【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。
今話でようやく第1話のラストまでたどり着いた~~
前話で長くなりそうだからカットしましたが、今話とセットにしなくて正解だったかな。
作中の設定において、Lilyala様作「最速で出会った俺らのガイア連合活動記録」を参考にさせていただいた箇所が多数あります。
先達であるLilyala様には感謝を。
後書きに画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。
「二つの頼みね。どんな内容なのかな?」
「ああ、少しこの場を借りるぞ」
そう断って部屋の中央の広いスペースへ移動する。このくらいの広さがあれば、十分だな。
「一つ目の頼みだが、貴方たち二人を【浄化】や【葬送】及びその見識に関し比類なき者たちであると見込んで、
「おい、それは……」
その権能の一部である【閉鎖】と【循環】の概念を利用して、ずっと保管し続けて来たんだ。
『異界で殺された人間や悪魔のMAGが霧散せずに、異界内に留まり循環し続ける』事を主目的としたのがこの異界の機能だ。
その機能を転用し、私は『死者の肉体』を【閉鎖】の概念を用いてMAGとしての霧散を許さず、『死者の魂』を【循環】の概念の流れに乗せる事で疑似的な輪廻としてその魂の傷を癒し、実際の転生へと繋げずに手元に置いていた。
いずれ訪れるかもしれない都合良く
そして、都合が良いどころか、これ以上を望みようが無い機会を得た。
送り出す場所が【
アレは
『まともな死者』を送り出す場所は、『まともな現世』でなければならない。
送り出しを執り行う者は、私では不適格だ。
私は『殺す者』であり、『管理する者』だからだ。
私が殺した者の情報と魂は、私の管理下に置かれ、他者からの干渉を受け付けなくなる。
これは、ゲーデの別名でもある【
つまり、『手元に置いておく』のは得意でも、『送り出し』には向いていないとも言える。
もちろん、向いていないなりに『送り出し』は出来るが、この場には他の誰よりも優れた者がいるんだ。
何事も『下手な者』より『上手な者』が行う方が良いと思うのは、当然の事だろう?
「【閉鎖】を解除。指定対象を現世へと具現。【循環】から指定対象を分離。管理者権限にて直接管理を行う」
そして現世に現れるのは、二人の死者の肉体と魂。
一人は女。最後まで大切な者たちの為に
一人は男。最後まで人間として生き、大切な者たちと共にあろうと
私の今世での両親だ。
無残に傷ついていた肉体はMAGの再構築による
「……それがお前の、今世の両親か」
「ああ、随分と遅い葬儀になってしまったがな」
「見事な物だね。ゲーデの死者の情報管理と墓守としての権能と、君自身の技量と想いの賜物、か」
「お褒めに預かり恐悦至極。だが、結局のところは、こんなもんはガキの自己満足に過ぎんよ。知っての通り、私はゲーデ由来の権能で、私の傍で死んだ者の情報を全て蒐集出来る。当然、この二人の想いもだ。この二人が私に残し、繋ごうとしたものは、
「………」
「……『葬儀』とは、『送り出し』とは、元より『残された側』の自己満足の為に行うものだろう?」
「まぁな。故人の死を悼む事や、死後の安寧を願うのは、とどのつまり故人に別れを告げることで心の整理をし、気持ちにけじめ、区切りをつける事だからな」
「無粋な事だけど、一応、言葉にして聞いておくよ。ご両親の遺体はほぼ完全な状態を再現されていて、魂の状態も悪くない。肉体は式神の物を流用すれば、
本当に無粋な質問だな。答えなど予想もしているだろうし、分かり切っているだろうにな。
「母は己の死と向き合い、死を想い、私たちの為に祈って死んだ。父は最後までヒトである事を
「うん、分かったよ。
「………セツニキ、実はこの若作りには人の心とか無いのでは?」
「それは前から知ってる」
「君たち、ちょっと失礼じゃない?」
「「お前が言うな」」
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「一応、俺からも聞いとくか。確かに俺とショタおじは、ガイア連合でもこの手の『送り出し』は得意としているが、見ての通りショタおじも俺も
「そうだね。黒死ネキのご両親は二人とも一神教でしょ?
ああ、確かに私の両親は二人とも一神教徒だな。敬虔とまではいかないが、真面目、誠実に日々を過ごしていたし、ミサでの祈りも欠かさなかった。
だが───
「母が最期に祈ったのは四文字にではなく、父が最後に願ったのは傍にいる事、だ。それに、前世ならまだしも、
───元々『葬儀』とは
「ああ、納得したわ。やっぱお前は人間だろうな。あと、その考えは結構俺好みだ」
「そういう事なら、この二人の魂は
「私が言う事じゃないが、お前らは少しは本音を隠したらどうなんだ?」
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神道における葬儀とは、故人を幽世を経て家族の元に留め、子孫を見守る存在として祀る事とされている。
古来から日本に根付いている民族宗教で、万物に神が宿るという考え方で、故人は残された家族の守護神となる訳だ。
母の祈りと父の願いに沿った、実に都合の良い宗教観だ。
葬儀の内容は、『帰幽報告*1』『枕直しの儀*2』『納棺の儀*3』『通夜祭*4』『遷霊祭*5』『火葬祭*6』『埋葬祭*7』『帰家祭*8』『直会*9』となっており、ぶっちゃけ日本で一般的な仏教式の葬儀とやる事はそこまで大差はない。
無論、宗教的な意味はまるで異なる為、まったく一緒と言う訳ではないが。
今回は神職として最上の術者が居て、ほぼほぼ略式で行う為、魂を霊璽*10に移して、遺体は浄炎で火葬し神社の墓地に遺灰を埋葬、直会として改めて二人に礼を言って終いだ。
「世話になった。改めて礼を言う」
「構わないよ。本職として当然の事だしね」
「右に同じくだ」
さて、これで頼み事の一つ目、私の自己満足は達成された。
二つ目の頼み事は、本当に個人的な頼みだからな。聞いてもらえると嬉しいのだが。
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「それで、もう一つの頼みは何なのかな?」
「……いやまぁ、大体予想はついてるんだがな」
「実際に予想通りだと思うぞ。私の個人的な望みだからな」
正直なところ、
「聞くところによると、ガイア連合での覚醒修行とやらは、ショタおじの仕切りで行われていて、『簡単な方』と『厳しい方』があるらしいな?」
「セツニキ達から聞いていたね。その通りだよ」
「そして、『厳しい方の覚醒修行』とは、ショタおじの手による『この世のありとあらゆる死因』を霊的に体験する事、で間違いないか?」
「それもその通りだね。うん、分かっていたけど、予想は外れて欲しかったよ」
「過去視したものな。私の頼む事も分かるだろうな。貴方からすれば面倒だと思うのも承知の上だ。だが、もういい加減に我慢も限界なのでな!! 私に!! 厳しい方の覚醒修行とやらを!! 体験させろ!!」
「「───うわぁ……」」
「ガイア連合への所属も、そちらの条件を受け入れて滞りなく済ませた!! 今世の両親も『送って』先に通すべき筋は通した!! ならば、もう私個人の望みを優先させても良いだろう!?
「「───うわぁ……」」
「………セツニキ、改めてよくこんな子を倒して連れて来られたね?」
「ぶっちゃけ、俺は最後で死んだからな? 意地でこいつより後に死んだが、正直ギリギリだったわ」
「で、返事は?」
「あッ、はい」
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そして私は今世における最高の経験をする事になった。
ああ、そうだ、死とはこういうものだ。
万物に等しく訪れる絶対のもので、本来なら一度の生涯で一度しか経験できないものだ。
初めて経験した時は、先に経験している連中を
そんな連中を見て、まだ経験していない連中は死に対して想いを馳せたんだ。
恐くないよ、と。
ああ、恐くなかったよ。
一緒に踊ってみたら、とても楽しかったからな。
楽しかったから、また踊ってみたくなったんだ。
こんなに楽しく
最 高 だ な
今回の死因? 『老衰』だったぞ。
前世も前々世も経験し得なかった事に今更気付いたが、コレは良いものだな。
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「素晴らしかった。本当に素晴らしかった。ああ、私はこの為にガイア連合へ来たんだな」
「うっわ、表情がヤベェ」
「未だかつて『厳しい方の覚醒修行』でここまで
「……ショタおじ……」
「ん?」
この素晴らしい余韻にいつまでも浸っていたいが、そうもいかない。
頼みごとを聞いてもらった以上、ここは誠意と礼を示すべきだろう。
「ありがとう*11」
「───うわぁ……」
「おや、こんな可憐な少女が笑顔でお礼を言っているのに、随分な態度ではないか?」
「残当なんだわ、クソガキ」
「解せぬ」
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「ああ、そうそう、忘れないうちに支給品を渡しておくか」
「支給品?」
「ああ、コレだ」
「私の目にはノートパソコンに見えるのだが? 支給品と言うには随分と高価なものを渡すのだな?」
「前世持ちの『富豪俺たち』も多くいて、NTTの株式公開が史実より一年前倒しになって、ハイテク関連に狂ったように資金が注ぎ込まれたからな。パソコンも少し高いぐらいで民間に普及してるぞ。転生者専用の掲示板も活発になってるしな。今や日本でネットに繋げない場所は相当な田舎か過疎地のみだぞ」
「ここは山梨県の富士山中だったはずだな? その過疎地に該当するのでは? 回線などはどうしているんだ?」
「山梨は東部から甲府まではネットにつなぐことが出来て、うちの式神たち*12が無理なく接続出来て、中継できる距離だから問題ない」
「……それだと、まさかサーバーは自前だとでも言うのか?」
「おう、最低限の知識はあったからな。『富岳*13』を作れたぞ。ここではオカルトスパコン『フジヤマ』って呼んでる」
「30年先のスパコンを先取りとは呆れるな。その言い方だとオカルト技術が満載そうだな」
「知ってるか? 完全無菌室や純水の精製、無重力加工や廃熱、断熱なんかも、オカルトだと簡単にできるんだ」
「まさにチート乙と言ったところか。流石は汚い大人だな、セツニキ」
「転生者の特権だな。有効活用できるならするだろ」
「それはそうだな。ところで、このノートパソコンのスペックだが、OSは? Windowsか? Macか? それともオリジナルだったりするのか?」
「普及率を考えてWindowsだな。前世で使ってたヤツが一番多いだろうしな。ちなみに7くらいの性能だ」
「CPUは? Intelか? AMDか?」
「これも普及率を考えてIntelだな。クロック数は1.86GHzな」
「メモリは?」
「4GBでストレージは1TB(500GB×2)だぞ」
「接続方法は? 有線か? 無線か?」
「オカルト的に接続されている関係でLANケーブルどころかバッテリーすら存在しないゾ」
「何それ、恐い。パーフェクトだとかネタでも言いにくくなったんだが? とは言え、スペック的には2010年代くらいのノートパソコンだな。使い勝手もよさそうだ。感謝するぞ」
「掲示板には新人が挨拶するスレとかもあるからな、顔つなぎに軽く書き込んでおくと後々便利だぞ」
「ふむ、そういう事なら後で書き込ませてもらうとしよう」
「セツニキは当然として、黒死ネキもパソコンに詳しい感じなの? 正直意外って言うか……」
「ん? PCのスペックを確認しただけで詳しいと言われても正直困るのだが?」
「だな。とは言え、それすら出来ない奴も多いし、本気で縁遠かった奴からしたら詳しい部類だと思うぞ」
「俺もまだまだ使い慣れてはいないからねぇ。黒死ネキの前々世は中世だったみたいだし、パソコンは前世で勉強したのかい?」
「前々世がアレだったから、前世では享楽にふけったな。二十一世紀で享楽にふけるのに、パソコンに触れないとかあり得ないだろう?」
「「それはそう」」
「中世経験者として言うなら、現代とかその辺の底辺家庭でも中世の王侯貴族よりも遥かに贅沢な暮らしをしているぞ? 何より平均寿命が二倍以上違うからな。当時とか三十台で死ぬのが当然で、四十を超えればもう老人だ。『簡単に学びを得られる』とか言う、信じがたい贅沢に慣れるまでが前世で一番苦労した事だな」
「急に発言がBBAになるな、この幼女未満は」
「けどまぁ、言いたい事は分かるよ。『学び』は贅沢だよね」
「「それな」」
「ともあれ、これはありがたく使わせてもらおう。早速この後、転生者用の掲示板とやらをのぞいてみるか」
「あ、黒死ネキの仮宿は明日には準備できるから、今日の所はこの部屋を使って良いよ。元々そういう目的の部屋だしね」
「了解した。明日からの暮らしが楽しみだよ」
こうして、私のガイア連合での初日の夜は始まった。
後に適当に書き込んだ私のプロフィールを見たスレ民が阿鼻叫喚になったり、それを見たショタおじが呆れたりするのはご愛敬だ。
お読みいただき、ありがとうございました。
これにてプロローグが本当に終了!!
リアルで2ヶ月半かかって、連載話数に二十話以上かけるプロローグってどんなだよ。
強キャラを描写するなら、『その強さには読者が納得するだけの説得力が必要』と考える派なんで、解説含めてこの長さになりましたが、黒死ネキは『このキャラなら強くて当然』と思ってもらえているかな?
ダレずにお読みいただき、誠にありがとうございました。
ガイア連合でのネット環境については、Lilyala様作「最速で出会った俺らのガイア連合活動記録」の
『これが後のガイア連合を支えるサーバーだ! 2023年12月06日(水) 05:00(改)』での設定をパク……参考にさせていただきました。
次回以降はしばらくはガイア連合でのドタバタを描いて行ければと思いますので、よろしければ今後も今作をお楽しみいただければ幸いです。
・黒死ネキ(四条 灯)
正式にガイア連合へ加入が認められ、念願だったショタおじの『厳しい方の覚醒修行』も経験して気分は上々。
一神教徒の両親の葬儀を神道式で行ってもらうフリーダムさを発揮。
いや、だって両親の末期の願いと神道式の葬儀目的がベストマッチだったし?
神道式でやるなら、そこにショタおじとセツニキがおるんやぞ? 問題ないどころか最高の選択だな、ヨシ!!
今世における『最高に楽しかった事』ランキングTOPが『厳しい方の覚醒修行』に更新される。『霊視ニキたちとの殺し合い』はまぁ、楽しかったけど寸止めだったし。
前世から見れば、時代的に二十年先を行くスペックのノーパソを支給されて上機嫌。
『学べる』事がとんでもない贅沢だと知っているので、ゲーデの権能で死者の情報を蒐集する事は、彼女にとって趣味と実益を兼ねた読書とか映画鑑賞みたいなもの。そりゃハマりますわ。
・ショタおじ
黒死ネキの過去視で見れたのは、あくまで今世のみ。
中世出身者が自分よりもPC関係に詳しそうでびっくり。
というか、前世以降もさかのぼれるなら、覚醒修行とかもっと効率良くなるだろJK。
報告で聞いていたし、過去視で見ていたとは言え実際に『厳しい方』をねだられてドン引き。
「え、この子なんで無残に殺されて悦んでんの? 表情ヤベェ。恐ッ!?」となる。残当。
ガイア連合への加入は認めたし、信じがたいけど黒死ネキの人間性自体はまとも判定だけど、「これで良かったのかなぁ?」とちょっと迷っている。残当。
・セツニキ
黒死ネキ加入の判断はショタおじに丸投げしている為、気楽に二人のやり取りを眺めていた。
黒死ネキからの『一神教徒の両親の葬儀を神道式でやってくれ』提案には、驚きつつも納得して応じる。
理由を聞いたら、この人ならきっとノリノリでやってくれる。間違いない。
黒死ネキの実年齢が赤子である事から、何だかんだと当分は彼女の行動や心理面を気に掛けておくつもり。
イメージイラスト(AI画像注意)
「あまりにも純粋で悪意のかけらも無い誠意溢れる礼。純度100%の美少女の笑顔」
※キャラ崩壊注意
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