【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。

作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。


チャイカの誕生から少し時間が空いて、日常風景を描写しようかと。
で、黒死ネキの事を良く知らなかったら、恐らくこう言う場面もあるのではないかと言う感じの話になりました。




第33話 これからモーニングに行くのに、道端に落ちているゴミを拾い食いする奴などいないだろう?

 

 

 深い眠りより意識が浮上する。

 最初に感じたのは閉塞感。四方全てを文字通りの壁で覆われ、身じろぎする程度のスペースしか確保されていないのだから当然だ。

 同時に感じたのは安堵感。自分の居場所が、望み手に入れた理想の寝床である事を再確認できたのだから。

 それらを自覚すると同時に意識は完全に覚醒し、目の前の()に手を伸ばして()()()()()

 その動作を合図に、私が眠りから覚めた事を悟った()()が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、私が棺から身を起こすのと同時に、私の専用式神である棺の隣では【魔装術】*1による人型の形成が行われ、銀髪の少女の姿となって顕現する。

 

 

「おはよう、チャイカ。相も変わらず、()()()()()()は最高だったぞ」

 

「おはよう、灯。その言葉、感謝。最高の気分」

 

 

 そう言って朗らかな笑みを見せるチャイカ。

 【会話】のスキルカードが組み込まれているにも関わらず、話し方が片言なのは、本体が(器物)だからなのか、あるいは私の認識する『チャイカ・トラバント(元ネタ)』に似せようとしているのかどちらなのだろうな? あるいはその両方かも知れないが。

 

 

 「灯、身だしなみ整える。私に一任する」

 

 「ああ、任せる」

 

 

 チャイカは私の()()()()()を棺から持ち上げ、【変化】により一部を黒い椅子の形状とした棺に座らせると、まるで精密機械でも扱うかのような手つきで、温タオルによる顔の整容と身体の清拭を行っていく。

 【捨食の法】*2と【食没】*3を修得している私の身体は、老廃物の排泄などしないのだがな? そこは従者としてのこだわりがあるのかもしれないので、チャイカの好きにさせている。

 

 

 「完了。灯、今日も完璧」

 

 最後に櫛で髪をとき、私の身体の身だしなみを整え終えたチャイカが宣言する。

 服は元々着ていないので、身体と髪の清拭だけの身だしなみなどすぐに終わる。

 

 

「ご苦労。では───」

 

 

 私も【魔装術】を発動させ、ペルソナ能力により具現化するヴィジョンを悪魔の物ではなく人の肉体へと【変化】させ、人間の霊核へと纏い肉体とする。

 同時に悪魔変身能力による肉体変異を【魔装術】により掌握し、MAGを喰わせて黒衣として現実へと具現化させ、この身に纏う。

 小さな赤子の身体は、前々世のと同じローティーンの少女のそれとなり、纏う衣服は漆黒のスーツと赤いネクタイ、漆黒のロングスカートとブーツと言うフォーマルな組み合わせだ。

 

 

「───あらためて、おはよう、チャイカ。今日もよろしく頼むぞ」

 

「うぃ、任せる」

 

 

 一瞬で着替えが終わるのが【魔装術】の利点の一つだ。

 おかげで未だに私服の一着も持っていないが、些細な問題だな。

 

 ……いや、悪魔の虐殺で手に入れたドロップ品の装備とか、時々モニターを頼まれるアイテム製造部の試作品などはあるのだがな? 高レベルの一員として配布された、修羅勢用のシャツとチノパンと下着類のセット*4とか。

 性能の程は───

 

 装備可能レベル:1~ 推奨装備レベル:30~

 スキル:【環境適応】*5 【清潔】*6 【再生】*7 【自動調整】*8 【同化】*9

 

 ───と、ポストアポカリプス的な終末対策の一環として、着たきり雀でも大丈夫な衣類をコンセプトに開発されたそうで、実際に中々の高性能なのだが、残念ながら私の場合は【同化】の部分がネックになる。

 デビルシフト時の【同化】となると、私の場合は【魔装術】との併用になり、それ自体は可能ではあるのだが……それはつまり、私の放つ【穢れ】の内側に衣服を取り込む形になる訳で?

 高性能ではあるが、この程度の概念強度で耐えられるはずも無く、一度試してみた際にはスーツのインナー的な形で【同化】して、即座に()()()

 ……あれは正直思い出したくないな。スーツの内側でインナーが壊死してドロドロに崩れ落ちて霊核にへばりつく感覚とか、これまでのどんな死に方よりもおぞましかったのだが? 思わず悲鳴を上げた私は悪くない。

 

 私の場合は【穢れ】だが、イフリートとか雷獣的な変身先のデビルシフターも同様の悩みを抱えているのではなかろうか。

 他の装備品も同様で、迂闊に【同化】させると即座に【穢れ】に触れて概念的に死ぬ以上、基本的に死蔵するしかない。

 着ている衣服や装備が一瞬で収納出来るようなアイテムとか無いだろうか? ペルソナで作った肉体の部分だけなら、【同化】させずに普通に着る事自体は出来るのだがな。

 

 

 閑話休題

 

 


 

 

 

 「さて、朝食も済んだことだし、まずは……」

 

 

 本体である私の就寝中の情報収集とスキル練度の向上に回していた分身を集合させ、サクッと殺して情報蒐集をしつつ、私自身にフィードバックさせ経験も含めて統合させる。

 

 

「【感染拡大・自己増殖(インフェクション・マイン)*10

 

 

 そして新たに二体の分身体を生み出し、同様に情報収集とスキル練度の向上に回す。

 私が現状で生み出せる分身は五体*11。一体はショタおじの所で式神の核作りのアシスタントだ。

 何回か過労死しているが、おかげで霊的操作技術の向上が凄まじいな。

 残りの二枠は、戦闘時の切り札として温存だ。このスキルは練度が上がれば上がるほど生み出せる分身の数も増える。シンプルに有用なスキルと言えるな。

 

 

「灯、今日の予定、確認」

 

「日課*12は午後からの予定だから、午前中は異界でチャイカの性能確認とレベリングだな。面白そうな依頼があれば受けてもいい」

 

「うぃ、頑張る」

 

「では、出発するか。普段通りの格好で良いぞ」

 

「うぃ、【変化】起動。本体のサイズ、縮小」

 

 

 チャイカの言葉に反応し、本体である棺のサイズが【変化】していく。

 全長2300mmの巨大な棺は三まわり程小さくなり、チャイカの背丈よりも少し大きい程度のサイズとなる。

 【変化】の過程で生成された、棺の底部に取り付けられたベルトにチャイカは腕を通し、一気に棺を背負い上げる。

 これにより『見目麗しい銀髪の少女が、身の丈程の棺を背負っている』と言う構図の完成だ。

 棺単体での運用だと悪目立ちするが、これなら『原作再現』と勝手に周囲(転生者)は判断するだろう。実際それを意識しているからな。

 まぁ、チャイカが式神で棺はオプションではなく、実際には棺が本体でチャイカの姿は投影されたホログラフの様な物なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 修業場異界への入り口へ到着すると、朝から異界へ潜る者達で賑わいを見せていた。

 すれ違う者達はチャイカの背負う棺を見て一瞬ギョッとしてこちらを見るが、チャイカの元ネタを知る者は納得した表情を浮かべ、知らぬであろう者も「ああ言うキャラが居るんだろうな」と自己完結した表情を見せていた。

 普段は日課の『厳しい方の覚醒修行』は午前中で、ここに来るのは午後からだからな。今日は私たちを見慣れていない者も多かったようだ。

 まぁ、私たちはほぼ毎日ここに通っているんだ。その内慣れて当たり前になるだろう。

 そして、受付に向かって歩いていると、見知った顔を見かける。相手もこちらに気付いたようで駆け寄って来た。

 

 

「おはようございます、黒死ネキ。そちらが専用式神の……白チャイカか~、てっきり『HELLSING』のキャラにするのかと思ってましたよ」

 

「おはよう、脳缶ニキ。よく言われるな、それ。考えなかった訳では無いが、私が第一に求めたのが棺で、チャイカはその擬人化に際して最もイメージに沿った姿と言うだけだぞ」

 

「ああ、順番的に棺が先な訳か。確かに棺の擬人化なら、チャイカはありですね。そっか、黒死ネキってデバフアタッカーですもんね。相方にするなら魔法使い型になるか。僕もホントなら未来*13が良いんだけど、前衛が必要なんで専用式神はエレジー*14にするつもりですよ」

 

「それはそれで皮肉の利いた人選だな。それはそうと、ここ一月ほどは姿が見えなかったようだが?」

 

「ええ、実はショタおじの所で【封魔管】の使用と作成、あと【アイテム作成】について勉強してました。【捨食の法】と【捨虫の法】*15って便利ですよね。ようやく合格点も貰ったし、過去の清算*16も済んだんで、その時に作ったこの子と一緒に専用式神の素材の吟味がてら、軽く異界に潜ってみようかと思って」

 

 

 そう言って脳缶ニキが封魔管から呼び出したのは、ピンク色の小型グリフォンとでも言うべき仲魔。デビチルのベールと言えば、分かる者も多いのではないだろうか。

 

 

「ほう? 中々良い出来の『眷属』じゃないか。やはり後々進化するのか?」

 

「今はまだ可愛いだけの空飛ぶハロだけど、そのつもりですよ。一応レベルは5だし、入り口くらいなら大丈夫でしょう」

 

「まぁ、脳缶ニキも一緒なら確かに入り口なら問題無いな。ふむ、レベルは近いか…… 脳缶ニキ、もし良ければだが───」

 

「……あ、あの!! 突然話しかけてすいません!! 黒死ネキさんですよね!?」

 

 

 脳缶ニキにとある提案しようとしていたら、突然見知らぬ男に話しかけられた。

 中肉中背なのだろうが、妙に猫背なせいで実際より小柄に見えるな。髪もあまり手入れがされていないらしくボサボサだ。話し方も態度もオドオドしていて、それも必要以上に卑屈な印象を与えていた。

 

 

「……そうだが、お前は?」

 

「あ、えっと、すいません。名乗るほどの者じゃ無いんです。本当にすいません。……えっと、実は僕、【変化】のスキルカードがどうしても必要で!! それで、この間のガチャの時に【変化】のカードを提供していた黒死ネキさんなら、用意できるんじゃないかって、その……」

 

 

 【変化】のスキルカード。

 数あるスキルカードの中でも『人権』として扱われ、需要に対して供給が追い付かない物の一つだ。

 主に『人型()()()()専用式神』に自分好みの嫁や婿の姿を取らせる為に求められる事が多く、たとえ『人型の専用式神』であろうと、二体目を迎え入れるのに下手をすれば数年待ちともなれば、その時々の気分で自分の嫁や婿を好きな姿に出来る【変化】のスキルの需要は高くもなるだろうな。

 汎用性は【擬態】の方が上だが、あれは基本的にガワだけで、感触や内部構造までは変わらないからな。()()()()のなら、やはり【変化】の方が望ましいのだろう。

 実際に私もチャイカに使用しているし、自身でも普段から活用している。

 

 

「ああ、【変化】目当てか。等価交換(トレード)なら受け付けるが、売買は星祭のベルフェゴール*17との兼ね合いもあるので断らせてもらっているぞ」

 

 

 この男の()()()()()は分かっているが、敢えてテンプレート通りの対応をする。

 それに、本気で【変化】が欲しいのなら、所持者が納得する物とトレードするか、金銭で買い取れば良いので私の言葉は正当だ。

 だが、金銭での売買に関しては、私がガイア連合に参入する以前から、連合の契約悪魔の一柱であるベルフェゴールがサービスの一環で【変化】と【擬態】の高ランクスキルカードの作成依頼を、()()()()500万マッカで受け付けている。

 自作しようと思えば、今の修羅勢でもトップクラスの連中でないと潜れない深さのエリアからしか必要素材が入手出来ないし、そもそも作成難易度が高い。

 それを素材込みで、マッカのみの支払いだけで作ってもらえるというのだから破格ですらある。

 まぁ、ベルフェゴールにとっても、このくらいはサービスしても良いだけの恩恵を普段から得ていると言う事なのだろうな。

 だからこそ、後から来た私がベルフェゴールの領分を犯すのは筋違いになる。当人同士が現物でトレードを行う分には問題ないが、私が商売のような形で【変化】や【擬態】のスキルカードを流出させるのは下手をすれば敵対行為だ。組織の一員として、そのような行為をするわけにはいかない。

 

 

「……えっと、その……そこを何とか………その……」

 

「知っているかもしれんが、【変化】ならガイア連合の契約悪魔であるベルフェゴールにマッカを積めば作ってもらえるぞ? たったの500万マッカで確実に手に入るから、金を貯めるだけで良い」

 

「そ、そんな!? 500万マッカなんて大金、とても用意できませんよ!?」

 

 男のその言葉に、私の隣にいたチャイカは小首をかしげ、「何を言っているんだろう?」と言う表情を浮かべた。

 そして、自身の中で納得がいったのか、ポンッと手を叩き、男を指さし───

 

 

「貧乏人?」

 

 

 ───と、中々失礼なことを口にした。

 ここでまさかの原作再現か? 『棺姫のチャイカ』の原作を知っている脳缶ニキもちょっと吹き出しているな。

 

 

「……いやまぁ、こいつが貧乏かどうかはさておき、500万くらいなら三か月も頑張れば貯まるだろう?」

 

「いやいや、黒死ネキ。流石に三か月じゃ無理ですって」

 

「そうか? 私の一日の稼ぎが平均5~6万くらいで、調子が良ければ10万を超えるぞ? 三か月もあれば余裕だろう?」

 

「それ修羅勢の、しかも黒死ネキクラスが潜ってるエリアで、毎日悪魔を大量虐殺したら溜まるって額ですよね?」

 

「まぁ、他より多くを殺している自覚はあるが、そこまで大差はないだろう? 現に他の連中も似たような稼ぎをしているぞ?」

 

「それ、同じ修羅勢の、それもトップクラスの人たちですよね?」

 

 

 何やら周りから「これが修羅勢」とか「毎日虐殺……」とか「噂は本当だったのか…」とか聞こえてくるが、解せぬ。潜るエリアに違いこそあれ、日銭を稼ぐのは当然だろうに?

 とは言え、この男は修羅勢では無いし、見るからに戦闘に向いていないのも確か、か。

 なら、確かに三か月と言うのは無理か。

 

 

「どちらにせよ、欲しい物があって、金を貯めれば手に入るのなら、そうすれば良いだろう? 何も問題無いな」 

 

「そ、そうですけど、そうじゃ無くて……」

 

「おいおい、さっきから聞いてたら、ちょっと薄情なんじゃねぇか?」

 

 

 しどろもどろに言葉を続けようとする男に割り込むように、何やら粗野な男が割り込んで来た。

 地毛では無く、明らかに染め上げた金髪。見た目だけなら多少は鍛えられた身長180㎝程の身体。特に統一性も無く耳や唇に付けられたピアス。猫背と言う訳では無く、小柄な物を見下す為のやや前屈みな姿勢。総じて『チンピラ』と呼ばれるような外見の男だな。

 

 

「お前は?」

 

「誰だっていいじゃねーか、そんな事。それよりさぁ!!」

 

 

 そう言って金髪男は卑屈男の肩に手を回し、自分の方に引き寄せ、さも親しげな友人の様に話し出す。

 

 

「ちょっと酷いんじゃねぇの? こいつがこんなに困ってるんだから、ちょっとくらい融通を聞かせてやってもいいじゃねーか。聞いたぜ? お嬢ちゃん、【変化】のスキルカードをいくらでも出せるんだろ? 『ガチャ』の景品に時々寄付してるらしいじゃん? なら良いじゃねーか、減るもんじゃあるまいしさぁ?」

 

 

 横から「うわぁ、分かりやす過ぎ」とか言う脳缶ニキの声が聞こえてくる。うん、私もそう思うぞ。今時、と言うか、よりによってこの場で、こんな分かりやすい馬鹿が湧くのか?

 

 

「『ガチャ』の景品に寄付しているのは所属組織への貢献の一環であって、別にボランティアと言う訳では無いな? そもそも、私は誰かの為に無料奉仕をするつもりなど元から無いぞ?」

 

「おいおい、だからそれは薄情だって。 貢献っていうなら、こいつだって立派な組織の一員なんだぜ? そんなお仲間が困ってるんだから、助け合うべきじゃねーの? ほらほら、沢山持ってるんだったら、ちょっとくらい分けてくれたってバチはあたらねーって、なぁ?」

 

 

 ふむ、私の事を知る者は、金髪の事を馬鹿を見る目で見ているし、私をよく知らない者は、子供がチンピラにカツアゲでもされているように見えているんだろうか?

 この手の輩は真面目に相手をしたところで無意味で、時間の無駄になるだけだし、適当に処理して……

 と、ここで髪男を見ていたチャイカが、自身の中で納得がいったのか、ポンッと手を叩き、金髪男を指さし───

 

 

「たかり、乞食、物乞い、お貰いさん、薦被(こもかぶ)り、ルンペン!!」*18

 

「んな!?」

 

 

 ───と、本来ならば嘲りや蔑みの為に用いられる言葉を、そんな意図を全く感じさせずに突きつけた。

 これらの言葉を概念としては知っていても、実例は知らず、珍しいものを見て喜んでいる子供の様な雰囲気だな。

 実際にチャイカは私の専用式神として()()()()()()()、まだ一ヶ月も経っていない。

 そして、その人格の基盤である【モト師匠】は、かつて相対してきたのはレベル30越えの修羅勢たちだ。自分で稼ぐことが出来ない甲斐性無しなど居ないのだから、この金髪男のようなロクデナシが本当に珍しかったのだろう。

 そして更に───

 

 

「貧乏人。納得。貧乏人!!」

 

 

 ───と、それが正しい認識だと喜び確認する、無邪気な子供そのものの態度で、金髪男にビシッと擬音付きで指を突き付けた。

 

 

「ちょ!? てめぇ───」

 

 

「ぶははは」「くすくす」「マジかよw」「事実陳列罪w」「チンピラ涙目w」「ざまぁw」

 

「───なっ!?」

 

 

 チャイカの言葉と態度にいきり立ちかけた金髪男だが、周囲の者たちの言葉に出鼻をくじかれたようだな。

 何だ? まるで、「見た目が怖い自分が舐めた態度を取られるのは初めてだ」と言わんばかりだな?

 ああ、もしかしたら本当にそうなのかもな。実に滑稽で哀れな事だ。

 この場に居る者の大半が()()()()()()()()()()()()()()()()()()など、想像する事すら出来ないか。

 

 

「なぁ、お嬢ちゃん、お友達が失礼過ぎやしねぇか? こいつはキチンとワビ入れてもらわねぇとなぁ!?」

 

「ただの事実だろ」

 

「…………あ"? 今、何つった、てめぇ!?」

 

 

 金髪男が凄んで来るが、チャイカの情操教育の素材としての役割も果たしてくれたことだし、()()()諭してやることにするか。

 

 

 金髪男の眼前に手をかざす。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あ?」

 

 

 戸惑うだろうな。自分に全く認識できない間に、特段速く動いた訳でもない私の手が、いつの間にか目の前に現れていたんだからな。

 そして、戸惑いこちらに視線を向けた金髪男に、()()()()()()()()

 

「あ……」

 

 

 途端に勢いを失い、意思を失ったかのように棒立ちになる金髪男。

 まぁ、予想はしていたが、何の抵抗も無かったな。人形相手に練習している気分だ。

 

 

「意図を話せ」

 

「あー…… どいつもこいつも【変化】のスキルカードってのを欲しがってやがるから、手に入れれば高く売れると思った。黒死ネキってガキが持ってるって聞いて、ちょっと脅せば簡単だと思った」

 

「こっちの黒髪との関係は?」

 

「あー…… 前世? 良く分からねぇけど、前の頃からの奴隷で、こっちでもたまたま一緒だったから、またこき使ってやってる。こいつが「覚醒者になれば」とか、俺に逆らう算段を立ててやがったんで生意気だと思って、こいつの邪魔をして、俺の方が先に覚醒? ってのをしてやった。そっからは、今まで以上にこき使ってやってた」

 

 

 この辺りで周りからは金髪男に対して向けられる感情は、嘲りから嫌悪感へと変わっているな。

 残念ですらない方の当然だな。

 

 

「あまりにも予想通りだと、つまらないを通り越して感心するな?」

 

「ほんそれですね。それで、()()はどうするんです? てっきり殺しちゃうもんだと思ってましたけど」

 

「別にどうもしないぞ? こいつが自力で()()()()()()()か、私より優れた術者に解呪してもらうまで()()()()なだけだ。良いんじゃないか? 他人に迷惑を掛けず、()()()()()()()()()()()()生きていくのも。あと、これからモーニング*19に行くのに、道端に落ちているゴミを拾い食いする奴などいないだろう?」

 

「「「「うわぁ……」」」」

 

 

 何故か周りはドン引きしているようだが、解せぬ。処置が寛大過ぎたか?

 別に私は殺人鬼というわけでは無いぞ? ちゃんとTPOをわきまえているだけだ。

 

 

「あ、あの……黒死ネキさ………あ、いえ、何でもないです。すいませんでした……」

 

 

 黒髪の男が何か言いかけていたが、()()()()()()()、特に何も言わずにトボトボとその場を去って行った。

 何だ? 別に殺意も敵意も向けてはいないのだが?

 

 

「あー、多分だけど、『()()()()()()()()()()()()()()()』って悟って、その事実に耐えられなかったんじゃないですかね?」

 

「ああ、そう言う? まぁ、好きに生きれば良いな」

 

「うーん、ドライ。けど、残当かな」

 

 

 実際、特に興味は無いしな。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、先程は言いそびれたが、脳缶ニキ」

 

「はい?」

 

「ちょうどチャイカとそちらのレベルも近いようだし、適正エリアでの他パーティとの連携も経験させたいのだが、ひと狩りどうだ?*20

 

「お、良いんですか? 是非是非~」

 

 

 さて、午後のお楽しみに備えて、モーニングを食い散らかしに行くとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
自身と契約する事により、術者の意志で潜在能力を自在にコントロールして引き出し、霊核に纏う術式。この際、種族的な変容は起こらない。悪魔変身やペルソナの暴走による肉体変容により一時的にでも人間を辞めている昭和の仮面ライダーとするのなら、【魔装術】は人間のままで強くなる平成以降の仮面ライダー的なものと考えれば、大きくは違わない。

*2
空気中の魔力やMAGを吸収する事で、肉体の維持に食事を必要としなくなるスキル。必要としなくなるだけで、普通に飲食は可能。【捨虫の法】は修得すると肉体の成長が止まる為、こちらは敢えて未修得。

*3
緋咲虚徹様 作 【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく  より。探求ネキの著した建体飽食技典により修得。トリコに登場する技法を再現した独自解釈技術で、基本は生命活動に必要な栄養を、マグネタイトとして蓄える技術であり、本人の霊力操作技術が高いほど、多く蓄えることが可能になる。HPやMP等のリソースを消費する技を使用した際、蓄えたマグネタイトが減少したリソースを回復させるため、実質的に予備タンクを増やす技術。

*4
Lilyala様 作 【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録  より。 

正式名称:ガイア連合山梨支部対終末対策霊装その3(衣類) 

*5
常に着用者が快適に過ごせる温度に保つ。

*6
浄化より範囲が狭い代わりに効果が高い。

*7
耐久度が少しづつ回復する。

*8
小柄な人から大型の人まで、体にあったサイズとなる。

*9
デビルシフター系の霊能者が変身時、肉体と同化する。変身解除後は着用済みの状態で分離する。

*10
病は感染すると言う概念の悪用。自身の『情報』をゲーデの権能で死を通して把握した上で、コピーした『情報』に【変化】でMAGから構築した肉体を持たせた文字通りの『もう一人の自分』。条件を満たせば他者の肉体も利用可能。

*11
レベルが上がって更にもう一体作れる分身が増えた。

*12
厳しい方の覚醒修行

*13
要 未来。デビチル赤の書の主人公でルシファーと人間のハーフでメシア。ボンボン版はルシファーの娘ではないっぽいがデビルチルドレンだった。謎。

*14
デビチル黒の書・赤の書に登場するサブキャラ。原作ではヒロイン感も無く出番も少なく直接戦うことも無い。ボンボン版ではヒロイン感を出しつつ前線で暴れまわるアゼル(アザゼル)の娘。

*15
捨虫のいう「虫」とは道教の三尸の事で、人間の体内にいるとされる上尸・中尸・下尸の三つの虫。これらを捨て去る事により、肉体的な成長が止まり、不老長寿となる。

*16
ポポァ様 作 【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ  より。自分と家族をメシア教に売った叔父を抹殺した。

*17
Lilyala様 作 【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 より。 外見はシャドウバースのベルフェゴールで、黒髪で片目を隠した隻眼の妖艶美女。自身の神話の改変を望み、ガイア連合及びセツニキと契約を交わしている。【発明補助】の権能で曖昧な『夢』に発想を与え、『形』に変えて堕落させる【怠惰】の象徴存在。彼女の改変前の描写がある書籍を回収して神話改変に協力するとボーナスが貰える。

*18
大体全部同じ意味で使用される言葉。他人に物を恵んでもらう行為やその人を指す。

*19
異界に潜って悪魔の虐殺

*20
モンハン用語。「ひと狩いこうぜ!」より。主に居酒屋にでも誘うノリで狩猟や冒険に出かけること、またはその行為そのものを指す。





お読みいただき、ありがとうございました。


時系列的には

1日目
 黒死ネキが【モト師匠】をNTR。魂の疲弊の回復がてら、1週間の『厳しい方の修行』がおあずけに。

4日目
 黒死ネキの魂の疲弊が完治。専用式神の素材の準備に入る。

6日目
 エドニキに専用式神の発注。

7日目
 脳缶ニキがガイア連合に参入。

8日目
 おあずけが解除。脳缶ニキと一緒に疑似地獄で蟲毒の100年を過ごす。

9日目
 脳缶ニキは1日寝込む。黒死ネキは普段通りに過ごす。

10日目
 脳缶ニキが【封魔管】と【アイテム作成】について勉強開始。 
 【捨食の法】と【捨虫の法】を先行して覚える。

13日目
 黒死ネキの専用式神が完成。チャイカ誕生。

14日目~21日目
 黒死ネキが棺での寝心地を堪能。チャイカの日常生活面での慣らし運転。

22日目~40日目
 脳缶ニキが【封魔管】と【アイテム作成】を修得。叔父を抹殺し、ベールを作成。
 黒死ネキが異界でチャイカを順調にレベリング。

41日目
 二人が一ヶ月ぶりに再会。レベルは下記の通り。
 黒死ネキ(46) チャイカ(20) 脳缶ニキ(18) ベール(5) 
 チャイカと脳缶ニキのレベルが近いし、ちょっと適正エリアで連携テストしない? って感じの流れになります。

本来なら作中で描写すべきかもですが、無駄に冗長になるし、黒死ネキの一人称だと難しいんで、後書きダイジェストで。


異界での稼ぎについて
深層で安定して狩れるようになれば、時給100万マッカとかになるらしい。
んじゃ、下層なら日給20~30万くらいとして、中層なら日給4~5万くらいなら不自然じゃないよね?
黒死ネキの虐殺ペースなら、もうちょい上方修正で。
と、こんなざっくりとした計算です。そこまで大きく違いはしないだろうと思います。
まだ表層、上層、中層、下層、深層の呼び名になっていなかった時代です。



・黒死ネキ(四条 灯)
【変化】のスキルカードを生み出す事が可能な人材の一人。
けど、ベルフェゴールが居るから先人の商売を邪魔するつもりは無い。
トレードには普通に応じてくれるので、【変化】目当ての修羅勢からは金が貯まるのが先か、黒死ネキが喜びそうなアイテムが手に入るのが先か、みたいな感じになっている。


・チャイカ
今回の「貧乏人!!」は原作初期に普通に言っている。
世間知らずのお姫様が概念でしか知らなかったロクデナシを見たら、こんな感じになります。
悪気? 一切無いよ。
敬愛するご主人様に毎日『自分の中』で寝て貰えて幸せ。
次話で戦闘シーンとか描写出来たら良いな~


・脳缶ニキとベール
専用式神の発注前に、気分転換がてら、ちょっと素材を吟味に来た。
友好的な関係の高レベル覚醒者が監督してくれる状況での適正エリアでの狩りとか、反対する理由がマジで無い。普通にありがたく同行する。
金髪チンピラと黒髪陰キャ? 存在自体をあっさり忘れた。


・金髪チンピラ
黒死ネキの瞳術にほぼ無抵抗でかかる。
道端に落ちてるゴミと認識され、だからこそ殺されずに済んだ。ある意味幸運?
これからは人の言う事を素直に聞いて生きていく事でしょう。
もし友達がいるなら解呪の為に奔走してもらえるかも知れないけど、黒死ネキの状態異常系スキルを解呪できる人とか、ショタおじ以外だと、この時点じゃセツニキと探求ネキ、ワンチャンでミナミィネキくらいしか居ないかも知れない。つまり無理。


・黒髪陰キャ
金髪チンピラに脅されて黒死ネキに絡みに来た奴。
この手の関係の奴って、どうして脅してくる奴よりも強い奴に絡みに行けるんだろうね?
金髪チンピラから助けてくれたと勘違いしかけるも、黒死ネキの自分を見る目から何の興味も持たれていないと察してトボトボと退場。
人生逆転のチャンス? 欲しけりゃ自分で頑張れ。ここはメガテン世界だ。


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