【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
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今回は黒死ネキとエドニキによる、専用式神の仕様についての詳細を詰める回です。
ちょっと設定解説がクド過ぎるかな? けど書かないと描写に説得力がなぁ、と言うジレンマ。
ガイア連合 アイテム製造部 式神製造班
毎日がデスマーチと言っても過言ではない部署であり、常に大量の『俺の嫁』の制作依頼を受けており、ショタおじの分身を過労死させ続けている最大の要因とも言える部署である。
ガイア連合に所属する転生者たちは『理想の嫁』『理想の相棒』『理想の従者』等々の夢を見て、日々覚醒を目指す者、新たなる嫁を得ようとする者等、己の欲望に素直過ぎる者たちが多く、製造途中の専用式神を見ても、まさに多種多様と表現するしかない様相を呈していた。
そんな式神製造班の一室にて、製造班のトップであるエドニキと、依頼者である黒死ネキは話し合っていた。
「先日伝えた通り、今日は私の専用式神の制作依頼に来させてもらった。仕様書を書いてくるつもりだったのだが、用意できた素材の関係やショタおじへ制作の一部を依頼した事もあって、この場で直接話を詰めた方が間違いが無いと思ってな」
「ああ、仕様書だけあっても後から変更とかされるより、こっちの方が助かるな。今回はどんな式神にするのか詰めていくって事で良いな?」
「それで問題ない。それはそうとエドニキ、製造部の責任者が直々に受付とはな? まさか発注者全員の窓口にでもなっているのか?」
「流石にそんな時間は取れないし、それだと新人が育たないだろ。今回は発注者があんただからだよ、黒死ネキ」
「私だから?」
「ああ、今のガイア連合で修羅勢を始めとした元カンスト組*1は、既にほぼ全員が専用式神持ちだ。で、最初の一体を手に入れた奴の追加依頼は基本的に後回しになるからな。だから新しく依頼される専用式神は、発注者は大半が覚醒したばかりのレベル1の奴らで、式神の素材は基本はこっちで用意してある物しか使ってないし、持ち込み素材って言えば精々が発注者の髪とか爪だけなんだよ。だから俺らベテラン組が担当しなくても、ノウハウを身に着けた新人らに任せても問題なかったんだが……」
「ああ、今回は私だからとは、そう言う意味でか」
「そう言う意味だな。黒死ネキ自身がレベル42*2とか言う強さで、各種悪魔の希少素材やらも大量に持ち込んでくれてるしな。流石に新人には荷が勝ち過ぎだ。それに、ペルソナ搭載型の式神は探求ネキのところの久遠*3で経験済みとは言え、まだまだ俺ら製造班も経験値が足りてないから、まずはトップの俺が経験しておきたいってのもある」
「まずはトップが学び、新人へ教導できるようにする、か。道理だな」
「聞いた話じゃ、搭載するペルソナに使うのは『資格試験』の【モト師匠】を、ほぼそのまま悪魔カードにしたものなんだって? 規格外過ぎるだろ。 ……あと、その如何にもヤバそうな『黒い箱』は何なんだ?」
「ああ、式神との相性や性能の向上として、私自身の血肉を素材にするのが良いと聞いていたからな。
「……え? この20cm四方くらいのガラス張りの立方体の中にか?」
「そうだな。【モト師匠】の情報を蒐集する際に、私の分身体が50人程死んだのでな。折角だから再利用しようと
「いや、お前、どこの怪盗
「別に中身の観察目的で作った訳では無いのだが? そちらの手間も省けると思って作ったんだぞ?」
「ああ、うん。めっちゃ恐いけど、確かに見た限りだと概念抽出も完璧だし、もう俺らが手を加えるまでも無くこのまま使えるな。どうやったんだ、これ?」
「私自身が死者の情報管理には長けていると自負しているのでな、そう難しいものでは無かった。だが、これはどちらかと言うと技術ではなく権能頼りでな。残念だが他人に教えられるものでは無いな」
「そっか。なら残念だけど仕方ないな。んじゃ、お言葉に甘えてこのまま使わせてもらうわ」
専用式神の為に、自分自身の腕を切り落としたり、首を切り落として胴体と四肢を全て利用したり、戦闘で千切れ飛んだ肉体を数人分の体積になるまで保管したりと、一部のガンギマリどもは何人も見てきたエドニキであったが、一切の気負いなく自分の死体50人分を圧縮して持参した奴を見るのは初めてだった。
内心で「ヤベェって。マジで恐ぇ」と思いつつ、素材として見れば、出来自体は下手をすれば自分が加工するよりも上等な状態であり、サイズも中身が液状であろう事を考えれば、むしろ加工しやすいとすら言えた。
ちょっと複雑な心境になりつつも、無理矢理自分を納得させつつ、エドニキは話を進める事にした。
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「では、そろそろ詳細を詰めさせてもらおうか」
「ああ、まずは黒死ネキの希望する専用式神の形状からだな。人型とか獣型とか、希望はあるか?」
「棺型だな」
「は?」
「棺型だな」
「何て?」
「棺型だな。そろそろ帰って来い。別に人型ではない専用式神など、珍しくも無いだろう?」
「いや、棺型とか始めて言われたわ!? 吸血鬼系の俺らでもそのリクエストは無かったぞ!?」
「何だ、意識の低い連中だな。大事だろう、棺」
「……いや、黒死ネキにとっちゃ重要なのかもだけどなぁ?」
さも当然の様に「棺は大事」と語る黒死ネキ。
あまりにも自然に語るので、一瞬「そうかも」と思いそうになるも、持ち直すエドニキ。
とりあえず、希望があるのは良いとして、確認はしておく。
「俺はてっきりセラス*5とかウォルター*6にでもすんのかと思ってたんだがなぁ?」
「それを考えなかったとは言わないが、どちらも私の求めるものと違ってな」
「違うって、想定される運用とかか?」
「そうだな。まず私自身の戦闘スタイルは、いわゆる『デバフアタッカー』だ。魔法も特殊スキルも使うが、基本はデバフと物理攻撃だな」
「それは俺も聞いてるな。【穢れ】関係が異様に達者なんだって?」
「仮に式神をセラスやウォルターの姿にして、元ネタ通りの戦い方をさせた場合だが、それだと
「ああ、確かに」
『HELLSING』の原作において、セラス・ヴィクトリアは吸血鬼としての身体能力のよる近接攻撃と、
共に物理一辺倒であり、黒死ネキの
ウォルター・
だが、そもそもそんな技を再現できるのかは疑問だし、仮に出来たとしても、やはり物理一辺倒である。
かと言って───
「セラスやウォルターの姿の式神に魔法を使わせるのは、その、何だ?
「だよなぁ……」
───解釈不一致のものをわざわざ作るのも、納得がいくはずがない。
「私が式神に戦闘面で求めている性能は、各種『属性魔法』と、身を守れる程度の『頑丈さ』、付け加えるなら何かしらの『サポート系の魔法かスキル』だ。残念ながら、セラスやウォルターでは解釈違いと言うやつだな」
「納得したわ。こればっかりは仕方ねぇか。で、その三つの条件を満たしてるのが【モト師匠】で、『棺型』にして欲しいって話に繋がる訳か」
「そういう事だな。まぁ、単に私が棺で寝たかったからと言う理由も無いでもないが」
「おいおい…… ああ、そうだ。ペルソナ搭載型にするにあたって、式神本体は本当に生き物の形を取らなくても大丈夫か? 前例が少ないから器物型の式神にペルソナを宿しても問題ないかが分からなくてな」
「降魔するのが【モト】で器が『棺型』である以上、相性的には問題無いとは思うが、対策は講じてある」
そう言って、黒死ネキは懐から三枚のカードを取り出した。
【スキルカード】と呼ばれる装備や式神、ペルソナ使いやデビルシフター等に外付けでのスキル修得を可能とする代物だ。
「【変化】と【擬態】、加えて私の【魔装術】のスキルカードだ。併用する事で本体が器物であろうと、問題は無くなる」
「【変化】と【擬態】は分かるが、その【魔装術】ってのは俺もまだ聞きかじった程度なんだが、要は『自分の霊核に、ペルソナとかデビルシフト能力を利用したガワを纏わせる』スキルって認識で良いのか?」
「ペルソナもデビルシフト能力も、要は自身の潜在能力だ。それらを自分の意志で引き出し、コントロールするスキルだな。主な使い道は霊核に纏う事による自己強化だ。そこに【変化】を併用して好きな姿を取れるようにしている。【擬態】を併用するかは好みにもよるな。このように……」
そう言って黒死ネキは実際に自身の姿を【変化】させて見せた。
ローティーンの少女の姿は黒く霞がかかったようにぶれ、その形状を別物へと変えていく。
その【変化】が終わると、彼女の姿は、20代前半程の女性のものへとなっていた。
長い黒髪は同じだが、その髪型は後ろへと流したオールバックに。
整い過ぎていた幼い顔立ちは、やや面長のソバカスの浮いた人間的なものに。
その口元からのぞくのは、明らかに人のものでは無い尖った牙の群れに。
そして、普段の姿の時には掛けていなかった眼鏡もいつの間にか身に着けていた。
衣服も同じフォーマルでもロングスカートではなくパンツスタイルとなっている。
その姿は───
「……それは、『HELLSING』のリップヴァーン*7か。マジでどんな姿にでもなれるんだな」
───黒死ネキの外見である少女姿のアーカード、通称ロリカードと原作を同じくする、『魔弾の射手』リップヴァーン・ウィンクルの姿だった。
「姿形など、どうでも良い事。大切なのは本質でしょ? 私は私だし、他の何物でもないし、有象無象の区別も必要ないわ」
「きっちり声も変わって、ご丁寧にロールプレイもか。劇場型なこって」
「誉め言葉として受け取っておくわね。デモンストレーションは十分だったかしら?」
「ああ、並の【変化】とか目じゃねぇな。大したもんだわ」
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そして、黒死ネキも普段の姿に戻り、エドニキによる【魔装術】の把握と理解は進んで行く。
「えーと、普通のデビルシフトが昭和の仮面ライダー的な『一時的にでも人間を辞める変身』で、【魔装術】は平成以降の仮面ライダー的な『人間のままで強くなる変身』って認識で良いか?」
「かなり大雑把だがその認識でも大丈夫だな。要は『霊核が別物になるか否か』だからな。実際、平成以降の仮面ライダーとか、人外もポンポン変身しているが、別にあいつらが人間になった訳じゃないしな」
「ああ、確かに」
やや強引な解釈ではあるが、この手の複雑なスキルは例えを用いて理解に努めるのも有用だ。
今回は【魔装術】による変化であれば、霊核や霊基は別物にはならないと言う点が重要だった。
「これらのスキルを式神に付与する事で、『本体は器物だが、式神としての霊基にペルソナと言う潜在能力を纏わせ、生き物の姿を得る事で
「よく武器式神に【変化】をつけて人型にしている奴らがいるが、こっちはそれだけじゃ無くペルソナを問題なく搭載して運用できるかって点が重要だからな」
「私としても、多機能な棺は欲しいが、そのままで運用とか無駄に目立つマネはするつもりは無いしな。対外的には人型と言う事にしておくさ」
「まぁ『棺に変身できる人型』よりは、『人型に変身できる棺』の方が、黒死ネキの主目的からすれば妥当だわな。納得したぜ」
「ついでに言うなら、今回使用する【モト】の悪魔カードは、式神としての【モト師匠】の霊基も含まれているからな。『本体の棺』と『人としての姿』を同時に存在させられるぞ。二体ではなく、二重存在だな。戦術的な幅も広がって結構な事だ」
「ああ、そういう事になるのか。ますます貴重なデータになりそうだな。イメージ的には……あれか、『ロスト・ユニバース』のキャナル*8とソードブレイカーみたいな関係で同時に存在させられるのか」
「ああ、上手い例えだな。概ねそんなイメージで間違いないだろう。別にメンタルモデル*9とかでも構わないが」
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「んじゃ、肝心の棺型式神のスキルとデザインだな。……いやまぁ、用意された素材とか、黒死ネキの概念情報とか、【モト師匠】の悪魔カードとかで既にインフレ気味なんだが」
「用意したスキルカードは【魔装術】【変化】【擬態】【隠蔽】【偽装】【閉鎖】【循環】【異界構築】【環境構築】……他にもあるが、このあたりが主だったところだな。やはり空間拡張はマストだろう。寝床としてだけではなく、保管庫やセーフハウス的な使い道も想定できる」
「言いたい事は分かるしロマンも分かるが、棺って何だっけ? あと【異界構築】と【環境構築】とか何処から来たんだ?」
「先日、探求ネキとの技術交流*10で
「まぁ、ほどほどにな」
完全に色んな意味で黒死ネキに目をつけられている探求ネキに内心同情しつつ、エドニキは苦笑を隠して話を続ける。
「【モト師匠】由来だから【獣の眼光】と【ラスタキャンディ】は何とかなるな。各種『属性魔法』も中級くらいまでなら初回作成でもいける。耐性は流石に【全属性反射】とか【物理反射】は初回作成じゃ無理だな。それでも【全門耐性】とか破格だとは思うが」
「元々主目的は棺としての機能だ。戦闘面でも初回からそれだけ盛れば十二分だとも」
「だな。こっから先は生まれてからの成長に期待だろう。言うまでも無いが、大事にしてやってくれよな」
「言わずもがなだな」
「あと、人間形態の時に使わせる装備とかはどうする?」
「ああ、それについては……」
その後も二人は更に式神の機能について詳細を詰めていき、概ね滞りなく話はまとまる。
制作に必要な日数も見通しが立ち、いよいよ最後のデザインについての話となった。
「やっぱ基本デザインは西洋風の……って言うか、アーカードの棺みたいなデザインで良いのか?」
「基本はそれで良いが、刻む文字は私風にアレンジしてもらいたい」
「確かにイメージ違うしな。何て刻むんだ?」
そして、黒死ネキこと四条灯が望んだ文章は───
【memento mori】【carpe diem】
───『
お読みいただき、ありがとうございました。」
はい、流石に棺のまま連れまわすとか周囲がドン引きじゃ済まないし、折角【魔装術】とか【変化】とかあるので人間形態も用意するよとう話です。
それに、ペルソナを搭載するなら、生き物としての姿がある方が問題が起きないでしょうし。
黒死ネキのガワがロリカードなので、作者も当然セラスとかウォルターとか、何ならインテグラとかも式神の外見候補として考えてはいましたが、黒死ネキ的に戦闘の際に欲しいのは『属性魔法』な訳でして。
解釈不一致の攻撃手段の式神にするか、自分と攻撃手段が被っている式神を作るか、素直にそれ以外にするかの選択で、黒死ネキは三番目を選んだわけですね。
そもそも、自分自身が吸血鬼って訳じゃ無いから解釈不一致とも言えるので。
早ければ次話、遅くともその次くらいで、黒死ネキの式神の人型を披露できるかと思います。
式神本体は、黒塗りに文章が印字された棺です。
人間形態は、既存の版権キャラから選びました。別にオリジナルではありません。
よろしければ、ガワが誰なのか、想像しながらお待ちいただければ幸いです。
・黒死ネキ(四条 灯)
いよいよ専用式神の制作に着手。エドニキに趣味全開で希望を伝えている。
流石に普段から棺を連れまわすほど非常識では無い。
出来上がるまでの期間は気ままに過ごす予定。
・エドニキ
こんな制作依頼、新人どころか中堅にも任せられない。
真面目な話、全てが特殊過ぎる依頼だが、希少データの蓄積としては是非経験しておきたい依頼でもある。
作成に当たって黒死ネキから色々とスキルの解説も聞けて学びが深まった。