綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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#17 天災とは100%の理不尽である

 

 

無人島生活2日目。

俺は幸村のレジスチルのような寝息を聞いて夜中に目が覚めた。

口呼吸が激しい彼に対して、鼻を塞ぐといく漫画的対処法は無意味だろう。

 

(仕方がない…。だいぶ早いが起きるとするか)

 

北斗七星の位置から見て今は深夜2時半を回ったところだろうか。

…シンプルな疑問だがあれのどこがクマなんだろう。

国際天文学連合は星に夢を見るオカルト集団なのではと疑いたくなる。

 

(…とりあえず顔を洗ってこよう)

 

俺は学校指定のジャージに着替えて、川へと向かった。

夏とはいえ夜。川の水温は低く毛穴が引き締まっていく感じがして気持ちいい。

脳は完全に覚醒し、体にもだんだんと血液が循環し始めていく。

 

俺は凝り固まった体をほぐすように一つ伸びをした。

 

(今日は元々敵情視察の予定だ。気晴らしに、どっかに夜襲して適当にリタイアさせますか〜)

 

なんて、そうしたいのは山々だが俺の左手にはGPS付きの腕時計。

監視の目を掻い潜って、完全犯罪を達成するのはほぼ不可能だろう。

 

今のは冗談半分本気半分だ。

 

「茶柱先生。綾小路です。お時間よろしいですか」

「……んにあぁ」

 

ゆっくりと先生が起き上がる気配とそんな寝ぼけ声を了承だと勝手に解釈して俺は茶柱先生のテントを開ける。

既に暗闇に目が慣れている俺とは違い、彼女は現実にピントが合わないようで目を瞬かせていた。

 

俺が後ろ手でテントのチャックを器用に締めた音を聞いて、ようやく茶柱先生は目を見開いた。

声を出される前に口の前に指を一本立てて、小声かつクリアな声で挨拶をする。

 

「おはようございます。少し確認したい事があってお邪魔しました」

「……お前、何をしているのか分かっているのか」

「入る前にちゃんと許可は取りましたよ。茶柱先生は『はぃぇ〜』とおっしゃってました」

「…遺言能力を欠いた遺言書は無効だ。酒の席での昇進の約束は無効だ。意味は分かるよな?」

 

あちゃー。俺、なんかやっちゃいました?

隠そうともしないドスの効いた低音域が彼女の不機嫌さを如実に表してる。

 

「未成年の住居侵入罪も更生の余地を加味して無効にならないですかな?」

「情状酌量も減刑もなしだ。法定刑による10万以下の罰金は耳を揃えて支払ってもらう」

「まあ、それくらいなら。俺のpptから天引きしておいてください。先生のレアな姿を見れた事ですし、いい買い物だと思うことにします」

「なっ……」

 

寝起きで客観的視点を完全に失っていた茶柱先生。

リアクションも、普段のクールな印象からは掛け離れた随分と可愛いものだった。

 

「いつもはナチュラルメイクなんですね。凄く綺麗ですよ。30代とは思えません」

「…私はまだ20代だ。早く出ていけ」

 

あちゃー。俺、また何かやっちゃいました?

流石にこれ以上は怒られそうだったので、テントを一度出て茶柱先生の身支度を待つ事にした。

『くそ、まだ3時じゃないか』そんな声が中から聞こえてくる。

 

普段なら不憫だなぁと同情するかもしれない。

しかし今は自業自得だと強く感じている。

 

この船の上陸前、荷物を取りに部屋に戻るとそこには茶柱先生が陣取っていた。

俺がこのタイミングでこの場所に訪れることはアナウンスから必然だ。

俺と幸村と高円寺を同室にせずにわざわざ一人一部屋を与えたことすらも意図的だと勘繰った。

 

『綾小路。気付いているんだろう。夏のバカンスとやらの正体を』

『それがどんな正体であれ、俺は俺で楽しむと腹を括っているだけですよ』

『そいつはいただけないなぁ。お前はクラスを滅茶苦茶にした責任を取る義務がある』

『義務は義務でも努力義務です』

 

職務質問や自転車に乗る際のヘルメット着用と同じ。

最終的には本人の自由意志が尊重される。

俺は自由を謳歌するためにこの学校に入学したのだ。

 

『それは残念だ。お前は自主退学という形で檻へと帰る事になる』

『あそこは帰巣本能を育めるような場所ではありませんよ』

 

担任である茶柱先生が俺の事情をある程度把握している事は不思議じゃない。

しかし、俺があの場所に帰る時は強制的に連れ戻される時か、3年間という短い人生を終えて使命感で戻る時か二つに一つだ。

 

『お前の自主退学にお前の意思は関係ない』

『それはまた、可笑しな話ですね』

『数日前、お前の父親が学校に接触してきた。綾小路清隆を退学させろとな』

『…まさかとは思いますが、俺を脅しているんですか?』

 

衝動一つで茶柱先生の胸倉を掴み上げていた事に我ながら驚いた。

俺は自分が思っている以上に今の生活に執着している。

 

目論見を全て見透かすつもりで睨みつけた俺は彼女から動揺、驚き、恐怖が入り混じった感情を読み取った。

しかし、その何倍にも上回る未練が彼女を支配している。

 

こんな状況なのに俺を利用しようとする覚悟だけは一片もブレていない。

 

『選択肢を与えることは教師の役目だ。責任の取り方を教えることもな』

『俺を利用する詭弁としては赤点ですね。後悔させますよ。茶柱先生』

『安心しろ。私の人生は既に後悔だらけだ』

 

 

返品交換不可、取扱説明書無し、状態も悪い。

そんな最悪の不良品に手を出した茶柱先生は痛い竹篦返しを食らうだろう。

 

茶柱先生の人生を丸々支払っても取り返しがつかないほどの後悔。

彼女がどこまで耐えられるのか。少し楽しみだ。

 

パサッ―。

 

俺は衣擦れの音を聞いて、迷わずテントのチャックに手をかけた。

 

「もうそろそろ開けていいですか?」

「……なっ。ゆ、許さん。そんな事は―」

「まあ、もう開けてるんですけどね。…そのスタイルではボディラインを維持するのも大変でしょう。普段から運動を?」

 

絵に描いたようなモデル体型。

グラビアアイドルでもやればチヤホヤされていい思いが出来そうなものなのにな。

…いや、彼女の幸せは悲願を達成した先にしかないか。

 

「安心してください。俺はもう茶柱先生を血と肉としか認識していませんよ」

 

俺の暴論には豪速球の日焼け止めが返ってきた。

急所の一つである天倒をめがけて一直線に飛んできたそれを俺は難なくキャッチする。

 

「これはあれですか?背中は手が届かないから日焼け止めを塗って欲しい的な―」

「だ、黙れっ」

「大きな声は出さないでください。今何時だと思ってるんですか?生徒の安眠を妨害する行為は謹んでください」

 

唇を噛み締めた茶柱先生は俺を止める事は諦めて、急いで肌を隠すようにジャージを着用していく。

普段から胸元を開けてるくせに羞恥心は一丁前にあるらしい。

懐中電灯でも持ってくればもっと刺激できたかもな。ここは反省ポイントだな。

 

「確認したいこととは何だ。要件をさっさと話せ」

「それはもう済みました。先生の想いが少なくとも自分の下着姿を見られる事以上であるとこの目で確認できましたので」

「…………は?そんな事の為に私は……」

「それはこっちの台詞ですよ。茶柱先生」

 

俺からしてみたら、彼女の未練など路上に転がる小石みたいな価値だ。

 

「さて、目の保養になったところで今日も頑張りますか〜」

「…お前は血と肉に癒される猟奇的趣味でも持ってるのか?」

「そう目くじらを立てないでください。俺だって人間。失言の1つや2つはしますよ。…なんというか、ご馳走様です」

「お前な……」

 

地の果てまで堕ちたDクラスをAクラスへと導く。

俺の能力を加味しても、それが実現するかは未知数だろう。

 

しかし、宝くじは買わなきゃ当たらない。

 

「何か文句がありますか?」

 

シャワー施設を追加購入して現在288pt。

高円寺によって積み重なっていくボーナスポイント。

夢を見るには十分な数字の羅列だ。

 

俺は能力の片鱗を見せ続けるだけで、彼女を好き勝手に弄ぶ大義名分を得ている。

 

「……もう、勝手にしてくれ」

「ならついでに日焼け止めとこれ、借りていきますね」

「はぁ……」

 

寝不足だろうか?

疲労感が抜けていない顔で茶柱先生は俺を見逃した。

 

(それにしても…)

 

他クラスへの略奪行為暴力行為は一切が禁じられているが、教師に対してはその限りではないというのはいいルールだよなぁ。

学校側が穴だらけのルールを作るのはそこを突けというお告げ。

 

ならば俺はそれに従うまでだ。

 

 

 

 

朝の点呼を済ませて、昨日と同じようにクラスメイトに指示を出した俺は単独でスタート地点へと向かっていた。

 

Aクラスの坂柳。彼女がリタイアをしていないのであればその付近にいる可能性が高いからだ。

 

(姿はないか…。いや、厄介な人物の姿はあるんだが)

 

「やっほー。綾小路君。…1人ってことは、もしかして私に会いたくてここまで来ちゃった?可愛いとこあるじゃない〜」

「…Bクラスの管理監督は良いんですか。星之宮先生」

「あ、またサボってるとか思ってるんでしょ?生意気だぞ〜」

 

近い。ウザい。鬱陶しい。

炎天下の中、そんな彼女のダル絡みに思わず視界が歪みそうだ。

 

「でもハズレ〜。私の今回の職場はあそこだから」

 

星之宮先生が指差したのまさかの豪華客船。

この人、自分の教え子を放置してリタイアしたんじゃ…。

 

「これでも養護教諭だからね。生徒の健康管理を任されてるの」

「…へぇ、具体的にこの特別試験が始まった後、どういう仕事をしたのか訊いても?」

「えっ……、それはほら。リタイアした人のメンタルケアとか?」

 

つまり、リタイアした人間が既にいるということか。

もし、それが坂柳で星之宮先生がメンタルケアを施したのだとしたら中々に面白い絵を見逃してしまったことになるな。

 

「養護教諭の資格では医療行為に当たる処置は出来ない。無人島生活が耐えられなくて、何かと理由をつけて楽を取ったのが見え見えですよ」

「し、職業差別だ〜。私だってちゃんと仕事してるもん。証明してあげよっか?」

「出来るのであれば是非」

 

ここには俺と星之宮先生だけ。患者に該当する人間は何処にもいない。

一体どうやって仕事ぶりを証明するのか、少し好奇心を擽られてしまった。

 

majiでkoiする5秒前くらいの至近距離まで近づいてきた星之宮先生は無造作に俺の頭を優しく撫で始めた。

俺のミスは彼女が普段からボディータッチが多いせいで、それをすんなりと受け入れてしまったことだ。

 

「よしよし。大丈夫だよー。クラスメイトに無視されても私だけは味方だからね〜。生きてるだけで偉いので綾小路君は優勝だからね〜」

 

俺が一人で探索している現状を勝手に憂いる星之宮先生。

それで慰めているつもりなら高校生を舐めているにも程がある。予選敗退だ。

今すぐ国は彼女の資格を剥奪した方がいい。

 

「あれ?まだ足りない?仕方ないなぁ。…えいっ」

 

むぎゅ。漫画ならそんな効果音が鳴っているに違いない。

何故だか分からないが、今日はマシュマロに溺れる夢を見そうだ……。

 

…って、何やってんだこの人‼︎

あまりに非現実的な現実を突きつけられて、脳の処理がやっと追いついた俺は慌てて星之宮先生を引き剥がした。

 

「自分の体を安売りはするもんじゃないですよ。もっと大切にしてください」

「……え?……うわ、何それっ!青いっ。青すぎるよ。もっかいっ!もっかい言って?」

 

うぜぇ…。

信じられないと言った様子で目をキョトンとさせた直後、星之宮先制は催促するように煽ってくる。

 

この人にとっては自分の胸に俺の顔が沈んだことなど些末の事らしい。

けれど、俺とっては些末なことじゃないのだ。

耐性の低い男子高校生の純情を玩具にしやがって。いい加減にしろ!

 

「う〜ん、どうしたら言ってくれるかな〜。もっかいいっとく?ほら、次は綾小路君の方からっ。清水の舞台から飛び込むような気持ちで身を預けちゃってっ」

「いえ、結構です」

「え〜〜!なんで〜?佐枝ちゃんほど大きくはないけど、形は私の方が整ってるのに〜」

 

いや、茶柱先生は形も一級品だった。

将来性を言及しているのであれば、その辺は俺の知るよしではないが。

 

「あ、分かった。綾小路はあれだ。使用済みか未使―」

「さようなら」

 

これ以上絡まれるのも、聞きたくない情報を吹き込まれるのも嫌だった俺は脱兎の如くその場を逃げ出した。

 

この学校の教師は脅迫したり、誘惑したり…。

無法者しかいないのだろうか。

 

とりあえず、絶対にリタイアしない事を胸に誓った。…胸だけに。

 

 

 

 

「おはようございます。綾小路君」

 

桟橋があるスタート地点から東側に直線距離で500mほど進んだ先にある何の変哲もない砂浜。

坂柳は俺が来ることを予期していたかなように待ち構えていた。

 

「元気そうだな。船酔いは―」

「お気遣いありがとうございます。ですが、ご心配には及びません」

 

護衛の前で口を滑らせてみたのだが、すぐに言葉を重ねてくる。

これ以上、プライドを刺激すると私も容赦しない。そんな表情だ。

 

…そういえば、リタイアは坂柳ではなかったんだな。

 

「ふふ。綾小路君が知りたい事を教えて差し上げましょうか?」

「待て、姫さん。情報を安売りするのは感心しないぜ。真澄ちゃんからも何か―」

「その呼び方やめてって言ってるでしょ。てか、そんな成りしてる癖にDクラス相手にビビってるわけ?」

 

護衛の女子は真澄という名前らしい。

俺にとってはそれも情報の1つではあるんだが、橋本はそこまで考えが及んでないんだろう。

 

「橋本君。彼が関わっている以上遅かれ早かれ気付かれる事です。それなら私は綾小路君との会話を楽しむ事を選びます。まだ何か言いたい事はありますか?」

「いや……」

「いい子です」

 

ゴールデンレトリバー橋本の前では俺の犬系男子の肩書きは返上だな。

1学期も経ってないというのにここまでクラスメイトを飼い慣らすとは。

龍園が暴力での支配なら、坂柳はカリスマでの支配だ。

 

「綾小路君。リタイアしたのは葛城君と戸塚君ですよ」

「マジか。……男子だったのか」

「どうしてこの話を聞いて着眼点が性別なわけ?」

「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ。真澄ちゃん」

「……こいつっ」

 

橋本から得た情報を早速活用してみたのだがなかなか効果テキメンだ。顔を惜しむ事なく歪めている。

坂柳は中々に個性的なメンバーを集めているな。

 

「話を先に進めましょう。彼らがリタイアした理由について、綾小路君はどう考えますか?」

「表向きは体調不良だろうな」

「ふふ。では、そのカードの裏には何が描かれているか訊いても?」

「坂柳がリタイアさせたんだろ。理由はそうだな。例えば、彼らの内どちらかがリーダーだった。しかし、それは不幸な事故で他クラスに漏れてしまい、リタイアという形で責任を取らせた。そんなところか?」

 

坂柳は態とらしくパチパチと拍手する。

俺を正解の推理に導かせる為に、ヒントは随所に散りばめていた。

しかし、護衛の二人はその事実に気付いていない。

 

「…猿芝居だね。高円寺に聞いてただけでしょ」

「俺もそうだと思う。けど、そうじゃなかったら…」

「そんな訳ないでしょ。ネガティブ思考撒き散らすのやめてくんない?」

 

喧嘩するほど仲が良いという諺は彼らに当て嵌められるほど汎用性を持ち合わせていない。

小競り合いをし始めた二人を坂柳は視線一つで制して、俺に微笑みかけた。

 

「この特別試験、荒れに荒れています。その台風の目は間違いなく高円寺君です。ですが、台風は去るものです」

「それって…」

「Dクラスは馬鹿の集まり。そんな浅い認識では綾小路君の思う壺でしょう」

 

不良品の集まりであるDクラス。

クラスの約半分が退学したDクラス。

そんな彼らに策なんてあるはずがないという固定観念。

 

その圧倒的デバフに隠された真実は坂柳によって丸裸にされる。

 

「……何なのよ。こいつも高円寺も」

「真澄ちゃん。初めて息が合ったな。俺も同感だぜ」

「ふふ。他人の思考回路を紐解くというのは面白いですね。そうは思いませんか?綾小路君」

「興味ないな。理解出来ない事が俺には理解出来ない」

 

彼らとは思考回路が根本から違う。

二人がまるで別の生物を見たかのような反応をしてるのは、彼らもまた俺に対してそう思っているからだろう。

 

彼らを優しく手解きした坂柳は満足そうに笑う。

そんな彼女はどの段階から、俺の戦略に気付いていたのだろうか。

少なくともAクラス内でリーダーを決める時、坂柳がリーダー権限を譲った時点で俺の戦略を利用して内部統制する絵を描いていたはずだ。

 

「…ねぇ、私達も何かしないとまずいんじゃない?」

「全てに気付いている上で私が何もしていない理由を考えた事がありますか?」

「…姫さんでも打つ手がないってことか?」

「綾小路君の戦略に一分の隙もありませんよ。流石は私の幼馴染と言ったところでしょうか?」

 

昨日、みーちゃんから身を預けるようなリスペクトを貰ったばかりだ。

坂柳の言葉がブラフである事は脳が判断するまでもなく肌で分かった。

 

高円寺によるスポット荒らしに対抗するには、リーダーを曝け出す事が絶対条件。

それに加えて、そのリーダーが高円寺相手に張り合える人材でなければ意味がないからだ。

 

(…さて、坂柳はこれにどう打って出る?)

 

彼女は内政だけ済ませて大人しくしているようなタマじゃない。

 

 

 

 

試験開始直後にBクラスとCクラスが西の森へ向かっていたのを当てに島の西方面を探索するが、ひとっこひとり見つからない。

 

手がかりがなくなったため、手当たり次第に辺りを回っていると、島の最北端で一之瀬と出会った。

 

聞けばBクラスのベースキャンプは島の北東部の端も端にあるという。

 

「…大所帯だな。一之瀬」

「にゃはは〜。…何でこうなっちゃったかなぁ」

 

困ったように笑う一之瀬も今回ばかりは本気で困ってそうだ。

 

Bクラスのベースキャンプのすぐ隣にはCクラスのベースキャンプがあった。

広大な土地を誇る無人島を馬鹿にするかのような人口密度。

海岸沿いだけ都市開発が進んだ日本みたいになっている。

 

俺達はベースキャンプから少し離れた位置で少し話すことにした。

 

「一之瀬相手だから包み隠さず言うが、あまりいい雰囲気ではなさそうだな」

「リーダー指名のルールがある以上、どうしても腹の探り合いになっちゃうからね。いや〜、参った参った」

 

ベースキャンプ地を決める定刻ギリギリまで龍園に張り付かれて、仕方なく決めた場所は皮肉にも袋の鼠。

占有スポットでもなければ、食糧調達のアクセスも悪く、お世辞にもいい立地とも言えない。

しかも、近隣トラブル付き。Bクラスの皆はストレスでピリピリしている。

 

「そっちの報告は受けてるよ?…綾小路君がクラスを引っ張ってるんだってね?」

「その場の流れでな。…言っておくが、あの時は本当に俺はリーダーじゃなかったからな?」

「え〜、ほんとかな〜」

 

あの時は頑なに否定したのに、蓋を開けてみれば俺がリーダーを務めている。

一之瀬からすれば騙されたと言って差し支えない案件だ。

 

しかし、彼女は怪しむような態度から一点、笑いながら理解を示した。

 

「嘘だよ。分かってるよ。…でも私の観察眼は間違ってなかった事は確かだよね」

「事実だけ見たらそうなるな」

「ふむふむ。事実だけ…と。事実以外の部分は企業秘密かな?」

「今はそういう事にしておこう。俺の話をゆっくり聞く余裕もないだろうしな」

「痛いところつかれたにゃ〜」

 

可愛く誤魔化しきれないほどの惨状。

Cクラスは現在進行形でBクラスの妨害を続けている。

 

Bクラスの一致団結して最小限の出費で乗り切る戦略に対して、Cクラスの狙い撃ち戦略は相性最悪だろう。

 

「まだ話したかったけど、クラスの人が心配しちゃうからもう行かなきゃ。ごめんね?」

「謝る必要はない。ここはリーダーの踏ん張り所だからな。俺もこれ以上邪魔をしたくない」

「ありがとう。そう言ってもらえると気が楽だよ」

 

一之瀬は俺に手を振って、ベースキャンプの方へと戻っていった。

俺はCクラスのベースキャンプの方に椎名の姿を確認したが、今は無用な接触は避けた方が賢明だろう。

 

そして、全クラスの状況が確認できた事で見えてきたものがある。

 

Aクラスは坂柳が統一して次のフェーズへ向かう所。

Bクラスは龍園の戦略に防戦一方。

Cクラスは一極集中スタイルで1クラスずつ潰して行くつもりだろう。

 

そして俺達Dクラスは高円寺で荒らし、独走を狙っている。

…が、高円寺の意図に気付いているのはAクラスだけだ。

 

一之瀬や龍園がそれに気付いた時、この特別試験は最終局面に突入するだろう。

 

逆に言えば、暫くDクラスは平和だということだ。

ならば、俺は俺でやるべき事を先に済ませておこうか。

 

 

 

 

神室 真澄 2月20日 

 

ルックス :A

スタイル :A

性格   :C

 

趣味 絵を描く事

好きなもの なし

嫌いなもの 橋本

将来の夢 なし

 






レジスチルの鳴き声は空耳で『タスケテ』と聞こえるらしいです
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