事件はまだ起きません。平和です
知恵を持つ人間は複利で稼ぎ、知恵を持たない人間は利息で失う。
金持ちは借金を使って資産を増やすが、貧乏人は借金を使って資産を減らす。
資本主義への理解の先にしか本当の金銭的価値はない。
「女は感情的な生き物だから仕方ないのっ」
「話にならないな。猿の方がもう少し理性的だ」
「あっそ。なら幸村君はテント無しで野宿でもすれば?猿みたいな野生的な生活ができるかもねっ!」
…篠原と幸村。どっちもどっちだな。
目先のptでここまで揉めているようでは、彼等がそれを理解できる日は未来永劫訪れないだろう。
対岸の火事として見ている分にはエンターテイメント性があって面白いが、櫛田は消防隊の如く火消し活動を行っている。
笑顔で何とか場を収めようとしているが、彼女の心境を唯一知っている俺としては、いつあの仮面が剥がれるかとドキドキだ。
…彼女には普段から世話になってるしな。少しくらいは肩代わりしてやるのも悪くない。
『さっきから何を揉めてるんだ?女の子はトイレなんかしないし、風呂に入らなくてもいい匂いなんだろ?』
こんなふうに無知を装う感じで場を凍り付かせて消化するのはどうだろう?
……勿論、冗談だ。
「今のは落とし所としていいんじゃないか?幸村含め俺達男子は野宿で過ごす。その代わり仮設トイレの購入は水に流す。ポイントを残したい気持ちは皆一緒なんだ。ここはお互いに譲歩をするべきだろう」
まあ、排泄物は水に流れないんだけどな。ガハハ。
なんて笑えない冗談は心の中に留めておく。
貧乏な生活から一刻も早く抜け出したい軽井沢は意外にも節約派のようだ。
つまるところ、篠原のような極少数の生徒を丸め込めば鎮火する。
強く抵抗していただけにまだ折れそうにない篠原達にはさらなる一押しが必要だ。
「先生の説明にもあった通り、これは被災時にもよくつかわれる代物だ。強い拒絶は避難所で生活する方々への失礼にもあたる。それに考えてもみてくれ。同行する茶柱先生だって簡易トイレを使うんだぞ」
何もトイレ事情は生徒だけに限った話ではない。
例え、俺達が仮設トイレを購入したとしても茶柱先生は簡易トイレで用を足すだろう。
うーん。…冷静に考えて24時間労働に加えて劣悪な職場環境。
公務員に労基が適用されないとはいえ、これは倫理を無視しすぎでは……?
「篠原さん。もういいんじゃない?」
「………分かったよ。私も我慢する」
「ありがとう。別に俺達も嫌がらせがしたいわけじゃないんだ。そこだけは分かっててくれ」
幸村のように感情を刺激する正論ではなく、俺は感情に訴えかける正論でこの場を纏めた。
俺達の保護者的立ち位置の茶柱先生を引き合いに出したのも上手く作用した。
幸村はいきなり決まった野宿に不服そうだ。
その態度が俺の株をあげ、自分の株を下げているという事に気付けないようでは先は暗いだろう。
「あ、Cクラスも森に行くみたい」
Bクラスは随分と前に一致団結といった様子で西の方へと探索に向かっている。
Cクラスも今し方、方針が定まったようだ。だが、あの方向はBクラスと丸かぶりでは…?
波乱の予感だ。
そして異質なのはAクラス。
坂柳一派は砂浜に残り、葛城一派は開始直後に姿を消した。
能力が高い人間が集まるという事は内部で分裂するというジレンマを抱えている。
まさに政治の縮図。Aクラスは党派同士の揉め事という一番面倒な課題に直面している。
「綾小路君、私達はどうしよっか?」
俺達Dクラスは他クラスと違い牽引力の持つ人材が欠けている。
当たりを見渡せば、何をしていいかと分からず戸惑っている指示待ち人間達。
いつまでもここで立ち往生していても、真夏の太陽に体力を奪われるだけだと分かっているにも関わらずだ。
皆、心の中でリーダーを求めているのだ。
「最優先はベースキャンプの選定だ。地図の地形から推測して島の中央辺りに川があると思う。上流付近なら涼しくて過ごしやすいだろう。ひとまずはそこを目指してみないか?」
必要なのは現状を打破する建設的な案。
無鉄砲に右も左も分からない森に入るのではなく、明確な目的地を設定してやる。
チームが団結力を持つために必要なのはコミュニケーション能力ではなく同じ目標だ。
和気藹々とした仲良しこよしでは上場出来ないベンチャー止まりだからな。
「私は綾小路君の意見に賛成。みんなはどう?」
「…うん、良いと思う。っていうかもうそれ以上の案は考えられないでしょ」
「しかも、川って聞くとちょっとテンション上がってくるね」
目を見合わせる一瞬の間はあったが、俺の意見は多数の支持を得た。
櫛田の期待に応える事ができる能力。
この女子だらけのクラスで、これ以上に信頼を獲得する手段はない。
彼女の影響力のおかげもあり、俺はこれを機にDクラスのリーダーとして頭角していく事になるだろう。
◆
島の中央にはマイクラの平原バイオームのようなサバイバル初心者うってつけのエリアがあった。
ここが俺の私有地なら迷わずキャンプ場を作り商売を営む。
それほどまでに立地としては好条件。
広がる芝生に大きな木。そして、目当てだった川は徒歩5分圏内だ。
俺達は8人用のテントを2つ立て、ここをキャンプ地とした。
少し手狭にはなるが女子20人でこのテント2つを使ってもらう運びになっている。
余計な出費を避けられたのは俺の排他的戦略が功を奏しているといっていい。
「ねぇ、私思ったんだけどさ。リーダーは綾小路君で良いんじゃない?」
「賛成。テントも運んでくれたし、正直心強いよね」
俺としては少しクラスに貢献しただけなんだけどな。
俺の地獄耳が女子のヒソヒソ話をキャッチしながらマニュアルを読んでいると、堀北が話しかけてきた。
上陸前は意気込んでいたのに、冴えない表情を浮かべている。
「一躍時の人ね。随分とやる気を出しているみたいじゃない。リーダーさん?」
「揶揄う余裕があるなら堀北も何か手伝ってくれ。それとも、上司の仕事は部下に仕事をさせる事なんて戯言を言うつもりか?」
「それも悪くないかもしれないわね」
こうも真面目な顔で冗談を肯定されると夏の暑さに頭がやられてしまったのかと心配になる。
あんなのはサボりの常套句だろ。上司は上司で仕事しろや。
「待望の特別試験だろ?そんな低い志だとAクラスには上がれないんじゃないか」
「複雑な気持ちね。自給自足の集団生活。つくづく私向きではないんだもの」
「俺達は試験の選り好みが出来る立場じゃないだろ」
「それは…耳が痛い話ね」
無人島という慣れない環境が彼女に弱気を生んでいるのか?いや、というよりは自分が俺より貢献していない自覚があるから強気になれていないのか。
兎も角、こんな弱気な堀北はあの夜以来かもしれない。
「堀北。ここは一つ勝負をしないか?」
「…あの時と完全に立場が逆転したわね。けれど―」
「まさか、怖気付いて受けないとは言わないよな?勝てる自信がないから勝負はしないなんて言わないよな?」
俺は彼女の言葉に割り込んでここぞとばかり煽っておく。
そして、すでに記憶に刻み込んで用済みになったマニュアルをパタンと閉じて堀北を真正面に捉える。
俺の四白眼は慄いた彼女の隙を見逃さない。
「堀北。リベンジの機会を前に逃げ出すようなら俺との差は一生埋まる事がないぞ」
堀北の対象を強制的に俺へとシフトさせる一言。
特別試験で結果を残す事を目的ではなく俺に勝つための手段にする。
焚火の予行練習だ。彼女の火付け役は俺が務めてやろう。
「…全てにおいて自分が上である。そう思い上がってるようね。勘違いしないでもらえる?賭け事のない勝負は味のしないガムと同じ。そう言おうとしたところよ」
「なら勝負は成立だな。内容はそうだな。この試験が終わった後にお互いを評価して、そこで勝ち負けを競うというのはどうだ?」
「随分と抽象的ね。本当にそれで決着がつくのかしら?」
「俺達の勝負に絶対的な基準も第三者からの評価も必要ないだろ。勝敗に納得性を持たせる上ではこれが最適なんだ」
何だか格ゲーのパッチノートみたいな表現を使ってしまったが俺は本当にこのルールが最適だと思っている。
この試験への貢献度を正しく評価する為にはある程度の能力が必要だ。クラスメイトはそれを満たしていない。
要は敵にすら認めさせてしまうほどの実力。
それで相手を黙らしてしまえばいいということだ。
「すでに勝ちを確信してるような親切な説明をどうもありがとう。私はつい最近それを負けフラグと呼ぶのだと知ったわ」
不敵に笑った堀北からは先程までの不穏な影は消えていた。
もしかしたら、敵に塩を送るような真似だったかもしれないな。
「……待って。今気づいたんだけど、ここ占有スポットじゃないよね?」
「え?うわ、マジじゃん。スポット探した方が良かったんじゃない?」
「でも、ベースキャンプの変更って…」
「うわぁぁ。最悪だぁぁ」
緊迫する俺達の空気をぶち壊すかのように騒ぎ立てるクラスメイト達。今更気付いたのかよ……。
島のど真ん中にあるこんな好立地。俺達より先に動き出した他クラスが見つけない方が難しいだろうに。
俺達がこの立地を選べた事をただの幸運としか認識していなかったようだ。
そんな混乱の合間を縫って、堀北が声を張った。
「きっとそこは彼に考えがあるんじゃないかしら?」
…堀北には俺達が一蓮托生の仲間であるという大前提を教えるべきかもしれない。
堀北は敵と書いて馬鹿真面目に『てき』と読んでしまうタイプだったのを失念していた。
「悪い。伝える余裕がなくて忘れてたんだが高円寺が勝手にリーダーをやると言って申請してしまった。だから、スポットも俺達の意思で占有は出来ない」
「「「「えええええええ!?!?!?」」」」
俺が1から10まで戦略を説明したとしても半分も理解してもらえないだろう。
だから、俺は全てを高円寺の独断と暴走である事にした。
誰一人疑いもせずに納得するのだから、やはり高円寺は凄い。色んな意味で。
◆
生活に必要な衣食住を確保する。
俺は今、事実上のリーダーを任命されてその職務を全うしていた。
まずはクラスメイトを食糧調達班と住居整備班の2つに分けて個人に役割を付与した。
食糧調達班には主に資源調査と食糧と飲水の確保。
住居整備班には焚火の準備や荷物の整理。
そして俺はその全ての進捗管理を担当している。
「佐倉。簡易トイレのビニールシートを大量に貰ってきた。テントの下に敷けば、即席のマットレスになると思う」
「す、凄いねっ。綾小路君。じゃあ、私はそれを敷き詰めていくねっ」
茶柱先生に調達してもらったビニールシートを手渡すと佐倉はそれをテントの中で四つん這いになって丁寧に敷き詰めていく。
…みーちゃんには勉強だけでなく女性としての立ち振る舞いも佐倉に指導してもらいたいところだ。
余りにも無警戒すぎる。
男はお尻を見ると狼になってしまう習性を持っているんだぞ。
「ショ……、ンショ……」
無駄に丁寧なせいで中々進まない作業だが、終わってほしくないという気持ちが同時に芽生えてくるのだから俺はリーダー失格だ。
それでも、城の前を護衛する騎士のように、このテントの入り口だけは何としても俺が守ってやらないと……。
「…ふふ、何だか楽しいなぁ」
「苦しいではなく楽しいなのか?」
「……え?あ、うそ、声漏れてた?……は、恥ずかしい」
あっという間に顔を真っ赤にした佐倉はそれを誤魔化すように手をササっと動かし始めた。
さっきまでちいかわみたいな声を出してちまちまと作業していた人間と同一人物とは思えない手捌きだ。
「で、でも、ほんと楽しいんだ。みーちゃんや千秋ちゃん。それに綾小路君。皆とこうやって過ごせるのは幸せだよ」
「控えめに言って現代人には中々に過酷な環境だと思う。キャンプに来たのとは訳が違うからな。それでもか?」
「…うん。中学の頃はずっとずっと一人だったから。その頃に比べたら全然辛くないよ。むしろ楽しい。……あの時、綾小路君が私に声をかけてくれたからだよ。…ありがとう」
あの時、佐倉をスライム扱いしていた俺を殴りたい。
何が弱者女性だ。そんな言葉は二度と使わないと心に誓った。
「不束者だがこれからもよろしく頼む」
「こ、こちらこそお願いします」
あの時の意趣返しを込めた挨拶に振り返りペコリと頭を下げた佐倉。
彼女がこの挨拶の意味を知る日はまだ先なんだろうな。
振り返れば佐倉と二人きりで話したのは初めてだった。
同じ仲良しグループの仲間からもう一つステップアップできた気がした。
「実を言うと、俺も楽しいと思っている。顔には出ないけどな」
「ふふ、綾小路君。顔に出てたよ?」
「え、そんなつもりはなかったんだが…」
何となく心の距離が近づいた気がして、俺も本心を伝えてみたが、佐倉は気付いていたようだ。
少し前に櫛田とスマイルラインの研究をしていたからかもしれない。
俺のポーカーフェイスは効力を失いつつあるな。
「えへへぇ。ほんと、楽しいなぁ〜」
主人と遊んでもらっている犬のようにルンルンとお尻を振り作業を再開し始めた佐倉から、俺は急いで視線を切った。
危うく3つ目のテントを立ててしまうところだったぜ。ガハハ。
……やっぱり、佐倉の言う通り俺も気分が高まっているのかもしれない。
◆
「これって飲めるのかなぁ」
「任せて。私が毒見してみるよ」
「え、ちょ、かや乃ちゃん。ちょっと待っ―」
俺が川の上流付近に行くと、小野寺が今にも手で水を掬い口に含む直前だった。
松下の説得では止まりそうにない。
俺はすぐに駆け寄り、問答無用に小野寺を後ろから羽交締めした。
「……え?」
加えた力に対して、思いの外体が軽かった。
水泳部員である小野寺は水の抵抗を減らすために、減量でもしているのかもしれない。
彼女からすればふわっと浮いたような変な感覚が体を支配しただろう。
上流付近で足場も悪いため、人によっては恐怖を感じるかもしれない。
「小野寺。川の水にはランブル鞭毛虫やピロリ菌がいるって義務教育で教わらなかったのか?」
「…えっ、えっ、綾小路君っ?」
川の上流は不純物が少なく、一見すると綺麗な水に見える。
しかし、天然の水を煮沸処理を行わずに口にする事はリスクを伴う行為だ。
先進国である日本ではインフラが整っていて、いつだって安全な水が飲める。
だが、それは水は全て安全なものだと感覚を麻痺させる事に繋がる。
海外旅行に行った日本人が高確率で腹を下すのは水が大体の原因だ。
「うーん、多分そこまでは詳しくは習わないんじゃないかな」
「…そうなのか?」
「いや、そうなのかって。逆にそんな微生物の名前にフォーカスした授業だったの?綾小路君の中学は」
「…俺が特殊って事か」
「まあ、とりあえずかや乃ちゃんが固まってるから離してあげてよ。かや乃ちゃんは部活一筋で男子に免疫ないんだから」
…松下の言う通り、羽交締めしながら言うことでもないな。
俺は転ばないように小野寺の体を優しく地面に置いた。
「緊急事態とはいえ悪かった。脇とか痛くないか?」
「…う、うん。だ、大丈夫だから。わ、私も悪かったし!」
普段から快活な印象のある小野寺のこんな動揺した姿は初めて見たな。
松下が言っていた免疫がないという話に嘘偽りはなさそうだ。
「まあ、川の水を飲むのは神社の手水舎の水を飲むようなものだと覚えておいてくれ」
「え、あれって飲むやつじゃないの?ほら、コップみたいなのついてない?」
…もしかしなくても、柄杓のことか…?
「なぁ、松下。神社の参拝作法は義務教育で習わないのか?」
「んー、カトリック系の私立中学でもない限り習わないんじゃない?」
…同じ様なやり取りを繰り返して俺は理解してもらう事を諦めた。
そもそも、キリストの降誕祭をデートの日としか認識しないような国民性だし……。
仏教の開祖の釈迦が涅槃に至ったのは、理解されない悲しみを募らせた結果かもしれない。
「…え、綾小路君。それって」
俺が釈迦のような気持ちで無心で水を汲んでいると、俺が持つある物に松下が気付いた。
「ペットボトルの飲み口に使えるタイプの簡易的な浄水器を2ptで購入した。この人数の水を煮沸処理で調達するのは無理があるからな」
大手通販サイトで約3000円くらいだろうか。
安物だから耐久性は怪しいが一週間なら問題なく持つだろう。
原価10万をゆうに超える仮設トイレが20ptだと考えると、少し割高だが必要経費だろう。
「小野寺。毒見してみるか?」
「う、うんっ」
ペットボトルに組んだ川の水に浄水器を装備して渡すと、小野寺は豪快に飲み始めた。
飲みサーの3男にも負けない飲みっぷりである。
思わず2男のように飲みコールをしてしまいそうだ。
…いや、冷静に俺の中にそんな欲求はないな。
そして、俺が大学でサークル活動に参加する未来もないだろう。
◆
飲み水の確保とキャンプスペースは充実してきた。
後は食糧だな。
実は人間は睡眠と水があれば10日くらいは何も食べずに生きられるらしい。
しかし、ゴキブリに負けず劣らずの生命力を持っているのだから発揮しろとそれを強要するのは難しい。
断食月のあるイスラム教を説くのも現実的でなく、結局のところ黙って食料を調達する方が労力として最小限で済むだろう。
川にはニジマスや鮎のような魚が生息していたし、万が一の時は俺の反射神経の見せどころだ。
華麗な掴み取りを披露して、良質なDHAを鱈腹摂取してもらおうじゃないか。
「あ、これは山菜定食で食べたことありますっ」
…進研ゼミで予習していた問題がテストで出たみたいな反応だな。
「順調そうだな。みーちゃん」
「あ、綾小路君っ。見てくださいこの成果を。収穫祭ですよ。収穫祭っ」
「手当たり次第取っている訳ではなく、見極めてこの量とは流石だな」
「ふふーん。今ではニリンソウとトリカブトの違いもバッチリです」
慢性的な貧困にあるDクラスは他のクラスに比べて山菜定食を食べる機会も多い。
みーちゃんは節約上手で経済的だが、付き合いのいい彼女にとってそれは例外じゃない。
そんなことより、オッケーサインをしてドヤ顔してるみーちゃんが可愛い。
「ニンギョウタケが取れないかなと淡い期待をしていたんですが、流石に時期が早すぎたみたいです」
目的を持って針葉樹林を探索しているというのだから驚きだ。
小さな体一つで懸命に頑張る姿を見て頭を撫でたくなるような気持ちに駆られるのは生理現象のはずだ。
小動物を可愛がりたくなる気持ちと同じだろう。
「みーちゃん。荷物は俺が持つ。ここは足場がお世辞にもいいとは言えないからな」
俺はそんな衝動を紳士的な行動に変換した。
みーちゃんの返事を待つ前に、荷物をさりげなく取ると笑ってお礼を言われた。
この笑顔だけでお釣りが出るだろう。
俺達は陽が落ちる前にベースキャンプへと戻る事にした。
「ふふ、何だか誇らしいです」
「山菜の収穫量で言えば間違いなくみーちゃんが一位だろう。誇っていい。ありがとうな」
居酒屋のお通しのキャベツの大盛り5皿分くらいはあるだろうか。
贅沢を言えばごま油と少しの塩胡椒で食べたいところだ。
「ありがとうございます。でも私が言いたいのは綾小路君の事です」
「俺の事?」
「綾小路君には人を惹きつける才能とそれに応える能力が備わっていると前から思っていたんです」
「…そんな事言われても嬉しかねぇぞ。この野郎」
真正面から誉められることに慣れていなくて、何だか某タヌキのような照れ方をしてしまった。
…あれ、ゴリラだっけ?
「そういうところも素敵だと思いますよ。そして、そんな綾小路君の魅力に皆が気付き始めてます。私はそれが誇らしいって思うんです」
「…言うなれば家族や親戚が褒められてるみたいな感じか?」
「半分はそんな感じですね」
「なら、残り半分は?」
みーちゃんが足を止めたので、俺も同調して歩みを止める。
照れ臭そうに目を背けた彼女は、
「綾小路君の魅力にやっと気付いたかー。私はずっと前から知ってたんだぞー。…そんな気持ちですかね」
はにかむように笑い俺に向き直ったみーちゃんを見てこの子は本当に純粋だなぁと心から思う。
インフルエンサーの古参勢のような気持ちは俺には理解できないが、その対象が自分である事はきっと喜ばしい事だろう。
「綾小路君は私の推しなんです。『推しは推せる時に推せ』ですよっ」
推すという感情は理解できなくても、推すという行為は理解できる。
みーちゃんに推される事ほど名誉な事はない。
「ありがとう。嬉しいよ」
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
◆
小野寺 かや乃 7月1日 かに座
ルックス :B
スタイル :S
性格 :B
趣味 水泳
好きなもの スポーツ全般
嫌いなもの 苦い食べ物
将来の夢 スポーツ関係の仕事に就く
※作品に関して多かった疑問について答えておきます。
Q Cクラス暴力事件は?
A 須藤がいないため全カット
Q 佐倉ストーカー事件は?
A 未解決です。家電量販店へ佐倉が訪れるのをお待ちください
Q 各キャラの最後の評価について
A ルックス→原作参考➕完全主観 性格→対綾小路の性格(キャラの総合評価ではない)スタイル→胸と尻と足
正直キャラ評価はおまけみたいなもんです。