【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。
作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。
今回は新潟へお出かけ。
名無しのレイ様、登場キャラの追加設定のご許可、ありがとうございました。
書いてる最中に勝手にご許可を頂いた事以外の設定も生えたけど、まぁ、ええやろ(ォ
その日、九重 静は覚悟を決めて一つの決断を下そうとしていた。
ガイア連合山梨支部(と言う名の本部)の新潟県魚沼支部にて、支部長である田舎ニキこと碧神凍矢の腹心にしてブレインであり、政治的な駆け引きを一手に担う彼女の基本スタンスはシンプルだ。
『黒札様は決戦兵器として活躍してもらい、全ての雑事は我々が行う』
黒札である田舎ニキには対悪魔、対異界対策として動いてもらい、自分たちはサポートと雑事を全て行い、かつ田舎ニキの身辺を警護する。
田舎ニキは「故郷を守る」と言う強い志で新潟の地に居るが、静にとって好都合な事に、彼は圧倒的な霊的能力は持っているが、政治力や組織力などはほとんど持ち合わせていない。
言ってしまえば『滅茶苦茶強いだけの一般人』なのである。
雑事全てを請け負う
自分たちが住まう地を、静たちからすれば、その辺の神仏の分霊など及びも付かない力で守ってもらえる。
余りにも安い対価であり、手足になると言う表現すら烏滸がましい。寄生と言う表現ですら足りるかどうか。
そして、静は田舎ニキの感性が一般人である事を重々承知しており、
静たち『名家』からすれば、〝
かつて田舎ニキの怒りを買った
そして、戦場となった地は見渡す限り氷に覆いつくされた氷原となり、田舎ニキの力を示す爪痕的な扱いとなっている。*1
想像したくも無いが、もし彼が薄汚い裏側を見続けて、嫌気がさしてこの地を見捨てたら?
どれだけ可能性が低かろうと、可能性が存在する以上は絶対に無視しないし油断もしない。
その為に自分たちは存在しているのだから。
些事*2に気を揉ませる事もよろしくない。
自分たちが田舎ニキによってもたらされた恩恵*3を最大限活用し、限界*4まで強くなることで対処可能な範囲を広げ、基本スタンスの通り『黒札様は決戦兵器として活躍してもらい、全ての雑事は我々が行う』を有言実行せねばならない。
静たちはその事を良く自覚しており、決して惰ること無く有言実行してきている。
だが、しかし、どうしても存在するのだ───
「…………やはり、何度シミュレートしても私たちだけでは対処困難……いえ、不可能。よりによって、このような裏の事案が……」
───静たち
「……致し方ありません。凍矢様のガイア連合でのお立場を考えると好ましいとは言えませんが、また
│
│
│
│
│
│
│
│
│
│
魚沼支部に
大半の黒札は『霊的才能が高いだけの感性一般人』であるが、中には
とは言え、一部例外を除いて普段から『暗部』として動くのではなく、普段は個人で好きに過ごし、有事の際に運営からの『指名依頼』で動く事が多いのだが。
今回も『運営』からの使命依頼にて、彼女好みの案件を引き受け、はるばる山梨から新潟へと赴いたのである。
「
「
「クククっ、思えば初対面の時は失礼したな。
「……いえ、こちらこそ凍矢様のご友人に対し無様な姿をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
静の九重家は【三宝荒神】、すなわち不浄を焼き払い、清浄を重んじる竈神を奉じる家であり、静自身の霊的傾向もそれに寄っている。
そんな静からしてみれば、目の前の黒死ネキは接触そのものが文字通り命がけの相手だ。
誇張でもなんでもなく、超純度の【穢れ】が人の形をしていると言っても過言ではないのが目の前の黒死ネキであり、静を清らかな竈とするならば、黒死ネキは死の大河だ。
仮に両者のレベルが同程度ならば霊的な相性が悪かろうが普通に並び立つことが出来ただろうが、現実は両者の間には隔絶したレベル差が存在する。
初めて黒死ネキが静と同席した際には、山梨で見かけて時々ちょっかいを出していた
黒死ネキの霊圧制御能力は【魔装術】による影響もあり極めて高く、ショタおじが太鼓判を押す程である。それこそ、平時であれば一般人としか感じられない程に。
しかし黒死ネキは高レベル覚醒者であり、どれほど完璧に霊圧を抑えようと、その感情の揺らぎ程度でも周囲へ多少の影響はもたらしてしまう。
具体的に言うと、しばらく見ない内に結構レベルの上がっている田舎ニキを見て、「お、こいつその内、自分とガチバトル出来るくらいまで成長するんじゃね?」と
つまり、悪いのは田舎ニキなのである。 冤罪? お前、黒死ネキにそうツッコめる?
黒死ネキも流石に自分のクライアントを無意味に殺すつもりは無く、即座に霊圧制御を強めてそれ以上の影響は与えないようにはした。
したが……それまで自分にビビり散らかしていた
以降は田舎ニキも黒死ネキに用事がある時は、なるべく静を同席させないようにしているし、静から黒死ネキに『用事』がある時は、黒死ネキ自身も『お得意様』を害さないように気を付けている。
「さて、依頼内容は『運営』から聞いている。今回も
「ええ、その通りです。本来であれば、この地の問題は私たちの手で解決するのが筋だと分かっているのですが……」
「何、別に構わないとも。田舎ニキがそう言う星の下に生まれているのか、何故かこの地は愉快なトラブルが多いようだからな。おこぼれに預かる私も、相応に楽しませてもらっているからな」
「そう言っていただけるのなら、こちらも幾分かは気持ちが楽になります」
そう口では言いつつも、静の心境は複雑だった。
「いっその事、もっと大っぴらに私を
「お戯れを。私ごとき非才の者が、凍矢様や黒死ネキ様たち黒札の方々を『使う』などと烏滸がましい真似は決して……」
「あはははは、そういう事にしておくか。だが覚えておくと良いぞ、九重 静。お前の価値はお前自身の評価などより、遥かに高いのだと言う事をな」
「……恐れ入ります……」
黒死ネキは静をからかっているわけでは無い。彼女を高く評価しているは本当だ。
故郷を守りたいと地方へ赴く黒札はそれなりの数がいるが、田舎ニキのように組織運用の才があるとは言えない者にとっては、九重 静は理想以上のパートナーなのだから。
そして、静自身は例え殺されようと肯定はしないだろうが、彼女が田舎ニキを
初手から現在に至るまで、『霊的才能が高いだけの感性一般人』である黒札と、現存する地方の『名家』との理想的な関係を築けていると言っても、決して過言ではない。
そんな静から見て、黒死ネキは言ってしまえば『都合が良すぎる黒札』である。
『吐き気を催す裏側の案件』を嬉々として受諾し、あらゆる敵を殺しつくす、圧倒的な強者。
これだけ見れば、まさに救いの神も同然だが、黒死ネキがそんな生易しいモノではない事を静はよく理解している。
黒死ネキが依頼を受けているのは『自分の楽しみの為』であり、言わば趣味と実益を兼ねた娯楽に過ぎない。
組織の一員として不足なく動いており、『敵を殺せば解決する依頼』に至っては現状の達成率は100%以上だ。必要以上に殺した分が『以上』に換算されている。
自分が無能などとは思っていないが、黒札の圧倒的な才をサポートし切れると思うほど傲慢でもない。
黒死ネキ自身は、九重 静が自分を〝
最初は良いかもしれない。黒死ネキと言う『都合が良すぎる黒札』の力で、自分の理想とするこの地の平定が出来るのかもしれない。
だが、いつまでも黒死ネキを楽しませられるかと言われれば、そんな自信などあるはずも無い。
「つまらない」と思われたら終わる。
ただでさえ対人、対名家、対犯罪者、対悪魔、と、挙げれば切りが無いほどに綱渡りを繰り返すような日々を送っているのだ。
そんなあまりにもリスキー過ぎる真似をするわけにはいかない。
黒死ネキ自身にそんな悪魔の契約じみた想いがあるのかどうかは分からないが、静からすれば現状の『有能で面白い人物』と思ってもらえている関係こそが最上であり、黒死ネキが『都合が良すぎる黒札』でいてくれる関係なのである。
要するに、静にとって田舎ニキや自分の対外的な評価や、外部依頼の際の良好な関係の維持のためには、現状の『自力で解決可能な問題』は自力で解決し、自力で解決できない『
「さて、それでは早速依頼の話と行きたいところだが、今回はその前にお前たちに預かって来ている物があってな」
「預かって来ている物ですか? それに、私
「ああ、居るんだろう? 入って来いよ、ヴィルトゥオーサ」
そんな黒死ネキの言葉を受け、上品なノックの後に一人の女性が入室して来た。
黒い衣装の上に白い外套を羽織り、チェロを思わせる特殊な形状の弦楽器を手にした、長い黒髪に灰色の瞳を持つ極めて整った美貌の女性。
彼女の名はヴィルトゥオーサ。
無論、本名では無くコードネームであり、イタリア語で楽器演奏の達人を示す「
九重家の『暗部』の長にして凄腕の元ダークサマナーであり、九重家の裏の仕事の一切を統括する立場にある人物である。
「失礼いたします。お久しぶりです、黒死ネキ様。ご挨拶が遅れた事、まことに申し訳ございません」
「構わんよ。
「
「それで、黒死ネキ様、依頼の前に私たちへ預かって来ている物があるとの事ですが、それは一体?」
上司である静を差し置き、まるで黒死ネキが主であるかのように振舞うヴィルトゥオーサであるが、静に思うところは無く、むしろヴィルトゥオーサが九重家に仕える事となった経緯を考えれば当然であるとすら思っていた。
自分と黒死ネキの立場と持てる力は今更比べるべくも無いものであるが、最終的にどちらの『命令』に従うのかさえはっきりしているのならば、静にはヴィルトゥオーサの態度を咎めるつもりは無いのである。
「ああ。正直、私も
そう言って軽く肩をすくめた後、黒死ネキは懐から二枚のカードを取り出した。
一般的なクレジットカードや運転免許証などと同じサイズの物で、特に凝ったデザインが施されていると言う訳では無くシンプルなデザインだ。
そのカードには静とヴィルトゥオーサの名前と顔写真が刻まれており、何かの会員証のような印象を受ける物であった。
そして、そのカードには、それが何であるのかをはっきりと示す文字も印字されていた。
「は?」
「これは?」
そう───
───と。
「は?」
「これは?」
余りにも予想外な代物を目にして、静もヴィルトゥオーサも表情が宇宙猫になっているが、黒死ネキは「まぁ、そうだろうな」と思いつつも話を続ける。
「ガイア連合が基本的には民間営利団体で、言ってしまえば単なるデカい寄り合いサークルである事は理解しているな? 寄り合いサークルである以上、発展の過程で自然と大小様々な倶楽部やサークル、同好会等々も出来て、中には当事者の意志に関係なく、いつの間にか勝手に設立されたものもある訳だ。このふざけた名前の同盟もその一つだな。読んで字の如く、ガイア連合の関係者で黒髪のロングヘアの者は勝手にメンバー扱いされているらしいぞ」
「え? 当人の意志に関係なくですか?」
「関係無いな。私も入った覚えが無いのに勝手にメンバーにされていた。まぁ、特に害がある訳でも無いし、面白半分で所属は続けているがな。今回は九重 静からの依頼を受けた時に、運営の者を経由してお前たちに届ける様にと渡されたが、発行元は不明だ」
「ええと、正直このような物を頂いても困惑が勝るのですが……」
「ちなみに、この出所が不明の謎の会員証だが、所持しているだけで【呪殺無効】と【破魔無効】がデフォルトで付与されるぞ。あと、「髪が燃えたり切られたりしないように」とか言う理由で、【火炎耐性】と【疾風耐性】も追加されたらしい。馬鹿な理由で技術と金を無駄遣いするところが実にガイア連合らしいとは思うがな」
「「ええええええ!!??」」
自分たちでは決して作る事など叶わず、金銭で手に入れようにも並の名家では一族全員が破産しようと全く足りない、そもそも購入しようにも普通はコネなど無い。
そんな超性能の護符……否、会員証をポンと渡され、ますます困惑する静とヴィルトゥオーサであったが、気を取り直して黒死ネキへ質問を続ける。
「あの、この……黒髪ロング同盟でしたか? この同盟に入ると、何かノルマや特典などはあるのでしょうか?」
「いいや? 特に何も活動などはしていないし、当然ノルマも無いな。単に外見的特徴から勝手に結成されている事になったと外野が騒いでいるだけのケースだな。まぁ、この会員証はやりすぎとは思うが、別に何か仕込まれている訳でもないから害はないぞ」
「は、はぁ? そう言う事でしたら、まぁ、ありがたく……」
「ああ、そう言えば所属している事になっている者とコネクションが出来るのは、特典と言えば特典か。馬鹿馬鹿しいものではあるが、共通の話題にはなるしな」
「───ッ!?」
その瞬間、九重 静に電流走る
「あ、あの、黒死ネキ様? この黒髪ロング同盟には他にはどの様な方々が所属している事になっているのでしょうか?」
「ああ、やはりお前はそこに気付くか。まず私。他には探求ネキやそのシキガミ、道南支部の邪視ネキ、山梨の人魚ネキとその家族などが主なところか。*6他にも黒髪のロングヘアの黒札やシキガミたちは、大概メンバー扱いされているな。ああ、そうそう、黒髪ロングなら男性でも加入できるらしいから、名誉会長はショタおじらしいぞ?」
「「……………………」」
余りにも豪華なメンバーに言葉を失う静とヴィルトゥオーサ。
今、黒死ネキが挙げた黒札たちは、二人の主である田舎ニキこと碧神凍矢が「自分より強い」とか「自分より優れている」とか、極めて高く評価してた者たちばかりではないか。
極めつけはガイア連合の盟主にして、全ての黒札が束になろうと及ばないとされる、二人からすれば、もはやあらゆる神仏や悪魔などよりも遥かな高みにおわす超越者であるショタおじの存在だ。
「…………ヴィルトゥオーサ」
「…………まさか人魚ネキ様まで所属されているなんて……これはもしや役得?…………いえいえいえいえいえ、私如きがあの至上の歌を奏でられる御方と同じくくりになるなど、そんな恐れ多いこと…………けど、これでもしかしたらほんの少しでもお近づきになれる可能性もワンチャン……」
「…………ヴィルトゥオーサ?」
「───ッ!? あ、はい!!」
「貴女が人魚ネキ様の『お歌』にドはまりしている*7事は知っていますが、それで無礼になるような真似は許されませんよ?」
「は、はい!! 勿論です!!」
九重家の『暗部』の長であるヴィルトゥオーサ。
彼女は凄腕の元ダークサマナーであり、汚れ仕事全般に従事する事自体に今更躊躇や嫌気を覚える事は無い。
無いが、それはそれとして暗部の仕事ばかりしていると魂が摩耗してダーク属性一直線になってしまう。
人間性や品性まで捨てるつもりの無い彼女からすれば、この仕事を続けるにあたり、何らかの心の癒しを求める必要性を感じていた。
そして、九重家のコネを通じてたどり着いた心の癒しは、『人魚ネキのお歌』であった。
ヴィルトゥオーサはそのコードネームの示す通り、楽器の演奏に超級の才能を持っており、得意なチェロを始め十数種類の楽器を専門家以上に弾きこなす天才音楽家でもある。
そんな彼女が『音楽』に癒しを求めるのは必然であり、ガイア連合における『音楽』『芸能』の分野で、他者の追随を許さない領域にある人魚ネキの『お歌』にたどり着いたのもまた必然だった。
そして、癒しを求めた彼女が軽い気持ちで初めて『人魚ネキのお歌』を聞いた時、その美しさと衝撃で己の理性が消失するのを自覚した。
ヴィルトゥオーサは自分の演奏が『聞いた者の心に働きかけ、その望みと感情を表出させる』*8と言う事を理解し、武器としても使用してきた。
だからこそ即座に理解し思い知った。
自分の演奏など、
霊的なレベルの差や、そもそも演奏と言う『物理法則』と、権能と言う『法則の上書き』との差は勿論ある。
だが、それらを差し引いてなお、自分の『演奏』は人魚ネキの『お歌』には及ばない。
そんな余りの
何もかも投げ出して、一生
『お歌』の催促など有り得ない。気まぐれで歌っていただけるだけでも生涯の思い出に出来る。
自分たちの安眠目的の為だけに『お歌』を強要? 巫山戯るなブチ殺すぞ物知らずのド素人どもが!!
こうして人魚ネキ本人のあずかり知らぬところで、専門家であるが故のガチ信者が誕生したのである。
静としては「いや、それはどうよ?」と思いはしたが、ヴィルトゥオーサ本人は「人魚ネキ様にご迷惑をお掛けするなど、死んでもあり得ない」と言う鋼の意志で、九重家との契約を守っているので「まぁ、それなら」と納得はしている。
「……まぁ、良いでしょう。経緯はどうあれ、このような
「言いたい事は分かりますし、逆らうつもりもありませんが、言い方ぁ!!」
「あははははははは、まさに人間関係とは複雑怪奇!! 実に良い娯楽だな」
大真面目な無茶振りと、それに対する受け答え。
予想通りの寸劇を、そうなるように誘導した確信犯*9は笑って観賞するのであった。
「「お見苦しい所をお見せいたしました」」
「別に気にしていないぞ? むしろ面白い寸劇だったから、もっと続けても良いんだぞ?」
「お戯れを」
「……そう言えば、先程は黒髪ロング同盟の事を『外見的特徴から勝手に結成されている事になったと外野が騒いでいるだけのケース』と仰いましたが、ひょっとして他にも似たようなケースがあるのでしょうか?」
「あるぞ。私が所属している事になっている物だと、『合法ロリ同盟』とかな」
「───ごッ!?」
「……あの……よろしいのでしょうか、その名称は? 犯罪云々を我々が今更言うのも何ですが、色んな意味で問題なのでは?」
「良いんじゃないか、面白ければ? 結局の所、どのような形であれ、『受け入れるか否か』が全てだ。本意不本意はあろうとな」
「その、ごうほう……えっと、同盟のメンバーの方々は、この扱いを受け入れておられると……」
「盟主と言う事に
「ああ、破魔ネキ様は確かに合法r……ゲフンゲフン!! 他の方々も、確かに外見はr……いえ、小柄な少女で……脳缶ニキ様って、男性では!?」
「言ったろ、〝愉快犯〟だと」
「……黒札の方々は、本当の意味で〝自由〟なのですね」
「〝それ〟が目当てでガイア連合に居る連中が多いからな。生を謳歌するには〝それ〟が不可欠だからか、知って知らずか好き勝手する奴も多いぞ」
「……確かに、そうなのでしょうね」
〝それ〟を手にする為には『力』が要ることを。 どんな種類であろうと、だ。
望外の幸運で、この地には『力』を持つ御方が居てくれている。
絶対に
「……ところで、ヴィルトゥオーサ」
「はい」
「命令です。ちょっと若返って幼女になりなさい」
「はいィ!?」
「有難くも末席に加えていただいた『黒髪ロング同盟』。そして、今しがた黒死ネキ様よりお教えいただいた『合法ロリ同盟』。幸いこの場には〝
「いやいやいやいやいやいやいや、待って下さい、静様!! そもそも若返るだなんて、そんな方法……」
「黒死ネキ様、先程、イタコの長老様は【恐山の霊水】で子供になったと仰いましたが……」
「ああ、間違いないな。で、
「何で持っているんですか!? いえ、そうじゃ無くてですね!! 黒札様方とのコネクションを求めているのなら、九重家の当主である静様が自ら所属すれば良いではないですか、合法ロリ同盟に!!」
「私は凍矢様の手足となり、いずれ孕み袋として使っていただけるようにしなければなりません。凍矢様の性癖はシキガミである
「ありますから!! 私は『暗部』の長なんですよ!? 契約で縛っているとは言え、有象無象の
「あははははははは、まさに人間関係とは複雑怪奇!! 実に良い娯楽だな」
大真面目な無茶振りと、それに対する受け答え。
予想通りの寸劇を、そうなるように誘導した故意犯*10は笑って観賞するのであった。
「さて、茶番はこのくらいにするか。中々愉快な見世物だったぞ」
「お楽しみいただけたのでしたら恐悦至極です」
「いえ、九割がた本気でしたよね?」
「お黙りなさい」
「クククッ、この場に田舎ニキが居れば、今の茶番を本気にしたりするのだろうな。それはそれで右往左往する様を楽しめそうか? いや、九重 静の
「凍矢様を試すような予想をするなど、私には恐れ多く……」
「九重 静が、自分の部下に無体を強要し、その辺の黒札なら嫌悪するであろう『コネクションの為に送り込む』と言う行為を、田舎ニキこと碧神凍矢の前でするか否か…… ああ、気付くなコレ。言葉にしてみたら不自然が過ぎているじゃないか」
「…………」
「相手が私だからと茶番に付き合うのが最善手と判断し、先程の立ち居振る舞いだ。ああ、最善手だったぞ? 実際結構笑えたしな。田舎ニキは本当に果報者だな。
九重 静にとって、黒死ネキは『都合が良すぎる黒札』である。
黒死ネキにとって、九重静は『有能で面白い人物』である。
静からすれば現状の『有能で面白い人物』と思ってもらえている関係こそが最上であり、黒死ネキが『都合が良すぎる黒札』でいてくれる関係なのである。
故に、『
まぁ、予想外に多くの大物黒札とのコネクションを得られたので、茶番とは言えヴィルトゥオーサの言う様に九割は本気なのだが。
そして、黒死ネキもそんな『
何度も口にしている通り、九重 静と言う一個人を、だ。
「(田舎ニキの『運命』が波乱万丈なのは、九重 静を得た幸運の反動か? それとも逆に、波乱万丈であるが故の九重 静と言う存在がバランスを取っているのか? クククッ、益体も無い想像だが、どちらでも有り得そうだな)」
そんな事を考えつつ、その波乱万丈の
「さて、依頼の話に戻るとするか。 それで、私は何処のどいつを殺せば良いのかな?」
ランチタイムの食堂で、今日のメニューは何にするのかを尋ねるような気軽さでそう言って黒死ネキは笑う。
その笑みには一切の威圧感も、恐怖も、不自然さすらも
そして、九重 静は確信する。
自分の判断に誤りなど無かったのだと。
お読みいただき、ありがとうございました。
はい、今回は名無しのレイ様の所の子達とのコラボです。
今回の登場人物、全員黒髪ロングだよ。一種異様な光景やね。
ストーリー的にこれでキリが付いたように見えますが、実はこれは前半です。
後半のお仕事編をお待ちください。
一見してギャグっぽいやり取りですが、静からすれば自分と故郷の命運の何割かが掛かっている、割と本気で命がけの『接待』です。
そもそも静の立場とスタンスで、『依頼の席で黒札相手に気軽に会話のドッジボールをする』とか絶対に有り得ない訳で。
静視点の黒死ネキは作中でも表現しましたが、〝吐き気を催す裏の仕事を嬉々として受ける〟〝殺害対象が人間でも悪魔でも一切の躊躇も後悔も無く殺し尽くす〟〝黒札の中でも上位の戦闘強者〟とか言う、『名家』にとって『都合の良すぎる黒札』です。
だからこそ、こんな奴に頼り切りになるリスクを静が理解しないはずも無いと言うネ?
黒死ネキ自身がどう思っていようと、静視点だと『都合の良すぎる黒札』に飽きられたり見捨てられたりしないように、そりゃ必死になりますよね。
だってこんなジョーカーが使えなくなった挙句に関係が悪化したら、『田舎ニキから見捨てられるリスク』が否応なく上がっちゃうし。
黒死ネキの性格や好みを概ね正しく把握しており、自分が『有能で面白い人物』で、それなりの頻度で黒死ネキ好みの依頼を提供する『お得意様』だと思ってもらう事が最善手だと判断していますし、実際それが黒死ネキに対する『名家』のとれる最善手です。
黒死ネキも、そんな静の事を理解して極めて高く評価しています。
だから お気に入りの『お得意様』に、コネクションの紹介をする程度のサービスをしても良いと思った訳です。
だってこれ、黒札視点だとギャグ的な同盟でも、『名家』視点だと『金で買えるなら破産しようと買う』ってレベルのコネですよ?
静とヴィルトゥオーサが浮足立つのもある意味当然。
ヴィルトゥオーサに関しては、名無しのレイ様とのやり取りでキャラクター設定を追加するご許可を頂いた訳ですが、それは後半で詳しく。
と言うか、今話での『人魚ネキのお歌の信者化』は許可とってネェんですよね!! 書いてる最中に勝手に設定が生えました!!(マテ
いや、マジモンの音楽家が癒しを求めて人魚ネキのお歌を聞いたら、こうならねぇ? って頭をよぎったら、ふと気付くと信者化していたと言う。
ま、まぁ、SS書いてれば良くあることですよね(開き直り
それでは、次回の黒死ネキとヴィルトゥオーサによる『突撃隣のいつものゴミ』にご期待ください。
・黒死ネキ
田舎ニキも静も『お気に入り』。両方とも極めて高く評価している。
魚沼支部はイベントに事欠かないし、回って来る依頼はどれも楽しめるしでニッコニコ。
さて、殺る気もでたし、ゴミ処理を始めようか。
・九重 静
超有能現地名家当主。これ以上とか居るの?
必死に『接待』してたら信じがたい程ヤベェコネをポンと渡された。
マジでヴィルトゥオーサの尊厳を売るかどうか検討中。
・ヴィルトゥオーサ
もしマジでロリ化したらこんな感じになる。
【挿絵表示】
今回ポンと渡されたコネで、人魚ネキと知り合える可能性がワンチャン出て来た。
次回は黒死ネキと一緒にお仕事。