【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。



まずは事の経緯を説明しよう。


Lilyala様作 『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』の 
終生の親友(ライバル) 参 2024年12月31日(火) において、うちの黒死ネキが初の他作品とのコラボで名前を使っていただけました。
コレが初です。投稿日時的に考えて。

が、作者はこれをスルーしてしまい、後日に投稿された他の方の作品で黒死ネキが登場した際に、「初コラボやったー」とか感想欄に書き込んでしまったのです。

いや、無礼過ぎんだろ。

自分の活動報告やら、Lilyala様作 『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』の感想欄で謝罪はしましたし、Lilyala様は笑って許してくださいましたが、この落とし前は自分の作品でつけるのが筋だと、「ちょうど、黒死ネキVSガイア連合の3人のシーンだし、セツニキの活躍シーンを割り増しにしよう」と思った訳です。
と言うか、わざわざ意識しなくてもセツニキが活躍しないとかあり得ませんし。

で、2025年02月18日(火) 12:00に前話を投稿したところ、Lilyala様も2025年02月18日(火) 15:00に最新話を投稿されました。
私も感想を書き込んだところ、「君の最新話を見て、出張先でイケメンのセツニキも裏では落差が酷いんだ、って話を書きたくて急遽作ったよ」とのお返事が。

私の投稿時間:2025年02月18日(火) 12:00
Lilyala様の投稿時間:2025年02月18日(火) 15:00

はえーよホセ!!

これ執筆時間は実質2時間弱くらい?
恐ろしい速度でネタを文章にしていらっしゃる。

ご本人様が言うには「書いたのは実質2000文字くらい」との事ですが、それでもはえーよw

と、こんな経緯がありましたので、今回は元々予定していたとは言え、セツニキのイケメンっぷりが更に増します。
黒死ネキVSガイア連合の3人の最期の激突をお楽しみください。
 





第20話 切り札は多くを持ちつつ先に見せて、最後に使った側が勝つものだろう?

 

 

 

「あはははははは、病気にならない為の予防接種かぁ!! 大事だよな!! それだけ太くて長いモノを身体に挿し込んで、白い液体をぶちまけるだけの価値はあるだろうな!! ところで、そのワクチンの有効期間と効能限界はどのくらいだ? 『人形』たちを何体殴り飛ばした? 何回【穢れ】をその身に浴びた? 接種してからどのくらいの時間が過ぎた? お前は()()()()()()()死なずにいられるんだ?」

 

「それを知ってどうするんだ、クソガキ!! 能書き垂れてねぇでかかって来いよ!! 注射が怖くて逃げたい訳じゃねぇんだろ? 例え1秒先に効果が切れようが、はしゃぐクソガキはおとなしくさせてやるからよ!!」

 

 

 あいつらの切り札はワクチンだったか~。明らかに黒死病()に対する対抗手段だな。この異界に来る前からの下準備という訳か。

 何故分かったのかなど愚問なのだろうな。知る手段など如何様にも考えられるし、重要なのは、私を殺すのにそこまでして貰えていると言う事実と、私がそれにどう応えるかだ。

 

 注射をされないように逃げ回って、『人形』たちで包囲させて延々と霊視ニキが接種したワクチンの効果切れを待つか?

 否。 これは殺し合いだぞ? 折角私を殺そうとしてくれている、私を殺せる者を、私自身が遠ざける? それも、私が殺されない為の消極策でか? ありえねぇだろ。なんだそれ? 何より、私自身があんまり楽しくないだろう、それ。

 

 逆に、『人形』には手出しをさせず、私だけで霊視ニキと心行くまで一対一(タイマン)で殺し合うか?

 否。 それはそれで心躍るが、折角の舞踏会が台無しだ。私は、みんな楽しく踊ってもらおうと、この場を設けたんだ。

 

 ならば、『人形』に相手をさせつつ、適度に私も参戦するか? 既に何度もワクチンを接種した霊視ニキの攻撃を受けていて、私自身がワクチンの存在を認識したんだ。『変異』の条件は満たしているし、何なら短時間で『変異』()()()事も可能だろう。

 否。 もちろん『変異』はさせるが、それを主目的にしてしまっては、折角の殺し合いが楽しめなくなるじゃないか。

 

 

 

 つまり、結論は───

 

 

 

「さあ、行くぞ。歌い踊れ、霊視ニキ。()()()と一緒に、楽しもうじゃあないか」

 

「語るには及ばねぇ!!」

 

 

 

───全部纏めて、一切合切をこいつらに叩きこむ。

そんな、シンプル極まる結論だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進む。進め。進むだけだ。ただ前へ。前へ。前へ。

 進むのに邪魔な黒いモノは右に殴り飛ばせ。前に行くのに邪魔な黒いモノは左に殴り飛ばせ。

 後ろから足を引っ張ろうとする奴が縋りついてくるよりも早く、前に進め。

 あっちに置いてきた仲間は心配するな。絶対に何とか出来るし、自分も何とかするんだからな。

 

 

 

 手段? そんなものは───

 

 

 

「おおおお!! 【物理プレロマ*1】【物理ギガプレロマ*2】【ティタノマキア*3】!!」

 

 

 

───全部纏めてぶっ飛ばすだけだ。

 

 

 

 目の前の数十体の『人形』はまとめて粉砕され、黒いMAGになって異界へ溶けていく。

 ワクチンの効果はまだ残ってる。だから『人形』(こいつら)の【穢れ】は恐くない。

 

 セツニキは俺たちを信じて賭けに出た。探求ネキは、呆れつつも付き合っている。

 二人とも「任せろ」と言った。仲間がそう言ったなら任せるし、俺も「任せろ」と言った。

 なら、俺は俺の役割を全うするまでだ!!

 

 

「この程度の『人形』では束になっても敵わないか。じゃあ、もっと()()()()()()。お前に相応しいくらい、強くて長く踊れる演者を用意しようじゃあないか」

 

 

 そう言ってクソガキが造り出した『人形』は、黒く染まった鎧を纏った騎士と天使だ。鎧だけじゃなく、本人も真っ黒だがな。

 騎士は同じく真っ黒に染まった馬に乗った重厚な存在で、天使は長槍と大楯を持って、元が何色だったかも分かりやしねぇ真っ黒な翼だな。

 

 

「片方が天使(木偶)で済まないな。()()()()でも元のレベルはお前たちよりも高いぞ? もちろん2体だけじゃなく、まだまだ用意しよう」

 

 

 恐らくは【堕天使 エリゴール】と【天使 パワー】ってところか。確かに今の俺たちよりはレベルの高い悪魔だな。

 ()()()()()()()()()()? 俺のやる事は変わらねぇ。

 

 

「真っすぐ行って、ぶちのめす!!」

 

「そう来なくてはなぁ!!」

 

 

 エリゴールが【ベノンザッパー*4】、パワーが【牙折り*5】を放ってくるが、エリゴールの槍を殴ってへし折り、パワーの槍は掴んで地面に引きずり倒す。

 続いてエリゴールを殴って、パワーを蹴り飛ばすが、どちらも一撃じゃ倒し切れねぇ……いや、効きはしているが()()()()()()()()()

 クソガキの言う通り、『人形』の質が上がったからか? それとも……いや、気にするべきはそこじゃねぇ!!

 

 

「ほら、ぼさっとしていると()ってしまうぞ?」

 

「舐めてんじゃ───ッ!?」

 

 

 足元で倒れていたエリゴールとパワーが()()()()()()()()()纏わりついて!? 迎撃も回避も間に合わねぇ!?

 

 

王手(チェック)かな?」

 

 

 クソガキの楽しそうな笑い声と同時に、あいつの大鎌が俺の左脇腹に向かって吸い込まれていく。

 そんな光景が妙にゆっくりと見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう来るか。詰みには至らずだな」

 

 

 ちょっと奮発してエルゴールとパワーの『人形』を用意したが、少しは役に立った。

 本来の性能よりもステータス面で盛ってみたが、霊視ニキに僅かでも隙を作ったのは上出来だ。

 本当なら、彼の身体を上下に真っ二つにするつもりだったんだがなぁ?

 あのタイミングで左肘を振り下ろし、左膝を跳ね上げて、私の大鎌を止めるとはなぁ? 後、その腹筋も硬過ぎ。文字通り鋼鉄より硬いな。胴体の四分の一くらいまでしか食い込んでいないぞ?

 

 

「……捕らえたぜ!!」

 

 

 あ、これヤバいな。大鎌は放棄だ。どうせ幾らでも生成出来るし。

 その判断が遅れたとは思わないが、それでも次の一瞬は霊視ニキが上回った。

 

 

「【物理プレロマ】【物理ギガプレロマ】【会心の覇気*6】【獣眼*7】【冥界波*8】!!」

 

「ごッ!? おおッ!!」

 

 

 彼に纏わりつかせていたエリゴールとパワーも巻き込み、【冥界波】の衝撃波は私の全身を打ち据え、その場から吹き飛ばしていく。

 ただでさえ攻性に特化させていて、構造が薄くなっている身体で耐えきれるはずも無く、彼の一撃は周囲に展開させていた『人形』もろとも30m程の距離を芝でも刈るかのように空き地に変えた。

 おお、痛い痛い。言葉も出せないな。危うく死んでしまうところだったし、ここが異界でなければ爆弾でも落ちたかのような有様になっていただろう。。

 巻き込まれた『人形のMAG』を『私の身体』として再構成させて立ち上がるが、同時に疑問も感じた。

 さっきのタイミングでは、私にワクチンを打とうとしなかったな?

 打とうとしても上手くいかないと判断したか? 仮に取り押さえる方を優先しようとしても、あの場には他の『人形』も大量にいたし、不可能だと判断……

 

 

「ああ、そういう事か。これはしてやられたかな?」

 

「どうだかな。だが、これで()()()()()()()。そして、()()()()()()()()()()()()と思ってもらおうか」

 

 

 霊視ニキから私の間の空間は、敷き詰められていた『人形』が纏めて壊された事によって芝でも刈られたかのように()()()()()()()()()()、彼の言う()()()()()()()()()()()

 

 

「あはははは。光栄だな。まさかそちらからダンスの申し込みをして貰えるとはな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、最後の激突の舞台は整った。

 参加者は4人。そして際限なく呼び出された『人形(踊り手)』たち。

 

 一人はセツニキ(【導く者】)

 ダンスホールから()()()()()()()から主役たちの趨勢を見極めるべく、その身を襲う倦怠感に耐え、己の賭けた目が当たるか否か、その結果が出るのを待っている。

 

 一人は探求ネキ(【創り出す者】)

 ほんの僅かな時の間に、自分たちを呑み込まんとする【穢れ】を打ち破る『切り札(ワクチン)』を創り出し、今も勝利への道を創り出すべく、『清水の噴水(浄化結界)』の維持に努めている。

 

 一人は霊視ニキ(【見抜く者】)

 この舞台を整え、死神をダンスのパートナーに逆指名してみせ、己が手にある『切り札(ワクチン)』を【穢れ】の根源へと打ち込む為に、全霊を尽くすべく力を溜めている。

 

 一人は【黒き死神】と称された少女。

 未だ名乗らぬ【四条 灯】は、驚愕と興味と歓喜と興奮の入り混じった表情で、己をダンスのパートナーに指名した者を見据え、これから始まる最後の舞台に心を躍らせる。

 

 そして、舞台を形成する形となった『人形(踊り手)』たち。

 【見抜く者】と【黒き死神】を囲い観客となり、『清水の噴水(浄化結界)』を穢さんと異界の大地を埋め尽くし、その踊りは続いている。

 

 

「もちろん、その指名は受けさせて貰うとも。お前がその太くて長いモノの中身を私の中にぶちまけるのが先か、私がお前を黒く染め上げるのが先か……ああ、私の【天驚地爆断(オキニのロマン砲)*9】で何もかも真っ平になる結末もあり得るな」

 

「最後まで口の減らねぇクソガキだな。俺は自分の切った啖呵を曲げるつもりはねぇよ。テメェを殴り飛ばして、大人の威厳ってもんを見せてやるぜ」

 

 

 そう軽く煽り合い、両者は対峙する。その距離は約30m。一見するととても離れているように見えるが、戦う力の無い只の人間であろうと、5秒もあればに走破出来る距離に過ぎず、対峙する両者にとって、走破にかかる時間は一瞬と言う表現ですら長すぎる程だ。

 故に、これから行われるやり取りはほんの数瞬の出来事に過ぎず、霊能力に覚醒していない只の人間から見ると、何が起きたのかすら認識できないだろう。

 

 

「───ッ!!」

 

 

 先手は霊視ニキ(【見抜く者】)

 溜めを終えた巨漢は、僅かに吐き出された息を合図に四条 灯(【黒き死神】)へと向かい走り出す。

 その初速はネコ科の肉食獣を遥かに上回り、残像すら残さない。

 四条 灯(【黒き死神】)が何もせずに待ち構えるのであれば、到達までの時間は文字通りの一瞬未満となるだろう。

 

 そして、無論─── 

 

 

「【串刺城塞(カズィクル・ベイ)】」*10

 

 

───四条 灯(【黒き死神】)は悠長に待ったりしない。四条 灯(【黒き死神】)霊視ニキ(【見抜く者】)を殺すべく、更なる【穢れ】を放つ。

 

 

「おおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 杭が生える 杭が生える 杭が生える 杭が生える

杭が生える   杭が生える    杭が生える

 杭が生える 杭が生える  杭が生える 杭が生える

  杭が生える  杭が生える   杭が生える 杭が生える

杭が生える  杭が生える  杭が生える 杭が生える

生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える

生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える生える

 

 無数の、多くの、沢山の、黒く鋭く禍々しく、貫き殺す為の凶器が生えてくる。

 

 僅か30mの舞台は瞬時に天へ向けた槍衾と化し、舞台に立つ者全てを貫く【串刺し刑】となって異界の大地の一部を埋め尽くす。

 

 異界に湧く悪魔(雑魚)など、たちどころに貫かれ、藻掻く暇すら与えられずに殺しつくすであろう、林立する杭の群れ。

 

 そんな地獄であろうと───

 

 

「邪ァああああ、魔ァあああああ。だァああああああああ!!!!!!」

 

 

───霊視ニキ(【見抜く者】)は止まらない。

 

 掌が貫かれた。拳を握りしめると、貫いた杭は砕け散った。

 足が貫かれた。地面を踏み締め、繰り出す歩みは、生えた杭ごと粉砕した。

 強靭な肉体は、杭は刺されど止まる事は無い。

 

 霊視ニキ(【見抜く者】)は止まらない。すぐ先に立つ、四条 灯(【黒き死神】)のもとへ。愚直に、だた一直線に進み続ける。

 

 霊視ニキ(【見抜く者】)は止まらない。だが、それでも【穢れ】は蓄積し、『切り札(ワクチン)』の守りは削られる。

 

 二人の距離はもう半分となった。まだ半分も残っている。

 霊視ニキ(【見抜く者】)は止まらず、四条 灯(【黒き死神】)は笑う。

 

 

「流石だよ、霊視ニキ。本当に素晴らしい。止まるだろ、普通。普通じゃなくてありがとう。私を殺しに来てくれてありがとう。私もようやくお前を殺せるのが本当に嬉しい」

 

「舐めるなよ、クソガキ!! 今すぐそこまで行ってぶん殴ってやるから、大人しく待ってろ!!」

 

「ああ、待っているぞ。私を殺してくれよ? 私も殺してやるからな!!」 

 

 

 そう言って、楽しそうに笑う四条 灯(【黒き死神】)は更なる【穢れ】を披露する。

 霊視ニキ(【見抜く者】)を守る『切り札(ワクチン)』の守りは既に限界で、杭に貫かれた皮膚にはわずかだが黒ずみも見られている。

 追撃を耐えるのか、それとも死ぬのか。あるいは別の展開があるのか? 様々な期待を抱き、四条 灯(【黒き死神】)は殺意を開放する。

 

 

「【ナイトメアサーキュラー】」*11

 

 

 『力ある言葉』と共に、四条 灯(【黒き死神】)の眼前に赤い魔法陣が展開される。

 【穢れ】は収束し扉となり、魔法陣を出口として()()は召喚される。

 

 ()()は例えるならば、液状の巨大な赤い髑髏と言うべきモノだった。

 巨漢である霊視ニキ(【見抜く者】)よりも、なお数倍の高さの髑髏がその巨大な咢を開くと、赤く染まった口腔には更に無数の小さな髑髏が蠢いている。

 個体でもあり液体でもある()()は呪毒を中心とした【穢れ】の塊であり、おおよそ考え得る限りの『状態異常』をもたらす赤い災厄であった。

 

 

「そして、待ってはいるが、殺さないとは言っていない。『切り札(ワクチン)』の守りの切れかけたその身体でどう切り抜ける?」

 

「………………」

 

 

 四条 灯(【黒き死神】)の言葉に霊視ニキ(【見抜く者】)は黙して応えず、ただ前への歩みを止めずに進むのみ。

 

 

 ───だが、その際にほんの僅かな間ではあるが、視線をとある方向へと向けた。

 

 

 

 霊視ニキ(【見抜く者】)の役目は、セツニキ(【導く者】)曰く『タイミングを違えない事』だ。

 彼の万物を"見"通す目によって、本来ならば勘や経験則、その他、曖昧な感覚に頼らねばならない()()()()()()()()()()()()()()を、()()()()()()()()()()彼にとって、『タイミングを違えない事』は当たり前の事であり、まして仲間から「任せる」と伝えられた以上、それに応えるのは当然の事だった。

 だから、自身に投与されたワクチンの効果限界が近い事も、セツニキ(【導く者】)の示した『最後の一つ』の効果限界も、全てを"見"ていた彼が、最適なタイミングを見出す事は当然の事であり、それは四条 灯(【黒き死神】)に『切り札(ワクチン)』の存在を示す事だけに留まらない。

 

 

 

「『今だ』」

 

 

四条 灯(【黒き死神】)が召喚された赤い災厄を放とうとした、まさにその瞬間に───

 

 

 

「うねり吞み込め!!」

 

 

 

───霊視ニキ(【見抜く者】)の言葉を受けて放たれたのは、探求ネキ(【創り出す者】)によって創り出された、横倒しの巨大な柱かと見紛うばかりの()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 

 

 

 

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 探求ネキ(【創り出す者】)セツニキ(【導く者】)の策を受け、()()()()()()()勝機を創り出すべく『清水の噴水(浄化結界)』に働きかけ続けていた。

 

 彼女自身が例えた通り、【浄化】や【禊】といった『穢れを払う事』は、『綺麗な水で汚れを洗い流す事』と言い換えても、大きくは違わない。

 だが、四条 灯(【黒き死神】)の放つ、『固まりかけた大量のコールタール』と探求ネキ(【創り出す者】)の例えた高純度の大量の【穢れ】は、如何に清くとも噴水の水程度の量では洗い流し切れない。

 

 だったら『()()()()()()()()()()()()()()()()()()』。

 それが最高に効果的な(頭ガイアな)解決法だ。

 そして、そんな解決法を実行できるだけの技量を探求ネキ(【創り出す者】)は持ち合わせており、放つタイミングも霊視ニキ(【見抜く者】)は"見"誤らない。

 

 かくして、探求ネキ(【創り出す者】)セツニキ(【導く者】)無茶振り()に呆れつつも、『清水の噴水(浄化結界)』に対し、『浄化の波を清水に例え変換する』『結界の機能を噴水に例え、湧きだすのは清水だと設定する』『結界の障壁をダムに例え、結界内に清水を満たしていく』『外部からは、内部で普通に結界を維持しているように見えるように装う』と言う、常時神経と集中力をヤスリで削り続けるがごとき精密作業を続けてきたのであった。

 

 

 

 そんな彼女の苦労も、霊視ニキ(【見抜く者】)による号令によって終わりを告げられ報われる。

 

 

 

「うねり吞み込め!!」

 

 

 

 文字通り『()()()()()()()』を、知識・魔法・淡水を司るエンキ/エアを霊的根源に持つ探求ネキ(【創り出す者】)は十全に掌握し、ほんの少しの解放感と共に霊視ニキ(【見抜く者】)の示した完璧なタイミングで『祓うべき【穢れ】』へと解き放った。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』と、『清らかな水の奔流(浄化の概念)』は真正面から激突し、さながら山肌を削る鉄砲水がごとき様相を呈していた。

 全てを穢さんとする『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』は、その巨大な咢で『清らかな水の奔流(浄化の概念)』ごと飲み込に穢そうとし、『清らかな水の奔流(浄化の概念)』は、『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』を打ち砕き、清め、洗い流さんと穿ち続けている。

 

 両者の激突は実際には精々数秒の間の出来事に過ぎないが、この場の強者たち(レベル:アラフォー)からすれば、感覚的には数分にも匹敵し、意識を割かずにはいられない光景だった。

 

 そんな光景も数秒の後には終わりを告げ、その場に残ったの物は何も無い。

 

 『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』は『清らかな水の奔流(浄化の概念)』以外を穢す事は叶わず、『清らかな水の奔流(浄化の概念)』は『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』以外を祓い浄める事は叶わなかった。

 

 その場には、『赤く巨大な髑髏(穢れの概念)』も『清らかな水の奔流(浄化の概念)』も無かった事になり、かくして舞台は演者の視点へ舞い戻る。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「何回目だ? 油断していたつもりも、目を離したつもりも無かったんだがなぁ? 経験の差で片づけるのも限度と言うものがあるだろう」

 

「何回でもやってくるだろうぜ。俺たちも、いつもしてやられてるからなぁ」

 

 

 この死合いが始まってから、幾度となく裏をかかれて来た。

 経験の差もあるのだろう。同格以上との戦闘経験は向こうの方が遥かに上だ。故に、油断も目を離したつもりも無かったが、それでもなお、こちらの詰めを外してくる。

 

 四条 灯(【黒き死神】)にとってのセツニキ(【導く者】)とは、この場において『最も意外性があり、最も警戒しなければならない相手』だ。

 現に、先ほどまで探求ネキ(【創り出す者】)と共に『清水の噴水(浄化結界)』を維持していたように見えたにも関わらず、実は防御ではなく攻撃の為だった。

 流石に疲労したのか、今は探求ネキ(【創り出す者】)の傍で膝をついているが、決して油断などできない。

 行動の自由を与えると、あの男は必ずこちらを追い詰める一手を急所へと打ち込んでくる。そう確信するだけの()()セツニキ(【導く者】)にはある。

 

 だからこれ以上手出しをされない為に、再度『清水の噴水(浄化結界)』を構築させない為にも、『人形』の群れを引き続き差し向ける。

 パニックホラーで言うところの安全地帯(シェルター)は壊れたのだ。ここから先はあの二人にもサバイバルに参加してもらい、一緒に踊ってもらう。

 

 四条 灯(【黒き死神】)はそう思っているが、現時点で最も意識を割くべきは、目の前の霊視ニキ(【見抜く者】)だ。

 先ほどの激突で、両者の間にあった距離は最早存在しなくなっていた。

 距離にして2m。それは絶死。攻撃が通れば相手を殺せて当然の間合い。

 

 

「さて、実は今のやり取りで"溜め"が完了してな? 撃ちたいから撃って良いかな?」

 

「撃てるもんなら撃ってみな。撃てると思うならな」

 

「「………………………」」

 

 

 

 沈黙。 そして───

 

 

 

「あはははははははははははははははははははは!!!!」

 

「有言実行と行こうじゃねぇか、クソガキぃいい!!!!」

 

 

 

───激突!!

 

 

 

 四条 灯(【黒き死神】)の大鎌が霊視ニキ(【見抜く者】)を斬り裂かんと迫り、霊視ニキ(【見抜く者】)の拳が四条 灯(【黒き死神】)に打ち砕かんと迫る。

 大鎌は拳に弾かれ、拳は相手の頬の隣を通り過ぎた。

 再度振るわれた大鎌は、今度は肘に逸らされた。再度振るわれた拳は、逆の手から現れた()()()()()大鎌で防がれる。

 

 

「同時に出せるわけか。まぁ、そうだろう、な!!」

 

 

 言葉と同時に、ここが異界でなければ振るう度に大地が抉れて地形が変わるであろう拳が繰り出され───

 

 

「この程度のネタでは驚いて貰えないか~。なら次だ、な!!」

 

 

 

感染拡大・自己増殖(インフェクション・マイン)*12

 

 

 

 ───宣言と同時に、霊視ニキ(【見抜く者】)の背後から、()()()()()四条 灯(【黒き死神】)が斬りかかる。

 

 

 

 ───再度の激突───

 

 

 

「今のは驚いて貰えたかな? 一応、切り札として使っている自慢の手品なんだがね?」

 

「ああ、驚いてたかもな。知り合いに似たような事をやるような連中が沢山いなけりゃな!!」

 

「アイデアとしてはありきたり過ぎたかな? 結構便利なんだけどな、コレ」

 

「見分けがついてるんだから、大して恐くはねぇよ!!」

 

「いや、それが出来るのはお前くらいだぞ? 多分、きっと」

 

 

 二人に増えた四条 灯(【黒き死神】)に動揺する事無く立ち回る霊視ニキ(【見抜く者】)

 彼の"目"には、四条 灯(【黒き死神】)()()を構成するMAGが数字で映っており、真贋を違える事はあり得なかった。

 また、コピーは情報(記憶)こそ本物と同じだが、ペルソナとデビルシフトで構成された本物と違い、あくまでその肉体はMAGで構成された贋作に過ぎない。

 

 だからこそ───

 

 

 

「肉を切らせて骨を断つ、か。実際にやるとはな」

 

本物(お前)と違って、死ぬには軽いからな!!」

 

 

 

───単純に凶器を振るう力と速さが同じでも、相手を死へと至らしめる『重さ』が足りなかった。

 

 

 

「だが、感じるぞ。今のでお前の接種した『切り札(ワクチン)』の効果は打ち止めだろう?」

 

「そうだな。で、最初の時と何が違うんだ?」

 

「ああ、確かに違わないな。私もお前も相手を殺せる。それだけで良い」

 

 

 その言葉を最後に、両者の刃と拳の交錯は長く続いた。

 余計な言葉もスキルも無く、伸ばし、弾き、撃ち出し、避け、狙い、外し、同じ中空で何度も激突する。

 

 数十、数百と交錯した、その結末は───

 

 

 

 「ぐッ……くおおお!!」

 

 「ぬうぅううううう!!」

 

 

 

 四条 灯(【黒き死神】)は、大鎌の先端を霊視ニキ(【見抜く者】)の腹部中央へ深々と刺し入れ、霊視ニキ(【見抜く者】)は左手で大鎌の柄を握りそれ以上の刃の前進を止めている。

 霊視ニキ(【見抜く者】)の右手は、四条 灯(【黒き死神】)の細い首を掴み、()()()()()()()()意識を落とすべくその大きな掌で絞めつけている。

 

 

 

 ───そんな、両者相打ちに近い形で止まっていた。

 

 

 

「れ……い、し………に、き……」

 

「ぬぐぐぐ……な、んだ、クソ……ガキ……」

 

 

 そして、首を絞めつけられ、文字通り、息も絶え絶えな四条 灯(【黒き死神】)は、腹に大鎌を挿し込まれ、血の気を失いつつある霊視ニキ(【見抜く者】)へ語り掛ける。

 四条 灯(【黒き死神】)は大きく口を開き、舌の上にある ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()霊視ニキ(【見抜く者】)へ向け、こう言った。

 

 

ほへ、はーんは(これ、なーんだ)?」

 

「───!? てめぇ!!」

 

 

 次の瞬間、四条 灯(【黒き死神】)の舌の上の『緊縛の秘石*13』はその効果を発揮する。

 秘石から放たれた光が帯状に変化し、文字通り目の前に居る霊視ニキ(【見抜く者】)を捕らえ、拘束していく。

 

 そして、霊視ニキ(【見抜く者】)強制的に四条 灯(【黒き死神】)から引きはがされ、異界の大地に膝をついた。

 

 

「げほッ! ごッ! かぁああ! ペッ! ふぅ。ああ、苦しかったな。これ、首に痣とか出来てないか?」

 

 

 落ちる寸前の状態から呼吸の自由を取り戻し、人心地が付いた様子の四条 灯(【黒き死神】)は、拘束され身動きの取れない霊視ニキ(【見抜く者】)に語り掛ける。

 

 

「生まれたばかりの頃に拾ったオモチャなんだがな、持ち主が不幸にも()()してしまったんで、そのままネコババして(ポッケに入れて)たんだ。案外役に立つな、このオモチャ」

 

「……元の持ち主は、相当に趣味が悪い奴だったみてぇだな」

 

「ああ、悪かったぞ。生まれたばかりの私に欲情するくらいにはな」

 

「……ああ、そいつは()()だから、くたばるのも仕方ねぇな」

 

 

 いっそフレンドリーとも言える口調の両者だったが、終わりの時はすぐそこまで迫っていた。

 

 

「さて、そっちは文字通り絞めつけられているが、余り締まらない結末になりそうだな。今から、何もかも真っ平にするが、何か言い残す事はあるか?」

 

「……そうだな。最後まで油断しないで、あっちの二人に意識を割いてるのは悪くねぇな。切り札を隠し持っていたのもだ」

 

「おや、誉めてくれるのか? 結構嬉しいな」

 

「後、言うべき事はこれだな。『今だ』

 

「───!!!!?」

 

 

 霊視ニキ(【見抜く者】)の『その言葉』に対し、四条 灯(【黒き死神】)の反応は劇的だった。

 意味を理解しその目を見開き、思わず霊視ニキ(【見抜く者】)から目を離し、離れた場所のセツニキ(【導く者】)探求ネキ(【創り出す者】)の方を向きそうになるが、これを自制。

 そして、霊視ニキ(【見抜く者】)()()()()()()()()()()『ワクチンの入った注射器』がいつの間にか彼の手から消えている事に気付く。

 

 ここまでがほぼ一瞬で、次の瞬間に四条 灯(【黒き死神】)はその場から離れようと足に力を入れるが───

 

 

 

「最高のタイミングで───」

 

「───!!!!?」

 

 

 

───彼にとっては、その一瞬こそが、ずっと狙っていた瞬間だった。

 

 

 

「───横合いから思い切り殴りつける!!」

 

 

 

 その言葉が言い終わった時、四条 灯(【黒き死神】)の左胸には、彼の持つ『ワクチンの入った注射器』が突き刺さり、その中身は既に彼女の体内へ注入されていた。

 

 

「あ……あ、ああああ…ああああああああ………AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!」

 

 

 

 己の体内に打ち込まれた『霊的黒死病のワクチン(自分に対する特効薬)』に絶叫をあげる四条 灯(【黒き死神】)を横目に───

 

 

 

()()()()()ギャンブル(かくれんぼ)には勝っちまったからな。配当金(見せ場)は俺が頂くって事で、文句は無いな?」

 

 

 

───全身の倦怠感に抗い、震えそうになる足に力を入れ、体中を黒く染め始めている病による激痛を完全に無視し、セツニキ(賭博師)はそう口にした。

 

 

 

 

 

 

*1
与える物理ダメージを上昇

*2
与える物理ダメージを大きく上昇

*3
敵全体に中威力の物理攻撃。クリティカル率が高い。

*4
敵全体に2~4回の小威力の物理攻撃。確率で毒を付与。

*5
敵単体に小威力の物理攻撃。対象の攻撃力を下げる。

*6
補助スキル。自身の次の力依存攻撃を必中化し、クリティカルを発生させる

*7
パッシブスキル。命中率を向上させる

*8
敵全体に大威力の物理攻撃。

*9
元ネタはアニメ『機動武闘伝Gガンダム』の流派・東方不敗の最終奥義【石破天驚拳】。初代ペルソナにおいて全スキル中、最高の攻撃力を誇る物理攻撃。アンクウが使用できる。本来は単体攻撃だが、本作では『溜めが完了したら、シーン全体攻撃で威力は敵全滅が確定レベル』とする。要するに真5の人修羅の放つ【地母の晩餐全滅確定技】みたいな扱い。サバイバルアクションでボスを倒せないままタイムリミットになると使われがちなアレ。

*10
元ネタはFGOのヴラド三世(ランサー)。代名詞でもある『串刺し刑』の具現。【貫く闘気】+【ジャベリンレイン】+【地獄突き】+【ルナトラップ(相手は逃走できなくなる)】+【シバブー(対象を『緊縛(BIND)』状態にする)】。アライメントがDark寄りなら威力が増大し、Law寄りなら拘束力が増大する。

*11
元ネタは格闘ゲーム、ギルティギアシリーズのテスタメントの覚醒必殺技。空中に赤い魔法陣を出現させ、液状の巨大な赤い髑髏を召喚し対象へ放つ。【闇の審判(降魔属性スキル。対象に大ダメージ+確率で瀕死)】+【サバトマ(召喚魔法)】+【淀んだ空気(状態異常を付与する確率を上げる)】+【ランダマイザ(敵全体の全能力値を一段階下げる)】+各種状態異常魔法。ダメージと共に高確率で各種状態異常を付与する。

*12
病は感染すると言う概念の悪用。自身の『情報』をゲーデの権能で死を通して把握した上で、コピーした『情報』に【変化】でMAGから構築した肉体を持たせた文字通りの『もう一人の自分』。条件を満たせば他者の肉体も利用可能。

*13
オリジナルアイテム。対象1体に【シバブー】の効果。







お読みいただき、ありがとうございました。



決着!! ……に、なるかは次回をお待ちください。

今回は「あれ、これっておかしくね?」と思ってもらえるように、何か所かに事前の描写と矛盾している場所があります。
その辺を次回で「裏側の描写」として書ければ、って感じですね。

ようやく長かったバトルも結末を迎えられそうで、一番ほっとしているのは作者ですw

描写する上での条件が
・可能な限り全員に見せ場を作る
・誰も貶めるような描写はしない
・主人公の「出来る事」を披露し、3人には適度に苦戦しつつ、矛盾なくこれを打ち破ってもらう。
・安易に殺して蘇生とかしない

でしたから、自縄自縛っぷりが辛すぎた。
コレが他所様からキャラをお借りするって事なんですよねぇ。

それでは、次回をお楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。





・四条 灯(後の黒死ネキ)
みんなから寄ってたかってボコられる中ボス。だって君チートキャラだし。
割と真面目に全員を皆殺しに出来るだけのスペックはある。けど、相手が悪すぎた。
太くて長いモノを大事な所(心臓)に挿し込まれて、身体の中に白い液体をぶちまけられた。
別にこれで服が白くなったりはしない。


・霊視ニキ
このバトルの主演男優賞&功労賞。マジでお疲れ様。
初見殺しのオンパレードの主人公のスキルの数々を、見破り続けてチームに貢献。
彼が居ないと詰む場面が多すぎる。
最初から最後まで頼りにしかならない漢。


・探求ネキ
このバトルの助演女優賞。本人の気質的にも最前線よりこう言う活躍が映える。
2分でワクチン作ったり、他人の術式を改造してダム作ったりと、数々の無茶振りに完全に応えるクリエイター。
割とマジでワクチンなかったら詰んでた。


・セツニキ
このバトルの助演男優賞。居るだけで「何とかなる」と思わせる精神的強キャラ。
作戦立案と現場指揮官としての能力がずば抜けている。
今回は「勝っても負けても痛い目は見るけど、絶対に勝てるようになる賭け」で大人の責任を果たす。
本人的には残念ながら「勝っちゃった」から、勝者の義務として見せ場は持って行く。



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