【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。

何か今話は予めある程度書いていたとは言え、普段よりも筆が進みました。
年末年始はリアルが忙しいのでしばらく更新できませんので、キリが良いところまで頑張ろうと思ってはいましたがこの辺が限界ですね。
それでは、今後とも本作をお楽しみください。



第4話 ゲームマスターとは、理不尽を強要する腐れ外道の総称なのだろう?

 

「良いかいミナ、神様は頑張る人を見守って下さるけど、そうじゃない人を助けてくれたりはしないんだ」

 

「え? 神様ってみんなを助けてくれるんじゃないの?」

 

 

幼い日に父と話した些細な会話。

祈りとは何であるのか、まるで理解していなかった頃の話。

 

 

「神様は……主は助けを乞う者を助けたりはしない。慈悲を乞う者を救ったりはしない。それは祈りではなく、ただの陳情なのだから」

 

「お父さん、ちょっと難しいよ……」

 

「ああ、ごめんね。ミナにはまだ難しかったかな。そうだね、ミナはお願いとお祈りの違いは分かるかな?」

 

「えっと……分からない……です」

 

「お願いは分かるよね? 「こうなって欲しいな」「こうして下さい」って『()()()()()()()()()()()()()()()()』なんだ」

 

 

これはすぐに分かりました。

私も母に可愛いお人形さんを買って欲しいとお願いしたことがあります。

 

 

「お祈りは「こうします」「こう出来ました」って『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』なんだ」

 

 

これはすぐには分かりませんした。

誰かに聞いてもらうって言うのは神様ですよね?

けど、自分にも聞いてもらう?

 

 

「お願いは「自分じゃできないからやって下さい」って言ってるのと同じだろう? お願いは「結果だけを求める」ってことだ。お願いするばかりじゃ、どんどん『自分じゃ出来ない事』が増えていっていまう。悪い人に利用されちゃうかもしれないね」

 

 

父は一度言葉を切って私の目を見ました。

私がきちんと父の言葉に耳を傾けているのを確認すると、一番大事な事を語ってくれました。

 

 

「お祈りは『結果を手放していくこと』だ。『自分の意識』の向きを『するべき事』に向けるんだよ。意識の向きが変われば行動も変わる。行動から始めなくても、行動は後からついてくるんだ」

 

 

……やっぱり難しくて良く分かりませんでした。

えっと……えっと……

 

 

「はははっ、つまり、「ちゃんと自分でがんばりましょう」って事だよ。頑張る人たちの事を、神様はちゃんと見ていて下さる。だからミナも「頑張りますから見ていて下さいね」って思えばいいんだよ」

 

「あ、それなら分かったよ。 うんっ! ミナ頑張るね!」

 

「ああ、良い子だ」

 

 

そう言って父は私の頭を撫でてくれました。

 

 

 

 

 

 

ああ、そうです。

私は()()()()()()()()なのに……

 

 

 

 

 

 

Heaven helps those who help themselves.

 

天は自ら助くるものを助く

 

 

 

古くからあることわざで、意味は読んで字のごとくで、努力をすれば報われるというもの。

 

では、努力をしなかったものは?

 

いくら絶望的な状況だったとは言え、私はあっさりと自ら道を切り開くことを諦めてしまい、安易にも主に祈りとは名ばかりの陳情を口にしてしまいました。

主は助けを乞う者を助けたりはしない。慈悲を乞う者を救ったりはしない。

父が私に教えてくれた、大事な事だったはずなのに。

 

なら、私の失言を()()()()()()()()()()()()()()()この守護天使と名乗るモノは……

 

 

「……悪魔は天使の姿を借りて現れる……」

 

「おや、博識ですね。シェイクスピアですか? それとも、聖職者らしくコリント人への第二の手紙 11章 14番 ですか?」

 

 

美しすぎる少女の姿をしたモノが微笑みます。

何もかも投げ出して、縋りつきたくなるような綺麗な微笑みであるにも関わらず、隠すつもりもない侮蔑の響き。

 

 

「助けを求める子羊さんの声に来てみれば、これはこれは皆さん困った状況なんですね~。ここは一つ、この美しい守護天使様が、ばっちり双方納得の解決手段を提供してあげましょう」

 

 

胸の前でパチンと手を叩き、ひどく場違いな朗らかな口調で話を進める自称守護天使から目が離せません。

逃げなきゃいけないのに、見えない何かに押さえつけられたかのように体が動きません。

 

 

「待て、守護天使だと? 私は貴様のような天使は知らぬ。貴様には翼も無く、天の国に住まう者の気配もせぬ。天使の名を騙るなど、貴様は何を……」

 

 

ジョナサンを抑えていた天使が自称守護天使に顔を向け、思わずと言った様子で詰めかかりますが、きっとあの天使は気が付かなかったのでしょう───

 

 

「あ、木偶はうざいんで黙っててくださいね」

 

 

『ブレインジャック*1

 

 

「あ……」

 

 

───あの()()と自身との力の差に。

 

 

「ぐっ……くっ……」

 

天使は目から光が消えて、ジョナサンの傍で棒立ちになり、まったく動かなくなりました。

ジョナサンは恐る恐る立ち上がり、私の傍まで来てくれました。

それだけで、震えていた体が少し楽になったようでした。

 

 

「おお、守護天使様。ようこそ現世へご降臨なさいました。ですが、まともに歓待する事もかなわず、貴女様に捧げるべき聖女(まりあ)様の準備も間に合わず、恥じ入るばかりでございます」

 

「……うっわ、うざ。もっと別の端末にするべきでしたかねぇ、これ?」

 

 

司祭が涙を流しながら大仰な身振りで自称守護天使の悪魔の前に跪き、上気した表情で悪魔を見上げます。

……何か悪魔がボソッと呟いたようですが、聞き取れませんでした。

 

 

「さてさて、あんまり長々説明してると上位世界の視聴者さんたち*2から嫌われちゃいますし、サクサク話を進めましょうか」

 

 

 

 

 

 

「さて、まずは。っと」

 

 

そう言って、悪魔はこちらに掌を向けます。

え? 何? 掌を向けられているのは……ジョナサン!?

 

 

「あ!? がぁ! こ、れは!?」

 

 

ジョナサン!? いったい何が!?

 

 

「あなた、さっきそこの木偶に抑えられてた時に、神様を呪ったでしょう? 「こんな酷い事をするなんて~」って。うわぁ、罰当たりですねぇ。神をも恐れぬ所業ですよ~? 大体、あのクソ四文字がいちいちこんな些事で動くわけないじゃないですか」

 

 

この場の誰よりも罰当たりなセリフを吐きつつ悪魔は嗤います。

ジョナサンに何を!?

 

 

「ですから、サービスで神様から見向きもされない悪魔に()()()()()()()()。これで彼は今日からイケメン吸血鬼! もう年も取りませんよ。究極のアンチエイジングですね!」

 

「う、あああああああああ!!!!」

 

 

ジョ……ナサ……ン……

 

ジョナサンの肌が健康的だった人の肌から、青白いものに変わっていきます。

短く切りそろえていた指の爪が、鋭く伸びていきます。

いつも優しかった眼差しが、鋭く恐ろしいものに変わっていきます。

そして……ああ、そして彼の口元に、長く尖った犬歯が……

 

 

「さて、これで試練(ゲーム)参加者の準備は完了ですね」

 

 

もう私にはあの悪魔の声はまともに聞こえていませんでした。

ジョナサン! ジョナサン!?

ああ、どうして!? 何故こんな酷い事が!?

 

 

「そして、次は試練の場(ゲーム盤)です」

 

 

悪魔がまた何かを口にして、私に向かって……いえ()()()()()()()()()その掌を向けました。

嫌っ!? 嘘です!? この子に酷い事をしないで下さい!

 

 

 

そんな私の願いも虚しく、悪魔の掌から放たれた黒い光が私のお腹に吸い込まれていきました。

 

 

 

ああああ……あああああああああああああ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

目の前に広がっていたのは知らない世界でした。

 

空には自然では考えられないほどに巨大な満月が青白く輝き、周囲は建築物としての原形を辛うじて留めたに過ぎない燃え盛る瓦礫の山が立ち並んでいます。

不自然なほどに先が見えない歪んだ空間と、今にも何かが生まれ落ちそうな大小様々な黒い歪みが見えます。

そして、私たちがいるのは、そんな異常な空間(異界)の中心点。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でした。

 

 

「準備が出来ましたね。それじゃあ、今から参加者全員に必要情報をインストールしますんで、張り切って試練(ゲーム)に挑んでくださいね~」

 

 

抑えきれない愉悦混じりの声が、()()()()()()()()()()()()

そして、予め知っていたかのように、知りもしなかった情報が知識として私たちの中に刻まれていきます。

 

 

「ああああああぁ…………いやぁああぁ……」

 

 

その情報と知識は、私たちを更なる絶望へと誘うには十分すぎるものでした。

 

 

 

 

 

 

守護天使の試練 必要情報一覧

 

参加者

・ミナ   :聖母(まりあ)候補の母親。人間。

・ジョナサン:聖母(まりあ)候補の父親。吸血鬼。

・転生者  :聖母(まりあ)候補。ミナの胎内の赤子。人間。

・司祭   :傍観者。狂言回し。キモい、ウザい。一応人間。

・天使   :木偶。何でいるの?

 

シナリオ

・普通に暮らしていた普通の夫婦に転生者な子供が出来ちゃった。

・子供を確保したいメシア教、司祭を派遣。

・「お前の所のガキよこせや」「えーやだー」

・夫婦は逃げるよ。当然だネ。

・逃げた先に何故か司祭と天使がいたよ。

・助けを求める普通の夫婦。

・神秘的に手を差し伸べる宇宙的美少女の守護天使。

・あら不思議、フツメンパパンがイケメン吸血鬼に大覚醒、ついでに不思議空間が発生しちゃったゾ

・異界に囚われた夫婦、出産前後に家族の絆が試されるゾ(ここ曇らせポイント)

 

異界の出入りのルール

・極めて隠蔽性の高い異界です。外部からは余程の事が無い限り発見されないでしょう。

・この異界から脱出するには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

・主の殺害に成功した場合、異界の出入口が開きます。

・主が自殺した場合でも出入口は開きます。 

 

異界の特徴

・出現悪魔は完全ランダム。主のレベルと周辺のGPに応じた強さの悪魔が湧きます。

・湧いた悪魔は、異界の主を殺す為だけの行動パターンとなります。

・主は湧いた悪魔に殺されても、異界のギミックにより蘇生されます。何度でも死ねるよ。

・主を殺害した者は、希望すれば主になれるよ。(←この設定で湧き悪魔の思考パターンを強制しています)

・主になれるのは人間のみです。 

 

異界の主

・初期設定は、ミナのお腹の中にいる()()()()()()()()()()()です。

 

 

 

 

 

 

「さて、それでは私はこれで失礼しますね。視聴者の皆さんは、このゲームの結末がどうなるのか、楽しく予想して見てくださいね」

 

 

 

 

*1
対象を中確率で洗脳状態にする

*2
このSSの読者の事ではありません





お読みいただき、ありがとうございました。

胸糞シーンで筆が進むのは作者の性格がクソだからだとは思いたくないなぁ。
はい、みんな大好き糞ギミック異界です。
このルールの異界で、どうやれば第2話に繋がって解決に至るのか、想像しながら次話をお待ちいただければと思います。

それでは皆様、良いお年を。




・主人公(まだ胎内)
とある女性の回想を鑑賞中



・ミナ
とにかく可哀想な一般人。
自分の失言で最悪なの呼んじゃったと落ち込み中。
けど、ここから先は落ち込んでる暇とかありません。



・ジョナサン
吸血鬼にされちゃった可哀想な人。
セリフが少ないけど、ミナさんの回想だから仕方ないっちゃ仕方ない。
理性? ちゃんと残ってますよ。その方が面白いでしょ?



・司祭
用済みだけど面白い事になる事を期待して放置された端末。
もうちょっとマシなの選べばよかったと反省中。



・天使(アークエンジェル)
操作してない時にラジコンが勝手に連れて来た木偶。
マジで要らないのでフリーズさせて放置した。



・守護天使様
たまたま見つけた誕生前の転生者が、既にいる転生者と比べても魂の密度が高い為、興味本位で親子共々ちょっと曇らせに来た。
「突発で単発セッションをしますんで、良かったら見に来て下さいね」
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