綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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ここすき、感想ありがとう。
モチモチモチモチベが高まります。


#22 兵は詭道なり

 

無人島生活6日目。

明日は正午に結果発表というスケジュールなため、今日が事実上の最終日である。

 

「ゆうべはお楽しみでしたね」

「…なんのことだ?」

「佐倉さんとの秘密の撮影会〜茶柱先生を添えて〜」

 

櫛田は周りの皆に聞こえないように耳元で囁いてくる。

彼女の垂れた後れ毛とウィスパーボイスが耳が撫でてきて、朝から心臓に悪い。

 

それにしても、教え子に引き立て役の添え物扱いされてる茶柱先生には哀れみを覚えるな。

途中から佐倉の希望で俺がカメラマンからモデルにジョブチェンジしたせいで、彼女がその分骨を折っていたというのに。

 

「櫛田って瓜二つの姉妹が沢山いたりするのか?クシダネットワーク的な」

「なにそれ。私、一人っ子だけど」

 

量多し。質良し。速さピカイチ。

情報屋が裸足で逃げ出すほどの仕事ぶりに、つい変なことを口走ってしまった。

しかも、よりにもよって科学とは対極にある無人島で。

 

「まあ、でもそれに近いのはあるけど」

「マジであるのかよ」

「うん。KFCって聞いたことない?」

「……もしかして、世間に疎くて非常識な俺を試してるのか?」

「ん?ああ、違う違う。チキン売ってる方じゃなくて櫛田ファンクラブの方だから」

 

創業100年に近い老舗と知名度で競って肩を並べようとするのは流石に厚顔無恥すぎるだろ……。

櫛田の能力は認めてるがそれは井の中の蛙だ。グローバル展開してからおとといきやがれ。

 

「男女問わず会員数は100人くらいいるらしいよ。それが私の目と耳となって些細な情報まで集まってくるの」

「もはやファンクラブというよりちょっとした組織だな」

 

実態を把握していない上にどこか他人行儀。

櫛田本人が起業したわけじゃなさそうで一安心だ。

 

tuki.並な表現ではあるが、自分で自分のファンクラブを設立するほど自己承認欲求が爆発してしまうと流石に引く人も出てくるだろうからな。

 

「大事な事だから確認しとくが、昨日の件もその会員の目撃情報か?」

「そこは安心して。私情報だから。ていうか、昨日入ってきた情報は篠原さんが口内炎って事くらいだし。ほんっと、頼りになるよね」

 

些細と言っていたが、そんな有害物質まで混入しているとは……。情報を仕分ける能力が求められるな。

昔のTV番組を見て不祥事を起こしていないタレントを探すくらいには難しそうだ。

 

「綾小路君の質問に答えたんだから、私の質問にも答えてくれるよね?」

「そうだな。佐倉は―」

「あ、そっちはある程度分かってたコトだからいいや。…幸村君の方だよ」

 

櫛田の低い声が俺の鼓膜を再び揺らした。

その話は皆の目があるベースキャンプでする事じゃない。場所を変えようと目で提案すると、櫛田は静かに頷いた。

 

……それにほら、これ以上は耳が耐えられないし。

 

 

 

 

天気が荒れる事を見越して、午前中はスリーマンセルを7組作り総出で食糧調達を行うように指示を出す。

 

俺は櫛田と堀北を連れて北の方に散策に来ていた。

俺はリーダーで、櫛田はクラスの人気者。密会をするにはこれくらい線密に場を整える必要がある。

 

「私は向こうを見てくるわ」

「気をつけてね堀北さん」

「……」

 

俺の狙い通りに単独行動を好む上に何故か櫛田を避けている堀北は先行して北へと進んで行く。

彼女は文字通り自給自足。今日までクラスメイトに頼る事なく自分の食事は自分で用意している。

 

「無視してんじゃねぇよ。お高く止まりやがって」

「…そういえば訊いてなかったな。堀北を目の敵にしてる理由」

 

二人きりになった事でガラリと豹変した櫛田は堀北の消えていった方向を睨みつける。

無視する堀北も当然悪いが、無駄な接触を嫌うと分かってて執拗に絡み続ける櫛田も櫛田である。

 

「前に言ったよね?嫌いなの、堀北さんのこと」

「嫌いなのは堀北に限ったことじゃないだろ。むしろ櫛田が心から好きだという人間がいるなら聞いてみたいものだな」

「心から……」

 

櫛田は嫌いな相手であろうと、仲良くしようとする努力を怠らない。

言葉にすれば簡単だが実際に行動して結果を出せる人間はごく稀。言うが易し行うは難しの典型的な例だ。

一家に一台はいらないが、一課に一人は欲しい存在だろう。

 

返答を待つ間に思考を回していると、彼女がこちらをまじまじと見ていることに遅れて気がついた。

 

「なんだよ。俺の顔に見惚れてるのか?」

「…は?ち、違うし。今日もブスだなぁって思って見てただけっ」

 

……なんだ?この櫛田らしくないリアクション。

不意を突かれて悪口を捲し立てるなんて誤魔化してますって自白してるようなものだろう。

しかも、少し叩くだけで壊れてしまう継ぎ接ぎだらけの誤魔化しだ。

 

「見惚れてた事は否定しないんだな」

「あああ、あんたなんか勘違いしてるでしょ⁉︎わ、私のおかげでちょっとモテ始めたからって自意識過剰―」

「落ち着け櫛田。佐倉みたいになってるぞ」

「…は?」

 

…おっと、今のは明らかな選択ミスだ。

さっきの会話の流れもあり自然と佐倉の名前が口から溢れてしまったが、櫛田に冷静さを与えるキッカケになってしまった。

 

「あんなブヒブヒ媚びるしかない豚女と一緒にしないでくれる?」

「毒舌とかいうレベルじゃない。佐倉が聞いたら致死量の毒で絶命するぞ」

「河に豚でフグ。海に豚でイルカ。陸に豚と書いて佐倉」

「…殺す気満々なのは分かったが、陸に豚は普通に豚だろう」

「そう?ポーカーでも役立たずはブタって呼ぶし、留置所も豚箱って呼ぶよね?」

 

…確かに。俺は一定の納得性のある屁理屈を前に屈した。

下劣極まりない悪口に知性をこじつけないで貰いたいものだ。

 

存分に悪口を吐いた事で毒気が抜けたように昂った感情を落ち着かせた櫛田は鷹揚に構える。

 

「で、なんだっけ?私が堀北さんを人工衛星と一緒に大気圏まで飛ばして窒息死させたい理由だっけ?」

「どこまで私怨を拗らせたらそんな過激な方法思いつくんだよ」

 

人工衛星を飛ばすロケットは地球の周回軌道に乗せるために時速3万キロ弱を必要とする。

そんな兵器紛いの乗り物と一緒に人間が飛べば強力な外圧に耐えられず窒息死するのは間違いない。

 

まあ、そこまで考えて言ってないだろうが…。

 

「…そんなに気になる?」

「ああ。初めて出来た彼女の恋愛歴くらいは気になるな」

「うわ、彼女なんて出来た事ない癖に」

「そうとも限らないだろ。お互いに中学生以前の事は知らないんだ」

「………ま、普通はそうだよね」

 

隣人として堀北の事を1番近くで見てきたが、櫛田と堀北に軋轢を生むような出来事は発生していなかった。

ならば中学以前の事だろうと思ってカマをかけてみたがビンゴだったようだ。

 

「…まあ、あんたになら話してもいいかな。バレちゃってる訳だし」

 

俺はポツリポツリと語り始めた櫛田の言葉に耳を傾ける。

 

堀北と櫛田が同じ中学だった事。

そこで櫛田の本性が全校生徒にバレるような事件が発生した事。

口を滑らせる可能性のある堀北は櫛田にとって邪魔者でしかなく、退学させる糸口を探るために懲りずに接触している事。

 

俺は内心で俺と同じ境遇である堀北に同情していた。完全な逆恨みでしかなかったからだ。

 

「ねぇ、綾小路君なら堀北さんを退学させる事出来るんじゃない?」

「やっと腑に落ちた。俺の目的と掛け離れた堀北を最初のターゲットにしたのは、警戒されてる自分では出来ない事を俺にやらせるためだったんだな」

 

恋愛経験が浅いがために櫛田の理屈に丸め込まれていたが、やはり俺の最初の感触は正しかった。

堀北は佐倉やみーちゃんに比べて、手応えが無さすぎた。

 

言うならば好感度や親密度といったパラメータ自体が存在しないような感覚だ。

 

「そういうこと。私は私の目的のために綾小路君を利用した。何か文句ある?」

「いや、ないな。文句が出ないように櫛田が上手く立ち回ってるおかげでな」

「…流石に鋭いね。そこまで気付いちゃったんだ」

 

モテる方法を指導してくれと頼んだ俺に櫛田は時折りそれらしい指示を出してくれていた。

しかし、俺へのアプローチはただのパフォーマンスで本命は櫛田自身が周囲の評価を変化させるように暗躍していたことにある。

 

軽井沢達からの評価が勝手に上がっていたのも彼女が陰で俺のグッドイメージに繋がる話を吹聴していたからだ。

椎名に難関資格の存在を教えて俺と距離を取らせ、俺と椎名が二人で話していれば割り込んできたのもその一貫。

 

特定の女性の影はモテると言う目的を阻害してしまうからだ。

 

「だったらこれも気付いてるよね?このままだとギブアンドテイカーの関係になっちゃうって事」

「ふっ」

「……笑い事じゃないんだけど?」

 

俺の鉄仮面はそろそろ保管期限が満了だな。

彼女の表現が抒情的なのにユーモアもあって思わず吹き出してしまった。

そんなレアな俺の表情に彼女は怒りよりも物珍しさが勝っている様子だ。

 

「悪い悪い。貰った分はちゃんと返すよ」

 

俺は密かにコールドリーディングを使って彼女から話すように誘導していた。

櫛田の話を聞いて、幸村の件の真相やそれ以外の事を話すに釣り合うかどうかを見極めるために。

そして、彼女の本性の延長線上にあるものなんかではこちらのカードは切れないと判断している。

 

「そっか。ならストレートに訊くね。私は幸村君はシロだと見てる」

「まあ、確かにアレは白かったな」

「……その感じ、綾小路君がクロだよね?」

「黒かったのは櫛田の下着じゃないか?」

「ふざけてる?」

 

はい。ふざけてます。とは、半眼見開いた彼女の爆発スイッチを起動するような気がして言えなかった。

仕方がない。ここは聞こえのいい台詞を引用して場を濁すか♠

 

「櫛田。言わないんじゃなく言えない。俺がギリギリ言えるのはここまでだ」

「……なら、もういいや。別にガリ勉自己中の末路なんて知ったことじゃないし。勝手にあんたがやったって思っとく」

「櫛田がどう思おうとそれは自由だ」

 

前科者の宿命だな。アリバイでは疑惑が晴れない。

しかし、その疑いは疑いらしく靄がかかっている。太陽が真実を白日の下に晒す日は訪れないだろう。

 

……幸村は今どうしてるだろうな。ふとそんな事を思う。

あの能力ならこんな学校にいるよりは厳しい学歴競争に身を投じた方が芽が出そうなものだが、それもあの事件の傷が癒えた後の話だろう。

 

何にせよ、当事者の俺が案じる事ではないな。俺はすぐに彼を記憶から抹消した。

 

「なら代わりにあんたの中学時代を教えてよ。こっちは言えないとか言わせないからね」

「等価交換としては相応しいな」

 

そんな時代は存在しないため、それを答える事はさっきの話よりも難しいが。

と、思っていると意外にも答えられる質問が飛来してきた。

 

「…さっき言ってた話だけど彼女、本当に出来た事あるの?」

「自慢じゃないが、勉強が特別出来た分持て囃されていたな」

 

能力値を現す数字と教官相手にだが。

肯定も否定も返さずに論点をずらした俺に櫛田は苛ついたように顰めっ面を見せた。

 

「私が訊いてるのはその持て囃された結果なんだけど?」

「実は俺は運動も出来るんだ。あらゆるスポーツで優秀な成績を収めて、それはまた持て囃されたものだ」

 

師範に絶賛された事は今も覚えて―。

ダンッと強く地面を踏み締めた櫛田はニコリと笑って距離を詰めてくる。

この整った顔で可愛いよりも怖さを体現してしまうのだから、彼女には芸術家のケがある。

 

「彼女がいたの?いなかったの?」

「そんな事が気になるのか?」

「恋人のスマホの中身くらい気になるねっ‼︎」

 

…それは相当だな。

恋人や友達なんて関係は間違っても謳えないし、もはや教師と生徒の関係でもないが、昨日は茶柱先生のスマホの中身が気になって寝付きが悪かった。

 

「いなかった。これで満足か?」

「……ふ、ふーん、そ、そっか。まあ、そうだよね」

「なんだよ。そのリアクション」

「べっつに〜?」

 

俺が断言した事で、櫛田の笑みから怖さが消えた。

…至近距離だからだろう。残った笑顔から安堵のようなものを感じてしまったのは。

 

…櫛田よ。どうしてこのタイミングでホッとする。

気になって今日の夜も眠れそうにない。

 

 

 

 

「…なぁ、櫛田。今、悲鳴が聞こえなかったか?」

「え?そんなの聞こえた?」

 

…聞こえたのは俺だけか。

しかし、空耳だと決め付けてこの違和感を放置すれば後悔するだろう。

 

悲鳴が聞こえた方角が堀北の向かった方向だったからだ。

 

「俺は運動が得意なんだ」

「それはさっきも聞いたし、別に疑ってないけど?」

「50mなら5秒台の記録を安定して出せる」

「あはは。スポーツは詳しくないけど、流石にそれは嘘だって分かるよ」

 

冗談を受け流すように破顔した櫛田の不意をついて、手を掴み一気に引き寄せる。

急接近してお互いの体がぶつかるすんでのところで櫛田はなんとか立ち止まった。

 

「な、なにすんのよ」

「特別に世界レベルってものを見せてやる」

「きゃあぁっっ!!」

 

櫛田の背に手を回して正面から抱き抱えると、可愛い悲鳴が耳元で響く。

女の子の柔らかい感触と甘い香りが全身に纏わりついて、体の底から力が溢れてきているのを感じる。

 

…何だか今なら世界記録を樹立できるかもしれない。

いや、樹立するのは他のところかもしれないが。ガハハ。

 

「…胸、当たってるんだけど?」

「むしろ、潰れてるな。俺の胸板で」

「…多分、耳を噛み千切ってもギリ裁判で勝てるよね。これ」

「やめてくれ。言ってなかったが、俺は耳が弱いんだ」

 

その冗談っぽい本音には歯軋りの音が返ってきた。

一思いにガブッと噛み付かれて不幸だーって叫べばオチの一つでもついたのかもしれないが、それはまた別のお話だろう。

 

「櫛田。しっかりしがみついて口を閉じてた方がいいぞ」

 

自己保身と櫛田の身を案じた一挙両全の忠告をして俺は走り始めた。

最悪の事態を考えた時にここでバタ足している余裕はない。

 

「……はっや。…な、なにこれ」

 

櫛田の調子の外れた声。

土を踏み締める音と草を掻き分ける音。

 

そんな雑音は全て置き去りにして、俺は目的地へと直線的に進む。

僅か数十秒進んだところで、人の影が複数見えた。

 

俺はすぐに櫛田を地面に下ろして、その場へと単独で乗り込む。

 

「どこかで聞いたことのある悲鳴だと思っていたが、やっぱり堀北だったか」

 

尻餅をついている堀北とそれを取り囲むようにしている人相の悪い4人組。

…その内の二人はデッキで堀北に絡んでた奴だな。

 

「櫛田、あいつらは?」

「…右から伊吹さん、石崎君、龍園君、小宮君。って、私をポケモン図鑑みたいに扱わないでくれる?」

 

あまりのスピードに平衡感覚を失っていた櫛田はよろよろと後ろから遅れて歩いてきた。

彼女はそのCクラスの連中の陰に堀北を見つけて、反射で声をあげた。

 

「え?堀北さん?だ、大丈夫?」

 

ちなみ、この櫛田語を日本語に直すなら『はは。堀北。ざまぁみろ』だ。

しかし、そんな悪意は微塵も感じさせないのだから彼女の皮の厚さは半端じゃない。

 

「くく。こりゃデカいのが釣れたなぁ」

(確かに櫛田のあれはデカかった。胸にはまだ感触がまだ残っている)

「惚けるのもいい加減にしてくれないとなぁ。綾小路君よぉ」

 

俺が他人事のようにその話を聞いていると、龍園が圧を飛ばしてくる。用があるのは俺だったか。

 

櫛田の魅力に気付かないとは、こいつもしかしてノンケなのだろうか?

……そうなると、俺に向けたデカいという意味も変わってきそうだ。

 

「えーと、結構です」

「おいてめぇ、舐めてんのか?百獣の王龍園様のお言葉を無下に扱ってんじゃねぇ」

「ライオンは雌しか狩りをしない。ついでに言えば所詮はネコ科だ。石崎の理屈だと龍園は猫系の女の子だ。舐めてるのは石崎の方じゃないか?」

 

勇み足で前に出てきた石崎は俺の思わぬ角度の反論に言葉を失う。

そして恐る恐る龍園の方を振り向き、その鬼の形相に腰が抜けそうになっていた。

 

三下極まれりだな。こいつとは仲良くなれそうにもない。

 

「ぷっ……」

「おい、伊吹。笑うんじゃねぇよ。ぷぷ」

「お前ら、殺すぞ?」

 

石崎の様子と龍園を女の子に例えたギャップに笑いを堪えられなかった伊吹と小宮を龍園が一瞥で一蹴する。

…あいつらとは仲良くなれそうだな。

 

「クソが。お前と馬鹿共のせいでシリアルな空気が台無しだぜ!」

「馬鹿はお前だ。はやくどけ」

 

シリアスキラー石崎を片手で軽く吹っ飛ばして、龍園が前に出てくる。

凄まじい殺気。威圧感でこっちの能力に一定のデバフがかかりそうだ。

  

「Dクラスのリーダーを聞いて回ってたんだが、あの女はガードが固くて困ってたんだ。あっちの方は緩そうなんだがな。くく」

「ガードが固い?緩いのもお前らのやり方じゃないのか?どんなに良識や良心があったって薬物と拷問には耐えられないだろ?試したのか?」

 

倫理観がまだ無かった頃の歴史がそれを証明している。

俺はあくまで一般的な価値観を言ったつもりだったが、相手はそうは受け取ってくれなかったようだ。

Cクラス一同が顔を引き攣らせていた。

 

「…いい感じにネジがぶっ飛んでやがる。勉強が出来るだけのお利口ちゃんとは違うようだな?」

「少なくともDクラスにそんな奴はいないな」

 

俺は堀北の元へ向かうために龍園の隣を堂々とすり抜ける。

石崎が教えてくれた通り、彼がライオンなら縄張りに足を踏み入れた俺は噛み付かれる。

 

そんな予測を立てていからこそ、俺は後頭部に目掛けて飛んできた裏拳を軽々と掴む事が出来る。

 

「……なんだお前?後ろに目でもついてるのかよ」

「前にも聞いたなその台詞。流行ってるのか?」

 

俺は龍園の拳を払いのけて、堀北の元へと向かう。

烏合の衆が激昂して襲いかかってくる事も想定していたが案外大人しいようだ。

 

俺は堀北に手を差し出すと、引き摺り込む勢いでそれを掴んできた。

 

「大遅刻よ。綾小路君」

「演出だ。演出」

「役者のアドリブは事前に打ち合わせするものでしょ。バカ」

 

…そうなのか。それは知らなかった。

 

「戦略が拙かったな、龍園。群れから外れた堀北に狙いを定めて複数で襲う。確かに肉食動物の狩りそのものだが、本質には草食動物みたいな怯えた心根がある」

 

堀北はポケットから購入していたボイスレコーダーを取り出す。

そこには他クラスへの暴力行為を証明できうるだけの音源が入っているだろう。

 

「罠を使って敵を誘い込むのは狩りの基本。釣られたのは俺らの方だったってわけか」

 

楽しそうに笑う龍園だが、それは上辺だけだろう。

俺達がBクラスのベースキャンプに近い北側に探索に出かけた上で堀北を孤立させてお膳立てしてやった事に気付き、怒り煮え滾っているに違いない。

 

「クラスの失格にプライベートポイントの全没収。クラスメイトからポイントを徴収してるお前にとっては手痛いじゃ済まないんじゃないか?」

「くく。何が言いたい?」

「取引よ。龍園君」

 

この作戦の考案者である堀北が龍園達を睨む。

堀北はただの罠じゃない。猛毒入りの罠だ。

それは誰より俺が知っている。俺には既に抗体が出来ているけど。

 

「Cクラスのリーダーの情報。即ち50ptと引き換えてもらうわ」

「随分と優しいじゃねぇか。そんな事でいいのか?」

「そうか、ならお言葉に甘えてBクラスのリーダーの情報も貰っておこうか。お前達に損はないだろう?」

「やはり、お前は骨があるな。綾小路。コソコソと嗅ぎ回っている成果が出てるじゃねぇか」

 

俺は十中八九、白波千尋がリーダーだと掴んでいるが確証を得られるならそれに越したことはない。

 

「いいぜ。呑んでやる」

「随分とお利口ね。流石はCクラスと言ったところかしら?」

「綾小路の金魚の糞がビギナーズラックで調子こいてるんじゃねぇよ」

 

龍園の慢心が無ければこんな結果にはならなかっただろう。

これは間違い無く今回限りの奇策。

 

堀北の戦略は見事に成功したが、そこに気付かないようではこの先は挫折が待っているだろう。

 

 

 

 

伊吹澪 7月27日生まれ 獅子座

 

ルックス :A

スタイル :B

性格   :C

趣味 映画 格闘技

好きなもの 肉

嫌いなもの 龍園 

将来の夢 ない!!!

 

 





怒涛のフラグ回収

あと、コナン見ました。
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