【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。

評価バーが赤いって凄く恐れ多いですね。
評価してくださった方々、誠にありがとうございます。

……これ、皆様がロリカードのガワとヤベェ癖の主人公によるバイオレンスシーンを望まれているとは理解していますが、残念ながらしばらくは回想シーンなのよね。
1話目に繋がる過去に何があったのか、今しばしお付き合いください。



第3話 他者の回想を映像として理解できるのは特殊能力だろう?

 

 

 

私の名前はミナ。ただのミナです。

 

特に高貴な生まれでもありませんし、特別何かに秀でている訳でもありません。

お人好しな父と優しい母との間に生まれた私は、子供の頃から街の小さな教会で行われるミサが好きでした。

子どもの頃は良く分かりませんでしたが、私の通っていた教会はいわゆる普通の教会で、世間では最近はメシア教が勢力を増しているようでした。

 

そんな私も年頃になり、恋人のジョナサンと結ばれることが出来た時は本当に幸せでした。

ジョナサンはメシア教のご両親との間に生まれて、結婚前まではメシア教の信徒だったのですが、教義に疑問を感じていたらしく、私との結婚を機に「原点を確かめたい」と改宗……いえ回心*1したのです。

何でも「救世主は敬うものであっても、信仰の対象にすべきではない」「キリスト教徒を名乗るなら、信仰の対象は主だけのはずだ」との事です。

え? それって当たり前ですよね? 

 

信ずるものが同じになったからでしょうか? 私たちはそれまで以上に仲睦まじく日々を過ごす事が出来ました。

そして、これも主のご加護なのでしょう。私の中に新しい命が宿ったのです。

お腹の中ですくすくと大きく育ち、検査で女の子だと分かり、名前はどうしようかとジョナサンと一緒に楽しく悩みました。

そして、予定日まで後数週間となったある日、ジョナサンの所属していたメシア教の教会から司祭を名乗る方が訪ねて来られました。

 

 

「久しぶりだな、ジョナサン。息災だったか?」

 

「・・・・・・はい、おかげさまで妻のミナと健やかな日々を過ごしております」

 

「そうか、それは何よりだ。そんなお前と奥方に、今日は朗報を持ってきたのだ」

 

「朗報?」

 

「喜べ、ジョナサン。我らメシア教の守護天使様より、お前たち夫婦の間に生まれる子供は聖母(まりあ)様となるであろうと予言が下されたのだ」

 

「・・・・・・は? マリア様、ですか? 救世主(メシア)様の御母堂の?」

 

「そうだ。これは素晴らしい事なのだ。お前たち夫婦の子は、()使()()()()()()()()聖母(まりあ)様となり、いつの日か来たる救世主(メシア)様の一助となるであろう」

 

 

この司祭様が何を言っているのか、私には分かりませんでした。

まるで邪気のない笑顔で話す司祭様が、何か人ではない何かに思えてしまい、知らず足が震えていました。

ジョナサンを見ると、司祭様の言葉に一瞬の喜びを見せて、その後に深い後悔を滲ませた苦しそうな顔をしていました。

 

 

「・・・・・・それは・・・・・・喜ばしい事ですね、ですが、私たちは・・・・・・」

 

「何を迷う事がある。袂を分かったとは言え、お前も元は救世主(メシア)様をお迎えする為の神の僕。そんなお前の子が神の使徒たる天使様のお役に立てるのだ。こんな素晴らしい事はあるまい」

 

 

「・・・・・・えっと? 司祭様? 私のお腹の中の、この子が?」

 

「うむ。そなたの腹の子は、きっと救世主(メシア)様をお迎えする為の一助となろう」 

 

「しかし、余りにも急な話ではありませんか。せめて生まれてから何年かは子供の資質を確かめてからでも……」

 

「そんな事は必要なかろう。守護天使様のお言葉を疑う余地などないわ。良いか、お前たちの前へ近日中に守護天使様がご降臨なさるであろう。お前たちは将来の聖母(まりあ)様であるその子を守護天使様へと捧げるのだ」

 

 

それだけ言って、司教様は帰って行き、後には呆然とする私とジョナサンが残されました。

え? どういう事なんですか? 私たちの子供が聖母(マリア)様になるの?

 

「・・・・・・違う!」

 

「え?」

 

「違う! あいつらの言う聖母(まりあ)様は、決して聖母(マリア)様の事じゃない!」

 

 

そしてジョナサンの話してくれたことは、にわかには信じがたい事ばかりでした。

聖書の中のお話とばかり思っていた天使様が実在する事。

その天使様は悪魔と総称される人外たちの一種に過ぎない事。

天使様を名乗る悪魔たちの主導によって、メシア教によって行われてきた神をも恐れぬ凶行の数々。

そんな私には信じがたい凶行としか思えない事も、ジョナサンが言うには氷山の一角に過ぎないのだと。

ジョナサン自身も噂に聞いた程度で、彼のような一般の元信徒には直接の関りはなかったが故に、悪質な噂話だと思おうとしていたのだと。

日々きな臭くなるメシア教の関連施設を見て、教えに疑問を感じたからこその回心だったと言うのです。

 

 

「さっきの司祭の話で確信した。噂は本当だったんだって。聖母(まりあ)様なんて、言い方を変えただけで卵を産ませる鶏みたいな……いや、もっと酷い事を人に強要しているんだって」

 

「そんな……」

 

 

私は恐ろしさに身体が震え、無意識に大きくなったお腹に手を当てていました。

このお腹の中の子が? まだ見ぬ我が子が? 生まれる前から天使を名乗る悪魔の慰みものになる事が決まっていると言うの?

 

 

「・・・・・・逃げよう」

 

 

振るえる私の肩を抱いて、ジョナサンが言いました。

彼もまたその声を震わせていますが、それでもはっきりとした決意を感じる声でした。

 

 

「残念だけど、僕たちだけじゃメシア教とは争えない。僕たちがが働いている町の教会へ行こう。あそこあならメシア教の息がかかっていない中立の組織とも繋がりがあるはずだ。日本は法治国家だ。メシア教だって表立って法律を破るような事はしないはずだ」

 

「……そ、う、ですよね。きっと……大丈夫ですよね」

 

 

きっと彼自身もそれで何とかなるとは信じていないのでしょう。けれど、私だって代案なんて思いつきません。

か細い希望ですが、座して終わりを待つわけにはいきません。

お腹の中のこの子の為にも。

 

 

 

 

 

 

「どこへ行こうと言うのかな?」

 

 

あと少しで私たちの働いている教会へとたどり着く。そう思っていたのに。

教会へと続く道に繋がる交差点。ちょうど人通りが少なくなるその場所に、あの司祭は立っていたのです。

そんな、どうして? あと少しだったのに……

 

 

「……もちろんこの先の教会ですよ。神の僕である私たちが教会へ向かう事が何かおかしなことなのでしょうか?」

 

「ええ、おかしいですね。奉仕しに行くにしても、懺悔をしに行くにしても───」

 

 

無邪気にも見える笑顔は張り付けたまま、けれど、どこか人を見下るような目つきをして司祭は話を続けます。

 

 

「───そんな()()()()()()()()()()()格好で、だなんてねぇ?」

 

「………………」

 

 

正直、苦しい言い訳だったのはジョナサンだって分かっているはずです。

けれど、何とかしてこの場を脱しなければ……

 

 

「司祭様、これは……」

 

 

 

「おお、なんという事だ! 袂を分かったとは言え、かつての同胞がこのような背教者だったとは!」

 

 

 

「え?」

 

 

ジョナサンの話を遮って、司祭が突然の大声を上げました。

まるで部隊演劇でもしているかのように、大仰な身振りで()()が続いていきます。

 

 

「私は確かに伝えたはずだ。お前たちの前へ守護天使様がご降臨なさるであろう。お前たちは将来の聖母(まりあ)様であるその子を守護天使様へと捧げるのだ、と。それをお前たちは、我が身の私欲のために台無しにしようとしている。こんな愚かな事があろうか!? 守護天使様が仰られたのだぞ? この救い無き世で恐れ多くも、有り難い事に我らを導いて下さる()()()()()()()()守護天使様がだ!」

 

 

え? 何? 私たちは何を聞いているの?

司祭の言葉には今までも微かに違和感を感じていましたが、ここまで明らかにおかしな言い方はしていなかったのに。

けれど、私も一神教で神に仕える者だから感じた違和感がはっきりしました。

 

 

()()()()()()()()()()()()。 ()()()()()()()()便()()()()()()。 ()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 

 

「……司祭様、貴方は主に背いているのですか?」

 

 

ジョナサンもその事に気が付いて、思わず口にしてしまったのでしょう。 

けれど、それは軽率でした。

 

 

「口を慎め、愚かなる背教者よ」

 

「がっ!?」

 

「ジョナサン!?」

 

 

突然ジョナサンの後ろに現れた鎖帷子を身に着けた()()()()()人外が、ジョナサンを地面に引きずり倒し、押さえつけたのです。

もしかして、これがメシア教の天使だと言うのでしょうか? こんな恐ろしいモノが?

 

 

「おお、天使様。お手数をおかけしましたね」

 

「同士よ、礼には及ばぬ。お前も必要とは言え、あのような演技などせずとも良い。それよりも早急に聖母(まりあ)様とその母体をお連れするのだ」

 

 

演技? あれが? 天使はそう言っていますが、あんな狂気を演技で見せる事が出来ると言うの?

嘘だ。()()()()()()()()()()()

恐い。あちらの天使(悪魔)よりも、こちらの司祭の方が。

 

 

「さて、余り手間を取らせてはいけない。守護天使様は間もなくご降臨なさる。恐れる必要などないのだ。お前たちのような愚かな背教者でも、きっと守護天使様が導いて下さるのだ」

 

 

そう言って司祭を名乗る()()()()()は、私へその手を伸ばしてきたのです。

 

嫌だ。怖い。助けて。

ジョナサンは天使に押さえつけられてもがいています。

私は身重で満足に逃げる事も出来ないでしょう。足もすくんで動きません。

ああ、神様……

 

 

「神よ、どうかお助け下さい!」

 

 

私は思わず、()()()()()()()()()叫んでいました。

 

 

 

 

 

 

「良いですよ、助けてあげましょう」

 

 

それは、とても綺麗な声でした

 

 

「えっ?」 「なっ!?」 「おお、この御声は!」 「何だと?」

 

 

今まで生きてきた中で最も美しく、最も心を震わせる響きも持って、その言葉が私の耳に届きました。

私だけではなく、この場の全員がその声を聞いたようで、ジョナサンは驚愕の表情を、司祭は歓喜の表情を、天使は戸惑いの表情をしていました。

 

そして、私が感じたのは恐ろしさと悍ましさ、畏怖と絶望でした。

 

 

 

その綺麗な声には、隠し切れない……いえ、隠す気など無いとしか思えないほどの───

 

 

 

「ひれ伏しなさい。迷える子羊さんたち」

 

 

 

───心弱き者への悪意に満ちていました。

 

 

 

そして、私たちの周りに輝きを放つ銀と黒の光が降り注ぎ、()()は人のカタチを成していきました。

 

形容する言葉が見つからないほどの美貌。

どんな宝石よりも輝く碧眼。

光よりも輝いて見える銀の髪。

大人でも子どもでもないが故の、危うい完全さを思わせる理想の体つき。

 

きっと、()()は今この世界で一番美しいものに違い無いのでしょう。

()()以上に美しいものなんて、想像もできません。

 

けれど、私はとても()()をヒトと思う事はできません。

先の天使を除いて始めて見る……それでも、比べる事すら無意味なほどに隔絶した差しか感じない、()()は───

 

 

「初めまして。皆さんを助ける守護天使様ですよ」

 

 

───きっと、真に悪魔と呼ばれるべき存在なのですから。

 

 

 

*1
神に背いている自らの罪を認め、神に立ち返る個人的な信仰体験のことを指す





お読みいただき、ありがとうございました。

主人公の過去編に他人の回想シーン挿入するって正気?
ちゃんとギミック盛り込んでるから良いんだよ。

本当は1話でまとめたかったんですが、結構長くなりそうだし、執筆ペースが保てそうにないんでキリが良い所で分割します。
ツッコミどころが満載過ぎる? ネタの過剰供給辞めろ?
残念だけど、これカオ転三次なのよね。

こんな作品ですが、今後も楽しんでいただけたら幸いです。




・主人公
とある女性視点の映画を鑑賞中。



・ミナとジョナサン
帰国子女の日系二世です。姓は別にハーカーさんじゃありません。
ガチ一般人。一神教徒と元メシア教徒だけど、裏側にはかけらも関わっていませんでした。
転生者なんて孕んじゃったのが運の尽き。
仕方ないよネ、ここメガテン時空なんだし。



・司祭
黒い肌って言われるまで白人をイメージしてた人、引っかかってくれてありがとうございます(ゲス顔
一応、覚醒済みですが、才能は精々ロバです。
名前? 特に設定していません(マジ



・天使(アークエンジェル)
木偶



・お美しい守護天使様
APP:22 
これ以上だと話しかけても見とれられて呆然とされるだけだから、あえて抑えました。
私って気遣いの出来る良い女でしょう?
合言葉は (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! 


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