【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。

後書きに画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。



今話はちょっとだけ難産。
やっぱり設定周りを作中に文章で落とし込むのは難しいですね。
冗長にならないようにしたいけど、削り過ぎても駆け足感が強くなるし。

では、黒死ネキとモト師匠の間に何があったのかと、その顛末をご覧ください。






第28話 自分の憧れている物が、他人に理解してもらえるとは限らないだろう?

 

 

 

───試験用異界???F───

 

 

 

 この『資格試験』の番人こと、通称【モト師匠】。

 ショタおじの作成した試験用の式神に、悪魔の【モト】のガワを被せた存在だ。

 

 

 その行動原理は単純で───

 

 

・【獣の眼光】*1からの【ラスタキャンディ】*2でバフを重ね、『属性魔法』で相手の『弱点属性』を狙い撃ちにする。

・【全属性反射】と【物理反射】を備え、『貫通』が付与されない攻撃を受け付けない。

・『万能属性』の攻撃は【獣の眼光】を使用し、徹底的に回避する。

 

 

 ───これらを機械的に繰り返すだけだ。

 

 だけと言っても、この構成であれば、その攻略には各種『貫通』や【時空耐性】等が必須スキルになるし、それらは今後の高レベル悪魔や異界ギミックと相対する上でも必須となるのは目に見えている。

 事前の試験としては実に合理的だな。過保護ですらある。

 

 そして、情報が正しければ、ガワだけではなく、本家の【モト】や、何なら【クロノス】の雑霊を混ぜて【獣の眼光】のスキルとしての使用確度を高めているのだろうな。

 

 

 

 ()()()()()、私にとっては付け入る足がかりとなるのだがな。

 

 

 

「【獣の眼光】【ラスタキャンディ】【ラスタキャンディ】【()()()()()()()】」

 

「ああ、()()は有効か。それは何よりだ」

 

 

 事前の情報収集で気になっていた事の一つに『どうやってこちらの弱点属性を見抜いているのか』と言うものがある。

 単純に式神に【アナライズ】系のスキルでも搭載しているのなら、その性能次第ではハメるのは簡単では?

 そう思って試してみたが、実にあっさりとハメられたな。

 

 私の異界、【永劫輪廻・交叉廻廊(えいえんのこうさてん)】が持つ権能の一つ【偽装】。

 読んで字のごとく、本来の情報を別のものへと偽装する効果だ。

 

 【モト師匠】が単純な【アナライズ】でこちらの『弱点属性』を判断しているのなら、その情報を【偽装】してやれば、結果はご覧の通り。

 本来の耐性が【火炎無効】の私に対し、【偽装】した【火炎弱点】が正しいと判断して、特に『貫通』も付与されていないただの【マハラギダイン】を撃ち込んで来たな。

 当然、その魔法は効果を発揮する事無く無効化される。

 

 

 

 そして、相手の攻撃を耐性により無効化した事により、私のスキルが発動する。

 

 

 

 死門敲(しもんたた)き】

 

 

 

 霊視ニキ、探求ネキ、セツニキとの殺し合いの際、私を霊視ニキの物語の中ボスに仕立て上げる為に、【運命】が私に寄こした四つのスキルの最後の一つだ。

 

 【妖獣 ドアマース】の権能(ユニークスキル)で、相手の攻撃を『耐性』か『無効』で受けた場合、確率で中威力の呪殺属性攻撃で反撃し、更に確率で即死させると言うもの。

 ドアマースはケルト神話における死後の世界の門番をしている犬の悪魔*3であり、この権能(ユニークスキル)は、迂闊に死の門を敲いた愚か者へのペナルティと言う訳だ。

 

 

「──────!!??」

 

 

 当然【呪殺貫通】も付与されており、【死門敲き】によるダメージと即死効果により【モト師匠】は困惑の気配を隠せないまま光へと───

 

 

 

「【リカーム】】

 

 

 

───変わる前の僅かな瞬間を狙って蘇生させる。

 

 

 

 何ならこの【リカーム】にも『貫通』を付与しているからな。

 死にたいと思っても死ねると思うなよ。

 

 

「──────!!??」

 

 

 ああ、言葉を発せずとも何が言いたいのかは分かる。

 「何故?」だろ? まだお前には用があるからだ。

 

 

「さて、【モト師匠】のスペックの確認はこんなところか。では、いよいよ……」

 

「【獣の眼光】……」

 

「ああ、それはもう見た」

 

「──────!!??」

 

 

 『眼光系』と呼ばれるスキルは、同じ呼び名でも様々な種類がある。

 最も有名な【時間停止】を始め、術者の【超加速】や被術者の【拘束】等々。

 そして、【モト師匠】の【獣の眼光】は三番目。『瞳術』に近く、相手をFFで言うところの『ストップ』状態にしている訳だ。

 

 

 

 つまり、【モト師匠】の【獣の眼光】は『()()()()()()()()』でもあり、元から私に対しては()()()()()。 

 

 

 

 先ほどは【偽装】の効果の確認も含めて【モト師匠】の一連の行動を見てみたが、あれを機械的に繰り返すだけで打開策を構築できないと言うのなら、『戦闘』はこれで終わりだ。

 ここから先は、私が私の目的を遂げる為に、好き勝手させて貰うとしようか。

 

 さあ、【獣の眼光】の効果中にも関わらず、一切の影響を受けずに接近した私に混乱したようだが、そんな悠長な時間は無いぞ?

 

 

「【永劫輪廻・交叉廻廊(えいえんのこうさてん)】」

 

 

 まずは、場所を変えようじゃないか。誰かに乱入されては目的達成の障害になるからな。

 あくまで小規模に新たな異界を展開し、その権能の一部である【隠蔽】と【閉鎖】を発動させる。

 これでこの異界は外部からはほぼ発見される事は無く、内部からの脱出もほぼ不可能となった。

 

 突然の世界の変容に、そういった場合の対処はプログラムされていないのか、フリーズしたかのように動きを止める【モト師匠】。

 では、どうせなら本当に身動きを取れないようになって貰うとしようじゃないか。

 

 

「【串刺城塞(カズィクル・ベイ)》】」*4

 

「──────!!??」

 

 

 威力よりも拘束に重きを置いて発動させた【串刺城塞(カズィクル・ベイ)》】により、全身をその場に物理的に縫い留められ、【モト師匠】の動きは封じられる。

 さて、拘束も済んだことだし、こちらは手数を確保するとしよう。

 

 

「【感染拡大・自己増殖(インフェクション・マイン)】」*5

 

 

「───を、更に追加でもう三回

 

 

 

 これも厳しい修行の成果と言うものか。ついこの間まで作れた分身は一人だけだったと言うのにな。

 今では私本人と分身四人の合計五人の『私たち』だ。さて、改めて色々と確認しなければな。

 

 

「各自の意志は?」

 

「自身が分身体だと自覚できているな」

 

「記憶の共有は?」

 

「問題無いな」

 

「意志と思考の共有は?」

 

「この距離であれば問題ない」

 

「では、『私たち』は連携についても?」

 

「言わずもがな」

 

 

 質問したのは『(本体)』で、回答したのはそれぞれ別の『私たち(分身)』だ。

 至近距離限定なのだろうが、この状況は全てが『私』であり『私たち』でもあるな。

 これから行う作業を考えれば、『脳みそ』はいくつあっても足りないからな。分身系の優秀なスキルは重宝する。

 

 

「では始めよう。『私たち』は覚悟は出来ているが、【モト師匠】はどうだ? 答えは聞いていないがな」

 

「──────?」

 

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」*6

 

 

 

「──────!!??」

 

 

 

 先の三人との殺し合いの時は、このスキルの問題点が浮き彫りになった。あれから改良を重ねてみたが、さて、使い勝手はどうかな?

 私本人が使用する場合、『生きている人間では使用できない』だからな。ならば、分身体に使用させれば良い。単純な話だ。

 そして、何と言っても効果発動まで40秒はあまりにも長すぎる。……風情はあるのだがなぁ? 

 時間短縮の方法は簡単だ。()()()()()()()()()

 つまり、一回で40秒。二回で20秒。三回で10秒。4回で5秒まで短縮する事が可能となった。……風情が無いなぁ?

 

 

「──────」

 

「ああ、察しているだろうがまだ殺さんぞ。【リカーム】」

 

「………………」

 

 

 【獣の眼光】は無意味で【アナライズ】で得られる情報は偽物。

 異界に閉じ込められスキルで縫い留められ、自分より格上の相手五人から囲まれている。

 この状況で5秒で発動する確定即死スキルに抗えるだけの性能は【モト師匠】には無い。

 あっさりと【死の宣告】は成就し即死するが、そこには私の【リカーム】による蘇生が待っている。

 

 

「首尾は?」

 

「1%にも満たないな。やはり完全に死んでいなければ蒐集の精度は落ちるな」

 

「素晴らしい結果だな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()訳だ。なら、やる事はシンプルだ」

 

「2回殺して得られた情報量は1%弱か。既に頭が破裂しそうなほどに痛いな」

 

「【モト師匠】はショタおじの式神でもある訳だしな。『私たち』程度が束になった所で、そう易々と理解が及ぶはずも無いか」

 

「その為の『私たち』だ。情報蒐集と精査の並列作業による高効率化。そして何より……」

 

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()()からな。遠慮なく『死ぬまで』やらせてもらおうじゃないか」

 

 

 

「「「「「()()()()()」」」」」 

 

 

 

 ああ、蒐集した1%弱の【モト師匠】から声無き言葉が伝わってくるな。

 

 『いかれてる』 か。 

 

 その通りだとも。

 そしてお前も悪魔の端くれなら分かっているだろう? この業界に『まともな奴』なんてのは、どこにも存在しないんだ。

 

 

「では、作業ゲーの始まりだな」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

 お、蒐集した『情報』が1%を超えたな。良いペースだ。頭痛もすさまじい勢いで加速しているが、問題ない。続けるぞ。

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

 

 

 この日の為に、普段から雑魚の虐殺で()()()準備をしてきたんだ。*7

 最後まで付き合ってもらうぞ。

 

 ………あと、実際にやってみて思ったが、アレだな。

 ソシャゲとかでよくある、『イベントボスのドロップするアイテムの欠片を100%になるまで集めるマラソン』だな、コレ。

 

 

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

「「「「【死の宣告】」」」」

 

 

「──────」

 

「【リカーム】」

 

 

 

───パァンッ!!───

 

 

 

 ───あ、分身の一人の頭が物理的に弾けたな。蒐集した情報の保全は? 問題無いな。そのままキープしていろ。

 さて、死んだ分身の代わりに、追加でもう一人だ。 結構良いペースだな。やはり修行の成果か?

 

 

 

 

 

 

 

 

「良し、これで【モト師匠】の『情報』は蒐集が完了した。案外早かったな」

 

「通算512回か。後半程『情報』の蒐集に苦しんだな」

 

「ショタおじの構築した式神としてのシステム部分だ。『情報』の蒐集には成功したが、未だ理解は及ばんな」

 

「異常に難解な専門書のコピーが完了したに過ぎない状態だからな。精々時間を掛けて()()()()()()事にするさ」

 

「逆に【モト】の悪魔としての部分は理解が及びやすかったな。いや、雑霊と言っても中々の高レベルではあったが」

 

「雑霊とは言え、【モト】に成れるレベルだろうからな。質が良いのは嬉しい誤算と言えるだろう」

 

「さて、死んだ『私たち』は50人程か? 後で再利用するからMAGには還さずに圧縮保存だな」

 

 

 長いマラソンを終えた気分で、『私たち』は雑談に興じるが、まだまだするべき事は残っている。

 

 

 

 

「さて、【モト師匠】、今まで付き合わせて済まなかったな」

 

「………──────?」

 

 

 ふむ、雰囲気的に「やっと終わるのか?」と言ったところか?

 

 

「いや、これからが()()だからな。必要な『情報』は手に入ったから、次は【モト師匠】を構成している【モト】の要素をいただいていく」

 

「──────!!??」

 

「『私たち』のお前への用事は三つ。一つは『資格試験』の突破。一つは【モト師匠】の『情報』の蒐集。そして、最後の一つは【モト】の悪魔カードだ」

 

「お前がショタおじの式神である以上、今の『私たち』に簒奪など出来ようはずが無いからな。外付けの中身(モトの雑霊)の部分だけ頂いていく。【モト師匠】の構成要素として、相性が良いのは確定だからな」

 

「ああ、ショタおじからは「好きにして良い」と言質は取ってあるから、本当に好きにさせて貰うぞ」

 

「──────!!??」

 

 

 これは「嘘だろ!?」か。

 残念ながらホントウだぞ? 別に拡大解釈とかしていないからな?

 

 

「──────…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───と、言う経緯だな。いやぁ、【モト師匠】の『情報』は強敵だったなぁ」

 

「「「「………………」」」」

 

 

 良い笑顔で事の経緯を伝える黒死ネキ。

 呆れと称賛の入り混じったような苦笑を浮かべたショタおじから事情説明を求められたので、特に隠す事でも無いので正直に話している。

 分身の頭が破裂した話のあたりで、苦笑から徐々に引きつった笑顔になっていったのだが……

 

 

「……え? 【モト師匠】を500回以上殺したって?」

 

「分身とは言え、躊躇なく自分も50回以上死んだと?」

 

「……え? まさかの【モト師匠】NTRってことぉ!?」

 

 

 黒死ネキの話を聞き、殺した回数と死んだ回数に驚く修羅勢の面々。

 それ以上に彼らをドン引きさせたのは、【モト師匠】のNTRを行ったと言う事実の方なのだが。

 

 

「それで、まだ続きがあるよね? その黒い【モト】は、元は俺が用意した……えっと、君たちが【モト師匠】って呼んでる金色の【モト】だよね?」

 

「ああ、そうだな。私たちが【モト師匠】と呼んでいる【モト】で間違いない」

 

「黒死ネキが【モト師匠】の構成情報を蒐集し尽くしたのは…………正直大したものだと思うよ? やり方はともかく」

 

「お褒めに預かり、光栄の至り」

 

「話を聞いた限り、『情報』を収集し終えた後、それを基に【モト師匠】からガワの【モト】を剝ぎ取ったんだよね?」

 

「そうだな。実際に剥ぎ取ったぞ」

 

「……うん、それ『素人が設計図片手に、動いてる重機から危険部位のパーツ取りをする』みたいな事だからね? 分かっててやったんだろうけど、下手したら【モト】の本霊とも接触しかねなかったんだよ?」

 

「ああ、だから事前に確認しただろ? 『私の好きにしても良いな』と」

 

 

 悪びれる事無く「許可とったじゃん」とのたまう黒死ネキ(クソガキ)

 呆れつつも、言質を取られたのは事実である為、大きな問題が起き無かった以上、強く出られないショタおじ。

 

 

「うわぁ、質悪い。あと、その【モト】の霊基に悪魔としてだけじゃ無くて、式神としての霊基も含まれてるのは?」

 

「ショタおじから『好きにして良い』と言質を得ていると【モト師匠】に伝えたら、『嘘だろ!?』って反応をしたきり一切の抵抗が無くなってな? 好都合だったから遠慮なくガワを剥ぎ取っていたら、人格部分が消える直前に『主が認めたのなら消えるのは良い。存在した証を残したい』と式神としての霊基を明け渡してきたぞ」

 

「「「「「うわぁ………」」」」」 

 

 

 ショタおじも修羅勢もこれにはドン引きである。

 

 

「え? マジでNTRやん」

 

「ショタおじがうっかり言質を取られたせいで、【モト師匠】の脳が破壊されたと?」

 

「お労しや、【モト師匠】」

 

「いやいや、黒死ネキもその雰囲気で【モト師匠】を完全にNTRのヤベェだろ。どんだけ【モト】に執着してんだよ」

 

 

 外野では『ショタおじのうっかり』と『黒死ネキの執着』の話題で盛り上がる中、ショタおじは黒死ネキへ最後の確認を行う。

 

 

「そもそも、何でそこまで【モト】に……いや違うか。【棺】に執着しているんだい?」

 

「ああ、ずっと欲しかったんだ。自分の寝床が」

 

「寝床?」

 

「私は前世でも、前々世でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()からな。憧れてたんだ。静かな寝床に」

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 軽いノリで結構重い話が出てきて、思わず沈黙する一同だったが……

 

 

「だから、【モト師匠】の存在を知った時に心に決めたな。『こいつは絶対に私のポータブルベッドにする』と!!

 

 

 

「「「「「言い方ぁ!!!」」」」」

 

 

 

「だって欲しいだろ!! こんなに高性能で便利機能が満載の【棺】なんだぞ!! 憧れるだろ、普通!!」

 

「いや、それは黒死ネキだけだから」

 

「もう完全に【モト】の事を【棺】としてしか見てねぇな、これ。中の人が居ない事になってんぞ」

 

「普通は【棺】にそう言う憧れは持たねぇんだわ」

 

「自覚してないんだろうけど、異常性癖だからね、それ」

 

「何………だと………」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 自分のこだわりが異常性癖であると指摘され狼狽する黒死ネキ。

 【棺】に憧れがあると言われても、一般受けはしないのは残念ながら当然であった。

 

 そして、ショタおじは呆れつつも色々と納得はしたようで、今後の話に入った。

 

 

「まぁ、黒死ネキの癖の話は置いておいて、話は理解したよ。で、その【モト】はどうするつもりなのかな?」

 

「ああ、予定とは少々違ったが、この【モト】をカード化してもらって良いか? 言っていた通り、私の専用式神のペルソナにしたい」

 

「あてがあるって言ってたのって、まさかの【モト】の事だったんだね。はい、どうぞ」

 

「感謝するぞ、ショタおじ」

 

 

 ショタおじの軽い言葉と同時に、その場で存在感を放っていた【モト】は一瞬でカードと化し、黒死ネキの手元へと納まった。

 黒死ネキは満面の笑顔でそのカードを眺め、大事そうに懐へしまい込んだ。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「さて、それじゃあ、お説教自体はさっきの確認の時にしたし、お仕置きの話に移ろうか」

 

「え?」

 

「『好きにして良い』とは確かに言ったけど、わざと曲解して無茶やって良いとは言ってないしね」

 

「え?」

 

「自分より格下の雑魚からならまだしも、完全に扱いきれていない【モト師匠】から無理やりガワを剝ごうとしてのは、ノーペナって訳にはいかないしね」

 

「え?」

 

「実際、平気そうにしているけど、魂レベルでボロボロでしょ? まぁ、単に『疲れてる』ってだけみたいだし、ちょっと休めば問題ないね」

 

「え? いや、ちょっと、まさか……」

 

 

 だんだんと自分にとって不都合な話に進み始め、焦りを見せ始める黒死ネキ。

 ダメだ、これ以上言わせてはいけない。このままでは自分の楽しみが……

 

 

「と言う訳で、これから一週間は『厳しい方の覚醒修行』への参加は禁止だね。まぁ、普通に魂の休養期間にしてもらうよ」

 

 

 そして下される絶望の宣告。

 

 

「なあッ!? 待って、ショタおじ!! それだけは!! 私の毎日の楽しみが!! 心の栄養が!!」

 

「ダメ。一応、今回みたいな無茶をしないなら、普通に修業場で悪魔狩りをするのは構わないから」

 

「そんな!? 酷いぞ、お前には人の心が無いのか!?」

 

「いや、あるからダメ出ししてるんだからね?」

 

 

 かつてない程取り乱し、ショタおじに縋りつく黒死ネキだったが、 ショタおじの決定は覆らない。

 そもそも、無茶をして魂が疲弊しているのは黒死ネキの責任なので、ショタおじが休養を言い渡すのは当然であり、駄々をこねた所で覆る筈も無いのだが。

 

 

「そんな……そんな……うあああああああああああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「おいおい、マジ凹みしてるぞ」

 

「何が酷いって、これ『厳しい方の修行』が受けられないから、ってのがまた」

 

「あの地獄を好き好んで受けに行ってるってのはマジだったか~」

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

「うううう、あんまりだ。こんな酷い仕打ちがあって良いのか……」

 

「黒死ネキ……」

 

「セツニキか……それに、皆も……」

 

 

 ショタおじも去り、未だ落ち込む黒死ネキ。そんな彼女の肩を叩くセツニキ。

 振り返れば修羅勢たちもいる。

 改めて見てみれば、何故か皆、良い笑顔で自分の事を見ているではないか。

 これには黒死ネキも思わず笑顔になる。

 

 そうだ、こんな可憐な少女が人の心を持たぬ外道に虐げられたのだ。

 いかに普段からノリと勢いだけで生きている修羅勢と言えど、きっと慰めて───

 

 

 

「「「「「ざまぁ!!」」」」

 

 

 

 ───くれるような奴がこの場に居るはずも無かった。

 

 

 

 むしろ、落ち込んでいる奴が居れば、からかって怒らせてノリでバトルするまでが様式美ですらある。

 流石にガチでお労しい案件なら悪ふざけはしないが、今回は黒死ネキ(クソガキ)の自業自得であり、彼女が落ち込んでいるのは本当でも、それはむしろ『ツッコミ待ち』であり、彼女の本性を知るセツニキはもちろん、他の修羅勢も何となくそれを感じ取っていた。

 

 故に、ノリで動く。この場はそういう連中の巣窟なのである。

 

 

「………………」

 

 

 黒死ネキは笑顔のまま固まり……否、よく見るとコメカミあたりが『ビキィ!!』と音を立てて血管が浮き出ているように見える。

 しかし、激昂する事無く笑顔のまま修羅勢たちを振り返り、スン、と真顔になる。

 そして───

 

 

 

「きもい(ガチトーン)」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 ───オタクへの即死呪文を放った。

 

 

 

「うぐぁああああ!!」

 

「いやあああああ!!」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

 

 

 こうかはばつぐんだ

 

 

 

 それと言うのも、黒死ネキはAPP17~18の超美少女で、その顔立ちは極めて整っており、そんな彼女が行う真顔での罵倒は、前世においてオタクと呼ばれる人種が大多数である『俺たち』には必殺の効果があったからだ。

 よく『美少女の罵倒はご褒美』などと言う戯言があるが、あれは二次元やネットの掲示板だからこそネタになるのであって、現実(リアル)で実行されると、それはか弱いオタク心をズタズタにする凶器なのである。

 

 一番質が悪いのは、それを理解した上で実行する黒死ネキだって? それはそう。

 

 

「おま!? それはダメだろう!?」

 

「反則!! 反則ですぅううう!!」

 

「この悲しんでる人たちを見て、酷いと思わないのか!!」

 

「ん~~? 落ち込んでいる可憐な少女をからかう外道には相応しい扱いだが?」 

 

「「「「「お前が言うな」」」」」

 

 

 

「「「「「………………………」」」」

 

 

 

 双方、沈黙。 そして───

 

 

 

「「「「「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA」」」」」

 

 

 

 ───大笑い。 からの───

 

 

 

「「「「「ぶっ殺す!!!!」」」」」

 

 

 

 ───いつもの。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 そして、星祭神社の入り口にて、修羅勢に新たな一員が加わり、少し遅めの()()()が始まった。

 

 

 

 なお、翌日に『巫女さんたちに迷惑をかけた』とちひろネキから説教されるまで、残り12時間。

 

 

 

 

 

 

*1
プレスターンバトルにおいて、自身の行動回数を増やす。

*2
味方全体の全能力値を一段階向上させる。

*3
四足獣ではなく、ネコマタを犬モチーフにしたような美しい獣人の姿の悪魔

*4
元ネタはFGOのヴラド三世(ランサー)。代名詞でもある『串刺し刑』の具現。【貫く闘気】+【ジャベリンレイン】+【地獄突き】+【ルナトラップ(相手は逃走できなくなる)】+【シバブー(対象を『緊縛(BIND)』状態にする)】。アライメントがDark寄りなら威力が増大し、Law寄りなら拘束力が増大する。

*5
病は感染すると言う概念の悪用。自身の『情報』をゲーデの権能で死を通して把握した上で、コピーした『情報』に【変化】でMAGから構築した肉体を持たせた文字通りの『もう一人の自分』。条件を満たせば他者の肉体も利用可能。

*6
オリジナルスキル。首なし騎士(デュラハン)の権能の再現。対象を指さす事で対象の脳内にカウントダウン(40秒)を発生させる。カウントがゼロになった時点で対象を耐性を無視して即死させる。

*7
雑魚の虐殺でMAGを貯め、今回のスキルの連続使用の為の外付けMPを確保したり、『情報』の蒐集の確度の向上を図ったり、等々







お読みいただき、ありがとうございました。



はい、モト師匠に酷いことするクソガキの図でした。

前話で「モト師匠NTR」が結構すんなり受け入れられてびっくり。
もっと「ショタおじの式神をパクれる訳ねーだろ」ってなるかと覚悟してたんですけどね?

一応、黒死ネキの想定していた手順としては
・殺しまくって情報をコツコツ抜く。
・抜いた情報が100%になったら、それを基にガワだけ確保して悪魔カードにする。
・ショタおじ製の式神部分の簒奪とか、情報があってもレベル的にも技術的にも無理。情報だけ抜いて放置予定。

だったんですが、モト師匠自身が「ショタおじが好きにして良いって言ったなら受け入れる」「せめて存在した証は残したい」でNTRを受け入れました。
この辺も含めてマジモンのNTRにw

黒死ネキがチートとは言え、ショタおじとの差を考えれば、その技術を無理やり蒐集しようとすれば、そりゃ頭がパァンする訳です。
けど、「あの棺、絶対欲しい」と周到に準備をしてGETしてしまうと言う事態にw


さて、次話以降はいよいよ黒死ネキの専用式神の作成に入ります。
カオ転三次名物にようやく着手ですね。遅すぎ? 私もそう思いますw

お楽しみにお待ちいただけると幸いです。




・黒死ネキ(四条 灯)
「いや、NTRつもりは無かったんだが」などと話しており……
当初はモト師匠をヤり捨てするつもりだった外道。
結果的にNTRになって、もっと外道な事になる。
分身の頭を破裂させながら延々と作業ゲーしたせいで魂が疲弊。
そのせいで日々の楽しみが一週間禁止に。
オモチャを取り上げられたクソガキそのものな状況になる。残当。


・ショタおじ
言質を取られたせいで、モト師匠が脳破壊される。
「いや、俺もこんなことになるなんて思わなかった」などと話しており……
黒死ネキへの処遇は「いや、そりゃそうでしょ」と思っている。


・修羅勢の皆さん
美少女からご褒美をもらって阿鼻叫喚。
いや、実際にされて喜べるか? 無理だろ。
最終的にいつものドタバタに落ち着く。
で、ちひろネキからの説教まで含めていつものパターン。





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