【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。

今回はショタおじとの面談回です。
今まで名無しだった『あのスキル』にもようやく正式名称がつきますし、黒死ネキの根源についても少し言及があります。
カオ転三次名物、登場人物の根源当て推理の一助になれば幸いです。

この辺で切っといた方が長くなり過ぎないようにするのに良さそうなので、一旦ここまでを投稿します。






第22話 無自覚に行っていた事を意識した時、納得により理解が深まるものだろう?

 

 

 

 

「それじゃあ、そろそろ起きようか。【サマリカーム*1】」

 

 

 そんな気軽な声と共に、私の意識は死の眠りから覚醒した。

 目を開く。特に異常も無く、眼前の光景を正しく把握できる。

 今の私の身体は赤子のそれだが、五感は大人のそれと変わりは無い。何なら覚醒者である分、一般人のそれよりも上等だろう。

 今世で初めて体験した、死の眠りからの人の手による目覚めは中々に新鮮な感覚だった。そして、最初に見たものは……

 

 

「………………」

 

「あれ? どうしたのかな? 意識も身体も異常は無いはずだけど?」

 

 

 その言葉をあえて無視し、四肢の動きを確認しつつ霊的な感覚へ意識を伸ばし、スキルの使用に問題が無い事を把握していく。

 結論は問題無し。ならば速やかに発動させるのみ。

 

 

「は?」

 

 

 無言でペルソナを発動させ、具現化するヴィジョンを悪魔の物ではなく人の肉体へと【変化】させる。

 同時にデビルシフトを発動させ、私を変容させようとする黒いモヤを制御し従属させる。

 

 人間としての霊格はそのままに、もう一人の私(ペルソナ)を纏い肉体とする。

 黒いモヤに私の生体マグネタイトを喰わせ、黒衣として現実へ具現化させる。

 

 

「ああ、それがセツニキ達の言ってた君のスキルか。へー、また珍しい事をするもんだね」

 

 

 小さな赤子の身体は、前々世のと同じローティーンの少女のそれへと【変化】し、纏う衣服は漆黒のスーツと赤いネクタイ、漆黒のロングスカートとブーツと言うフォーマルな組み合わせだ。

 日本式の建築物の屋内でブーツ姿と言うのは、いささか無作法だったか? とは言え、今はそれよりも優先すべき事がある。

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 【変化】の完了した普段使いの身体の動作を確認しつつ、改めて開けた目線を頭上へと向ける。

 そこには、目覚めた際に初めて目にした時と変わらない───

 

 

「知らない天井だ*2

 

 

───知らない天井があった。

 

 

「いや、そこまで準備万端に整えてネタに走るのかよ!!」

 

「……ああ、居たのかセツニキ。だが、お前も転生者なら分かるだろう? 今の私の気持ちが」

 

「……分かるな。俺でもやるわ」

 

「本来なら、目覚めた直後にやるのが正しいのだろうが、赤子の身ではどうしても舌足らずな物言いになるからな。こうして普段使いの身体になり、正確な発音を優先させてもらった訳だ」

 

「やるな。正直お前の事を甘く見てたわ」

 

「理解が得られて嬉しいよ。これからもよろしく頼むぞショタジジイ」

 

「死んでも口が減らねぇのは治らねぇな、クソガキ」

 

 

 

「いや、君たち、そろそろ悪ふざけは止めようか」

 

 

 

「「あッ、はい」」

 

 

 笑顔のまま()()()()()()()解放され放たれた、その声の主の万分の一にも満たない霊圧に、私もセツニキも反射的に冷や汗を流しつつ従っていた。

 彼がガイア連合の盟主の峰津院 堂満(ほうついん どうまん)。通称ショタおじか。本当に見た目がシャーマンキングのハオだな。これで30台? 若作りが過ぎるな。

 圧倒的な超越者であるとは聞いていたが、随分と控えめな表現だったのだと実感する。今の我々程度が万人いようが無意味と理解させられるだけの格の違いが、言葉ではなく体験を持って理解させられた。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「さて、挨拶はこちらからすべきなのだろうな。改めまして、お初にお目にかかる。私は四条灯。事の経緯はセツニキ達から聞いているのだろうか?」

 

「ああ、ご丁寧にどうも。俺がガイア連合山梨支部の盟主の峰津院 堂満(ほうついん どうまん)だよ。まぁ、神主でもショタおじでも、好きなように呼んでもらって良いよ。気楽にしてくれて良いからね」

 

「事の経緯は俺から既に報告済みだ。で、これからお前にはショタおじと面談をしてもらうから生き返って(起きて)もらった」

 

「面談? ああ、ガイア連合に所属するにあたって、か?」

 

 

 異界で互いの事情を話していた時に、ガイア連合への登録はショタおじと面談して問題がなければ良いと言う話は聞いていたな。

 

 

「ガイア連合への所属に関しては、転生者であれば実質来るもの拒まずだよ。この『問題』って言うのは、要するに()()()()()()()()って事だからね」

 

「ふむ、この場合の『手遅れ』とは?」

 

「人間じゃなく、悪魔に成り果てていないかって事だよ。特にデビルシフターやペルソナ使いの『俺ら』に多いかな。悪魔になったまま人間に戻れなくなったり、ペルソナの暴走の果てに肉体を乗っ取られたりね」

 

「お前の場合、その【魔装術】なんかが特に危ういからな。常時人外の肉体でいる事で『人間だった頃の記憶を持っているだけの悪魔』に知らずに成り果てていないかを確かめる訳だ」

 

「なるほど。言わんとする事は理解した。……ところで、その【魔装術】とは?」

 

 

 文脈から私の身体と衣服を構築しているスキルの事なのだろうが、私自身はまだこのスキルに名前は付けていなかった。

 セツニキが言うには、【魔装術】と言うのが正式名称なのか? どこかで聞いたような気がするが……

 

 

「霊力を収束させ鎧状に纏う事で驚異的な攻撃力、防御力を得る技だな。これは己を悪魔に変えるのではなく、悪魔の身体を擬似的に再現する技と解釈する事も出来る。だが、本来、修得するには『悪魔との契約』が必須で、しかも使い続けると肉体が悪魔に変容していく危険な技とされているな」

 

「───ふむ、なるほど……あ!?───」

 

 

 その説明に私の中で何かが"カチリ"と音を立てて組み合ったような感覚を得た。

 今までは無自覚であったが、無銘で未完成のまま使用し続けていたスキルが『名前を得た事』で完成されたのを実感する。

 

 セツニキの説明した【魔装術】は彼の持つ知識のそれであり、私の行使していたスキルは似て非なるものである筈だが、私の行使していたスキルは()()()()()【魔装術】であると私は確信できている。

 

 ああ、無意識にスキルに名前をつけなかったのは、【魔装術】と言う名を()()()()()()()()、無自覚に名付けを避けていたからか。

 納得する事は大事だな。特にオカルト関係(この業界)では。

 

 

「……おいおい、何でいきなりスキルの()()が上がってるんだよ」

 

「ああ、これ、完成に至っていなかったスキルが、何かのきっかけで完成した際の、特有のアレだね。今のセツニキの【魔装術】の説明で、彼女の中で何かが『完成』したんだろうね」

 

「……どうやらその通りだな。今までも特に違和感を感じていた訳ではないが、今は完全に()()が自分の制御下だと実感できているな。それに、貴方には分かるのだろうが、決して()()()()()()()事もだ」

 

「俺の説明がきっかけだったみたいだが、どういう事なのか説明できるか?」

 

「ああ、出来る。この【魔装術】と呼ばれるスキルだが───」

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 セツニキの話す【魔装術】とは

 

・霊力を収束させ鎧状に纏う事で驚異的な攻撃力、防御力を得る技。

・己を悪魔に変えるのではなく、悪魔の身体を擬似的に再現する。

・身に付ける為には、悪魔との契約が必要。

・使用し続けると、肉体が悪魔に変容していく。

 

 と言う、危険な術だ。

 

 

 

 だが、私が理解し、使用している【魔装術】とは

 

・『神や悪魔の様なもう一人の自分(ペルソナ能力)』や『神や悪魔に変身する自分(デビルシフト能力)』のヴィジョンを【変化】させ、人間の霊格に纏う技。

・己を悪魔に変えるのではなく潜在能力を意志でコントロールして引き出す。

・修得の為には悪魔との契約では無く、自身との契約を必要とする。

・使用による肉体や衣服の変容は、あくまで人間としての能力の成長。

 

 と言う、難易度は高いが、決して我が身が悪魔に成り果てるようなものでは無い。

 

 

 

 恐らくだが、

・私のスキルが本来の【魔装術】で、セツニキの話す【魔装術】は悪魔との契約で再現した似て非なるスキル。

・セツニキの話す【魔装術】が本来の物で、私のスキルはその発展形。

 

 このどちらかではなかろうか?

 

 まぁ、私にとっては、このスキルの名称が【魔装術】で間違いない事が重要であり、どちらが正しいのかは些末なのだが。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「なるほどな。恐らくだが正しいのは後者だろうな。俺もこっちの文献でこの術式を知った時は、「『GS美神』かよ」ってツッコミ入れたもんだが、発展形があって、お前が未完成ながら使いこなしてたとは思わなかったぜ」

 

「ああ、【魔装術】と言う言葉がどこかで聞いた覚えがあると思ったが、前世の漫画か。こちらも納得がいったな」

 

「えー、俺その漫画の事知らないんだけど?」

 

「ちょうど最近、今世でも連載が始まってるぞ*3。まぁ、メシア教の影響で連載内容は同じにはなりそうにないがな」

 

「む、折角の名作が改悪される可能性もあるのか。読書好きとしては避けたい事態だな」

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「んー、【魔装術】についてはそれで良いとして、次に確認したいのは君の内面かな」

 

「ああ、肉体的な変容は無いとしても、精神的な内面についても確認すると?」

 

「そんなところだね。それじゃあ、"見"せてもらうよ。悪いけどプライバシーは無視させてもらうね」

 

「【読心】か【過去視】か? 特に隠すような人生でも無いし、構わないぞ」

 

「それじゃあ、いくよ」

 

 

 そう軽い口調で言い放った瞬間、『何か』が私の中を通過していく感覚が……走ったりしない。

 見ればショタおじは「おいおい、マジかよ。また重いの来たな」とか言っているので、私の中を"見"たのは間違いないのだろう。

 被術者の私に術の使用を自覚させる事無く、術の発動すら悟らせずに一瞬で全てを終わらせた、か。本当に呆れるほどに隔絶した差だな。

 

 

「いや君、何でそんな()()()会話してるの? 今世の経験だけでも発狂してて当然だからね?」

 

「何でと言われても、私が殺したり殺されたり、死んだり死なせたりするのが大好きだからではないか?」

 

「うん、完全に『正常』な神経でその発言をしてるね。狂ってる訳でも、破綻している訳でもない。喜怒哀楽もあって、信じがたい事に人間性も真っ当だ」

 

「おや、高評価と受け取って良いのか?」

 

「セツニキ~~、マジで何なのこの子? ()()()()()()()()()()なんだけど、見える範囲じゃ正常にしか見えない」

 

「俺もそこで判断に迷って、面倒だからお前に丸投げしてるんだゾ☆」

 

「うっわ、ムカつく。けど、気になる点はソコだけじゃ無いんだよね」

 

「と言うと?」

 

「この子、魂が()()()()()()()。多分、この子の根源と何か関係があるんだろうけど、無色透明の湖みたいに、不自然なほど透き通ってるね」

 

「「はァ!?」」

 

「いや、君も驚くの?」

 

 

 いや、私のスキル構成とか【穢れ】の塊だからな? 暗黒魔法が大得意で、デバフ系とか我ながら適性が極まっているぞ?

 私の【穢れ】で一回死んだであろうセツニキも動揺が隠せていないな。さもありなん。

 てっきり【穢れ】に満ちたDark系な存在が、私の根源だと思っていたが、もしかして違うのか?

 更に謎が深まってしまったのだが?

 

 

「ん~~、ちょっと確認してみようかな? ねぇ、俺に向かって君の【穢れ】を放つスキルの中から、強めのやつを撃ってみてくれるかい?」

 

「分かった。【ナイトメアサーキュラー】*4

 

 

 一切の躊躇なく、手持ちの【穢れ】を放つスキルの中から、切り札の一枚を切る。

 眼前に赤い魔法陣が展開され、【穢れ】は収束し扉となり、魔法陣を出口として液状の巨大な赤い髑髏が召喚される。

 個体でもあり液体でもある()()は呪毒を中心とした【穢れ】の塊であり、おおよそ考え得る限りの『状態異常』をもたらす赤い災厄だ。

 

 

「へぇ、凄いじゃないか。【穢れ】に関する適性()()なら俺より上かもね」

 

 

 召喚からほぼタイムラグ無しで、液状の巨大な赤い髑髏はショタおじへ向かって放たれるも、彼が軽口を叩きながら腕を一振りすると、文字通り跡形も無く()()()()消えた。

 ふむ、彼に腕を振るわせる事くらいは出来るのか? それともあえて大げさに腕を振って見せただけか? 恐らくは後者なのだろうな。

 それにしても凄い誉め言葉だな。一ジャンルとは言え適正で彼を上回ると?

 

 

「今ので何か分かったか?」

 

「ああ、彼女の魂はさっきも言った通り、無色透明の湖と言っても良いくらいに穢れていない。けど、スキルを放つ為に『湖から水を汲む』と言う過程を経ると、さっきみたいな【穢れ】の塊になっているね」

 

「それはつまり……」

 

「うん、彼女の根源は『魂の領域においては全然穢れていないけど、現世に顕現すると穢れの塊として扱われる』。こんなものだって事みたいだね」

 

「正直、訳が分からんのだが? 何かの謎かけか?」

 

「候補が無い訳じゃないけど、これは君が()()()()()()()()()()()()()タイプの根源だろうね。俺からはこのくらいにしておくよ」

 

「ふむ、では今後はそれも意識して生きていくとしよう。助言は感謝しよう」

 

「どういたしまして。……で、君のガイア連合への登録についてだけどね」

 

 

 そこまで言って、ショタおじは言葉を切り、少し考える仕草をした後にこう言った。

 

 

 

 

「3つほど条件を付けようと思う」

 

 

 

 

 

 

*1
蘇生魔法。死亡した対象一人を、HPが全快の状態で蘇生させる。

*2
エヴァのアレ

*3
『GS美神 極楽大作戦!!』の前世での連載は1991年から

*4
元ネタは格闘ゲーム、ギルティギアシリーズのテスタメントの覚醒必殺技。空中に赤い魔法陣を出現させ、液状の巨大な赤い髑髏を召喚し対象へ放つ。【闇の審判(降魔属性スキル。対象に大ダメージ+確率で瀕死)】+【サバトマ(召喚魔法)】+【淀んだ空気(状態異常を付与する確率を上げる)】+【ランダマイザ(敵全体の全能力値を一段階下げる)】+各種状態異常魔法。ダメージと共に高確率で各種状態異常を付与する。







お読みいただき、ありがとうございました。



ショタおじの人間判定試験回でした。
第1話でも軽く書いた通り、「セーフではあるけど、そのまま入れるのはヤバそうだから条件つけます」になる感じですね。
けどまぁ、殺し愛大好きと公言するような危険人物の審査なんだから当然ではあるw

次回はこの続きで、いくつかの描写と、黒死ネキからショタおじへの2つのお願いについてを書こうと思います。
それでは、今後とも本作をお楽しみいただければ幸いです。




・黒死ネキ(四条灯)
目が覚めると同時にネタに走る『俺ら』の鑑。転生者ならやるよな普通。
ようやく名無しの肉体構築スキルが【魔装術】と認識。結果、『納得』によるパワーアップで、各種ステータスが2割増しくらいになる。
そのくらいオカルト関係における『名前と納得』は重要な事。と言うか、こっちが本来の性能で今までは制限が掛かっていた感じ。
ショタおじから自分の根源について言及があるも、ますます「自分の根源って何なん?」となった。
助言に従い、普段から意識するようにする。


・セツニキ
黒死ネキをガイア連合へ合流させる判断をした手前、ショタおじとの面談にも立ち会う。
案の定、ショタおじも「何こいつ?」と迷った為「だよなー」と経験者面。
【魔装術】については今世で星霊神社の蔵書で知る。「『GS美神』のあのスキルっぽいの、この世界には実在するのか」と思っていた。


・ショタおじ
黒死ネキの鑑定結果に戸惑わざるを得ない。何なん、この子?
どれだけ納得がいかなくても、鑑定結果がシロである以上、ガイア連合的には拒む理由がない。
それはそれとして、間違いが起こらないように絞めるところは絞める予定。







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