【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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第1話を大勢の方に読んでいただき、感謝の極み。
遅筆なりに皆様に楽しんでいただけるよう、頑張ってみました。
話数が進むたびに主人公のヤバさが増すのは仕様です。


第2話 自己紹介の次の話は、回想シーンと言うのが一般常識なのだろう?

 

 

 

 

自身を認識したのは、自身が思考をしていると自覚した時だった。

そして感じた事は「ああ、またか」と言う納得と、「何故何も見えないのか」と言う疑問。

納得の理由はこれが2回目の感覚だからで、疑問の方も次第に解消できた。 

今いる場所が自分の母親の胎内で、自分はまだ生まれる前の胎児であると自覚できたからだ。

 

 

「うむ。────腹の子は、きっと───様を────為の─────う」 

 

「しかし、余りにも───ではありま───。せめて生まれてから───子供の───確かめて────……」

 

「そんな──必要────。守───様のお言葉───余地──ない─」

 

 

耳に風船を押し当てて、風船越しに話しかけた単語を当てるゲームのような感覚だと思った。

おそらくはこの会話は今世での両親だろうが、何やら言い争っているようにも聞こえる。

まぁ、だからこそはっきりとは聞き取れずとも、音自体は拾えたのだろう。

魂に記憶が刻まれ、肉体に宿る事で前世を思い出すというのならば、これで人生は3回目と言う事になる。

案外、思い出せないだけで連綿と生まれ変わりを繰り返している可能性もあるのだろうが、自覚できなければ前世などと表現はしないだろう。

 

最初は14世紀のヨーロッパだった。

2回目が生まれは20世紀で、21世紀まで生きる事が出来た事と比べれば、1回目の生は悲惨極まる結末だった。

何せ、たったの4年で人口の3分の1が死んだのだから。

 

最初は死に抗った。けど無駄だった。

農民も、商人も、騎士も、貴族も、神官も、王様も、奴隷も、若者も、老人も、赤子も、男も、女も、みんなみんな真っ黒になって死んだ。

黒い死の前に、何もかもが無力で平等だった。医術は無力で、祈りは無価値だ。

毎日葬式をしても、毎日墓を掘っても終わらない。追いつかない。 

あちらで戦争。こちらで虐殺。そちらで狂想。挙句、神様曰く「死を想え(メメント・モリ)

 

死んだ奴らは墓の下で、死にそうな奴らは土の上。死にたくない奴らが踊りだしたのはいつだった?

ああ、私も踊ったな。 くるくるくるくる くるくるくるくる

 

それが聞こえたのはいつだった? ああ、確かに私は聞いたんだ。

ヴァイオリンの音と、骨が擦れる音が聞こえたんだ。   

 

それが最初の命の最後の記憶。 

ああ、とてもとても、とてもとてもとてもとても……

 

 

 

 ───() () () () () () ()─── 

 

 

 

 

 

 

 

午前0時の時計の音と共に墓場に死神が現れる

 

 

死神がヴァイオリンを弾き、不気味に踊り始める

 

 

踊る死神の骨が擦れ合う音が鳴る

 

 

死神たちは不気味にワルツを踊る

 

 

体を捩らせ、踊る死神の骨が擦れ合う音が鳴る

 

 

死神たちは跳ね回り激しく踊る

 

 

夜明けを告げる雄鶏の声が響きわたると

 

 

死神たちは墓へ逃げ帰り、辺りが再び静寂に包まれる

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、お初にお目にかかる。私はフィレモン。意識と無意識の狭間に住まう者。さて、君は自分が誰であるのか、名乗る事が出来るかな?」 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」 

 

 

・・・・・・あれ? 私は今しみじみと前々世を回想していなかったか?

何か中二病の黒歴史ノートの公開のような、自分の頭の中だからこそ許されるようなヤツ。分かる?分かるか。分かるな。死ね。

何でいきなり全身タイツでパピヨンマスクを着けた変質者に話しかけられてるの?

え? フィレモン? 前世でやったゲームの登場人物?

 

ペルソナシリーズと呼ばれる作品群の1作目と2作目の重要人物であり、多くのプレイヤーが作中でぶん殴ったであろう、ラスボスの共犯者的な存在。

その役割は、ゲーム的に言えば主人公たちが戦う力(ペルソナ)を得るための切っ掛けを与え、要所で導くストーリーテラー的な存在だ。

ゲームでは「ペルソナ様」と呼ばれるオカルト儀式を行った者を『意識と無意識の狭間』に招き、そこで来訪者に「自分の名前を名乗ることが出来るか」と問いかけ、それに応じた者に『ペルソナを召喚する力』を授けている。

今まさにそれをされてるな、私。

 

質が悪いのは、こいつの対になる存在が「最凶最悪の愉快犯」と称される程の『ネガティブマインドの象徴』であるのに対し、こいつは『ポジティブマインドの象徴』である事。

『善性』ではなく、『ポジティブマインド』。つまりは『善も悪も全ての試みを肯定し応援する』存在であると言う点か。

要するに、善悪関係なく意志の強い奴なら誰であろうとホイホイとペルソナ使いになる切っ掛けをバラまいている訳だ。

 

それはそうと、私は前世でも前々世でも、あんな吹雪の山荘に閉じ込められた時の怪談話みたいな儀式はやっていないのだが?

・・・・・・そう言えば、ペルソナ世界では儀式の類は人々がそうだと信じるからこそ、その通りの効果を持つものであると言う設定がどこかにあったか?

 

・・・・・・うん。ものすごく心当たりがあったな。

あれか? あれなのか? 私の前々世の末期のダンスの効果が今更発揮されたのか?

明らかにネガティブ寄りの動機で始まったダンスパーティだったはずなんだが、良いのかポジティブマインドよ?

ここで名前を聞かれている以上、良いんだろうな。

カミーユ・サン=サーンス*1には感謝すべきだろうか? 『死の舞踏』は名曲だ。

 

・・・・・・さて、そろそろ現実逃避な考察も切り上げなければならないだろう。

目の前の変質者が「名乗らないのか?」という雰囲気を醸し出し始めた。

今世がペルソナシリーズなら、それもこの変質者がペルソナ2の装いである以上、下手をすれば世界滅亡まっしぐらだ。

「それならそれで」と、一瞬思ったが、それならそれで"力"は必要不可欠だ。

とは言え、だ。

 

 

「貴様が聞いているのが今生での名であるならば、私はまだ誕生していない以上名乗れないな。前世や前々世はあくまで別の名での人生だ」

 

「結構。 ここに来て、自分が誰であるか語れる者は多くない。どうやら君は合格の様だ」

 

 

判定ガバガバだな? 良いのか? 良いんだろうな。ポジティブすぎるだろ。

こちらにとっては都合が良いが、それはこいつらにとっても都合が良い事なのが若干癪に障るか?

 

 

「ところで君は、自分の中に複数の自分の存在を自覚した事は無いかね?」

 

 

無いと言えば噓になるな。

死にたくないと抗っていたのに、死にそうになると、あんなにも()()()()()のだから。

死なせたくないと頑張っていたのに、()()()()()と矛盾を感じる事無く思えたのだから。

 

 

「神の様に慈愛に満ちた自分、悪魔の様に残酷な自分」

 

 

ああ、生きて生かして、死にたくて死なせたくて……

 

 

「人は様々な仮面をつけて生きるもの」

 

 

それが本当に楽しくて……

 

 

「今の君の姿も、無数の仮面の中の一つでしかないかもしれない」

 

 

いやまぁ、仮面をつける以前に生れ落ちていないのだが。

 

 

「しかし、君は自分が誰であるか確固たる意志で語って見せた」

 

 

私は私だ。ただそれだけだ。

ああ、当たり前だ。

 

 

「その強い意志に対して敬意と力を送ろう。ペルソナ。心に潜む神や悪魔の姿をしたもう一人の君を呼び出す力だ。この先、必ず役に立つ時が来るだろう」

 

 

ああ、楽しみだよ。本当にな。

 

 

「さあ戻り給え。君が在るべき、時間と空の下へ」

 

 

いや、だからまだ生まれていないのだが?

 

 

 

 

 

「──────〇〇〇 と・・・・・・モ……リ…… 私の、死……」

 

 

それが、私が今生で聞いた最初で最後の母の声。

 

赤子なのに最初から目が見えていた。耳が聞こえていた。何なら口もきけた。

だからすぐに周りの状況が理解できた。

 

空には自然では考えられないほどに巨大な満月が青白く輝き、周囲は建築物としての原形を辛うじて留めたに過ぎない燃え盛る瓦礫の山が立ち並ぶ。

不自然なほどに先が見えない歪んだ空間と、今にも何かが生まれ落ちそうな大小様々な黒い歪み。

そして、私たちがいるのは、そんな異常な空間(異界)の中心点。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

この場にいる人のカタチをしたモノはたったの5つ。

一つは私。()()()()()()()()の赤ん坊。

一つは女。私の目の前に()()()()()()()()()()()()修道服の女性。

一つは男。女の後ろに立って、()()()()()()()()()装飾過多なカソックの中年。

一つは男。中年の隣に立つ、鎖帷子を身に着けた()()()()()人外。

一つは男。私の後ろに()()()()()()()()()()牙の生えた青白い顔の男性。

 

私と、人間の母と、人間の司祭と、天使(アークエンジェル)と、吸血鬼(ヴァンパイア)だ。

 

ここが普通でない場所で、普通でないバケモノがいて、普通ではない死に方をしそうなのが私の今世の母で……

 

 

死を想え(メメント・モリ)か。 ああ、これも絆なのだな」

 

 

私はバケモノ(悪魔)に腹を裂かれた母から零れ落ちた赤子で───

 

 

「さて、それでは・・・・・・」

 

 

───故に、生産でもないし、死産でもないモノで───

 

 

「殺したり殺されたり、死んだり死なせたりしようじゃあないか」

 

 

───故に、生も死も絆となり私は()()()()()

 

 

「 ペ ル ソ ナ 」

 

 

その言葉に私の全身から赤黒い光が放たれ、中心からその異形の影は姿を現した。

赤黒い鍔広の羽帽子を被り、同色の外套に身を包んだ、前足が巨大な鎌状になった白い骨の巨大な四足獣。

 

 

「 D E A T H    ア ン ク ウ 」

 

 

私の心から引き出された悪魔のカタチが、()()()()()()に約束された死を現実に具現化させる。

 

 

『デスティカ*2

 

 

力ある言葉と同時にアンクウがその大鎌を振るい、その魔法は正しく構築され、狙い通りの対象へと収束する。

 

 

 

─── ド サ っ ───

 

 

 

 

この場で唯一ただの人間で、この場で唯一自分の血を流していて、この場で唯一死にそうになっていた───

 

 

 

 

 

───私の今世での母親は()()()()()()()()その人生を途絶えさせた。

 

 

 

 

 

*1
交響詩『死の舞踏』(1874年)を作曲したフランスの作曲家

*2
降魔属性魔法。対象1体を即死させる。







お読みいただきありがとうございました。
どうも書いては書き直しを繰り返す癖があり、書きたい事があるのに全然筆が進まないですね。
長文SSをスラスラ書ける作者様方は素晴らしいと思います。



・主人公(この時点では名無し)
前話でマカーブルのデビルシフターを名乗っておいて、今話でペルソナを使いだす非常識さを発揮する。
今際の際にダンス踊っただけで、ホイホイ声かけてくる変質者が悪い。
P1のアンクウのデザインは素晴らしかったのに、何でP2ではああなった?
ペスト真っ盛りの14世紀で踊って死んだ経歴持ち。
今世のママンをいきなり殺しましたが、別にとち狂ってはいません。主人公なりに明確な理由があります。


・今世のママ
めちゃ普通の人間。普通のキリスト教徒で普通に修道女をやってた。
悪魔式帝王切開とヤベェ主人公の犠牲者。


・他の3人。
何書いてもネタバレになるから、次まで待って。


・全身タイツのパピヨンマスク
パピヨンニキの親戚ですか?
せめてもうちょっと直接的に仕事しろ。


・???
次回にちょっとだけ顔出し予定。

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