺達のクラスだけ取り残されているとクラスの皆のモチベーションの低下に繋がる。

俺は楽しく無人島生活を過ごしたいのだ。それだけは避けたい。

 

「単刀直入に言う。リーダーをやってくれないか」

「中々の審美眼だねぇ。確かに条件付きではあるが、この試験におけるリーダーにおいて私ほどの適任はいないだろうねぇ。私の能力ならばこの島のスポットがいくつあろうと、全てを占拠する事だって可能だ。しかし―」

「一人。お前の指定した生徒が誰であろうと退学させる。というのはどうだ?」

「ふっふっふっ……」

 

不気味。そして不敵。

何を考えているかも分からない高円寺はただただ笑って何度も頷く。

 

「君は本当に面白いねぇ。いつも私が目障りな人間を見つけたジャストなタイミングで現れる」

 

高円寺の目には女子達と揉めている幸村の姿が映っていた。

幸村はよく言えば勉強の虫。悪く言えば勉強しかできない虫。高円寺からの評価は多分こんな感じだ。

 

「やっほー。綾小路君。なになに?二人で悪巧み?私も混ぜてよ〜」

 

星之宮先生が近づいてきているなぁと思っていたら、目的地は悲しいことに俺だったらしい。

あろう事か、俺の肩に手を乗せて馴れ馴れしく接してくる。

 

「職務怠慢ですよ、星之宮先生。ここにいると一之瀬が困るんじゃないですか?」

「相変わらず冷たいな〜。このこの。…ちょっとくらい良いでしょ?ケチ」

 

頬を執拗に突かれそうになったので俺は鬱陶しさが伝わるように星之宮先生を跳ね除けた。

茶柱先生のように教師陣は皆ジャージを着用しているのに、星之宮先生は非常にラフな服装で近いと色々危ない。

 

「先生も相変わらず適当ですね。ジャージの着用は義務付けられてないんですか?」

「あはっ。私の姿に欲情しちゃった?でも、それは保健医の仕事の範疇を超えてるかも〜」

 

…この人が教職とか日本も落ちたな…。そう思わずにはいられない。

そんなアダルトビデオの設定みたいな事を期待してるわけがないだろう。

 

「それよりさ、佐枝ちゃんの方、見て見て」

 

呆れて言葉を失っていると、星之宮先生は大袈裟に茶柱先生の方を指差した。

茶柱先生は生徒に簡易トイレの使い方をジェスチャーを交えてレクチャーしているところだった。星之宮先生と違ってちゃんと職務を全うしている。

 

「茶柱先生が何か?」

「もうっ、分かってないなぁ。佐枝ちゃんみたいな馬鹿真面目なタイプが、あのジェスチャーしてるのすごくエッチじゃない?」

 

…たしかに扇状的だ。

そう思ったが、勿論声にも顔にも出していない。

そして、これには傍観者を徹していた高円寺も視線を誘導されていた。

高円寺に対して初めて親近感が湧いた瞬間だった。

 

ニヤリと悪い笑みを浮かべた星之宮先生は

 

「佐枝ちゃ〜ん。綾小路君が服を着てるとよく分からないってさ〜」

 

ピタリとヤンキー座りの姿勢で動きを止めた茶柱先生。

それも中々に見物だったがそれも束の間のこと。

怒髪天を衝いた形相で勢いよくやって来た茶柱先生に俺と星之宮先生は簡易トイレの段ボールで頭を叩かれた。

 

痛……くない。

なるほど。簡易トイレには衝撃を吸収する効果もあるのか…。

 

「mad teacher’s。類は友を呼ぶとはこの事だねぇ〜。約束は守ってもらうよ。綾小路BOY」

 

高円寺は丁度よくやってきた茶柱先生に手早くリーダー申請の手続きを済ませて、森の中に颯爽と消えていった。

 

信頼するには危なすぎる野生児な彼にも唯一信頼できる点がある。

それは意思表示が明確であることだ。彼がやると言えば必ずやり遂げる。

 

「危ない橋を渡るなぁ。綾小路君」

「言っておくが他言は無用だぞ。知恵」

「流石の私もそこら辺は弁えてます〜。何も見てない何も見てない」

 

オーバーリアクションで両手で目を塞いだ星之宮先生はそのまま自分のクラスの方へ戻っていった。

 

彼女の言った危ない橋。多分それでは不足している。

橋を渡り切った先は荊道が続いているくらいには高円寺は諸刃の剣なのだ。

だが、身を切るようなリスクの先にある莫大なリターンにはワクワクさせられるものだ。

 

さながら、ロロノア・ゾロがローグタウンで三代鬼徹を選んだ時のように。

 

 

 

坂柳 有栖 3月12日 魚座

 

ルックス :S

スタイル :B

性格   :B

 

趣味 チェス 将棋

好きなもの 自分に従うもの

嫌いなもの 自分に従わないもの

将来の夢 綾小路清隆より自分が優れている事を証明する





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