【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
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AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。
はい、今話から異界ツアーでの本会的なバトル回に突入します。
とは言え、「全滅はあり得ない」と保証付きですので、緊張感とかあんまり無いかもですね。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
ガイア連合山梨支部 星霊神社 修行場異界
現状、ガイア連合に所属する転生者たちが利用できるこの異界は、大きく分けて三種のエリアがある。
・レベル1~15までの悪魔の湧くエリア。 通称『前半』
・レベル15~30までの悪魔の湧くエリア。 通称『後半』
・レベル30~50までの悪魔の湧くエリア。 通称『不思議なダンジョン』*1
上記2つは同じエリアの前半、後半と言う別れ方をしており、前半は覚醒者であれば誰でも潜れるが、後半のエリアへ向かう為には、前半のエリアの最奥まで踏破する必要がある。
そして、自身のレベルを30以上にし、後半のエリアを踏破した者が『星祭神社本殿利用許可証取得試験』通称『資格試験』を突破する事により、3つめの『不思議なダンジョン』へ潜る事を許されるのである。
なお、現在はガイア連合への所属者も増え、修羅勢と呼ばれる『後半』で長くレベルがカンスト状態*2だった者たちから50人以上が『不思議なダンジョン』へと主戦場を移している。
また、『資格試験』の番人である【モト師匠】が諸事情*3により一時的に不在であった事と、新たなバージョンの【モト師匠】*4の作成に合わせ、これまでの異界を統合する予定との事。
これからは『前半』は表層、『後半』は上層、『不思議なダンジョン』は中層と呼称されていく事となる。
そして、現在は異界統合の為の準備期間であり、同時に移行期間でもある。
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「───顕れよ。 〈
チャイカ・トラバント───黒死ネキの専用式神である『棺』に宿るペルソナの【モト師匠】が【魔装術】と【変化】により顕現させている銀髪の少女───の魔法が放たれる。
これにより、発動体である
【エストマ】と【ラクカジャ】の複合術式を基礎とし、効果半径自体は小さく発動中の移動は出来ないが、それを縛りとする事で結界の強度を向上させた代物である。
「チャイカちゃんナイス! それじゃ、作戦タイムですね」
「この結界って、内側から外に攻撃って出来るの?」
「否定。こちらからの攻撃、結界の解除必要」
「そうなると、作戦とか結界限界ギリギリまで悪魔を集らせて、範囲攻撃をブッパした後は臨機応変に各個撃破しかないんじゃない?」
「チャイカちゃん、黒死ネキとはいつもこんな数の悪魔と戦ってたの?」
「否定。普段は同時に5,6匹。今回は灯が悪乗りした」
「「うわぁ……」
結界は強固であれど、内側からも攻撃できない仕様であり、周囲には自分たちと同じレベル帯の悪魔が群れを成していると言う状況。
現実的にとれる策は脳缶ニキの言う様に、範囲攻撃で出来るだけ数を減らしてからの各個撃破くらいのものだろう。
そうなると、次に確認するべきは───
「チャイカちゃんの最大火力は?」
「現状、強化魔法の後、【魔法思念弾】併用の攻撃魔法。けど、属性魔法、有象無象に同時攻撃、不向き。【メギド】を推奨」
「あ、【メギド】系も使えるんだ。それでさっきの特殊弾も併用って事は、ひょっとして【メギドラ】級の威力になったり?」
「肯定。けど、あの数の殲滅、恐らくは無理」
「そりゃそうだよね。僕の使える範囲攻撃って、【マハラギオン】と【マハムドオン】くらいなんですよね。単体攻撃なら【ムドダイン】までいけるんですけど」
「まだレベル20になってない事を考えたら十分過ぎるんだけど、現状だときついですね。あ、俺は近接、回復、補助がしょぼい範囲で一通りって感じです。獲物はコレですね」
そう言って見所ニキが取り出したのは、いわゆる大剣にカテゴライズされる大ぶりな剣だった。
攻撃力よりも扱いやすさと頑丈さに重きを置き、盾としての使用も想定しているのだと言う。
「それじゃあ、やっぱり作戦は基本に忠実な方向ですかね。見所ニキが前衛で、僕とチャイカちゃんが後衛。出来れば最初の範囲攻撃にもう一声欲しいけど…………あ!!」
そこで脳缶ニキは何かを思いついたようにチャイカの方を向き、とある提案をする。
「チャイカちゃん、もし良かったらなんだけど……」
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「そろそろ方針も決まったようだな。では、本格的に
そう言って、黒死ネキは悪魔の群れへと指示を出す。
この100匹程の悪魔の群れは、黒死ネキの【パンデミアブーム】*5により生み出された
とどのつまり、黒死ネキの操り人形も同然の有象無象の群れでしかないし、さほど複雑な指示が出来る訳でもない。
しかし、『襲え』と『止まれ』が出来ればそれで十分だ。
本日の目的はあくまでチャイカと他の面子との連携テストであり、その為には多勢に無勢である方が望ましいし、過程で3人が死んだとしても、それはそれで問題点の洗い出しと言う意味で意義はある。
そして、それを見守っているのは───
「ゼット、シンパイ、シンパイ……」
「………………」
───生まれたばかりで自我は薄いが、それでも自分の主を心配する声を上げる
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「状況開始。【ラスタキャンディ】*8【コンセントレイト】【魔法思念弾】………」
「それじゃ、見所ニキ、手筈通りに」
「正直、未だに納得出来てないけど、やるしかないか。死なないで下さいよ、脳缶ニキ」
その軽いやり取りの後、黒死ネキ主催による連携テストと言う名のサバイバルゲームは開始される。
「結界解除。 ───顕れよ!! 〈
防御結界が解除され、障壁に集っていた有象無象の悪魔どもがチャイカたち三人に襲い掛かろうとするその一瞬の停滞を狙い、チャイカの
発射から着弾まで0.1秒すらかかっておらず、魔弾は着弾した瞬間にその効果を発揮し、過剰なまでに強化された攻撃魔法は悪魔の群れの中心でその滅びの光を具現化した。
【メギド】は万能系の代表的な攻撃魔法であり、偏った属性を持たず、どんな悪魔にも通用する反面、決して威力が高いとは言えない魔法でもある。
しかし、そんな魔法でも事前に過剰なまでの強化を施せば、単なる【メギド】でもより上位の【メギドラ】以上に純粋な威力を発揮するのは単純な理屈だ。
そして、威力さえ確保できるのなら、万能系の攻撃魔法は『どんな相手にでも通用する強力な攻撃』として猛威を振るう。
そう───
「「「「「──────!!!!????」」」」」
───100匹の悪魔の群れの中央で発動し、直近20匹の悪魔を即死させ、その周囲20匹の悪魔を瀕死に追い込み、さらにその周辺20匹の悪魔に重傷を負わせることが出来る程に。
「チャイカちゃん、ナイス!! それじゃ、次は僕ですね~。いや~、【アイテム作成】の練習で作った試作品が日の目を見る日が来るなんてね」
そう言って脳缶ニキは自身の作成した封魔管を取り出す。
中に"ある物"が詰め込まれたソレを、後々『デビライザー』*9を目指すつもりで試作品として作った単発式の銃*10へと装填し、チャイカの一撃に混乱している悪魔の群れへと向ける。
「試作品の単発式『デビライザー』こと『
脳缶ニキの現在のレベルは19であり、本来であれば上級魔法はおろか、中級魔法ですら使用できるなら優秀と言える段階である。
にも関わらず、彼の手にする
本霊がベルゼブブである脳缶ニキの呪殺系への適性をもってしても、なお異常な魔力の高まりに、未だ混乱していた悪魔どもが我に返るも既に遅い。
「それじゃあ、僕の思い付きの実験に付き合って下さいね~。いや~、確実に対処してくれるって分かってるケツモチがいるって、どれだけ無茶苦茶やっても良いから気楽でイイネ!! 【CALL】!! 超々劣化【死蠅の葬列】もどき*12!!」
瞬間、脳缶ニキの……否、彼の手元を中心に扇状に暴発した闇が放たれた。
当然の様に
そうして
チャイカの
最初に
そこでほんの僅かに威力が弱まるも、それを受ける悪魔もまた、チャイカの
この段階になって、ようやく
そして、この時点で最初は100匹いた悪魔の群れは、60匹が為す術も無く死に絶え、残りも無傷の者はほぼ居ないと言う惨状に陥る事となったのである。
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「………うっわ、マジ? これで2人とも俺よりレベルが下って、何かの冗談としか思えないんだけど?」
余りと言えば余りの惨状を目の当たりにし、見所ニキは呆れた口調で独り言ちる。
先程のチャイカと脳缶ニキの2人の範囲攻撃は、いわゆる『術者が十分な時間をかけた結果』であり、いつでも咄嗟に使えると言う訳では無い。
それは分かっているが、現状の自分がどう足掻こうと不可能な業を目にし、思う事が無い訳では無い。
「場違いかと思ったけど、コレが見られただけでも着いて来て良かったかな。俺は俺でやる事をやらないとな!!」
嫉妬しない訳では無い。自分にはあのようなマネは出来ないのに、彼らは出来るから。
羨望しない訳では無い。自分にはあのようなマネは出来ないのに、彼らは出来るから。
しかし、見所ニキは意識する事無くそれらの感情を排し、ただただ「すごい」と言う
そして、差し当っての自分の役割を思い直し、残りの悪魔の群れとの接敵の前にするべき事を想定し直す。
「……っと、そうだ!! 脳缶ニキの手の治療!!」
先程のトンデモ範囲攻撃の結果、発動時に粉々にしてた脳缶ニキの両手を治療しなくてはならない。
自分が使えるのは【ディア】程度だが、それで治せるだろうか?
ほぼ間違いなくチャイカの方が、自分より優れた回復魔法を使えるだろうが、この状況であればチャイカには悪魔の群れが遠距離にいる間にもう一度くらいは攻撃魔法を使って欲しい。
ならば応急処置程度でも自分が受け持ち、しかる後に前衛として2人の盾になれば良い。
そう思って脳缶ニキの方を振り向くと───
「……え?」
───手が見えた。
その手は赤黒く染まっており、とても綺麗な形をしていた。
自分の武骨な手と違い、白魚のようなと言う表現が相応しい……否、それ以上に綺麗な形の手。
ああ、右手だなと妙に冷静な部分が判断した。
その手を見た最初の感想がそうだったので、その手が何故赤黒く染まっているのか確かめるのが遅れた。
その手の指先から手首へと、手首から前腕へと視線を移していく。
本来なら、前腕から上腕へと視線を移したいところだが、それは叶わなかった。
何故なら、前腕の次に見えたのは胸部だったから。
その腕は人の身体を背部から貫き、心臓を貫通して前腕部を右胸部から生やした状態で静止していたのだから。
「……え? 何で?」
見所ニキは呆然と呟く。理解できなかったから。
「……黒死ネキ、何で脳缶ニキを?」
何故、黒死ネキが脳缶ニキを
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「何故も何も、脳缶ニキが凝りもせずに
「え?」
「確かにいざと言う時の対処はするとは言ったが、コレはジャンルが違うだろう。対処せざるを得ないのを分かっていてやるから、実に質が悪いな」
「え?」
「【
「あ、どうも黒死ネキ。ケツモチありがとうございます」
「お前の危機感の無さと、無駄なエンタメ性の高さのどちらに呆れれば良いんだろうなぁ、脳缶ニキ? ショタおじの護符もお前が低レベルの内に、自分からあちらに寄って行くなら万全とは言えなくなるんだぞ?」
「まぁまぁ、こうして無事だったんだし良いじゃないですか。それより
「『魔法思念弾』の使い方か。正直あの発想は無かったな。封魔管と併用しての疑似的な
「ですです。これがもっと安全に出来るようになれば、サマナースタイルの人たちの切り札になるんじゃないかな~って」
「……ふむ。発想自体は面白いから、探求ネキか無惨ニキ*13あたりに投げておくか? まぁ、それはそれとして、お前は戻ったらショタおじの所に直行だがな」
「ええ~酷くないですか、それ?」
「残当だろうが。ここでの狩りが終わるまでは遊んでも良いが、
「んー、まぁ、仕方ないですね。それじゃあ、チャイカちゃん、見所ニキ、残りも頑張りましょうか」
「うぃ。残党の討伐、頑張る」
「あれぇ? 流石にこの会話のノリは異常だと思うんですけど、慣れないとダメなやつ?」
余りにも異常な事態が発生すると、他の些細な異常の事は気にならなくなる。
現在、この異界で起こっている『ちょっとした異常』など、彼ら彼女らと共に過ごすこの時間と比べれば、さして異常でも無かったな……と、後に見所ニキは回想する事となるのであった。
お読みいただき、ありがとうございました。
当初の予定だと、流石に同レベル帯を100匹も相手にするなら、この3人も何回かは死んだり蘇生させたりになるかな~、と思いつつ書き始めたらこうなりました^^;
脳缶ニキがケツモチありの状態で、やらかさない未来が見えなかったと言うネw
魔法思念料 = 悪魔の情報を加工して作った物 ⇒ 情報生命体としての疑似悪魔 ⇒ 葛葉キョウジ戦術が使えるんじゃね?
と言う、とてつもない屁理屈により今話が誕生。
実際、これが理論として完成すれば、脳缶ニキの言う通りサマナー系俺らの切り札にもなりえると思うんですよね。
魔法思念弾は契約悪魔のご機嫌取りは必要無いし。
さて、残りの悪魔は40匹で全体的に手負い。
果たして3人は乗り切る事は出来るのか、次話をお楽しみにお待ちください。
・黒死ネキ(レベル46)
保護者ポジ。脳缶ニキがやらかしたので呆れつつ処理する。
心臓貫手はアーカードもよくやるやつ。
脳缶ニキのやらかしには呆れつつも、自分には無かった発想が得られたのは面白いと思っている。
異界で起こっているちょっとした異変には気付いており、むしろイレギュラーを期待している。
・チャイカ(レベル20 → 22)
やり方次第では悪魔100匹を殲滅可能なスペックはある。コスパ悪いからやらないけど。
流石に便利アイテムでのドーピング無しでは、ここまでの無茶火力は出ない。
次話の戦闘では本来の戦闘スタイルも披露予定。
・脳缶ニキ(レベル19 → 21)
黒死ネキがケツモチ = 有事の際に魂も『情報』も保全してくれる。
と言う事で遠慮なくやらかした。誤用の方での確信犯。
発想力が柔軟で彼自身も優れた『創る者』な訳だが、やらかし度合いが目立つタイプ。
魔法思念弾の今後に期待中。
・見所ニキ(レベル22 → 23)
戦闘スタイル的には、回復と補助の出来る大剣使い。大剣は盾としても使用可能。
専用式神は俺の嫁タイプで、現在は遠征中。
今回は彼が直接悪魔を虐殺した訳では無いので、レベルアップは控えめ。
・デュラハンとベール(ベールのレベル7 → 10)
黒死ネキの傍で待機中。
このまま何もないとか流石に無い。