【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。

作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。


うーむ、どんどんこのエピソードの文字数が増えていく。
当初はもっと簡単に済ませるつもりだったのに、思い付きで展開をちょっとだけ変更したせいか……うん、自業自得。
結構緩い展開が続きましたが、ここらで一波乱起そうと思いますので、お楽しみいただければ幸いです。




第37話 誰かに用事があるのなら、素直に面会を申し出れば良いだろう?

 

 

『MAP兵器』と呼称される概念がある。

 

 Mass Amplitude Preemptive-strike Weapon(大量広域先制攻撃兵器)の略称とされているが、どう考えても、「まず用語ありき」のバクロニム(逆頭字語)*1と言える。

 と言うか、元ネタは『スーパーロボット大戦』シリーズの広範囲攻撃だ。

 同シリーズ以外でも『遠距離から広範囲かつ高威力の攻撃を行う行動』として認識されている。

 

 修行場異界の『後半』*2において、そんな『MAP兵器』の対象となったのは、黒死ネキのスキルにより釣り集められた100匹もの有象無象の悪魔(レベル20前後の雑魚)の群れであり、その6割が死に絶え、残り4割もほぼ全てが重軽傷を負った状態となっている。

 

 死んだのが20~30匹程度であれば、それは黒死ネキの想定内だ。

 彼女の式神であるチャイカには、それを成すだけの性能がある事を黒死ネキは当然把握しているのだから。

 追加で更に10~15匹くらいを削られるのは想定していた。

 残りの悪魔どもが3人と接敵するまでの猶予と、追撃で範囲攻撃を撃てる脳缶ニキの現状での強さを考えれば、妥当な予想と言える。

 

 だが───

 

 

「初の異界での戦闘で、初手で蠅に乗っ取られかけるようなマネをするのは、流石に予想外だった」

 

 

 ───脳缶ニキのやらかしにより、想定を大きく超える悪魔が削られることとなった。

 

 

「いや~、だってこの状況だと初手で最大火力のブッパは基本じゃないですか? あとデビチル(キッズ向け)勢としては、絶体絶命のピンチに自分の限界を超えた攻撃をするのはお約束って言うか? おかげでさっきのレベルアップで【マハムドダイン】も修得できましたよ」

 

「あ、これは俺でも分かる。脳缶ニキって同じデビチルでもゲームじゃ無くて漫画(ボンボン)*3のトリックスター的なやつですよね?」

 

「あれぇ? ひょっとして初対面の見所ニキから誤解されてる? 僕は出来る事しかしてないし、ちゃんとリスク管理もしてますよ?」

 

「そのリスク管理が外付けで無許可だからだろうが。自分の『情報』の全てを私に把握される事を躊躇しないのはお前くらいだぞ」

 

「けど、黒死ネキはボクの『情報』を悪用したりしないでしょ? だって将来的に自分が()()()()()なりますしね。それに、11年間脳缶生活だったんで碌な経験もしていませんし、低レベルの間の経験なら()()対価としては安いですからね」

 

「それは実際に『蒐集』して理解しているが、勝手に私を蠅との接触の際の命綱にするな。やはりショタおじの所に放り込んで、最低でもレベル40くらいまでは缶詰が妥当か?」*4

 

「ええ~、そんな殺生な」

 

「あ、これ黒死ネキは脳缶ニキを心配して言ってるんじゃなくて、普通に押し付けられるのが面倒だからっぽい。うん、初対面の俺でもこれは分かる残当さだ」

 

「ふむ、やはり見所ニキは見所があるな。こちら側に染まらずとも、本質を正確に理解できているな」

 

 

 半死半生とは言え、未だ40匹もの悪魔の群れに囲まれている状況にも関わらず、和気藹々(?)と会話をする転生者たち。

 脳缶ニキのやらかしが大きすぎて、半死半生の雑魚40匹とか眼中に無いと言えば、その通りとしか言いようが無いのではあるが。

 

 

「灯、この状況、各個撃破と殲滅に問題なし。続行?」

 

「ふむ、想定では各自2,3回くらいは死ぬ程度の乱戦になると思っていたが……」

 

 

 チャイカの言葉に黒死ネキは横目を向ける。

 そこには先ほどの2回のMAP攻撃により【マリンカリン】と【ブレインジャック】による支配が解けかかっている40匹の悪魔の群れ。

 異界への侵入者を狩るべく殺意を漲らせ……られるはずも無く、こちらを見る目は恐怖と警戒に染まっている。

 当人たちからすれば、いきなり意識を奪われ操作され、文字通りの意識外から致命傷に近い重軽傷を負わされたのだ。

 挙句、周囲には同じくらいの強さの悪魔の死体が散乱しており、それを成したと思しき侵入者たちは無傷で佇んでいる。

 この状況では襲撃に二の足を踏み、逃走へ意識が傾くのも致し方ないし、むしろ当然と言える。

 

 無論───

 

 

 

【ルナトラップ】*5 

 

 

 

 ───黒死ネキ(遥か格上)からの逃走が実現するような奇跡など、起きはしないのだが。

 

 

「戦闘内容は予想とは違ったが、予定通り連携テストはしておくか。臆病風に吹かれた雑魚どもでも、お前たちの経験の足しにはなるだろう。あと、食べ放題(バイキング)で皿に乗せた料理は残さず平らげるのがマナーと言うものだしな」

 

「皿に乗せたのは黒死ネキですけどね。まぁ、僕たちは美味しい思いが出来るから文句なんて無いですけど」

 

「うーん、最初に決めた覚悟が何かグダグダに。けど、やるべき事はちゃんとやらないとなぁ……」

 

「うぃ。油断大敵。お残しは厳禁」

 

「「「「────────────!!??」」」」

 

 

 そして、脳缶ニキ、見所ニキ、チャイカの3名による連携テストと言う名の殲滅作業が始まった。

 なお、半死半生の雑魚悪魔の戦意は既にどん底ではあったが、「逃げられない」と悟ったのか、自暴自棄的に突っ込んで来る個体はそれなりに居たと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、こいつで最後!! 【パワースラッシュ】*6

 

「────────────!!??」

 

 

 見所ニキの剣撃に、悪魔の群れの最後の1匹は打ち倒され掃討戦は終了した。

 そう、『掃討戦』である。

 仮に40匹の悪魔が全て無傷で、こちらへの殺意も漲らせており、多少でも連携を意識して襲い掛かって来たと言うのなら、それは『戦い』と呼ばれるものとなり、犠牲者が出ていた事だろう。

 何なら数十匹からの範囲攻撃魔法やスキルが同時に撃ち込まれるだけでも、大いに苦戦していた事だろう。

 しかし、現実は異なり、悪魔どもは全てが重軽傷を負って半死半生。恐怖と警戒から逃走を選ぼうとした先にそれを封じられる。対して相手は無傷であり、さらに後ろには自分たちをここまで追い込んだ者たちよりも上手と思わしき者が控えている。

 この状況で闘志を抱き、連携して立ち回れるほど、この悪魔どもは上質とは言えなかった。

 大半が自暴自棄の吶喊をし、それさえ躊躇った者どもが散発的に魔法や遠距離スキルを飛ばしてきただけだ。

 そして、対する3人はその程度の悪あがきに対処できないような者はおらず、誰一人として倒れる事無く、ここに掃討戦を終えたのである。

 

 

「ふう、ようやくこれで5匹か。分かっちゃいたけど、やっぱ脳缶ニキとチャイカちゃんには及ばないなぁ」

 

「いやいや、何言ってるんですか見所ニキ? 見所ニキのお陰で滅茶苦茶戦いやすかったんですけど?」

 

「うぃ、謙遜不要。見所ニキ、驚愕の実力。連携の見本。見所満載」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「え? けど俺、2人みたいに悪魔を倒しまくった訳じゃ無いですし」

 

「前衛やりつつ無理に前に出ないで、タイミングよく【挑発】*7でタゲ取りして、自己補助は欠かさないでチャイカちゃんの負担を減らして、絶対に自分に隙が出来ないタイミングだけ悪魔を攻撃して、死にかけの敵はむしろ盾代わりにして、自分自身の安全も確保してましたよね?」

 

「見所ニキ、総合能力(ステータス)、この中じゃ下位。けど、判断力上位。立ち位置、私たちの射線をずっと意識。包囲されない事を最優先してた」

 

「あれ? 何この高評価? いや、この3人だと火力枠は脳缶ニキとチャイカちゃんだし、俺が前衛で2人の邪魔にならないように立ち回るのは当然ですよね?」

 

「あははは、謙遜が過ぎるとは思っていたが、基礎スペックが平凡だから自分の力量が実感出来ていないパターンか。実際見事だったぞ? 『相応に動ける』と言うのは」

 

「あ、うん。褒めてくれてるのに謙遜……?……し過ぎるのも変ですよね。ありがとうございます。これからも頑張りますね」

 

 

 見所ニキが自身への高評価に戸惑っているのは、本人の自覚している通り『基礎スペックが平凡だから』である。

 良く言えば隙の少ない万能型で、悪く言えば器用貧乏に過ぎない。そんな総合能力(ステータス)とスキル構成なのが見所ニキであり、彼が「凄い」と感じた者たちと比べ『彼にしか出来ない事』は極端に少ない。

 だからこそ、見所ニキは自分に出来る事を()()()出来るようになった。

 

 武器を振れば、彼よりも上手などいくらでもいる。彼は自分に出来る事を相応に出来るだけだ。

 魔法もちょっとした補助と回復が使えるだけだ。彼は相応のタイミングで使うだけだ。

 

 自分に出来る事を相応に出来るようにする事。

 この当たり前の事を実行できる事を才能と呼ぶのであれば、見所ニキはやはり凡才()()()

 彼はきちんと()()()努力をしたし、しているのだから。

 

 結果、彼を知る者は強者も弱者も「見所がある」と感じるようになったのである。

 黒死ネキ、脳缶ニキ、チャイカの言葉が、その答えでもあった。

 

 

 

 そして、悪魔の群れの掃討戦も終了し、この臨時パーティにも弛緩した空気が流れかけたその時───

 

 

「そこの人たち!! 逃げて!!」

 

「すまん!! 高レベル悪魔をトレイン*8しちまった!!」

 

「私たちじゃ手に負えない!! 早くここから離れて!!」

 

 

 ───明らかに『後半』の枠外と思われるレベルの悪魔たちに追われている者たちの声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 修行場異界『後半』のとある場所にて

 

 

「さて、ようやく人の世への出口が近づいてきましたね。このまま上手く代行者殿に出会えると良いのですが」

 

「貴様ガ我ニ助力ヲ求メ人ノ世ヲ目指スナド、未ダニ意外サガ拭エヌ。ソウマデシテ代行者ヘ問ウ事ガアルノナラ、副王ノ神託ヲ用イレバ良イノデハナイカ? 貴様ハ副王ト親シイノデアロウ?」

 

 

 そう言いながら異界の地を進むのは2柱の悪魔たち。

 片方は金髪の偉丈夫。一見すると聖職者とも思える出で立ちをした壮年の男性の姿をしている。

 片方は浅黒い肌の戦士。一見すると獰猛そうに見えるが、同時に誠実さを感じる佇まいをしている。

 

 

「ええ、恐れ多くも副王様には良くして頂いております。ですが、それ故に此度は副王さまに頼る訳にはいかないのです。これは我ら悪魔の多くの未来を左右する問題。その発端はかの代行者殿にある。私はそう考えましたので」

 

「ソレデ人ノ世ニ顕現デキル最低限ノ(レベル)デGPノ薄サヘ適応シ、人ノ世ノ代行者トノ接触ヲ図ル、カ。 消サレルゾ? コノ異界ノ外ハ閣下スラ下シタH案件ノ化物*9ノ手中ナノダロウ?」

 

「ええ、貴方の言う通りでしょう。仮にこのまま人の世へ出たとて、今の私の(レベル)では姿を消す権能も完全には機能せず、僅かな時間ですぐに気付かれてしまうでしょう」

 

「ソノ僅カナ時間ニ賭ケ、代行者ト接触シ問イカケル、カ。()()()()()()()()()。良イダロウ。ソレガ貴様ノ闘争デアルノナラ、我ハ誠実ヲ持ッテ応エヨウ」

 

「ええ、私も己の論理と倫理を持って、信念を全うしましょう」

 

「デハ、ソノ目的ヲ達スルノニ不可欠ナノハ、陽動ト混乱ダナ。我ノ本懐トモ一致スル」

 

 

 戦士風の男はそう宣言すると、彼の周囲には強大な魔力を放つ()()()()()が召喚される。

 

 

「行ケ。好キニ暴レ、場ヲ乱セ。強者ヲ()()()()ヘ誘キ出セ」

 

 

 その目的は戦士風の男の言う様に陽動と混乱。

 彼の配下の悪霊たちはレベル30を超える強大な存在であり、それらを異界の『前半』~『後半』*10へと放つ事で、場違いに強大な悪魔の異常発生を演出し、混乱へと繋げる。

 そして、その混乱に対処可能な強者を誘き出し、その隙に聖職者風の男を地上へと進ませると言う、単純ではあるが防ぐ事は困難な策だ。

 

 聖職者風の男の権能の一つでもある『他者を透明にする力』により、彼らは『不思議のダンジョン』*11からここまで修羅勢の目を欺きやって来たのだ。

 もし、これが異界の統合後であったなら、あるいは統合作業へ移る前であったのならば、こう上手くはいかなかっただろう。

 

 統合後であれば、各層の境界は強固に設定されるであろうし、統合作業前は、そもそも『前半』~『後半』と『不思議なダンジョン』は別の異界として扱われていた。

 統合作業中の現在だからこそ、『前半』~『後半』と『不思議なダンジョン』は繋がりを持ち、その境界も少しあやふやな時期なのだ。

 その為、『不思議なダンジョン』に湧いた高レベルの悪魔が、『前半』~『後半』のエリアに時々出没する事例が見られている。

 

 修羅勢と呼ばれる高レベルの戦闘強者が、こぞって『不思議なダンジョン』へと主戦場を移している事も影響している。

 これまでは『前半』~『後半』しか潜る異界が無かった為、結果的に修羅勢は悪魔が湧き過ぎないように間引く役割も果たしていたが、『不思議なダンジョン』へ主戦場を移した事により『前半』~『後半』が手薄になったとも言えた。

 この2柱の悪魔は、結果的にその隙を突く形で『不思議なダンジョン』から『前半』~『後半』へやって来る事が出来たのである。

 

 そして今、戦士風の男の配下の悪霊の軍団により、『前半』~『後半』はかつてない混乱に陥ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「クククッ、なるほどな。最近のちょっとした不具合とは毛色が違うとは思ったが、そう言う事か。まさかこちら側で、こんな大当たりが引けるとは思わなかった。これは是非、修羅勢の一員として解決に尽力しなければなぁ。あはははははははは」

 

「あの、黒死ネキ? 悪魔から逃げて来た人たちがドン引きしてますから、何か事情が分かったのなら説明してもらって良いですか? と言うか、その顔は美少女がしちゃいけないやつですって」

 

 

 『後半』の枠外と思われるレベルの悪魔たちに追われている者たちは、善良な性根の者たちだった。

 決して驕らずに、自分たちの適性レベルの悪魔の湧くエリアで無理をせずに狩りをしていた。

 にも関わらず、突如として30レベルを超える()()()()()に襲われたのだ。

 幸いにも悪霊どもは彼らを積極的に殺そうとはせず、むしろ追い立てる様につかず離れずの距離を保って追って来ていた。

 そして、目についた黒死ネキたち(他のパーティ)へも安易に助けを求めず、まず避難を呼びかけるだけの善性も持ち合わせていた。

 

 予想外だったのは、その場に居たのは黒死ネキ(高レベル修羅勢)であり、自分たちが逃げ惑うしかなかった高レベルの悪霊どもを、事も無げに惨殺し尽くした事だ。

 結果的に助けてもらったのは間違いないし、感謝をしなければならないと理性では分かっているが、嬉々とした表情で悪霊どもを惨殺したかと思えば、直後に美少女がしてはいけないヤベェ表情で嗤い出したのだから、ドン引きするのも止む無しと言えた。

 

 

「………え、えっと、まずは助けてくれてありがとうございます。修羅勢の黒死ネキさんですよね? 俺たちは……」

 

「ああ、無理に事情を説明しなくても大丈夫だぞ。さっきの悪霊どもから情報は蒐集済みだからな。結論から言うと、この後さっきの奴らより高レベルの悪魔が来るから、お前らは先に脱出しておけ」

 

「「「──えッ!!!???」」」

 

「事情は後で伝えてやるから、戻ったらショタおじにこの案件は()()()が処理すると伝言を頼むぞ。チャイカ、やれ」

 

「うぃ。貴方たち、先に帰還する。【トラエスト】*12

 

「え? ちょ!? えっと、伝言ですね、分かりまs───」

 

 

 こうして悪魔に追われていた3人組は、気持ちを落ち着ける暇も無く強制的に異界から帰還させられる事となった。 

 

 

「……あの人たち、あの状況で返事が出来るとか、実は結構すごいんじゃ……」

 

「それですね~。ところで黒死ネキ? さっき「()()()が処理する」って言ってましたけど、僕らも参加して良いんですか?」

 

「ああ、むしろ()()がこの場に居る方が都合が良いからな、脳缶ニキ」

 

「え? 僕?」

 

「私もそれなりだとは自負しているが、お前の()()も大概だな。今この場に居るのは単なる偶然のはずだと言うのに、狙いすましたかのように()()()()()やって来るのだからな」 

 

「……あー、うん、分かりました。そう言うやつですね。解決するのにこの場に僕が居ないと逆にややこしくなるってパターンですか」

 

「えーと、良く分からないんですけど、あの人たちは強力な悪魔に追われていて、この後もっと強い悪魔が来るんですよね? その悪魔は脳缶ニキと何か関係があるんですか?」

 

「ああ、それなら───」

 

 

 そう言って黒死ネキはチャイカに目配せをし、()()()()()()()()()()()()へ意識を向ける。

 

 

「───本人に聞いた方が早いぞ」

 

「───顕れよ。 〈戒め解くもの(ザ・ブレイカー)〉」*13

 

 

 黒死ネキの言葉と同時にチャイカの放った結界破壊(ザ・ブレイカー)により、その場で姿()()()()()()()()()()が露わとなる。

 

 片方は金髪の偉丈夫。一見すると聖職者とも思える出で立ちをした壮年の男性の姿をしている。

 片方は浅黒い肌の戦士。一見すると獰猛そうに見えるが、同時に誠実さを感じる佇まいをしている。

 

 

「誰かに用事があるのなら、素直に面会を申し出れば良いだろうに、わざわざ隠れてこそこそと。実に愉快な真似をするじゃあないか」

 

「返す言葉もありませんが、直接お話をさせていただく以外に、接触する術が限られてしまっておりましてね。この度はこのような幸運に恵まれ、代行者殿とお話をする機会を得られた事を嬉しく思います」

 

「正直、護衛ヲ頼マレタ時ハ意図ヲ計リカネタガ、今デハ納得シテイル。現時点デコチラヘ寄コス事ノ出来ル器デハ、彼奴単体デハ目的ハ遂ゲラレマイ」

 

「え~、マジですか? 僕へのお客さんってこの2柱? 心当たりが無いでもないけど、わざわざ話に来る事ってある?」

 

「ええ、これは私たち悪魔にとっても重要な話でして「ところで」……む?」

 

 

 金髪の偉丈夫と脳缶ニキとの会話を遮り、声をかけたのは黒死ネキだ。

 彼女は世間話でもするかのように確認をする。

 彼らが───正確には金髪の偉丈夫が───脳缶ニキに用があってこの場へやってきた事は、あらかじめ浅黒い肌の戦士が放った悪霊から情報を蒐集する事で分かっていた。

 つまり───

 

 

 

()()殿()と脳缶ニキの会話を邪魔しようとすれば、()()()()()()()()になると思うのだが、それで合っているかな? なぁ、()()殿()?」

 

 

 

 ───それを邪魔すれば、自分にとって、とても楽しいことになると確信できると言う事。

 

 

 

 空気が変わる。

 

 2柱の悪魔は決して誰かを侮っていた訳ではない。むしろ最大限警戒してこの場まで来たのだ。

 目の前の代行者たちとて、自分たちを侮ってなどいない。この場には場違いな強大な悪魔と認識しているはずだ。

 それは、2柱の悪魔がこの場で最も警戒の対象としていた黒衣の少女とて同じはずだ。

 

 にも関わらず、この少女は()()()()()()()()一切の躊躇なくこちらへ踏み込んで来たのである。

 

 

「……貴様ガソレヲ望ムノナラバ、彼奴トノ契約ニヨリ我ガ立チフサガル事トナル。最モ、ソレコソガ貴様ノ望ミナノダロウガナ」

 

「実に結構。こんな機会は滅多に無いのでな。付き合ってもらうぞ、強制的に」

 

「……そうですか、残念ですが致し方ありません。結局は悪魔らしいやり方で押し通る以外にありませんでしたか」

 

 

 もはやどちらが悪魔なのかも分からない様な殺意を放ち黒死ネキは嗤う。

 それを受け、もはや単なる会話は不可能と判断し、臨戦態勢に移る2柱の悪魔たち。

 

 

「あれ? これってもしかして……」

 

「いや、もしかしなくても……」

 

「元々悪魔からの用件に聞き耳、不要。バトル開始」

 

「「ですよねー」」

 

 

 

 こうして修行場異界の『後半』のとあるエリアにおいて、余りにも場違いな者たちによる()()は幕を開ける事となる。

 

 

 

 

 

 

*1
既存の単語の各文字を頭文字として、別の単語や句を当てはめることで、新たに頭字語としての意味を与えること。

*2
異界統合前の修行場異界における、レベル15~30の悪魔の湧くエリアの通称。

*3
藤異秀明によるコミカライズ版。非常に暴力描写や死亡描写が多く、「児童誌のベルセルク」とまで呼ばれている。なお、ストーリーは普通にメガテン仕様のエグさ。

*4
デビチル氷の書の新ゼブルがレベル38なので、乗っ取られ回避の最低安全値。

*5
P1仕様の特殊魔法。敵全体を3ターンの間逃走不可能にする。

*6
敵単体に中威力の物理攻撃。

*7
3ターンの間、敵から狙われやすくなる。

*8
主にMMORPGなどのオンラインゲームにおいて、敵に追いかけられ、逃げている間にどんどん敵が追いついてきて、電車のように連なっている状態。

*9
ショタおじの事。

*10
統合後は表層~上層と呼ばれることになるエリア。適性レベルはそれぞれ『1~15』と『15~30』

*11
統合後は中層と呼ばれる事になるエリア。適性レベルは30~50。

*12
ダンジョン内から脱出し、侵入地点まで転移する。

*13
【デカジャ】(強化系解除)+【マカジャマ】(スキル封印)の複合術式。『棺姫のチャイカ』では結界の解除等に使用された。






お読みいただき、ありがとうございました。

はい、悪魔100匹とか前座です。
黒死ネキと脳缶ニキがセットで行動していて、雑魚の大量狩り程度で済まされる訳無いですよね、と言うネw

異界の統合を経て、カオ転三次でお馴染みの「表層」「上層」「中層」「下層」「深層」へと山梨異界の呼称が変化していく訳です。
本作でもようやくこの呼び方が出来そうです。
時期的に黒札システムはまだだから、転生者たちの呼び方に苦労するんですよね。

で、異界の統合ってどのくらい時間が掛かるのかと、統合中にも異界で狩りが出来るのかと、出来たとしても何か問題はないのか、と言う疑問に対して、「トラブルがあった方がSS的にはネタになるよね」と言う判断のもと、このエピソードは作られております。

修羅勢がこぞって戦場を変えたら、これまで間引きしまくってた場所は悪魔が湧きやすくなるだろうし、統合中なら中層の悪魔が上層へ流出する事もあり得るんじゃないかな~と思った訳です。
この辺の設定で辻褄が合わなかったり、矛盾点があっても、笑って見逃して頂けると助かります(ォ

今回登場した2柱の悪魔については、ぶっちゃけ訓練されたメガテニストなら正体モロバレでしょうし、普通に次回に正体を描写しますので、ネタバレは禁止しません。
普通にご遠慮なく「ああ、こいつらか」と感想で書き込みまくって結構です(ォ

それでは、次回をお楽しみにしていただければ幸いです。



・黒死ネキ(レベル46)
ちょっと知り合いと散歩するか程度のつもりでいたら、お楽しみが向こうからやって来た。
こんな機会は滅多に無いし、遠慮なく楽しむ気満々。
真面目な話、「上層」に高レベルネームド悪魔2柱がやって来たとか修羅勢以上での対処案件なので、経緯はともかく対応自体は間違いではない。
脳缶ニキの運命力には感謝している。自分の楽しみが増えた的な意味で。


・チャイカ(レベル22 ⇒ 24)
普段一緒にいる黒死ネキの戦闘スタイルとか、とても参考にはならないので見所ニキの教科書に乗せたいレベルの戦闘スタイルに驚愕。マジ見所満載で、大いに自分の糧になった。
これまで以上クレバーな判断が出来るようになっていく。


・脳缶ニキ(レベル21 ⇒ 23)
運命愛され勢の一人。つか、この人レベルで愛されていないとか、まず無い。
見所ニキのクレバーな立ち回りに素直に感心。マジでお手本だった。
今回の2柱の悪魔は自分のお客さん。
普通に会話が始まると思った? そんな訳ないよね。


・見所ニキ(レベル23 ⇒ 24)
ステータスもスキル構成も平凡。
平凡相応の事が出来る『だけ』。結果がコレ。
本人は「普通の事を普通にやってるだけ」と認識している常識人。
マジで「普通の事を普通にやってるだけ」だから困る。基礎って最強なんやなと言うネ。


・デュラハンちゃんとベール(ベールのレベル:10 ⇒ 11)
今回は蚊帳の外。
「一番ヤベェのは一番の危険人物(黒死ネキ)が参戦した時」と言うデュラハンちゃんの予想は当たった。
次回以降に活躍の機会は用意されているのでご安心を。


・悪魔に追われていた3人組
平均レベル22くらい。名も無きモブ。
ちゃんとレベル相応の所で狩りをしていたが、トラブルに巻き込まれた。
トレインを詫びる事の出来る善良な人たち。





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