綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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#23 戦いすむも日は暮れぬ

 

 

予期していたとはいえ生憎の悪天候。

実際問題、雨風は大した事ないのだがそれは凌げる屋根や壁があっての話だ。

 

 ―ザァァァッッ…

 

機嫌の悪いお天道様相手に大した事ないなんて批評した俺には天誅が下った。

雨脚が強まり、大粒の雨が容赦無く俺に叩きつけられる。

 

(これは最終手段だったんだが……。背に腹はかえられないな)

 

俺は傘代わりにしていた大木を後にして、全速力で茶柱先生のテントに向かう。

郊外にある民間企業くらいお粗末なセキュリティを掻い潜り、不法侵入するのだ。

 

「あっ、いた!綾小路君、こっちこっち」

 

その道の途中、テントから半身乗り出した松下が俺を手招きしている事に気付いた。

何かを伝えたそうにしている様子だったので雨音に声が掻き消されない距離まで近付く。

 

「流石にこの天気で野宿はキツイでしょ?中入りなよ」

「いや、それは流石に…」

「遠慮はいらないから。てか、普通に心配が勝つし」

 

逃げ道を断つように会話を組み立てた松下に俺は圧され気味に頷いた。 

目の前の女の花園に飛び込むくらいなら、一回り歳の離れた茶柱先生と二人にきりの方がまだ気楽だったのだが…、こうなった以上後の祭りだ。

 

俺は松下に引き摺り込まれるようにお邪魔する。

入ってすぐ、馨しく充満する愛の芳香剤に立眩みしそうになった。

シャンプーや香水の類は持ち込めないはずなんだが、この香りの発生源は何処なんだ。

汗臭い男子高校生とは細胞単位で違うということなんだろうか。

 

「…あ、綾小路君。大丈夫?」

「ああ、問題ない。ヤニクラみたいなもんだ」

 

刺激成分を大量に含んだ大気を吸ったことで、脳への酸素供給が滞り足元がフラついただけ。

そんな俺を本心から心配してくれるのだから、佐倉は優しすぎるというものだろう。

甲斐甲斐しくタオルまで持ってきてくれた気遣いを有難く受け取る。

 

「むしろ大問題でしょう。茶柱先生に報告するわ」

「あの人なら共感してくれそうだ。泣いて喜ぶまである」

「教え子が喫煙に手を染めて、自分の子供が初めて立った親みたいな反応するようなら教師失格じゃないかしら」

 

的を射てるな。堀北。あの人は教師失格なんだ。

彼女が教員免許も持っている事自体、犯罪者に狩猟ライセンスを渡しているようなものだからな。

 

「ふふ。堀北さん。綾小路君が来たらよく喋るね」

「…櫛田さん。言いたい事があるならはっきり言えばどうかしら?」

「え〜?言っていいの〜?じゃあ、言っちゃおっかな〜?」

 

おいおい。大丈夫か?あれ。裏の櫛田がショルダーピークしてるように見えるが…。

ニタニタと腹黒そうな笑みが堀北に注がれて、険悪なムードが出来上がっていた。

 

「あの二人、いつもあんな感じなのか?」

「特別試験が始まってから毎日あんな感じです。櫛田さんは一人でいる堀北さんをほっとけないみたいですよ」

 

屈託ない笑みで説明してくれるみーちゃんに佐倉もコクコクと頷く。

…流石は櫛田。上手いやり方だな。

周囲の認識を都合が良いように操作して、堀北相手にやりたい放題出来る環境を整えているのか。

 

この調子では、周りの彼女達は堀北に身を寄せてツンツンと頬を突いている櫛田を人懐っこいなんて表現しそうだ。

櫛田の内心を唯一知る俺としては、雑菌まみれの手を頬に押し付けて肌荒れさせてやろうという目論見が透けて見えるが。

 

「綾小路君ならあの二人に混ざれるんじゃない?行って来なよ」

「断る。俺は界面活性剤じゃない」

「うわ、あの二人は水と油って事?こんな時まで化学っぽい事言ってるよ」

「乳化は化学反応じゃなくて物理反応だけどな」

 

俺の反論に言葉が詰まった松下は冷めた表情を返してきた。

会話の意図が汲み取れたみーちゃんは愛想笑いを浮かべて、佐倉は頭の上にはてなマークを浮かんでいた。

 

…まあ、多少の好感度と引き換えにあの死地に赴く事を免れたのならプラスと捉えよう。

 

「じゃあ、何処に座る気?」

 

重箱の隅をつつくような俺の指摘が気に入らなかった松下は怒気を含んだ声で投げやりに訊いてきた。

松下は地頭の良さもあり、自己評価高めなんだよな。学力方面の指摘は御法度だ。

 

とりあえず櫛田と堀北は無論、松下の側も避けた方がよさそうだ。

そう考えると、彼女と仲の良い佐倉やみーちゃんや長谷部辺りは自然と選択肢から消えた。

 

俺は3人から離れて、一人離れたところで落ち着かない様子の小野寺に声をかけた。

 

「小野寺。隣いいか?」

「えっ、わ、私?」

 

上擦った声をあげた小野寺に構わず、俺は隣に腰を下ろす。

まさか俺が隣に来ると夢にも思っていなかったのか、彼女の体はガチガチに固まっていて緊張が伝わってくる。

まずはその緊張を絆す必要がありそうだ。

 

「小野寺とは一度ちゃんと話したいと思ってたんだ」

「え…、どうして?」

「同好の士を見つけたら、仲良くなりたいと思うのが自然だろ?」

 

椎名から学び佐倉で実践して身に付けた俺のコミュニケーションの一つ。

相手の趣味に理解と共感を示して潜り込む。糸口がある相手にはとことん有効的な手段だ。

 

「体を動かす事が好きな奴は雨が嫌いって相場が決まってるんだ。俺も同じ気持ちだから分かる」

「…バレてたんだ?私が暇すぎて死んじゃいそうな事」

「遠目から見てもムズムズしてた。相手が小野寺じゃなかったら尿意を我慢してるのを疑っただろうな」

「やめてよ。恥ずいって」

 

会話に少しのユーモアを混ぜる事で空気が徐々に砕け始めた。

小野寺の言葉を表面だけ咀嚼すれば拒絶だが、表情は満更でもなさそうだ。むしろ、嬉々としているようにも見えた。

 

「綾小路君は部活入らないの?」

「ああ。この学校の特性上、趣味の範疇を超えた活動は出来ないと踏んでる。だから多分性に合わない」

 

長期間に渡りこの学校を出るような大会には軒並み出場出来ない。

この学校における部活動はあくまでおまけの位置付け。

部活動に参加している生徒が少ない事もそれを示している。

 

世には一芸入試というものが存在する以上、文化部運動部問わずに評価の幅をもう少し広げた方が社会的価値の高い人材を輩出する事に繋がりそうなものだが…。

 

この学校が目指す姿はそこじゃないんだろうな。

 

「…え、それって全国大会には行ける前提?」

「どの部活も自ずと頂点が目標になるものだと思っていたのが違うのか?」

「あ〜、そういう人ばかりが集まる強豪校ならそうかもね。でも、全体で見たらそういう考えで部活やってる人は少ないよ」

 

元来より部活動は趣味でやるもの。それが世間一般での認識であり価値観。

就職活動で体育会系のサークルでキャプテンやってましたってアピールするくらいなら、海外ボランティアに参加したエピソードを盛って語る方が印象が良いって事だ。

…団栗の背比べかもしれないが。

 

「という事は小野寺も趣味で部活をやってるのか?」

「趣味って言葉はあんまりしっくりこないなー。好きだからやってるって感じ」

 

好きだから。それだけで毎朝早く起きて毎晩遅くまで練習出来てしまう。

その感情が生み出す原動力は、案外次世代を担うエネルギーかもしれないな。

 

「タイムも勝ち負けも二の次で、私にとって大事なのは水を感じる事なんだよね」

「…もしかして、フリーしか泳がない感じか?」

「え?なんで?私は何でも泳ぐよ。そういう意味ではフリーかもしんないけど」

「…そうだよな。忘れてくれ」

 

まさかの天然物。いや、こんなにも熱量のある小野寺がアニメに感化されて部活やってたら興醒めもいいところなんだけど。

 

「運動する事は好きだが特定のスポーツに固執しない俺にとっては、尚更部活動に向いていないな」

 

小野寺の話を聞いて思ったのがそれだった。

部活動も生徒会も時間を投資するほどの価値が見出せない。

あえて選ぶなら、椎名が所属する茶道部に入る。不純な動機である事は言うまでもないが。

 

完全に警戒心が薄まった彼女は後ろに手をついて上体を逸らしながら気怠げに言う。

 

「でも勿体無いな〜。綾小路君、あんなに運動神経いいのに」

「俺の運動神経が良いなんていつ分かったんだ?」

「分かるよー。羽交締めされた時、マジで抵抗できなかったし」

 

小野寺はにししっと笑うがどこか悔しそうだ。

男女の力の差に諦めはあるものの、根は負けず嫌いという事だろう。

 

「……今、羽交締めって言った?」

「しかも、かや乃ちゃん嬉しそう」

「もしかして、羽交締めって隠語なんじゃ…?」

「え?プロレスしてたって事?」

 

…迂闊だった。

いつもの調子に戻った小野寺の声量はこの狭いテント内にいるなら嫌でも聞こえてくるものだった。

しかも、話が鳥人間コンテストくらい飛躍してしまっている。

 

多勢に無勢でおろおろとし始めた小野寺は役に立たない。

ここはあの場にいた松下に応援を要請するのが丸い選択肢だろう。

 

「悪い。松下。一緒に事情説明を―」

「知らないっ」

 

にべもなく放たれた松下の言葉に俺はすぐに引き下がった。

……思ったよりもさっきの出来事は根が深かったらしい。

 

「綾小路君。謝る必要はありませんが、感謝は伝えた方がいいかもしれません」

 

神妙な面持ちのみーちゃんがそろりと近付いてきて、声を落として耳打ちしてくる。

 

「雨が降った時、千秋ちゃんが1番綾小路君を心配してました。綾小路君を迎えるにあたって、メンバーを調整したり、皆から同意を取ったりを率先してやってくれてたんですよ?」

 

俺がここに入った時、誰一人として拒む人間がいなかった。

いや、それだけじゃない。妙に俺と親交があるメンバーが固まってたのも俺の居心地を配慮してのことだったのだ。

 

勿論見返りを求めた行動ではないだろうが、無下に扱われれば厭になるのが人情だろう。

 

「…それは悪いことをした。今度お礼をしないとな」

「はい。そうしてください。ちなみに堀北さんは雨が降った時に『彼が邪念が払う丁度いい機会じゃないかしら』と言ってました。……邪念が多いんですか?」

 

邪念。辞書で引けばみだらな情念。

変に畏まったみーちゃんからは、その意味を知った上で尋ねてきているような感じがした。

 

…堀北め。純粋な子供に余計な事を吹き込むんじゃねぇ。

 

「そうだな。少なくとも明鏡止水って言葉と聖人君子の存在だけは信じてない」

「ふふ、綾小路君らしい答えです」

 

密やかに笑ったみーちゃんには誤魔化しではなく答えに聞こえたらしい。

彼女の硝子のように綺麗な瞳は俺の心の内を映し出してしまうようだ。

 

「まさか、次のターゲットはみーちゃん!?」

「夜のテキサスクローバーホールドでTKOされちゃうんだ!?!?」

「キャーーーッッ」

 

……とりあえず、雨に打たれて頭を冷やすべきなのは野次馬根性丸出しの彼女達の方だと思う。

 

普段は冷静なみーちゃんまでも小野寺に続きおろおろし始めて、俺は色んな事を諦めた。

 

 

 

 

長い長い夜が明け、無人島生活7日目。

 

宇宙人もとい森下藍が襲来した時に前述した通り、俺の寝床スペースをあのテント内に用意する事はできない。

夜になっても一向に雨が止まない様子を見て、松下が導き出した結論は徹夜する事だった。

 

体力的に余裕がある高校生にとって一徹くらいは訳はない。

それが全員の共通認識だった。

 

……ここが無人島でなければ。

 

暇を凌げる遊び道具もなく、おしゃべり一本で夜を越すのはハードすぎたのだ。

 

結果、睡魔と体の疲労には抗えずに無様に寝顔を晒す人間がぽつりぽつりと現れ始める。

「男の子がいる空間で寝れるわけなーい」なんて騒いでた女子はもれなく全滅だった。

 

最終的にそんなデスゲームの生存者は俺と堀北と櫛田と松下の4人だけだった。

ちなみに堀北と櫛田は謎に張り合ってるせいで目がパキっていて怖い。お前ら、本当は仲良いだろ…。

 

俺は皆を起こさないように慎重にテントを出ると雨上がりの絶景が目に飛びこんできた。

雨で濡れた緑の絨毯がキラキラと太陽の光を反射させる幽玄な絵。

佐倉を叩き起こしてこの神秘をバックに一枚撮りたい衝動に駆られそうになった。

 

「わっ、綺麗〜」

 

俺の後を追いかけるように松下もテントから出てきて、感嘆の声をあげる。

犬や猫を見て可愛いと言う女の子が可愛いように、景色を見て綺麗という女の子の横顔も綺麗なものだな。

 

「まだ5時だ。俺はもう戻らないから、少し寝てきていいぞ」

「それって、あの二人のところに戻れって意味だよね?お断りまーす。私は界面活性剤じゃないので」

「う、その節は悪かったよ。それに物理も化学も結局はサイエンスの分野だしな。解釈次第では松下は間違ってない」

「いやいや、私を納得させる為に無理しなくていいって。もう気にしてないし。…ていうか、あの時もちょっと臍を曲げてみたくなっただけっ」

 

恥ずかしそうに頰を赤らめて勢い任せに言い切った松下に俺は内心で舌を巻いていた。

過去の行いを振り返るだけじゃなく、その幼稚さも直視して受け止められる。

こういう反省を繰り返してメタ認知の解像度が上がっていくのだろう。

 

彼女の上昇志向には感服させられるばかりだ。

 

「だから、この話はこれで終わり!ね?いいでしょ?」

 

既に自己完結している彼女の気持ちを掘り返したい訳でもなかった俺は静かに頷いた。

 

「なら、別の話になら付き合ってもらってもいいか?」

「何?何?政治の話?恋愛の話?」

「切り替え早すぎだろ。しかも二択が対極すぎる」

「え〜、だって折角なら目の覚めるようなニュースが聞きたいじゃん?インボイス制度についての見解とか綾小路君の好きな人の話とかさ」

 

好きな人の話題が益税解消の政策と横並びにされる事があるのか…。

呆気に取られていた俺に松下は冗談だよと笑って肩を竦めた。

 

「でも、その二つでもないなら特別試験の話かな?」

「よく分かったな。正解だ。実は松下にリーダーをやってもらいたい」

「…………はい?どういう事?高円寺君がリーダーだよね?」

「高円寺はリタイアした。代わりのリーダーが必要だ」

「…………」

 

次に呆気に取られるのは松下の番だった。

事務的に現状をそのまま伝えた俺に瞬きを繰り返す。

驚きを通り越して、混乱している様子だ。

 

しかし、松下の理解力なら多くの説明は必要ない。それを見越して彼女に頼んでいる。

俺は戦略の要所を掻い摘んで伝えた。

 

「……高円寺君は暴走してた訳じゃなかったって事?」

「ああ。最後にはこうしてリーダーをすり換えて、占有ポイントを獲得する運びになっていた。点呼不在やリタイアのマイナスを許容していたのも帳消しに出来るからだ」

「…え、待って、それを試験開始直後のあの一瞬で考えて実行したってこと?…あ、あり得なくない?そ、そんなの……」

「どうやら、目が覚めるようなニュースというリクエストには応えられたみたいだな」

 

不遜に笑った俺はジロリと睨まれる。

だが、その目に不信感などはなく畏敬に満ちていた。

 

「松下はAクラスに興味がありそうだな」

「……その感じ、綾小路君は興味ないって言ってるようなものだね」

「ああ。俺はどこのクラスで卒業しても未来が変わる訳じゃないからな。今回、特別試験を勝つ為に戦略を練ったのはのっぴきならない事情があったからだ」

「綾小路君のそういう身の上話は初めて聞くね」

「初めてしたからな」

 

どうして?そんな疑念が松下の瞳を揺らす。

しかし、俺の無垢な目は冷淡に佇むだけで応答しない。

 

俺への興味を植え付けるだけであとは勝手に花が咲くと信じているからだ。

それがどんな花を咲かすかどうかは彼女次第。

 

俺が与えた回答ではなく、松下が自分の意思で辿り着いた回答。

 

例え、それが誤答であったとしても。

今はまだ、それをゆっくりと待てばいい。

 

 

 

 

試験終了時刻を迎えて、俺達はスタート地点に戻ってきていた。

Cクラスの顔ぶれの中に椎名を見つけると目が合った。

フリフリと控えめに手を振ってくれた彼女からは、順風満帆な無人島生活を送っていた事が伺える。

 

もし、彼女が龍園に飲まず食わずの生活を強いられてボロボロになっていたら俺は俺を制御できる自信がない。

豪華客船のデッキから太平洋のど真ん中に沈める事も視野に入れて動いていただろう。

 

「結果発表楽しみですね。綾小路君」

 

特別試験、結果の集計中。

多くの生徒が休憩所に向かう中、坂柳が一人でいる俺の元へとやってきた。

隣には不機嫌そうな神室が日傘を持っている。

 

「砂浜で足場が悪いんだから大人しくしてろよ」

「ふふ。綾小路君とお話ししたい気持ちが逸ってしまいまして」

「転んでも、私は助けないから」

「ふふ、可愛い抵抗ですね。真澄さん」

 

坂柳は神室と自分の関係性を見せつけるような会話を展開する。

この様子だと森下藍から、神室が弱味を握られている線を勘繰っていると聞いたのだろう。

 

「綾小路君のおかげで退屈な試験が面白くなりました。流石の一言です」

「お眼鏡にかなったようで何よりだ」

「微塵も後悔はしてないようですね―」

 

「『最終日に松下千秋さんをリーダーにする』それを森下さんに伝えていた事を」

 

隣にいた神室は知らなかったのか、目を見開いて驚愕している。

あの夜の帰り道、森下藍に持って帰らせた手土産はちゃんと坂柳に渡っていたようだな。

 

「そんなの綾小路の嘘に決まってるでしょ」

「神室さん。貴方と違ってそんな低俗な世界に彼は生きていませんよ。間違いなくリーダーは松下千秋さんにすり替わっている。大事なのはその先です」

 

この場で小躍りでもしそうなほどの高揚感を露わにしながら坂柳は種を明かししていく。

いや、踊り出したら本当に転んでしまう訳だけど。

 

「私が綾小路君の言葉に従ってDクラスのリーダーを当てた場合、Dクラスは300クラスポイント程失い私達は50ptを得ていたでしょう。……本当に舐めた事をしてくれるものです」

 

今までの言葉は皮肉だった。それを裏付けるような冷たい声。

 

坂柳にとって他人に与えられた勝利など敗北と同義。

ましてや、それが因縁の相手である俺なら尚更のこと。

 

俺は敢えて真実を彼女に伝える事で、能動的に勝ちを得られなくしたのだ。

 

「21分の1の確率で当たりを引かれるのは本意じゃないからな。森下を保護してやった代償だと思ってくれ」

 

50ptを失っても痛くない彼女は必ず勝負に出てくる。それを見越しての防御策。

坂柳は馬鹿にされたことに対して、怒りを露わにして尋ねてきた。

 

「……私が敗北を噛み締める覚悟で一矢報いたらどうするつもりだったんですか?」

「だからこその人選だ。その時は松下千秋に全責任を擦りつけて取り入ることに利用する」

 

神室が俺の言葉にドン引きしていたのは、俺のやり方が坂柳と酷似していたからだろう。

絶望の淵に叩き落とされれば、それが女郎蜘蛛の糸だろうと掴むしかない事を知っているのだ。

 

 

『では、これより特別試験の順位を発表する』

 

 

「4位!Bクラス 0pt」

 

「3位!Aクラス 100pt」

 

「2位!Cクラス 200pt」

 

「そして1位はDクラス……380pt」

 

真嶋先生の困惑した姿と共に特別試験は幕を閉じた。

 

坂柳、一之瀬、龍園の3人は砂浜に響いた甲高い声を忘れる事はないだろう。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

試験 最終結果 詳細

 

 

Aクラス

初期ポイント300pt

生活での消費 -135pt

リタイア(葛城・弥彦)-60pt

点呼不在(森下)-5pt

占有ポイント0 リーダー当て不参加

合計100pt

 

Bクラス 

初期ポイント300pt

生活での消費-150pt

リーダー当てられ−100pt(CDクラス)

リーダー外し-50pt(Dクラス)

占有ポイント無効

合計0pt

 

Cクラス

初期ポイント300pt

生活での消費-100pt

リーダー当て+50pt (Bクラス)

リーダー当てられ-50pt (Dクラス)

占有ポイント無

合計200pt

 

Dクラス

初期ポイント300pt

生活での消費-97pt

リーダー当て+100pt (BCクラス)

リタイア(幸村・高円寺)-60pt

点呼不在(高円寺)-55pt

スポット占有192pt(12箇所)

合計380pt

 

 





無人島編。ようやく完結
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