綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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感謝は一括払い出来ない。いつだってリボ払い。

ー令和ロマンー


#4 逆ソクラテス

 

 

部活をやる男子はモテるという話を聞いた事がある。

おモテになると噂の南雲先輩もサッカー部だったし、実際はそうなんだろう。

 

しかし、モテたいからという動機で部活動をやっても長続きせずに辞めてしまうのがオチだ。

それに、女子にモテる部活TOP3のサッカー部、バスケ部、軽音部。

この3つはコミュニティ上手く混ざる能力が必須だろうしな。

 

…考えれば考えるほど、俺向きじゃないな。

それに、橘先輩と顔を合わせたくないしな。

 

「あら、ミーハーの貴方が部活動説明会をパスするなんて、何だか天気が荒れそうね」

「逆転の発想だ。体育館に人が集まってるからこそ、他の施設を見て回るには絶好の機会ってことだ」

「手薄になった所を狙うという基本は抑えているようね。足がつかないようにするのよ?狙うのはケヤキモールの電化製品コーナーかしら?」

「なんで、俺が犯罪する前提なんだよ。普通に図書室に行くだけだ」

「そう、なら丁度いいわ」

 

思い出したように鞄をゴソゴソとし始めた堀北は取り出した本を押し付けてきた。

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』か。

中々俺好みのチョイスだが、彼女の身にはなってなさそうだ。

 

「…代わりに返してこいと?」

「ええ、綾小路君の器の広さを見込んで頼むわ」

 

嫌らしい奴だな。断りにくいような言葉をチョイスしやがって。

渋々受け取ると、アルバイトが面倒な客を対応するような単価0円のビジネススマイルが返ってきた。

様になっているのがムカつくな。

 

「じゃ、よろしくね」

 

足早に去っていく堀北には予定があるように思えた。

もしかしたら、彼女は部活動説明会に足を運ぶのかもしれないな。姿勢が無駄に良い彼女からは高い運動能力が窺えるし。

 

俺は少し重くなった荷物に嫌悪感を覚えながら、図書室へと向かった。

俺が所属するDクラスが騒がしかったからか、図書室内部の静寂が身に沁みる思いだった。

…いい場所だな。ここ。

 

「ん〜ん〜」

 

人けが無いと思ったが先客がいたようだ。

その唸るような声が気になって、音の鳴る方へ向かうと懸命に腕を伸ばして、自分の背より高い本棚の本を取ろうとしている女の子がいた。

本の位置が絶妙で届きそうで届かない。見ていてむず痒い光景だ。

 

彼女の小さな手の先にはエミリーブロンテの「嵐が丘」

世界の三大悲劇や世界十大小説に名を連ねる不朽の名作だ。

 

「余計な事かもしれないが」

 

横から手を伸ばし本を取った俺に驚くように彼女は勢い良く振り返った。

長く透き通ったような銀髪が鞭のようにしなり、俺の顔を打ち付ける。

痛みよりも優しめで控えめな香りが俺の顔に残った。

 

「ご、ごめんなさい!そして、ありがとうございます」

 

事情を把握した彼女が焦ったように綺麗な角度で頭を下げてきた。

1つのお辞儀で謝罪とお礼を済ませるとは一挙両得だな。

 

「こっちが勝手にお節介を焼いた結果だ。気にしないでくれ」

 

上体を起こした彼女に本を渡すと、重ねるようにお礼を言って受け取る。

品行方正な淑女が第一印象だ。少ない一挙手一投足に洗練された和を感じる。

…だが、堀北のようなケースもある。第一印象はあくまで第一印象なのだ。

 

「…私の顔に何かついてますか?」

 

まさに見惚れるように直視していた俺を不審に思ったのか、彼女は片手でペタペタと自分の顔を触り始める。

…堀北とは違い、見られることに対して不快感や嫌悪感は持っていないようで助かったな。

 

「いや、そういう訳じゃない。ブロンテが好きなのかなと思ったんだ」

 

面と向かって「何でそんなに私の顔を見てるの?」と訊かれるとこんなに困るものなんだな…。

低い声で『悪い、見惚れてた』なんて言うことも考えたが、後で自分を殺したくなりそうなのでなしだ。

我ながら下手な言い訳だったが、幸い彼女は合点がいったような表情をしてたので何とか切り抜けれたと思っていいだろう。

 

「個人的には好きでも嫌いでもありません。ただジャンルが違う本が置かれていたので正しい位置に直そうと思ったんです」

「確かに本格派ミステリーが並ぶここにあるのは不自然かもな」

「もしかして読まれたことがあるんですか?」

「ああ。これとは違うが原書を拝読したことがある」

「えっ、原書ですか!?」

 

彼女は目をまんまるにしているが、そんなに驚くことだろうか。

嵐が丘は洋書の中でも入門中の入門。英検1級程度の語彙が分かれば素人でも翻訳しながら読めるだろう。

 

「英語に造詣が深いんですね」

「人並み以上な自覚はあるが、そこ止まりだ。俺が学んだのは教養英語がほとんどだしな」

 

間違ってもネイティブスピーカーは名乗れない。

それに、俺は第一言語の日本語でのコミュニケーションすら覚束ないんだからな。

 

「唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ること。その本のタイトルにある哲学者ソクラテスの言葉です」

 

俺の手には堀北から押し付けられた名書があった。

…参ったな。本当に謙遜しているつもりはなかったんだがな…。彼女の中で凄い人という烙印を押されたような気がする。

そして、もうその誤解を解くのは難しそうだ。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は1年Cクラスの椎名ひよりといいます」

「1年Dクラスの綾小路清隆だ」

「綾小路君…。素敵なお名前ですねっ」

「褒めてくれるは嬉しいが、歴史に縁はないからな」

 

これ以上、変な勘違いで先入観を持たれても困るので俺は釘を刺しておく。

まだ少ししか話していないが、彼女は話を飛躍させる癖がある気がする。有り体に言えば、一般常識が欠けているお嬢様みたいな感じだろうか。

 

「でも、良かったです。最初に図書室に来た時は少し寂しかったんです。受付の司書さん以外に人が見当たらなくて、もしかして人気がないのかと思ってしまいました」

「もしかして、知らないのか?今日は部活動説明会があり、ほとんど生徒がそっちに足を運んでるぞ」

「え、そうなんですか?それは知りませんでした」

 

びっくりして空いた口を手で隠すような椎名。

素振りには礼儀作法があるはずなのに、どこか抜けている印象があまりにも絶大すぎて一瞬で上書きされてしまう。

周りがどこの部活に入るかあれだけ騒いでて気付かないなんてな…。

 

「ですが、綾小路君は部活動説明会に参加するより図書室に来ることを選んだんですよね?」

「まあ、そういう捉え方も出来るな」

「なら同志ですねっ。もし、部活動説明会のことを知っていたとしても私は図書室に来ることを選んでいたと思うんですっ」

「そ、そうか。椎名は本が好きなんだな」

「はい、大好きですっ」

 

椎名の口から出た大好きが本の事だと分かっていても、心臓が撫でられた気分だった。

 

「それに本が好きな人も大好きですよ。読書家に悪い人はいませんから」

「……そうかもしれないな」

 

今度は明確に俺に向かって言われた気がして、まともな返答が出来なかった。

勿論、意訳をすれば恋愛的な意味じゃないという事はすぐに分かる。

それでも、初対面の相手に共通の趣味があるというだけで好意をストレートに伝えられるのは大した胆力だ。

俺が勘違いする事を何一つ考慮していないのだから。

 

自分の容姿が端麗であることに自覚がないんだろうな。

 

「綾小路君はどんな本が好きなんですか?訊かせてくださいっ」

 

二人きりの図書室。

今までは本と俺だけで完結していた世界に彼女は入り込んできた。

本の感想を誰かと共有する。単純な事だが俺にとっては初めての経験だった。

 

俺はこの日、読書家の性を椎名に教わった。

 

 

 

 

現実問題として、社会は全くもって平等じゃない。

貧富の差の拡大は歯止めが効かないし、人種や性別の差別問題も話題に上がらない日はない。

成長してるように見える経済社会だが、ある意味退廃的だ。何故なら常に犠牲を伴っているから。

カードゲームで強力なカードを召喚するのに、莫大なコストがかかるのと同じ理屈だ。

 

だが、そんな不平等で理不尽な現実にも平等な要素が幾つか存在する。

その一つが時間の流れだ。

 

入学して1週間が経った今、その時間の使い方の差が顕著に出ていた。

 

「椎名のCクラスは普段どんな感じなんだ?」

 

すっかり放課後に図書室に訪れる事が習慣化してしまった俺は本の虫もとい図書室の虫の椎名と話すことが日課になっていた。

そして、多くの時間を彼女と過ごしている内に気付いた事がある。

何故、趣味が同じという事がコミュニケーションを取る上で重要視されるかをだ。

 

「綾小路君にしては抽象的ですね。何か気になる事でもありましたか?」

「Dクラスは教室内の雰囲気や授業態度がお世辞にも褒められたものじゃないからな。他のクラスの様子が気になったんだ」

「なるほど、そういうことでしたら。私はクラスに馴染めていないので、あくまで上辺ですがお答えします」

 

椎名がクラスに馴染めていない?

積極的に他人にアクションを起こすタイプではないとは言え、彼女ほど話しやすい相手はいないと思うんだがな。

話し方は理路整然としていて、聞いている時は控えめながらもリアクションをしてくれる。

話し上手で聞き上手。俺が約1週間近く彼女といて感じた印象だ。

 

「Cクラスの特徴は…、そうですね。荒っぽい人が多いと思います」

 

…荒っぽい?Dクラスでいう須藤みたいな事だろうか。

俺がいまいちピンと来ていないことを感じた椎名は追加で補足してくれる。

 

「語弊があるかもしれませんが、分かりやすく言うと口よりも手が出るタイプでしょうか」

 

…やっぱり、須藤みたいなタイプだな。

だが、だとしたら中々カオスなクラスだ。1人でも手を焼く須藤が何人もいるなんて考えたくもない。

 

「今は落ち着いていますが、先週までは流血沙汰寸前の喧嘩が日常茶飯事でした」

「おいおい…」

 

その後、椎名は例として一つの事件を教えてくれた。

初日にコンビニですれ違ったあのシエラレオネ人が女と男の喧嘩の仲裁に入り、二人を片手で地面に伏せたらしい。

西成区か歌舞伎町でしか聞かないような強烈なエピソードだった。

いいのか?高度な教育を謳った学校にそんな治安の悪いクラスがあって。

 

「だが、今は落ち着いたって事はそれを束ねる人物が台頭してきたって事か?」

「流石ですね、綾小路君っ。その通りです」

 

椎名がこの流れでそれが誰であるかまで明言しなかった。

だから、俺はそれを追求しないでおこう。そんなに興味がないしな。

 

「俺のクラスも中々破天荒だと思ってたが、Cクラスの話を聞けば霞むな」

「そう思います。ですが皆さん、悪い人ではないと思うんです。最初は強い主張がぶつかり合っただけ。むしろ、自然ではないでしょうか」

「意外だな。怖くないのか?」

 

体の線の細さ(出るとこは出ている)から、椎名が腕っぷしに物を言わすタイプじゃないのは間違いない。

暴力を前に椎名はあまりにも無力だろう。

 

「はい。私は暴力には屈しません」

「強いんだな。椎名は」

 

人間も動物である以上、弱肉強食からは逃れられない。

人間が進化の中で身に付けた理性も、剥き出しの本能の前では平伏す他ないからだ。

 

「綾小路君。目が節穴ですよ。私はすごく弱いです」

 

「ですから、綾小路君が守ってくださいね」

 

太々しい笑顔に図太い神経。

ほんと、大した精神力だよ。椎名は。

 

「冗談ですっ」

「それは良かった。実は俺も喧嘩は弱いんだ。文学青年が強いのは口喧嘩に限るからな」

「ふふ、それは頼りになりますね」

 

にっこりと微笑んだ椎名の皮肉は優しく俺を包み込んでくれるようだった。心に突き刺す堀北の皮肉とは月とスッポンだな。

 

「今日はもう帰るんですか?」

「ああ。続きは帰ってから家で読もうと思う」

「そうですか…。気をつけて帰ってくださいね」

 

いつもなら、俺達はこのまま一緒に本を嗜む流れ。

捲るページの音だけが響く無音の時間を気に入ってたのは俺だけでなく椎名も同じだったようだ。

だが、それを差し置いても俺はするべき事がある。

だから…

 

「椎名。今日の夜、また感想戦付き合ってくれるか?」

「…はいっ。お電話待ってますねっ」

 

寂しそうな顔を隠すのが下手な奴だ。

だけど、嬉しそうな顔を隠すのも下手なんだよな。椎名は。

 

だから、きっと俺が椎名を利用した事実を知れば悲しむだろう。

 

 

 

 

「櫛田、そっちはどうだった?」

 

放課後。生徒は部活や遊びに勤しむ時間。

1年Dクラスの教室で俺は櫛田と合流した。

窓から差し込む夕陽が二人の影を伸ばしている。

 

「うん。綾小路君の言う通りだった。Aクラスの人何人かに聞いたんだけど、中学時代の成績が優秀な人ばっかりだったよ!」

「何人くらいに聞いたんだ?」

「えーと、何人だろ、20人くらい?足りなかった?」

「…いや、十分だ」

 

櫛田は大した事は何もしていないような表情で首を傾げる。

椎名1人にヒアリングした俺とは違い、櫛田はクラスの過半数以上のエビデンスを提示した。

情報収集力は雲泥の差。正直この分野では頭が上がらないな。

 

「綾小路君。協力してくれてるのはすごく嬉しいんだけど、本当にこれで堀北さんが私と話してくれるのかな」

「それは俺ではなく本人に聞いてみるのが1番じゃないか?」

「…?」

 

櫛田の堀北に対しての熱心なアプローチは1週間続いた。

しかし、一向に堀北の牙城は崩せなかった。城門を叩いてもうんともすんとも言わず居留守を決め込むのだから仕方がないだろう。

 

ついに入学から1週間経った月曜日の今日。

櫛田は直接的なアプローチを諦め、俺に頼んできたのだ。

『堀北との間を取り持ってくれないか』と。

 

これは俺にとって降って湧いたチャンスだった。

俺は櫛田を利用して、櫛田は俺を利用するwin-winの関係だったからだ。

 

ガララッ…。

教室後方のドアが開いて堀北が顔を覗かせた。

 

「こんな時間に要件も言わずに呼び出すなんて非常識にも程があるんじゃないかしら?綾小路君…………。図ったわね?」

 

堀北に気付き、花が咲いたような笑顔で手を振る櫛田の存在を認識した堀北はジロリと俺を睨む。

今すぐにでも帰りそうな勢いだ。だが、帰らせる訳には行かない。それを阻止するのが今の俺の仕事だからな。

 

「堀北。俺はお前のことを何となく分かってきたつもりだ。そして、お前も何となく俺のことを分かってきたんじゃないか?」

「…期待していいのね?言っておくけれど、今日この時が分水嶺よ?」

「分かってる。櫛田、話してやれ」

 

不安を顔に浮かべる櫛田に俺はアイコンタクトを送る。

鉄壁とも思える堀北の城門を突破するのに必要なのは強行手段でも呪文や魔法の言葉でもない。

彼女にとって自分が有益であると示せる通行証(エビデンス)なのだ。

 

「う、うん。これは私じゃなくて、綾小路君の推測なんだけど、この学校はクラスの配属に法則性じゃあるんじゃないかって…」

「彼の推測を貴方が話す理由は何?」

 

堀北が俺と櫛田を交互に訝しむように目配せする。

そんな高圧的に口を挟む堀北を前に、櫛田は泣きそうな犬のような目で俺を見てきていた。

だが、ここで俺が口添えする事は出来ない。

堀北と友達になるという櫛田の願いを叶えるためには、彼女の毒に対しての抗体が必要だからだ。

 

「えーとそれなんだけど…」

「はっきりしないわね。説明する気はあるのかしら。相手が疑問を持たないように時系列順に説明することが出来ないのなら彼に代わってもらえる?」

 

行き詰まりそうな櫛田に視線を向けると、一瞬表情筋が強張ったような気がした。

だが、櫛田はそれを緩めるかのように思いっきり両手で頬を叩いた。

パチンと乾いた音が教室に鳴り響き、流石の堀北も少し動揺したように見える。

 

「ごめん。最初からちゃんと説明するね」

 

先ほど自分で入れた喝が人格を切り替えるスイッチだったかのように冷静な声を出す櫛田。

普段出してる猫撫で声は見る影もないように思えた。

 

「まず、綾小路君はクラスの配属に法則性を見出したの。でも、それを確かめるためには他クラスの情報を集める必要性があるよね。私は綾小路君に依頼されて、1年のAクラスBクラスCクラスの生徒の素性を聞いて回ったの。あくまで自然にね。結果を言うとね。合ったよ。法則性」

 

櫛田は事実と嘘を織り交ぜて、起承転結を抑えた巧みな話術を披露する。

続きが気になるように誘導する倒置法も、情報発信系のツイッターアカウントの如くいやらしい。

 

「Aクラスには学業の成績優秀な生徒。Bクラスはオールマイティに活躍できる生徒。Cクラスには体格や運動神経に恵まれた生徒って感じかな」

 

俺は櫛田には法則性がある推測しか聞かせていない。

つまり、これは櫛田本人が収集した情報を分析した結果になる。的外れな事は一つも言っていない。

温厚な性格と明るいキャラに誤魔化されそうになるが彼女もまたキレものだな。

 

「…信用できないわね」

「直接話した生徒がほとんどだから少ないけど、何人かのメッセージの履歴は見せれるよ」

「意味ないわ。例えそれが何人であろうとね」

 

櫛田が示した可能性を頑なに堀北が否定する理由は一つだ。

だが、櫛田はそれに気付いていない。ここから先は俺が補足する必要があるだろう。

 

「成績優秀の堀北がAクラスに配属されていないのが俺達の可能性を否定する何よりの証拠だからだろ?」

「そうよ。入試の点数も中学の成績も他の人より優れている自信があるわ。Aクラスに成績優秀な人間を集めているのなら私がいなきゃおかしいもの」

 

中学という単語を聞いて、隣にいる櫛田が僅かにピクリと動いた気がした。

俺が目を向けると、満面の笑顔で見返してきたので気のせいかもしれないが。

 

「そうだな。だから、今から俺が伝える事実は堀北にとっては辛い物になるかもしれないな」

「…何を言っているの。これは推測の話だったはずよ」

「悪いが事実だと確信している。この学校が独自の基準で生徒の実力を数値化している。ここまでなら何処の学校にでもあるような話なんだが本題はここからだな」

 

櫛田の分析は見事だったがそれでは不完全だ。

これほどまでに分かりやすくクラスの特色が出てしまう本質こそが真実だからだ。

 

「この学校は、その数値によってクラスの配属が決まる。数値が高いものはAクラスへ。低いものはDクラスへってな」

「…馬鹿げてるわ。妄想癖もここまでいくと病気ね」

 

『推理小説作家にでもなったらどうだ?』

そう続きそうな堀北の言葉に俺は少し吹き出しそうになった。

名探偵にも名探偵なりの苦労があるんだな。相手が息耐える最後のトドメを刺す義務があるんだから。

 

「堀北。認めたくないのは分かるがこれは事実だ」

「断言するからにはあるんでしょうね?そう言い切れるだけの証拠が」

「ああ。特に顕著なのは生徒会だな。この学校を規律を変える権利と使命があると豪語するくらいだからな、実力者揃いだ。橘書記3年Aクラス。次期生徒会長・現副会長の南雲先輩は2年Aクラス。そして、堀北学先輩。偶然にもお前と同じ名字の生徒会長は当然3年Aクラスだ」

 

俺が生徒会長の名前を挙げると、存外クリティカルヒットしたのか固まったように堀北は黙りこくった。

…他にも提示出来る根拠はあったが、これ以上は不要だろう。

 

「……私は信じない」

「そうか。なら、俺が言った可能性を否定して見せろ。俺…いや、自分が納得出来る答えを見つけれたら聞いてやる」

 

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』。

本作の逆ソクラテスの定義は『自分がいかに知らないかを知らない人』だ。

 

堀北は無言のまま教室から去っていった。

酷くショックを受けた背中は、俺が語った事実が真実に限りなく近いものであると認めている証だ。

 

「綾小路君。これってバッドエンドじゃないよね?」

「…だ、大丈夫だ。バッドエンドはない。俺達はまだ途中だ!」

「そんな某大学の卒業生へのスピーチにありそうな言葉じゃ私は騙せないんだからねっ。私、頑張ったのにー!!」

 

櫛田にポコポコと両手で肩を殴られるが、俺はそれを受け入れる事で贖罪とした。

堀北は俺の事実を飲み込めたとして、彼女2人が手を取り合うか未来があるかどうかは別問題だからな。

 

 

 

 

椎名 ひより 1月21日 水瓶座

 

ルックス :A

スタイル :B

性格   :A

 

趣味 読書

好きなもの 本

嫌いなもの 特にない

入学動機 司書になりたい

 




今更ですが2連覇おめでとうございます
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