綾小路は恋がしたい   作:Кудрявка

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堕ちるまで堕ちたなら上がるしかねぇよ
時間ごと巻いて泥まみれのstay gold

-SKJ & MU-TON-


#5 災禍転福

 

 

「綾小路君、今日はどこか上の空ですね」

「そうか?」

「ええ、そうです」

 

俺は怪しまれないように間髪入れずに返すも、電話越しの椎名はどこか確信しているようだった。

当人の俺ですら気付かない些細な変化を感じ取ったらしい。

 

「具合が悪いわけではないんですよね?」

「それは心配しなくて大丈夫だ。生まれてこの方病気を患った事は一度もない、健康優良児でやらせてもらってる」

「ふふ、それは逆に心配になりますよ」

 

至って紛れもない事実だが、椎名は冗談を聞き流すように笑った。

そして、まるで口をあんぐり開けて大欠伸するような声が聞こえてくる。

 

「ふわぁぁぁ〜…。すいません綾小路君。今日は一段と睡魔の猛攻が……ふわぁぁぁ〜」

 

椎名は欠伸やくしゃみといった生理現象を人前で見せる事を恥ずかしがるタイプだ。

欠伸が出そうなら口元を隠した上で噛み殺し、くしゃみが出そうなら急いで退室する。

 

心配性で世話焼きな奴だな。ほんと。

 

「なら、今日は少し早いがお開きにするか」

「はい。そうしましょう。綾小路君、お臍を出して寝ちゃダメですからね。4月の夜の気温を舐めちゃいけません」

 

俺はそんな母親のような気遣いと気温に対しての警告があまりにもバレバレすぎて吹き出しそうになる。

何とか堪えて、

 

「椎名もな。ベットから落ちないように壁際に寄って寝るんだぞ。おやすみ」

 

そう茶化して、椎名の反応が返ってくる前に通話を終了させた。

いつもより短いとはいえ、通話時間は一時間を超えていた。

 

男女交際についてのノウハウがないから、毎晩のように長電話することが友達という関係値に収まる範疇なのかが判断がつかない。

それでも、俺と椎名の仲が日に日に親密になっていることだけは間違い無いだろう。

 

時計を見ると22時50分。まだ就寝するには早い時間帯だ。

散歩がてらに椎名が言ってた春の夜の気温ってやつを体感しに行ってみるか…。

 

俺は上着を羽織って、部屋を出た。

そのままエレベーターに乗ってロビーから外へ出ると、内容までは聞き取れないが人が話している声が聞こえた。

…こんな時間に人の目がない寮の裏か。

 

俺は湧き出た興味に従ってもとい事件性を感じて行ってみることにした。

 

「俺が知らない間に随分と無作法に育ったものだな。こんな夜更けに呼び出して何のつもりだ」

「どうしても兄さんと話したい事があります。時間は…ごめんなさい」

「兄妹のよしみだ。呼び出しには応じてやったが、それを聞いてやる義理まではない」

 

聞き覚えのある声に、俺は足音を殺して壁に背中をぴったりと貼り付ける。

少し顔を覗かせると案の定、堀北の姿があった。

会話の内容からもう1人の男の方は生徒会長の方の堀北だろう。

 

「兄さんが知っているあの頃の私とは違います。追いつくために来ました」

「違わないな。何一つ」

 

まるで眼前にアクリル板を押し付けるように一刀両断される堀北。

暗くて表情までは窺えないが、彼女の纏うオーラが明らかに普段より弱々しくなっている。

 

「…徒労だったな。お前が俺にコンタクトを取ってくるのはもっと後の事だと踏んでいた。その違和感を確かめにきたんだが、正体がお前の気の迷いだったとは興醒めだ」

「兄さんっ…私はっ」

 

立ち去る気配を感じた堀北が彼の上着の裾に手を伸ばしたのは無意識だったのかもしれない。

しかし、それは竜の逆鱗に触れたようだ。

優等生の好青年の容姿からは想起できないほどの殺気がこの距離でも肌で分かる。

 

「聞き分けのない妹だ。これは気付け薬だと思え。そして目を覚ました時、まともな判断が出来るならこの学校を退学する事を薦める」

 

彼が堀北の手を自分の間合いに引き込んだのを見て俺は飛び出した。

後日、兄妹喧嘩に口を挟むなと詰られる事は百も承知で。

 

「お前の言う通り、自主退学するのは英断かもな。生徒会長が紳士ぶったサイコパス野郎な学校がまともな訳ないんだから」

「……あ、綾小路君っ⁉︎ど、どうして…」

 

俺は二人の間を割るように体を強引に滑らせて、堀北を庇うように陣取る。

 

…コンクリに背負い投げか。

それが気付け薬とかヤクザかよ。薬剤師が国家資格片手にブチ切れるぞ。

 

「盗み聞きとは感心しないな」

「女の子相手に手をあげる人間の妄言だな。それは」

 

人が1人分空いた距離。一触即発の間合いだ。

武道経験者でなくても、この距離がキルレンジである事は一目瞭然だ。

 

「……やめて、綾小路君」

 

喉を絞ってようやく出たようなか細い声。

教室で毒舌を浴びせ続けてくる彼女と同一人物とは思えなかった。

彼女は力の籠っていない手で俺を兄から引き離そうと俺の肩に手をかけた。

 

その瞬間、時速20kmはある裏拳が俺の喉に目掛けて飛んでくる。

…無作法なのは兄譲りじゃねぇか。

 

回避すればすぐ背後にいる堀北に直撃する事を察した俺は蚊をはたき落とす要領で裏拳をいなす。

継いで飛んでくるのは向脛を狙った下段蹴りだ。

 

急所狙いのオンパレード。一撃喰らえば行動不能は避けられない威力が見て取れる。

 

俺は素早く半身振り向いて、堀北を右手だけで抱えて後方へ跳躍する。

これで間合いと攻守はリセット。ストリートファイターで言えば初期位置みたいなものだ。

 

「いい動きだな。立て続けに避けるだけでなく、回避と同時に足手纏いを間合い外に逃すとはな。何か習っていたのか?」

 

『そもそも、2発とも本気で当てようとしてくるんじゃねぇよ。サディスト野郎』

俺はその台詞を生唾と共に飲み込んで、質問に答えてやる。

 

「ピアノと書道なら。今度バーバーの弦楽のためのアダージョでも演奏してやろうか?」

 

この男には音楽への見識が無いらしい。

俺の皮肉は通じていないようだった。

 

「中々ユニークな男だ。そういえば聞いたことがある。入学試験の点数を全教科50点に揃えた舐めた奴がDクラスにいると。狙って揃えたな?」

 

鈴音がそれに過剰に反応し驚愕半分疑問半分と言った目つきで俺の表情を窺ってくる。

受験者には合否しか伝えていない癖に、関係ない人間に点数の詳細を開示してるとか情報管理どうなってんだよ。この学校。

 

「まさかとは思うが。生徒会ともなれば学校の人事にも介入出来るのか?」

 

俺の問い掛けに、眼鏡の奥のギラついた目が一瞬緩んだ気がする。とりあえず、矛は収めてくれたようだ。

しかし、構えを解き、殺気が消えても、鋭い眼光は俺から逸らされる事はない。

 

「なるほど。鈴音の気を迷わせたのはお前だな」

 

普段は無表情を貫いている癖に、今の鈴音の表情は七変化を見せているようだ。

俺がどれだけポーカーフェイスでも、これでは筒抜けだな。

 

「仮にそうだとしても、頼られたのはお前じゃないのか?」

「お門違いだな。今、お前の存在を知ってより一層応える気が失せた。もう俺が話す事は何もない」

 

堀北の兄貴はそれだけ言って、ゆったりとした一定の歩調で悠然と去っていく。

無防備な背中に蹴りの1発でも入れてやろうかと思ったが、やめておいた。

今はそれよりも、腰が抜けたように地面にへたり込んでいる堀北の方が気掛かりだからな。

 

 

 

(……寒い)

 

こちとら日本人なのに日本の四季すら知らないレベルの引き篭もりだったのだ。

椎名の警告がいくらあったとは言え、気象情報以上の警戒は出来るはずもない。

桜の匂いを帯びた風の冷たさが肌に突き刺さるようだった。

 

堀北に上着をかけたのは格好つけすぎたな…。

俺は素早い手つきでホットコーヒーを2つ買って、堀北の元へ戻る。

 

「無糖と微糖どっちがいい」

「…隣の席でしょう。珈琲の好みくらい覚えなさいよ」

「嫌なお局様か。お前は」

 

俺の中途半端な優しさにつけ込まれているような気がして、座り込む堀北に無糖の珈琲を投げる。

無論、堀北の身体に気を遣ってノンシュガーを渡した訳じゃない。

今のこいつに必要なのは、包んでくれるような甘味ではなく、顔を顰めさせるような苦味だと思うからだ。

俺は堀北から少し離れて、寮の壁に背中を預けて、

 

「やっぱり兄妹だったんだな。生徒会長と」

「…最初から聞いていたのね。やっぱり貴方には盗人の才能があるんじゃないかしら」

「法的に言えば盗聴は罪じゃないが、それは冤罪だ。俺はお前が投げられるシーンに偶々居合わせただけだ」

「浅はかな嘘ね。貴方は兄さんと今日初めて会ったはずよ」

 

俺は生徒会長の姓が堀北である事は知っていたが顔は知らなかった。

堀北の言う通り、俺が兄妹だと断言した時点で盗み聞きした事は自白しているようなものだ。

まさにその通りなんだが、視野の狭さと思慮の拙さは自覚させておいた方がいいかもな。

 

「堀北は綺麗な耳してるよな」

「…卑怯な人ね。セクハラ紛いな真似をして、自分の都合の悪い話は煙に巻こうとするなんて」

 

余程見られるのが不快だったのか、寒さで赤くなった耳を両手で隠す。

地面に座り込んでそのポーズはまるで兎のようだったが言わぬが仏だろう。

 

「そういうことじゃない。遺伝的特徴がよく出る耳は血液鑑定やDNA鑑定が始まる以前、法医学的な人物鑑定で重視されていたって話だ」

「…つまり、貴方は容姿だけで判断したと?」

 

話を逸らす気がない俺の意思が伝わったのか、堀北は耳から手を離した。

頬染めて恥ずかしがってる堀北を見てると、露になった耳が恥部ではないかと錯覚してしまいそうになるな…。

 

「容姿だけってのは語弊があるけどな。人生の半分以上を一緒に過ごしてきた兄妹なんだろ?所作や表情に自然と綻びは出る」

 

似てるという第一勘は舐めたものじゃない。

堀北と生徒会長両方を知るDクラスの生徒の中にはきっと気付いている者もいるだろう。

 

「…今更ね。あんなところを見られた手前、私と兄さんが兄妹であることを知られたことなんて些事だわ」

「無実の罪を着せられなくて何よりだ。それより、何なんだお前の兄貴は。頭のネジが外れてるとしか思えなかったぞ」

「兄さんの悪口を言わないでくれる?」

 

あんな事があったのにまだ庇うのか…。恋は盲目というが、行き過ぎた尊敬も同じらしい。

ギロリと凄まれるが、一手間違えていれば俺は今頃、病院のベットの上だ。悪態の一つや二つつく権利はあるはずだ。

 

「それに、貴方こそ何なの?空手五段合気道四段の兄さんと対等にやり合って、入試ではわざと50点に揃えて……よく分からないわ」

 

空手に合気道か。素人相手に手を出したことを師範が知れば悲しむだろうな。

 

「櫛田と3人で会った放課後に言っただろ。俺達は何となくお互いに理解していただけ。さっき、その何となくの部分が少し垣間見えただけだ」

「…理不尽よ。等価交換じゃないわ」

 

完璧に見える彼女が弱くて脆い部分を晒したのに対して、俺が見せたのは今まで披露する機会に恵まれなかった身体能力だ。

 

俺が入試を全て50点に揃えた事をリークされた事はこの際考えないものとしよう。

新しい学園生活に恋路を夢見て浮かれてたあまり、遊び心が暴走しただけだしな。

 

「なら、俺と櫛田が話した情報を精算しといてくれ。十分お釣りが出たはずだ」

「…やっぱり盗み聞きしてたんじゃない」

 

堀北は兄さんと接触したのはどうしても話したい事があったからだと言っていた。

それは俺と櫛田が伝えた可能性を自分では否定できなくて、迷いに迷った結果兄に辿り着いたのだろう。

俺は誤魔化すことはやめて、流すような目で見て応えた。

 

「訊きたいことは訊けなかったようだが、俺と櫛田の推論が限りなく事実に近いことは分かったんじゃないか?」

「…………そうね」

 

長い沈黙。

あれだけ拒絶を見せていた堀北が、それだけで事実を飲み込めたのはやはりあの男のおかげだろう。

これは尊敬というより依存していると表現した方が正しいかもしれないな。

 

「なら、その先は理解しているのか?」

「…貴方は見かけによらず、デートの会計をスマートに済ませるタイプね。……分かってるわよ」

 

精算すると言った手前、催促するように先を促した俺を堀北はそんなふうに例えた。

俺がデートは男が奢る派閥なのを見透かされるかのような嫌な例えだ。

おっと、今はそんなことより堀北の答えが重要だな。

 

「正直、このシステムで全教科50点に揃えた人間と同じクラスに配属されたことには異議申し立てたい所存だけれど、…この学校がこれで終わりじゃないのは分かるわ。実力を測ったスコアは在学中に変動する。そうでしょう?」

 

堀北は俺と同じ答えまで辿り着いた。

それは何となくでの推測ではなく、ロジックの元に確立された確信だ。

 

俺が首肯しようとしたその時、夜風が吹き電灯にライトアップされた桜の花弁が宙に舞った。

まるでプロローグの終わりを彩るそんな桜。

 

俺はそんな冷たい夜風と桜の花粉に誘われて、大きなくしゃみが出た。

 

「……風情に謝ってくれるかしら?今すぐに」

「生理現象だ。仕方ないだろ。それより上着返してくれ。限界だ」

「格好良いのか格好悪いのか分からないわね」

 

俺の情けなさを見て、堀北は上着を返してきた。

…ん?待て、今、格好いいって…

 

「帰りましょう。…って何その初めて夜桜を目の当たりにしたような顔は」

「そのまますぎるだろ。何にもねぇよ」

 

さっきの言葉は無自覚なのか。

堀北は容姿だけは無駄に整っているからな。心臓に悪い。

 

 

 

 

「つかぬ事を訊くが、もしかして二人ともお金に困ってたりするのか?」

「つかぬことは訊かないでください。ね、佐倉さん」

 

コクコクと頷く佐倉とモシャモシャと山菜定食を口に運ぶみーちゃん。

ヨモギとワラビの素揚げ。タンポポの葉のお浸し。

ヘルシーというより食べた感じがしなさそうな献立だ。

ともあれ、前と完全に立場が逆転したな……。

 

「そういえば、今日の水泳の授業の成績優秀者には1万ポイントが贈呈されるらしいぞ。狙ってみたらどうだ?」

「「……ッ!!」」

 

佐倉は表情が完全に固まり、みーちゃんは箸を掴む力が緩みポトリと手から滑り落ちる。

何なんだ…。この反応は。

 

「綾小路君…。わざとやってませんよね?」

「何の話だ?俺はお金を調達できるチャンスだと思ってだな…」

「はぁ、もういいです」

 

みーちゃんに呆れられたかのように溜息をつかれてしまったが、本当に何の事だか分からない。俺の発言に変な部分はなかったはずだが…。

 

「水泳、やだなぁ……」

「そんな事言っても仕方ないじゃないですか。私だってヤですよ」

「だから、一緒に休もって……」

「それはダメです。逃げ癖がつくと将来痛い目見ますから」

「うぅ……。お母さんみたい…」

 

2人にとって水泳の話題は地雷だったようだ。まあ、泳げない人にとっては公開処刑みたいな節もあるしな。

そういえば、佐倉はみーちゃんと話してる時は吃らないようだ。自信なさげで声が小さいことは変わらないが。先を越された気分だな。

 

「でも、どうしてこの時期なんでしょうね。4月に水泳の授業って不自然です」

 

屋内の温水プールという話だったが、確かにプールや海は夏のイメージがある。

まあ、アスリート的な観点で言えば水泳に季節なんてないんだろうが。

 

「最悪だよ〜、水泳やりたくないよ〜」

「よしよし、私がついてますからね〜。ヨモギ食べて元気出しましょうね〜」

 

佐倉は水泳の事を思い出す度にメンタルが崩壊しそうになるらしい。どんだけ泳げないんだ佐倉は。

みーちゃんが慰めモード。佐倉が塞ぎ込みモード。

俺に役割はなく、完全に2人の世界に入ってしまった彼女達を見ることしか出来なかった。

ここに飛び込むのは清水の舞台から飛び降りるようなものだな。

 

一足先に教室に戻るとするか…。

 

 

 

 

「綾小路君、ちょっといい?」

 

食堂から出てすぐ、まるで出待ちしていたかのように声をかけられる。

話した事はないが、顔にも声にも覚えがあった。

 

「同じクラスの松下だよな?…言っとくが金ならないぞ」

「待って、私ってそんな印象持たれてんの!?」

「所謂、散財組の1人だと思ってたんだが違うのか?」

 

散財組とは女子なら軽井沢、男子なら池や山内を中心とした一味だ。

無計画に嗜好品や贅沢品を買い漁り、足りなくなった生活費は周りに乞食して延命する。成金の鏡のような実態だ。

 

上辺だけの評価になるが、松下はその軽井沢の周りにいる女子というのが今の俺の印象だ。

 

「あちゃ〜、マジか〜」

「その様子だと違うっぽいな」

「まあ、似たようなもんだけどね。実際、半月経たずに半分は使っちゃった訳だし」

 

松下はちょっと照れるように自分の懐事情を明け透けに話した。

正直、話したこともない俺にそれを話すメリットは一つしかないだろう。似たようなもんだと口では言っているが、本当は散財組と同じ括りにされたく無いのだ。

 

…まあ、何も考えずに個人情報を話した可能性も捨て切れないが。

 

「なら、俺に何の用なんだ?本当に見当がつかなくて少し怖いんだが」

「そう邪険にしないでよ。同じクラスメイトなんだから話すのは普通のことでしょ?」

「俺が言ってるのはそっちのことじゃない」

 

同じクラスメイトだから話すのは普通。それには全面的に同意だ。

だが、出入り口に張り込んで待つような真似が普通だとは到底思えない。2人と食事してる時から彼女の視線を感じていた。言い逃れは出来ない。

 

「…そこまで気付いてたんだ?もしかして、それで1人で出てきたの?」

「質問してるのはこっち側だ」

「…流石に堀北さんと同じでガードも硬いね」

 

どうして、ここで堀北の名前が出てくるのか分からないがそこを掘り下げるのは相手の思う壺だろう。

まずは、彼女が俺達を監視する様な真似をしてた理由を訊くことが先決だ。

 

「もう、誤魔化せないのは分かったから怖い顔しないでよ。正直に答えるからさ」

「怖い顔なんてしてないだろ。ずっと同じ表情だ」

「それを怖い顔って言うのっ!」

 

なんて理不尽な。俺はまだ表情筋のコントロールが上手く出来ないだけなのに。

 

「気になっただけだよ、あの2人のどっちが綾小路君の本命なのか」

「本命?何の事だ?」

「流石にその惚けは苦しいんじゃない?毎日三人でお昼食べてるじゃん」

 

…松下は一体何の話をしてるんだ。そんなのどこのグループでも同じだろう。

 

「……え、マジなやつ?」

「すまないが本気で理解できてない。悪いが結論だけ言ってくれないか?」

 

俺の様子を見て、松下は悩みこむよう顎を撫でた。

まさに考える人のようなポーズでゴニョゴニョと口の中で言い始めている。

 

「…これは、本格的に私が本物か偽物か見極める必要がある案件かもね。いや、もしこれが本物だとしたら片仮名の方だと思うけど。だって、天然の女誑しなんて今日日、誰も信じないって!」

 

俺が仮に豊聡耳の聖徳太子や地獄耳のピッコロ大魔王であっても彼女の言葉は聞き取れなかっただろう。

彼女は自己完結していて、俺に聞かせる気なんて微塵もないからだ。

 

「もう帰っていいか?」

 

松下は俺のその言葉でばっと顔を上げた。

俺の認識が怪しい人から変な人にシフトしたからだろうか。

今までは気付かなかったが、松下がだいぶ可愛い容姿をしている事が気になった。自分の顔の可愛さとクールさを最大値引き出したような、そんな印象だ。

 

「綾小路君、結論だけでいいって言ったよね?」

「よく分からん計算式を聞かされるよりはって意味だけどな」

 

数学における証明手段が複数あるように、きっと彼女の計算式は彼女にしか理解できない。

なら、答えから逆算する方が簡単だと思ったんだが…

 

「じゃあ、私も明日から一緒にご飯食べていい?」

 

それもどうやら無理難題のようだ。

 

 

 

 

松下千秋 4月25日 牡牛座

 

ルックス :A

スタイル :B

性格   :B

 

趣味 お洒落すること

好きなもの 恋バナ お金

嫌いなもの 下品な人

入学動機 海外の大学に進学。大使館勤務を経て国連で働く

 

 

 





2024年は100点満点中1点でした。
2025は本気出します。
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