【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
戦闘シーンの描写、きっつ!!
魅力的な戦闘シーンを書ける作者様方を改めて尊敬します。
キャラクターたちの魅力を損なわない様に頑張りましたので、お楽しみいただけると幸いです。
「さぁ、かかって来な。この霊視ニキが相手をしてやるぜ」
「俺かよ!? まぁ、順当か」
開始早々に汚い大人の一面を披露するセツニキだが、あの三人の見た目の役割分担を考えれば順当だろう。
素直に読めば、
「では行くぞ」
そう宣言し、生成した大鎌を手に霊視ニキに斬りかかる。
折角なので、速さのみを優先し技巧には拘らずに大鎌を振るう。
この異界の湧き悪魔程度であれば、反応すら出来ない速度だが……
「速ぇな。だが狙いが甘ぇ」
ごく自然な体動で私の斬撃を避け、あえて体勢を整えていない私の側面から霊視ニキは拳を振るう。
十分に重そうな攻撃だな。この軌道なら狙いは腹か。彼も挨拶代わりなのか、この程度なら十分見切れる速さだ。
拳が当たる直前に霊視ニキに向かい微笑んでやる*1。彼は一瞬戸惑った様子だが*2、初手故に引かず攻撃の完遂を選択したようだ。
四倍近い体格差の巨漢*3から繰り出された拳は、私の腹に吸い込まれ、そのまま衣服と腹の皮膚を貫き、臓物を抉り、背骨を粉砕しつつ背中の皮膚と衣服を内側から爆散させ、血と臓物と骨の散弾を後方の地面へとまき散らす。
当然、華奢な少女であるところの私はその場に留まる事なく後方へ吹き飛ばされ、数回地面をバウンドした後、開始位置近くの瓦礫の上へと落下する。
ふむ、実に良い腹パンだな。普通に致命傷だ。彼にとっては様子見でも、この異界の悪魔なら余裕で蹂躙できるだろう。
「──はぁ?」
攻撃した当人が一番戸惑っているだろうし、後ろの二人も警戒しつつもこちらの真意を量り切れていないようだ。
「どういうつもりだ? 見えてたはずだし、対処も出来たはずだろう?」
「けほっ、ごぼっ……ああ、出来たな。躱すなりっ……防ぐ……なりも簡単だったとも。だがな……」
あからさまにノーガードで攻撃を受けた私の真意を測りかね、疑問を口にする霊視ニキに返答してやる。
おっと、喉から血が溢れて声がつまるな。これは失礼だった。
いや、だって、折角の機会なんだぞ?
「
「何を言って……ッ!?」
次の瞬間、
同時に耐えがたい激痛も彼を襲い始めた事だろう。
「【
既に五指は黒く染まり、掌の半ばまで侵食は進んでいる。
そら、このまま放置すると腕だけではなく、胴体の方まで侵食するぞ?
「そう言う事かい。 セツニキっ!!」
「応ッ」
霊視ニキの言葉に短く応じたセツニキが、どこからか取り出したトランプを数枚空中で放つと、トランプは空中で
トランプの形をしているが、あれは霊符か。いや、トランプを霊符として扱っているな。実に器用な真似をする。
霊視ニキはそれを確認することなく、自身の右腕を力が抜けた状態で横に伸ばす。
そして、そのままひとりでに振り下ろされた剣は、横に伸ばされた霊視ニキの右腕を上腕の半ばから切断し、(スーツの袖で見えていなかったが)前腕半ばまで黒く染まっていた右腕は地面に落ちた。
良い判断だな。中途半端に『黒く染まっていない境界に見える場所』で切断していたら、内部進行していた壊死はそのまま進行を続けていただろう。
そしてあれは【ソウルドレイン*6】か。ご丁寧に形状変化
練度からして、あれがセツニキの得意な術式の様だな。
「【ディアラハン*7】」
そして間髪入れず探求ネキが回復呪文を飛ばす事で、失われた霊視ニキの右腕も復元する。
当たり前だが三人とも戸惑いも迷いも無く顔色一つ変えていないな。
では、私も
「【ソウルドレイン】」
私の血液を媒介に
彼の腕一本分。質も量も申し分ない。
正面から後ろの景色が見える程度に開いた腹の穴が塞がり、内部ではまき散らされた臓物と骨も復元する。同時に衣服も生成され、無事に元通りだ。
当たり前だが、この異界に食べ物など無い。
無論、
ならどうするか? 悪魔を殺す過程で、死ぬ寸前の悪魔の
今まではこの事に不満など無かったが、『変化』が訪れた後だと欲も出るな。
前世では酒も煙草も愛飲していた。今世でも楽しませてもらうとしよう。
「さて、挨拶も済んだことだし、仕切り直しと行こうか」
「そいつはご丁寧にどう、も!!」
言葉と同時に突っ込んで来た霊視ニキの拳を、危機感に従って大幅なバックステップで避ける。
私が安全圏へと移動すると同時に、一瞬前まで私の居た地面に霊視ニキの拳は着弾し、数メートルのクレーターを形成した。おお、こわいこわい。
「殴りに来るんだな?」
「殴らなきゃお前をブチのめせネェだろう?」
「違いない」
実に迷いの無い霊視ニキの言葉に、思わず笑みを浮かべつつ、再度大鎌を生成する。
「では、こちらも改め、て!!」
言葉と同時に突っ込み、今度は
先ほどと違い、『重さ』も『技巧』もきちんと乗せているぞ。さて、どうする?
「ふんッ!!」
「ははッ!!」
初手の様に回避出来ないと判断したのか、自身に当たる直前の大鎌の側面を
今回は双方、体勢は崩していない。よって、
「──────!!」
「あははははは!!」
霊視ニキは無言で、私は笑いながら互いの攻撃を受け止め、逸らし、避けて、当てようとする。
一撃一撃がその辺の
無論、私と霊視ニキでは『
「そろそろ俺も参戦するわ」
「あははははは───おっと、もうそんなタイミングか」
霊視ニキと楽しい
「セツニキ、俺の
「ああ、そっちか。初代ペルソナ仕様って訳だな」
「おやおや、こんなか弱い少女を相手に、裏で酷い事をする話し合いをしていたのかな? 性格の悪い男は嫌われると思わないかね?」
と、心にもない事を同じ少女……少女?*9 であるところの探求ネキに振ってみる。
霊視ニキの言葉を受けて、セツニキの陰でさり気なく【コウガ*10】を放とうとしていたしな。
油断も隙も無いと言うのは素晴らしいな。いつ
「……それについては、ノーコメントでお願いします*11」
こちらが更なる茶々を入れる間が無い程度の一瞬は『撃つか撃たないか』を考えたようだが、結果は『撃たない』。
素直に三者で体勢を整える方を選択したらしいな。
こちらとしてもそれで構わない。次の一手は、私も構築済みだ。
「ではこちらも品を変えよう。【
「「「───!?」」」
【ランダマイザ*14】は使わない。どうせすぐに無効化されるのは分かっているし
この三人に
よって、これは『見せ札』だ。精々今後も警戒してもらおう。
単なる『一段階弱化』が即座に『最大限弱化』になるんだ。同格との戦闘で無視など出来まい。
「──ッ!! 【デクンダ*15】」
案の定、探求ネキは即座にデバフを打ち消し、セツニキは霊符を構え、霊視ニキは私の迎撃へと動き出す。
一見、何の効果も無くデバフが打ち消されただけだが、ほんの一瞬、普段の彼らには有り得ないであろう微かな空白を作り出す事に成功する。
「一手稼がせてもらったぞ。さぁ、どうする? 【デスバウンド*16】」
霊視ニキ相手だと、接近戦で雑にスキルを使おうものなら、その隙を突かれる事は必至だ。
わざわざ見せ札を披露して稼いだ一瞬だ。遠慮なく雑に
無論、これであの三人を殺せるなどと思ってはいないが、本格的に殺すための布石にはさせて貰うぞ。
そして異界に
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
気が付くと視界がグルグルと回転を続けていた。
回転する視界の端に、大鎌を構えたセツニキと『頭部を失った私の身体』が映っている。
あの大鎌は【ソウルドレイン】の形状変化か。良い切れ味だな。練度も素晴らしい。
なにせ、
さて、私の頭部が地面に落下するまで数舜あるな。
落ちた後の事は既に
なに、普段から経験しているが、
仕込みが発動するまでの状況整理にはちょうど良い。
先ほどの【デスバウンド】は霊視ニキが殴り飛ばした事で抉れた地面と、探求ネキの張った【テトラカーン*17】に阻まれた。
【貫通】は当然付与しているが【反射】と相殺。瓦礫でわずかながら軽減され障壁で阻まれた、と言うところだろう。
ここまでを確認した際に背部に衝撃を受け、思わず振り返ると、チリとなって崩れ落ちるトランプの破片が見えた。
明らかにセツニキの仕込みで、内容は『祝福属性のコウハ』。
セツニキが『奇跡属性のコウハ』を使えるかは分からないが、仮に使う事が出来たとしても、それを仕込めるのは霊視ニキの言葉の後からだろう。
そんなタイミングは無かった以上、仕込みはそれ以前のはずで、考えられるのは霊視ニキと楽しく『殺し合い』をしていた時か。
あのショタジジイ、「そろそろ俺も参戦するわ」と言う
探求ネキのあからさまな『不意打ちのフリ』も、それを隠すブラフか。良いチームワークだな。
そして私の攻撃を凌ぎ、私がそれを確認してから次の行動へ移る一瞬を狙い、仕込んだ
我ながら迂闊な行動だ。致命傷でも無いのに、相手から目を離して無防備に振り返ったらダメだろう?
これは同格以上の敵との対戦経験不足か? 普段から格下ばかり殺してきた弊害だな。
だからこの後の攻撃も無防備で受ける羽目になった。また背部だ。私の背中、無防備すぎだろ。
ただ、今度は衝撃ではなく
なら、これを成したのは探求ネキだろう。彼女?は『奇跡属性のコウガ』を扱えていた。いや、痛いな『奇跡属性のコウガ』。
この時の私は状況が呑み込めず混乱していたか? 動きを止めてはいなかった筈だが、最適解では無かっただろうな。
だから、音も気配も無く私に接近していたセツニキに気が付かなかった。忍者かな?
そしてその後の結果は、『首を刎ねられて、グルグル回転する頭部で周囲を見渡す私』と言う訳か。
霊視ニキは後詰め兼『私の見張り』か。適役だな。何なら彼はもう
まぁ、どちらにせよやる事に変わりはないが。
さて、そろそろ頭部が地面に落ちるな。実に心地良い『死ぬ間際の感覚』だ。
この楽しみが
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
「やりましたか、セツニキ?」
「いや、やってないフラグ立てるなよ」
異界で出会ったロリカード似の転生者は、頭部と胴体が泣き別れになって地面に倒れている。
予想以上に強かったし、霊視ニキに前衛を押し付けなけりゃ、今よりも苦戦を強いられてただろうな。
今回は相手の経験不足に助けられたが、こいつが相応の経験を積んだら、こう上手くは行かなかっただろう。
「霊視ニキ、こいつはこれで死んで───」
死体から目は話さず、探求ネキの立てたフラグが成立しない事を期待しつつ、霊視ニキに"確認"をしてもらおうとした時だ。
「二人とも、離れろ!!」
思考よりも先に身体が動く。迷う時間なぞ必要ない。
その場から離れた後に周囲を確認。探求ネキも同様に動いている。
「フラグのせいかねぇ?」
「正直、申し訳ありません」
「お前らな……」
ああ、『やってないフラグ』は成立だな。
何せ、俺たちの目線の先の死体から赤黒い光が立ち昇って、その中に異形の影が見えるんだしな。
「あれは、初代ペルソナのデザインですか」
「あいつ、ペルソナ使いだったのか?」
その異形は、赤黒い鍔広の羽帽子を被り、同色の外套に身を包んだ、前足が巨大な鎌状になった白い骨の巨大な四足獣。
「【DEATH アンクウ】 だな」
「あいつのヤベェ癖って、これ由来か?」
「言ってる場合ですか。あと、多分
正直、このタイミングでトドメを刺したいんだが、放たれる霊圧と死の密度がヤバい。
迂闊に近寄るより、離れて起こる事態に対応する方に注力すべき場面だ。
この現象が俺の想像通りの物だとしたら、ここでトドメを刺す意味はないからな。
【潜在復活】
戦闘で死亡した際に、降魔しているペルソナがその潜在能力を駆使して、術者を蘇生させる現象だ。
本来なら蘇生直後のペルソナ使いは怖くない。
能力値はそのままでも、ペルソナの練度が初期値に戻るからだ。
だが、これは……
【 ド ロ イ ド 】*18
……厄介な真似しやがるぜ。
お読みいただき、ありがとうございました。
正直、主人公の経験不足と言うより、相手三人の練度が異常なんだと思う。
隙とかネェよ、この三人(
何やっても対応してくれるのは、書く方からしたら縛りプレイ感がすごいです。
これも先達の積み重ねの成果なので、うちの子もいずれはここに並ばせたいと思います。
霊視ニキの視界って、どこまで"見えて"良いんでしょうね?
今作の現状では、「種族」「名前」「レベル」「ステータス傾向」「耐性」「状態異常の有無」はデフォルトで"見る"事が出来て、「使用されたスキル」等は
と言うか、ちょっと見ただけで全スキルまで見られたら作者が困るんですわ(ォ
それ以外の「縁」等は
ぶっちゃけ、『誰もカッコ悪く書けない戦闘シーン』ってめっちゃキツイです。
ですが、これを皆が納得していただけるように描写するのが作者の責務と頑張る所存。
戦闘シーンはまだまだ続きますので、どうぞお楽しみください。
・四条 灯(後の黒死ネキ)
何気にまだ三人に名乗っていないけど、支障も無いから無問題。
簡単には殺せず、こちらを簡単に殺せる同格相手に大興奮。
なお、彼女が楽しんでいるのは『殺したい』と『殺されたい』の部分で、『戦闘が楽しい』は無いでもないけど楽しみとしては一段落ちる模様。
今回、普段から格下ばかり殺していたせいで、同格以上との戦闘では経験不足が露呈。と言うか、相手が悪すぎる。
『本気』で殺しにかかっているが、まだ『全力』では無いので、まだまだ彼女の楽しみは続きます。
・霊視ニキ
『触っちゃいけない相手』に躊躇なく素手ゴロで戦う漢。
んな程度で彼がビビる訳なかった。接近戦の総合力なら彼の方が上。
こんな巨漢が可憐な少女()と殴り合うのは絵面が酷い。
正直、いろんな意味でめっちゃやりにくいと思ってる。
・探求ネキ
特に出しゃばらずサポートに徹しつつ、要所で必要な事を確実に遂行するスタイル。
隙? ネェよ。 器用万能系の面目躍如。
今回は前衛を霊視ニキ、遊撃をセツニキがやってくれているので、現時点ではまだ楽をしていますが……
・セツニキ
油断も隙も元から存在しない人。
そもそも経験値で上回れる訳がないので、この結果は必然。
なお、彼自身も「このヤベェのがこんな程度で終わる訳ないよなぁ」とワクワク半分、ゲンナリ半分。
汚い大人の面目躍如。