【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
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誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。
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今話は番外編の新潟でのお仕事の後編です。
前2話からの続きとなっていますので、先にそちらをお読みいただき、今話をお読みください。
静からの依頼 → ヴィルトゥオーサの過去編 → 依頼を遂行
こんな感じの流れになっております。
……過去最長を大幅に更新しちゃったよ、文章が膨れ上がり過ぎた……
「ほう? これはこれは。よくぞ
「お恥ずかしい限りです。今回は普段から【アンドロマリウス】の権能に依存していたが故の見落しでした」
「なるほどな。確かに【
新潟県某所。
とある戦没者慰霊碑のある施設へ、黒死ネキとヴィルトゥオーサは訪れていた。
ガイア連合魚沼支部の政治的な意味での中心人物である、金札の九重 静からの使命依頼を受けての『ゴミ掃除』の為である。
九重 静のスタンスは『黒札様は決戦兵器として活躍してもらい、全ての雑事は我々が行う』である。
ガイア連合の黒札の多くは圧倒的な霊的能力は持っているが、政治力や組織力などは持ち合わせていない者がほとんどであり、同時に圧倒的な霊的能力を持っているにも関わらず、その感性は一般的な───つまりは、
こと『他者への悪意』に関して言えば【人間】と言う種族は、たかが【悪魔】と比べるべくも無い適性を持っている。 必要以上に最高最悪の適性を、だ。
それは、強大な【悪魔】であろうと恐れる事の無い黒札が、たかが力無き【人間】たちの『他者への悪意』に心を折られ、『故郷や地方を守る』と言う志を捨てざるを得なかった事例の多さが物語って証明している。
そしてそれは、魚沼支部長であり静の主人でもある田舎ニキこと碧神凍矢にも、十分に起こり得る事なのである。
故に静は無駄に発生率の高い『吐き気を催す裏側の案件』を、田舎ニキには極力知らせずに処理し続けて来た。
全ては、田舎ニキこと碧神凍矢にこの地に在って頂きたいからだ。
今回の依頼は、そんな静にとっての最悪とも言える案件。つまり、『吐き気を催す裏側の案件』かつ、自分たちだけの力では打倒が不可能な強敵が存在する案件なのである。
もっとも、だからこそ静は
実のところ、そう思っているのは黒死ネキだけで、静からすれば割と本気で必死なのであるが。
「しかし、ここまでになるのに何年かかったんだ? 連中にしては随分と手間暇をかけたものだな」
「それだけこの地での田舎ニキ様の武勇……連中からすれば悪名が響き渡っていると言う事でしょう」
「確かにな。……もしこのまま、ずっと気付かれなかったのならワンチャン田舎ニキを倒せるまで
「ですね。どれだけ育とうと、田舎ニキ様が
「お前も何気に言うようになったな。良い傾向だぞ。それにしても……」
【天使人間 ドmiニおn】 <レベル:50>
「普段の木偶どもの相手はつまらないんだが、
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昔々、ある所に自分が正しい事をしていると思い込んでいる自称聖職者たちがいた。
「天使様のお力で、愚かな衆生を導こう」
「天使様は必ずや
何処にでも湧いて出る、適当に石を投げれば当たる程度の、その辺に居る自称聖職者たちだ。
才能は凡庸。信念も借り物。身に着けたと思い込んだ力すら
あえて何かを評価するのなら、他の自称聖職者たちと比べ、多少の現状把握能力と対策の立案能力があり、それなりに我慢強かった点だろう。
「何故この地の愚者どもは天使様の、
「何故天使様はあのような愚者を生かしたまま放置なさるのか? 本来なら、あのような素性の知れぬ黄色い猿どもなぞ、人として扱う必要すら無いはずではないのか?」
「また天使様が愚者を殺さずに居なくなってしまった。何故だ? もしや、天使様は手を抜いて……いや、
「……忌々しい黄色い猿どもめが、調子に乗りおって……しかし、ここで無策で事を進めるのは天使様に選ばれた賢き者の振る舞いでは無い。良いだろう猿め、人の叡智を教えてやろうではないか」
そして、その自称聖職者たちは、これは自分に与えられた試練とばかりに勝手に自己陶酔し、猿を圧倒できる『強い力』を目指した。
自分たちは力しか能の無い猿とは違う。最初は弱くとも、最後に猿より強くなれば良い。
無駄に耳だけは良い猿どもは、天使様が愚者の救済の為に動き出した途端に群がって来る。
だからと言って、強大な天使様をお呼びする為に準備をしようとしても、どこからともなく群がり邪魔をしてくる。
ならば、猿どもに気付かれなければ良い。
そもそも、異国の猿如きにこちらの財を振舞う事が誤りだったのだ。
材料は
都合が良い事に、この島国は
猿どもは慰霊だの平和の祈りだの、人の振りをしているが、だったらその『平和への想い』とやらを使ってやろうではないか。
喜んで良いのだぞ、猿ども。猿どもの『平和への想い』とやらを実現させてやろう。
天使様を理解できないお前たちでも、お前たち自身の『平和への想い』とやらで降臨された天使様であれば、流石に理解せざるを得まい。
ああ、そうだ。全ての
ここは緩衝材の意味も込めて、この穢れた島国で生まれてしまった、
生まれからして穢れた猿の同類とは言え、その身だけは我々と同じ人種だからな。天使様の器としては、そこまで悪くはないだろう。
さて、準備に手間取ったが、これで後は待つだけだ。
待っているが良い、猿どもめ。お前たち自身の『平和への想い』とやらが天使様の御力となり、その御力を持ってお前たちは救われるのだ。まったく……自分たちが救われるまで真に尊いものが何なのかを理解できないとは、愚か者とは実に哀れなものだな。
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何の事は無い。
この新潟の地で、田舎ニキの尽力によってガイア連合の支援を受けた者たちが奮起した結果、我が物顔でのさばっていた、のさばろうとした
『天使様の御力』とやらを妄信した無策の愚者がそれなりに駆逐された後、残ったのはそれなりに考える事の出来る者たちだ。
そして、
質が悪いのは、その『それなり以下』の中には、『それなり以下の倫理観』と言う項目も含まれている事。
そして更に質が悪いのは、その『それなり以下』に限って、それを実行する為の行動力
日本は敗戦国であり、戦時中の国内での戦没者は凄まじい数に上り、墓地や慰霊碑、追悼施設などは各地に数多く存在する。
そして、墓地や慰霊碑、追悼施設などが存在する以上、その数だけ祈る者も多くなる。
戦没者の為、平和の為、己の心の安寧の為……共通するのは「争わないで済むように」と言う願いだ。
だったら、
不特定多数の祈りによって生じた極々微細な『祈りのMAG』。
墓地や慰霊碑、追悼施設などを通じて「そこに眠っている」と多くの者が認識する事によって逆説的に生じた『死者のMAG』。
大人たちが祈り願う「争わないで済むように」と言う想いを受け、それに
そして、敗戦後の統治時代に散々手を加えた事による、この地の霊脈へのLaw属性の浸食とそれに伴い発生する『Law属性のMAG』。
まるで、流れる小川から誰にも気づかれない様に、ほんの小さな支流を作るように。
まるで、空気中を漂う水蒸気を無理やり集めて水にするように。
ほんの少しずつ、気付かれないように時間をかけて。
最初は水溜まり。次は池。更に沼となり、いずれは湖に至るように。
数日、数か月、数年の月日を用いて
この国に帰化した外国人夫婦より生まれ、事故で両親を失い孤児となった幼子を依り代として。
『対象者』はこの孤児。この幼子は
『実行者』は自称聖職者たち。彼らは
故に、彼らはこの件に関しては『盗人』では無く、この件に関しては
これが【
そして、今回の発覚に至った経緯は単純だ。
不自然で不完全であれ、目の前の【天使人間】は【ドミニオン】の位階にまで至った。
【ドミニオン】とは『神の統治を熱望し、神の威光を知らしめる事』を役割としており、その名自体が『統治・支配』を意味する天使である。
つまり、目立たずに隠れ続ける事など、不可能なのである。
そして、『
これまでの人生で目にした事も無かった強大な天使の力。
不自然で不完全であれ、【ドミニオン】に成った孤児。
この力があれば、この地から忌々しい猿どもを駆逐する事も出来る。
まずは、『
この
そんな自称聖職者たちの
結果として、【ドミニオン】の名に相応しい、『神の統治を熱望し、神の威光を知らしめる事』を目的とした【聖地】が誕生し、その存在を周囲へ知らしめたのであった。
この【聖域】は極めて強固な結界であり、『
具体的に言うなら、『呪殺』や『呪怨』は元より、『破魔』や『祝福』、『四属性』や『物理』に至るまで、無効化や強い耐性を備えているのである。
自称聖職者たちからすれば、忌々しい
もっとも、この件を対処可能な人員*1からすれば、『概念を寄せ集めただけの雑な結界』でしかないのだが。
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「……と、言うのが今回の件が発覚してからの調査結果となります」
「もはや連中の様式美だな。今回は多少毛色を変えてはいるが、もう一ひねり欲しかったところだ」
一般的な感性の黒札たちが聞けば、眉を顰め怒りを抱くであろう経緯を『いつものパターン』と軽く流す黒死ネキとヴィルトゥオーサ。
彼女たちは表も裏も熟知しているが故に、
「で、向こう側で何か喚いているのが、今回の馬鹿どもの一人か。 他の連中の居所は?」
「先程【アンドロマリウス】による追加調査の結果が出ました。ここから20km程離れた地点の隠し教会ですね。
「それで良い。まぁ、あの馬鹿が知っているなら私が殺せば分かった事だが、万が一知らなかったなら追跡が面倒だからな。連中が高みの見物を気取っている間に確認できて何よりだ」
そう言いつつ、黒死ネキはチャイカたちへと念話を送る。
指示内容は監視と【閉鎖】だ。すぐに了解の意が返って来る。
「さて、準備は済んだし、遊ぼうか」
そう言って、楽しそうな表情で【聖域】を構成する光の壁へと近づく黒死ネキ。
見れば、光の壁の向こう側では聖職者風の中年男性が、得意げに何かを喚いている。
「この…………めが!! 貴様らのような呪われた……この、偉大なる…………威光を……!!」
「どれどれ?」
───が、黒死ネキはこれを完全にスルー。 聞く必要も意味も無いので、当然の対応であった。
そして、【聖域】を構成する光の壁に無造作に手を伸ばし触れてみる。
途端、異物が触れた高圧線の如く、派手に火花を散らす光の壁。
この【聖域】は極めて強固な結界であり、『
「見たか!! これぞ…………!! 黄色い猿が……無駄……!!」
「ふむふむ、こんな感じか」
その効果を存分に発揮し、光の壁が黒死ネキに対し牙をむいた事に狂喜乱舞した聖職者風の中年男性が何かを喚き続けているが、当の黒死ネキは涼しい顔で、バチバチと火花を上げ続ける光の壁と自分の手を
一応、補足するのなら、この光の壁は低レベルの悪魔であれば、触れただけでも滅ぼす事が出来る程度の性能は有るのだが。
「ふむふむ」
「強がりは止め……!! この……!!」
「ん~~~?」
「……何故……!! お前は一体……!!」
「お、まだいけるか?」
「……嘘だ、こんな……!!」
「そろそろ、かな?」
「止め……!! もうそれ以上……!!」
「おっと」
一方、亀裂の入っていた光の壁も、まる
最初は盛大に火花を散らしていた光の壁だったが、黒死ネキが手を触れ続ける事で、その勢いは徐々に削がれ続け、ついには亀裂が入り砕けようとしていた。
しかし、まさに砕けようとしたその瞬間に、黒死ネキは光の壁から手を離した。
だって、うっかり壊しちゃったら、もう遊べないし。
見れば、あれほど火花を散らしていたにも関わらず、その手は汚れ一つ着いてはおらず、芸術品めいた可憐な造形に些かの変わりも見られなかった。
一方、亀裂の入っていた光の壁も、まるでひび割れた大地に水を流し込んだ際のごとく、新たに流れ込む「争わないで済むように」と言う願いのMAGにより修復され、元の輝きを取り戻していく。
「なるほどなるほど、大した物だ。あのまま無理をして触れていたら、私も危なかったかも知れんなぁ。実に面しr……もとい、恐ろしい物を作り上げたものだ」
「は……はははは!! 当然だ!! 貴様らのような………!! この威光……!! 破れるはずが……!!」
「あの、ここまで露骨だと、黒死ネキ様に畏れたり呆れたりすれば良いのか、あの馬鹿を憐れめば良いのか、感情の整理が追い付かないのですが?」
ヴィルトゥオーサから見れば、あまりにも露骨な茶番を披露する黒死ネキと、必死に自分を騙そうとする馬鹿の図だ。
とは言え、黒死ネキが完全にオモチャ扱いしている【聖域】は、ヴィルトゥオーサを始めとした『九重家の戦力』のみでは突破は極めて困難であり、突破するにしても多大な犠牲を覚悟しなければならない代物である。
『自分より強い相手をオモチャ扱いする強すぎる味方』を目にし、味方への頼もしさと畏怖と呆れと、相手への侮蔑と憐憫の感情が全部纏めて湧き上がり、「私はどんな表情をすれば良いの?」と宇宙猫ともチベットスナギツネとも表現される顔で遠い目をするしかないのであった。
「普通に楽しめば良いともうぞ。さて、確認も終わったな。後は『ゴミ処理』の方法だが…………うん、この
「いや、飴細工って……それに壊すはともかく、溶かす、ですか?」
「なに、『ゴミ処理』はアフターケアも考えてこその『ゴミ処理』だからな。さて、ヴィルトゥオーサ、これから『雨』が降るからコレを使うと良いぞ」
「……は、はぁ?」
そう言って黒死ネキはヴィルトゥオーサへと黒い傘を手渡した。
何処から取り出したのかとか、いつから持っていたのかとか、ヴィルトゥオーサにはまったく認識できなかった。
それに、雨が降ると言われて思わず空を仰ぎ見るが、普通に晴れているし見える範囲では雨雲らしき物も見えない。
腑に落ちないものを感じつつも、これまでの経験から素直に応じるのが最適解であると判断し傘を受け取る。
「では、始めるとしよう。『ゴミ処理』をな」
そう言って黒死ネキは禍々しいデザインの大鎌を生成し、その柄を地面へと突き刺す。
そして、自身の制圧制御を一部開放し、自身に宿す無色透明の【穢れ】を現世へと
「【
最初は何の変化も見られなかった。
しかし、次の瞬間には黒死ネキの放つ無色透明の【穢れ】は現世において超純度の【穢れ】へと変貌し、大地は黒く染まり始める。
【聖域】であったはずのこの地の霊脈は、徐々に、そして次第に勢いを増してその【穢れ】に浸食されていく。
もはや、湖に流れる川は無く、池を作る水も無く、新たな水溜まりは作られない。
元より、たかが数年間コツコツと拾い集めた程度の、本来なら静かに消えるはずだった『祈り』や霊脈から漏れ出たMAGに過ぎないそれらでは、魂の領域から膨大な量の【穢れ】を現世に放つ黒死ネキの権能に抗う術など無い。
かつて、強制的にLaw属性に浸食された霊脈が、今度は強制的に穢されていく。
白い小川に無理矢理に黒い大河を合流させたように、川の水の色は変わっていく。
そして、小川程度の水では開花に数年かかった花も、大河の縁にはすぐに咲く。
【穢れ】は大地へ根を張り、根は地上で花となる。
血のように赤く穢れた花となる。
沢山、沢山、すごく沢山、とても沢山。一杯、一杯、見渡せるほどに。見渡す限りに花が咲く。
その花は一輪一凛が【穢れ】の結晶。
そして、
そして、
どんな雨が? 川の水と同じ、穢れた【死の雨】が。
つい先ほどまで晴れていた空は、いつの間にか黒い雲が覆い尽くしていた。
夜の帳も同然の光を遮る黒い雲より、同じ色の雨が降る。
オカルトにおける超常現象とは、『自分の
これが成立すれば、『術者にとっての常識』に『成立した超常現象』が追加され、以降は
花が咲いているから、この場所には雨が降る。
「──────♪ ──────♪」
降りしきる黒い雨の中、
この国の人間なら誰でも知っている童謡。
雨の日に母親が傘を持って迎えに来るのを喜ぶ子供の歌。
そして、それは『迎えに来てくれる母親を亡くして、柳の下でずぶ濡れになって待ち続ける子供』を現す歌でもある。*2
黒い【死の雨】は、光の途絶えた【聖域】を
この雨と花に触れると死ぬ。
ヴィルトゥオーサはそう確信し、黒死ネキから受け取った傘の中で必死に身を縮ませていた。
黒死ネキの恐ろしさは理解しているつもりだったが、いざその脅威に晒されかけると身体が震えないようにするので精一杯だ。
そもそもこの傘は何なんだろう? この雨を防げる時点でただの傘じゃ無いのは間違いないが、理解が追い付かない。
見れば雨に晒された光の壁は、火花を散らす事すら出来ずに黒く染まりつつある。
いや、もしかしてあれは〝溶けて〟いるのか?
先程の黒死ネキの宣言を思い出し、改めて見てみれば、光の壁は明らかに薄くなっており、何か所かは穴も開いているように見える。
「こんな……!! …………!!?? ………早くしr……!!」
もはや【聖域】としての体を成していない光の壁の向こうで、よりによって黒死ネキに目をつけられた……いや、あれは碌に認識すらされていないオマケか? ともかく、『不自由』な馬鹿が無駄に必死な表情で叫んでいるが、特に気の毒とは思わない。当然の結果だからだ。
黒死ネキに意識を向ければ、何やらこの国の童謡を歌っている。
丁度、「子供にしては上手い」と感じるくらいの出来栄え。
ワザと
絶望的な状況であるにも関わらず、どこか楽しそうにしている
そして、ふと気付くと、いつの間にか雨はやんでいた。
「さて、下準備は終わったな。では、次だ」
そう言って黒死ネキは自身の大鎌を【変化】させる。
柄はそのまま支柱となり、刃の部分が腕木へと変わっていく。
同時に柄の刺さっていた場所に咲いていた赤い花が伸び、腕木に向かって響板と響胴へと変わっていく。
そして出来上がった物は、一般的に『ハープ』と呼ばれる楽器に酷似していた。
もっとも、デザインは禍々しい大鎌の印象を色濃く残す恐ろしい物なのだが。
更に黒死ネキは何処からともなく一つの仮面を取り出した。
サーカスや仮面舞踏会にでも使われていそうな、赤い鼻の道化師の仮面を。
「では、特別ゲスト
道化師の仮面をかぶり、黒死ネキは禍々しいハープを演奏する。
「【嘆きのシンフォニー】」*4
曲目は『死の舞踏』。カミーユ・サン=サーンスが作曲した交響詩である。*5
この地は既に【聖域】では無く、【死の雨】に染められた穢土である。
そして、この地は
黒死ネキは【
その
そう───
「あははははははは!! それは言ってやりたい事は山ほどあるだろうとも!! 自分たちの祈りも願いもゴミのように扱わた挙句、こうも好き勝手にされればなぁ!!」
───日華事変以後における、新潟県関係の軍人、軍属、在外邦人及び内地戦災者73534柱の遺志や魂を、穢土と化したこの地で【赤い花】と【死の雨】を媒介に、【穢者】*6として『彼岸』より現世に『回帰』させる事が可能なほどに。
黒死ネキにスキルにして権能、【
それは黒死ネキの放つ膨大な【穢れ】を大地に浸透させ、その結晶たる【赤い花】を呼び水に【死の雨】を降らせる事で、対象範囲を穢土と化す術式である。
これにより、対象範囲内の死者を対象とした大規模な
なお、【赤い花】と【死の雨】は【穢れ】の結晶でもあるので、余程強い【穢れ】への耐性が無ければ、触れれば普通に死ぬ。
<我らの祈りを、願いよくも> <この国を、この地をよくも> <死した我らだけでなく、生者までも愚弄するか> <幼子の願いを何だと思っている> <許さない> <親を亡くした幼子を、己の欲望の為に> <絶対に許さぬ>
「ああああああ!! 来るな!! 汚らわしい死にぞこないどもめ!! 貴様らのような猿が、この私に指一本でも触れられると……ああああああ!! 悪くない!! 私は何も悪い事などしていない!!」
もはや崩れかけの飴細工も同然の光の壁だが、それでも大波のように押し寄せる万を超える【穢者】たちを押しとどめている。
所々に穴が開き、【穢者】が伸ばす手は光の壁の内側に容易に入り込むが、それでも中の自称聖職者へは届かない。
【穢者】の大半は元々は覚醒者ではない一般人であり、【穢者】となり『彼岸』より『回帰』するも、レベルに換算すれば1以下の者ばかりとも言えた。
だからこそ、壊れかけの光の壁と言えど、軋みはしても壊すまでは至らない。
無論、黒死ネキがワザと『生前と同程度の力』になるように抑えた結果である。
だって、普通に強い【穢者】にしてしまっては、言いたい事すら言う間もなくあっさりと
それでは面白く無い…………もとい、『彼岸』より『回帰』した甲斐も無いのだから。
「さて、言いたい事も概ね言えたか? なら、少し待っていて貰おうか。最後のお楽しみの前に、当事者たちには本音を語って貰わないとなぁ」
そう言って黒死ネキは先ほどからドン引きしているヴィルトゥオーサへ声をかける。
内容は、音楽家への『演奏』の依頼だ。
「待たせたな、
「……っ!? なるほど、そう言う……かしこまりました。お任せください」
その黒死ネキの
「【鎮魂のミサ】」*7
【穢者】の葬列にヴィルトゥオーサの【鎮魂のミサ】が響き渡る。
聴く者の心へ直接響き渡る『演奏』は、怒りと悲しみの激情に支配されていた心を癒し、冷静さを取り戻させていく。
そして同時に、激情のままに怒りと悲しみをぶつけるのではなく、冷静に、確かな意思の元に想いをぶつけなければならぬと決意させていく。
【穢者】となって『彼岸』より『回帰』した死者たちは、先程までの狂騒で自らの思いの丈を存分にぶつけたが、それで終わりではないのだと理解していく。
「さぁ、『不自由』で愚かな罪人さん、そして無垢で『不自由』なお嬢さん? 人間の心はもっと『自由』であるべきだわ。だから貴方も『自由』になりなさいな。貴方たちのしたい事は? 理屈や建前ではない、貴方たちの本当の心を見せて頂戴ね」
ヴィルトゥオーサの『演奏』は、それを聞いた対象者の感情を彼女自身へと転写する。
そして、共感されて共鳴を引き起こす事で、対象者の感情を増幅させる。
彼女の『演奏』の影響を受けた者は、自分自身の隠された感情を理解し、それと向き合う事となる。
つまり、ヴィルトゥオーサの『演奏』を聞いた者は、自身の感情の大波に抗うとこが出来ずに、理性を失い、隠していた本音をぶちまける事となる。
「何が天使だ!! 何が救世主だ!! 全部全部都合の良い駒だ!! 愚かな民衆を調教するのに都合が良いだけの舞台装置の分際で、偉そうに
「お父さん、お母さん、私、良い子にしてたよ? 言われた通りに待ってたんだよ? どうして迎えに来てくれないの? 寂しいよ。帰ったら一緒に遊んでくれるって約束したよね? 私が悪い子だったから迎えに来てくれないの? どうしてお家から出て行かないといけないの? どうして知らない人と一緒に行かなきゃいけないの? 天使様って何? お祈り? 他の皆の『
これが、
確かに【穢者】たちは激情に支配されていた心を癒し、冷静さを取り戻した。
しかし、彼らは元々は「争わないで済むように」と平和を、より詳しく言えば『子供たちのより良い未来』を想い願い『彼岸』へと渡って行った者たちだ。
つまり───
<許せない!!> <許せない!!> <許せない!!> <許せない!!> <許せない!!> <おのれおのれおのれおのれ!!> <外道めが!!> <畜生と呼ぶのも烏滸がましい!!> <幼子を!! 愛しむべき者を!!> <助けねば!!> <あの子を助けねば!!> <誅さねば!!> <許してなどおくものか!!> <死した我が身など、惜しい物か!!>
───こんなモノを見て冷静でいられるなど、有るはずも無かった。
無論、彼ら【穢者】たちもヴィルトゥオーサの『演奏』を聞いた以上、本音をぶちまけているだけとも言えるが、元より彼らに嘘偽りなど無く、『演奏』は文字通りの後押しとなり、彼らにとっての許されざる外道と、救うべき被害者へと殺到させる事となった。
「ああああああ!! 来るな!! 来るなぁあああああ!! 貴様らの様な汚らわしい亡者如きに、この【聖域】を破れるはずが……!!」
───パァン!!───
「……え?」
「人の心に『不自由』を強いる壁とか要らないわ。それにしても、私たちが
「ふ、、ふ、巫山戯るな!! 上位天使の奇跡が!! こ、こんな事で!?」
「その『こんな事』を気にしているような余裕、貴方にあるのかしら?」
「……あ?」
ヴィルトゥオーサにより付与された【壊死損傷】からの【壊死爆発】を受け、【死の雨】により既に風前のともし火に過ぎなかった光の壁は、ついに崩れ去った。
残るのは、喚き散らすだけの自称聖職者、不思議そうな表情で周りを見渡す【ドmiニおn】、そして彼らへ殺到する【穢者】たちだ。
「う……あああああああ!! 来るな!! 来るなぁああああ!! ……お、おい、役立たずのガキめ!! ボサっとしていないで何とかしろ!! 誰がお前を育ててやったと思っている!? お前の様な
もはや取り繕う事すらせずに【ドmiニおn】へと命令する自称聖職者。
しかし、その命令は───
「うん、分かった」
「は? え? き、貴様……何を?」
「
「あああああ……こ、の、馬鹿が……こんな……こんなぁあああああ…………」
───
「止まれ」
このまま放置すれば、【穢者】たちは自分が滅びる事など気にする事なく、
それに、こいつらの役割は別にある、今ではない。
何より、
自分で殺した馬鹿の血に濡れた腕を、ぼんやりと見つめる見た目だけは成年の
「やあ、お嬢ちゃん。気分はどうだ?」
「……お姉ちゃん、誰?」
「私は
「……悪者なのに、悪者をやっつけるの?」
「そうだよ。正義の味方は皆の為に戦うが、悪者は自分の為に戦うからな。だから、ソイツは悪者で、私も悪者。勿論、
「……私も?」
「そうだよ。だって、君は
「……あ…………」
「気付いたかな? ああ、別にそれは決して『悪い事』ではない。まして、子供なら当然の事だ。が、『良い事』でもない。そして、『良い事』じゃない事は、『悪い事』として扱われるんだ。周りの都合で、お嬢ちゃんがどう思っているかとか関係なく、勝手にな」
「……何それ、酷い」
「質が悪いのは、悪いヤツに限って「良い子になりたければ言う事を聞け」とか言ってくる事だな。「こうすれば良い子になれる」もセットか? 根拠もなく「良い子じゃないから嫌な目に遭った」とか「良い子でいないと嫌われる」とか、散々聞かされたんじゃないか?」
「……うん、言われた」
「だから、お嬢ちゃんが
「……えーと……………………あれ? それだとお姉ちゃんも悪者だよね?」
「そうだよ。最初にそう言ったろ」
「……どうしてお姉ちゃんは、自分が良い者だって嘘をつかないの?」
「必要無いからな。私はここに
「……私と遊んでくれるの?」
「ああ、その通りだ。一緒に遊んだら面白そうなお嬢ちゃんがいたから来てみた。悪者に騙されていたから、
「ちょっと待ってね、考えるから。……………………えーと……えーと……オジサンたちはお祈りをして、皆の『
「そうだな。別に他のやり方でも返せるが、お嬢ちゃんはもう十分寂しい想いをしたのだし、思い切り遊べば良いだろう。好きなだけ
「……あれ? それって実はお姉ちゃんが私と遊びたいだけなんじゃ……?」
「あはははははは。バレたか。実はそうなんだ」
「うん、やっぱりお姉ちゃんは悪者なんだね。しょうがないなぁ……じゃあ、私が
そう言って、両親を失い流されるままに『良い子』であろうとした幼子は、我慢するのを止める事を決めたようだ。
実に素晴らしいな。こんな素晴らしい子供が他者に強要された『良い子』のまま終わるなど、そんな
「そうそう。そうでなくてはな。
「……ねぇ、お姉ちゃん? そのルビおかしくない?」
別におかしくないぞ?
│
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それは戦いとは言えなかった。
レベルが違う、経験が違う、手札が違う、視点が違う、発想が違う、何もかもが違う。
【
大火に如雨露で水を掛けても仕様が無い。消化するはずが無い。
大河にマッチの火を投げても仕様が無い。干上がるはずが無い。
結局はそう言うものなのだ。
自称聖職者たちが何年もかけて育てて来た【天使人間】……【ドミニオン】に至り無敵だと思えた力も、純粋に遥か
子供がどれほど全力で挑もうと、大人は軽く受け止めてしまう。
単純な力量だけでもそうだが、これまでの経験や持ち得る手札まで含めれば、もはやその差は『大人と子供』以上であると言えた。
「すごい、すごい!! お姉ちゃんって、とっても強いんだね!!」
「お嬢ちゃんもな。ああ、本当にな。誇りも信念も矜持も力も、何もかもが借り物で自覚すらしていない木偶どもとは大違いだ。……いや、比較する事自体が失礼だったな!!」
つまり、これは戦いではなく遊びである。
そして、【
「本当は私も遊びたかったの!! 我慢しないで泣きたかったの!! 寂しかったの!! でも、良い子にしてなきゃダメだって!!」
「あははははははは!! 良いじゃないか、それ!! 子供は遊んで泣いて、皆と賑やかに騒ぐものだ!! たまに羽目を外すのは当然の事だ!!」
子供と大人の遊びにおいて、最も大きな差異は何かと問われた時、その答えの一つとされているのは───
大人は遊びで相手を上回る事を目指す。
子供は遊びそのものを全力で楽しむ。
───と言うもの。
子供にとって、全力でぶつかっても構わない───安心して全力でぶつかれる相手と全力で遊ぶ事、遊べる事とは、本当に楽しい事。
だから、【
それに、遊べば遊ぶほど、勝手に持たされた荷物が軽くなっていくのが分かるから。
今なら分かる。
言われたからじゃ無くて、ちゃんと自分で返して「ごめんなさい」って言おう。
そう自分で決めた。
だから、【
ああ、本当に大違いだ。
戦闘とは『自分を殺せる奴』との命のやり取りであり、『自分を殺せない奴』が相手では決して成立しない概念である。
だから
そして、『遊び』とは自分の意志で行われるのが前提であり絶対だ。誰かの指示で行われるのは『仕事』と言うからだ。
『遊び』が楽しいのは当然だ。だって自分が遊びたいのだから。
「「あはははははははははは!!」」
【
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「あ~~~、疲れた~~~!! もうダメ、動けない~~~!!」
「ああ、お疲れ様だな。楽しかったぞ。お嬢ちゃんも楽しめたかな?」
「うん!! 楽しかった!! お姉ちゃん、ありがとう!!」
【天使人間 エnじぇl】 <レベル:1未満>
かつて数年かけて【ドミニオン】の位階まで力を蓄えた子供は、黒死ネキとの『遊び』でその力を
自分の意志では無かったとは言え、自称聖職者たちに持たされた
その事を自覚した子供の選択は「ちゃんと返して、ごめんなさいと言う」だった。
「お墓から来たみんな、私、ちゃんと返せたかな? 勝手に持って行っちゃってごめんなさい」
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「お前ら一斉に話すな、五月蠅いぞ。ああ、要約すると「大丈夫だ、気にするな」だそうだぞ」
「よかった~~~!! ……ねぇ、お姉ちゃん?」
「何かな?」
「……私、
「知らん。
「……えー、酷くない、それ? うん、でもそうだよね。そうする!! だって、
その子供は勝手に持って行ってしまっていたものを、ちゃんと返して「ごめんなさい」と言った。
その子供は勝手に【天使人間】にされており、その存在は種族も魂も霊核も、全てが【天使人間】のそれとなっており、その子供を構成する要素のほぼ全てがMAGによって賄われていた。
そのMAGは、たった今返却した「争わないで済むように」と言う
つまり、ソレを返却し無くしたこの子供は、
「……楽しかったなぁ。けど、遊びすぎて疲れちゃったから、もう寝て良いかな? そしたら
「ああ、その通りだ。お疲れ様だな。ゆっくり休むと良い【────】」
「あ、それ私の名前!! 良かった!! 思い出せた!! お姉ちゃん、ありがとう!!」
【人間 ────】 <レベル:0>
死んだ者、死に逝く者の全情報を蒐集し理解する【ゲーデ】の権能で子供の本当の名を知り、それを本人へと伝える黒死ネキ。
【天使人間】として存在を上書きされ、自分でも忘れていた名前を
「……本当に、本当にありがとう。……おやすみ…………なさ……い………」
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「さて、メインディッシュは楽しんだ事だし、デザートといくか」
「あっ、はい」
ヴィルトゥオーサからすれば、仮にもレベル50の【ドミニオン】との闘いを、戦闘ですらなく『遊び』として処理───自分の娯楽とした黒死ネキに改めてドン引きしていた。
そして、立場的には「残党の処理はお任せ下さい」と言いたいところであったが、言えば確実に黒死ネキを興ざめさせる事も理解できているので、返事は「YES」一択である。
黒死ネキはそんなヴィルトゥオーサの事を気にする事も無く、懐から
念話でも構わないが、向こうの状況をこの場の面子にも伝える必要があると判断したからだ。
ワンコールで繋がり、通話はスピーカー設定にする。
「こちらの大本は処理した。そちらはどうなった?」
〚こちらからも【聖域】の消失を確認。ゴミどもは右往左往。【閉鎖】しているから、逃走不可〛
「結構、それでは───〚あと〛───ん?」
〚
「ああ、そう言う? ニコらしいと言えばそうだが、残念ながら今回は先約があるからな。我慢させておけ。代わりにもっとスカッとする光景を見せてやるさ」
そう言って黒死ネキは待機させていた【穢者】たちに視線を向ける。
「待たせたな、見送りご苦労。お前たちを
<<<<<<────────────??????>>>>>>
「実は、今回の一件を引き起こした馬鹿どもがまだ残っていてな? 自分たちの手で『落とし前』をつけたくないかね?」
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「クククッ、良い返事だ。無駄にLawに塗れていたこの場所も適度に〝穢せた〟事だし、アフターケアも問題無いな。では───」
そう言って黒死ネキが【穢者】たちへ向けてパチンと指を鳴らすと、辺り一面に咲き乱れていた【赤い花】もろとも黒いモヤ状のモノへと変化し、黒死ネキの手元へと収束していく。
時間にして数秒程度。しかしその光景を畏怖の感情を抑えきれずに見続けるヴィルトゥオーサからすれば、数分にも数時間にも思える悍ましく美しい光景。
「この規模の【魔法思念料】は、そうそう作れないからな。見ごたえのあるモノになりそうじゃないか」
今回の『ゴミ処理』の最後の仕上げだ。
黒死ネキは愉快そうな笑みを浮かべながら準備を進める。次は
「アリスニキから仕入れた【疫毒鋼】*12を加工した弾頭に、沖縄の【銃火暴風怨嗟域】から出土したスクラップで作られた【呵責鋼】*13を私が〝穢し尽くして〟作った薬莢。更に今回の一件で怒り心頭の73534柱の【穢者】たちが姿を変えた【魔法思念料】を炸薬にした特製弾丸……クククッ、正直撃つのがもったいないが、ここで使わずして何処で使うのかと言うものだしな」
田舎ニキが知れば「新潟が滅びる!!??」と慌てふためく事間違いなしの、特級程度で収まるのかすら怪しい呪物を手に黒死ネキは嗤う。
弾頭の【疫毒鋼】に関しては、アリスニキの作だけあり特に弄る必要は無かったが、薬莢の【呵責鋼】に関しては、折角の楽しそうな【
薬莢に詰める【魔法思念料】はあくまで「そう言う情報の結晶」として加工されたものであり、亡者でも生者でも無いからセーフだ。詭弁? この業界はレスバで勝った方が正しくなるから問題ない。
「ここからターゲットまでの距離は約20kmか。射程や精密性ではロビンニキ*16には及ばないが、この程度なら十分狙えるな」
そう言って、未覚醒者なら手にするだけでも即死しかねない『特製弾丸』を装填するべく、愛銃であるジャッカルPを懐から取り出す黒死ネキ。
右手に持つジャッカルPを、眼前に構えた左腕を台座にし固定する。*17
そして、チャイカより送られて来た座標へ向けて照準を定める。
黒死ネキの高レベル覚醒者としての身体能力は、単に持ち上げただけの腕を鋼よりも強固な固定台座とし、鋼をも砕くであろう発砲時の
「あはっ♪」
心底楽しそうな黒死ネキにより、一つの地方を容易に滅ぼす事すら可能な【穢れ】に満ちた『特製弾丸』は
ターゲットに命中するまで、残りは10秒ほど。
それが、
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〚着弾を確認。地獄絵図発生。ゴミどもは【閉鎖】から逃げられないし、【穢れ】も範囲外には漏れない。【穢者】たちは好きなだけ思いの丈を発露。ゴミどもがまともに
「こっちでもヴィルトゥオーサが震えているな。まぁ、その内慣れるだろ」
「(いや、ニコ様はいずれ慣れるかもだけど、私は無理!! 知ってても恐いから!! 黒死ネキ様にとっては全力でもなんでもない、演出重視の娯楽のはずなのに、こんな規模の御業になるなんて……!?)」
黒死ネキにより上空へと放たれた『特製弾丸』は弓なりの軌道を描き、ターゲットである『チャイカによって【閉鎖】された元【聖域】』へと上空から着弾した。
その場から逃げようと必死に無駄な足掻きを続ける自称聖職者どもの残党を尻目に、意外なほど静かに着弾した
Lawに塗れたその地は【穢れ】に染まり、もはや神聖さなど欠片も感じられない。
自称聖職者どもの残党がその事に気付くよりも早く、更なる異変は続く。
自分たちの『祈り』を、『想い』を悪用し、慈しむべき幼子を欺いた外道への怒りを抱く73534柱の【穢者】たちが、〝穢し尽くされた〟この地に再度『回帰』する。
ただし、今度は低レベルのそれではなく、幼子から『
<許さない!!> <許さない!!> <許すものか!!> <外道どもめ!!> <人面獣心の輩めが!!> <よくも、よくもあのような幼子を!!> <人として死ねると思うでないぞ!!>
どれ程言葉にしようと尽きる事無き怒りが【穢者】たちを突き動かし、
「え?」 「な?」 「あ、あ……ああああああああああああああああああ!!!!????」
この段階になって、ようやく異変に気付いた愚者たちは、何が起こっているのか、自分たちがどうなるのか、どうなっているのかすら理解できないまま、【穢者】たちの波に飲まれ消えて行った。
愚者たちが自業自得と言う言葉の意味を
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│以下、アフターケア
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「ふむ、向こうも問題なさそうだな。まぁ、
「……あの、黒死ネキ様? アフターケアと言うのは?」
「ん? 気付いていなかったか? なら、【アンドロマリウス】と【アムドゥスキアス】なら分かるだろう? この地の霊脈が
「あー、うん。この一件の前と後じゃ、霊脈の属性に違いが出てるね」
「ここ数年でLawに偏っていた属性が、汝の【穢れ】で中和───いや、汚染?───されているな」
「で、結果的に言えば属性がNeutralに近くなってるんだけど……ねぇ?」
「例えるなら、砂糖の効き過ぎたスープに、大量の塩をぶち込むがごとき所業だぞ? 何でコレで地脈の属性が中和されると言うのだ!? 力技にも程があろうが!!」
「えええええええええええ!? だ、大丈夫なのですか、それは!?」
「一時的に中和されただけだから、完全に安定させるには今後も微調整が必要だろうな。まぁ、それは田舎ニキに丸投げするから問題無い」
「ああ、それなら問題無いね」
「この地の守護者であれば、地脈の安定に尽力するのは当然か。確かにその通りだな」
「……お労しや、田舎ニキ様。あの、その場合の田舎ニキ様の負担や費用などは?」
「初動は私が代行したようなものだから、むしろ一からやるより安くつくぞ? 面倒な仕事が増えた事に変わりは無いし、今まで以上にメシア教から目を付けられるだろうし、実際の作業に当たっての費用が相応にかかる事に変わりは無いがな。 良かったじゃないか、これで田舎ニキの借金が増えれば、あの小僧からは
「────────────!!??」
「
くすくすと愉しそうに、いっそ可愛いとすら表現できる邪悪な笑みで嗤う黒死ネキ。
今回も実に楽しかった。今から次が待ち遠しい。きっと次も楽しめる。
だって、
そんな余韻に浸る黒死ネキの
画面を見ると発信者は九重 静。
「ははっ♪ これはこれは。……ああ、私だ。こちらは終わったぞ。この後、
静からの電話の内容は、言ってしまえば追加の依頼が生じた事の謝罪であった。
普通なら受けた相手をゲンナリさせる連絡であるが、静は黒死ネキならむしろ『依頼のおかわり』を喜ぶ事は理解している。
デザートを食べ終え、それなりに満足して、次回を楽しみにしていた所で『おかわり』の連絡だ。嬉しくないはずが無い。
だが、もしも、ここで静が「嬉しいでしょう?」などと言う体で連絡してくるような馬鹿であれば、九重家は存続出来ていなかっただろう。
これは、互いが互いを理解している上での
「では、
55話目 とある黒札の性癖がブッ壊れた話03 より
艶のない黒紫色の地金にくすんだ肉色の波模様が走るこのやたらと毒々しい色合いの金属は呪鉄90%、水銀9%、アダマントス1%の比率で合成した幻想金属の合金に、以前アリスニキがウインナースの失敗作として製造したボツリヌス菌入り株から抽出した疫毒の概念を融合させた代物。
通常の金属と比べても相応に高い強度と、そして段違いの硬度を併せ持ち、刃として鍛造すれば非常に高い切れ味を発揮するのに加え、その素材の成り立ちからアダマントスほどではないが強い死の属性を帯び、また武器や術の媒体として用いれば毒・風邪・麻痺などの肉体系状態異常と呪殺属性の即死に高い補正を与える、攻撃的な合金素材。
49話目 幕間その1 沖縄支部の日常業務 より
沖縄の【銃火暴風怨嗟域】から出土したスクラップに様々な儀式や材料配分で調整して造られる。
コレを加工すれば、亡者特攻かつ非実体にも有効で破魔属性ではない【対亡者用弾丸:呵責弾】を作成できる。
47話目 残念ながら当然という話 より
外見がFateシリーズのロビン・フッド、通称緑茶の黒札。弓術特化の元準修羅勢で、現在は長野の下諏訪町支部を拠点にしている。星祭神社の3~4期生くらいのイメージ。つまり黒死ネキとは同期。
普段から50km先から一方的に曲芸射撃をし、本気を出して普通に狙い打てば有効射程が300kmになる射程チート。
本霊はレシェフで、弓矢と死を司り雷火と疫病を振り撒く凶神。
本人は「感染性や貫通性能では黒死ネキに劣る」と言うが、普通に過剰火力。
お読みいただき、ありがとうございました。
いや、分割しろよ。何だよ本文が二万三千文字って……
普段の三倍くらいの文章量ですね~、どこで切っても中途半端で区切りがイマイチになるし、内容的に一気読みして欲しいし、そもそも番外編に必要以上に話数使うのも本編をないがしろにするみたいでちょっと……みたいな?(オ
はい、黒死ネキの新潟でのお仕事でした。如何でしたでしょうか? 面白いと思っていただけたのなら幸いです。
内容的には、いつものメシア教の悪企みで【天使人間】にされちゃった子供とバトルして、その落とし前をつけさせるってだけなんですが、滅茶苦茶文字数が増えました。
書きたい事書いてるとこうなる典型やね。
黒死ネキの新スキルや、ヴィルトゥオーサとの極悪コンボ、他作者様の所のコラボアイテム、キャラの繫がり等々、色々書きたかった事も書けたのは良かったかなと思っております。
Q:何で黒死ネキが『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』の【穢れの王】の真似事してるの?
A:ふーじん様の所の百合ちゃんで『ENDER LILIES: Quietus of the Knights』の存在を知って、その設定とストーリーの美しさに惚れ込んだ結果、「あれ? これ、黒死ネキなら【穢れの王】ごっこ出来るんじゃね? よしやろう」と思い付きを実行した結果です。
Q:ニコって誰よ?
A:今後、本編で追加予定の黒死ネキのパーティメンバーです。名前だけ先見せ。
どんな子かは登場をお待ちください。
・黒死ネキ(四条 灯)(この時期だと深層に突入する前後ぐらい)
良い空気吸ってる享楽主義者。
ただし所属組織と依頼人には損害を発生させずに、自分は最大限愉しむ計算高さも標準装備。だからこそ質が悪いとも言う。
普段殺している【天使】は基本的に上の指示に盲従する『木偶』なので、つまらない相手と思っているが、今回の【天使人間】と遊ぶのは面白かったから満足。
最大限楽しみつつも、依頼人にとってより良い結果になりように立ち回り、Law汚染されていた地脈を適度に〝穢して〟強引にNeutralに持って行った。
結果的に田舎ニキの負担も借金も増える事になるが、そっちの方が依頼人(九重 静)にとって都合が良いだろうからサービスした。喜んで良いぞ?
・ヴィルトゥオーサ(アルトリア・ジアロ)(レベル的には【超人】の位階に足を突っ込んだ)
現地民の超上澄み。
黒死ネキの依頼に同行。毎回毎回、黒死ネキの暴威にガクブルする羽目になっている。
手持ちのスキルと契約悪魔が後方支援要員として超優秀で、本人の理想も含めて黒死ネキに気に入られてしまっている。
比較対象が悪すぎるだけで、彼女も十分に裏側の住人であり、今更『吐き気を催す裏側の案件』程度では心は乱れないが、それはそれとして黒死ネキの隣は恐い。いや、マジで。
・【天使人間】にされた子供
日本に帰化した外国人夫婦の間に生まれた子供。両親は事故死して孤児になる。
引き取られたのがメシア教系の孤児院だった為、カオ転時空のお約束ルートを辿る羽目になる。
本人はとても良い子で、悪い事をしてしまったと気付いた後はすぐに「ごめんなさい」が出来た。
両親を亡くし、「良い子にならないと」と幼さ故に自分を抑圧させてきたが、黒死ネキにそそのかされ……もとい、諭されて、思い切り遊んで良いと知り笑顔に。
最後は忘れていた自分の名前を思い出し、静かに眠りについた。
・【穢者】になった73534柱の死者たち
リアルの新潟県某所の戦没者慰霊碑の元で眠っておられる方々と同じ数。偶然ダヨー
「子供たちが戦争に巻き込まれませんように」「平和に暮らせますように」と願っていただけに、今回の事件を受けてキレ散らかす。当然すぎる。
黒死ネキから「言いたい事を言わせてやる」と言われ、『彼岸』から現世に『回帰』して来た。
「外道どもの所業、絶許!!」「子供を助けろ!!」と全力を出しまくった。
一通り落とし前をつけさせた後は、再び現世の平和を願い、自主的に『彼岸』へと渡って行った。
・自称聖職者たち(才能ロバ)
何もかもが『それなり以下』なのに、いらん事だけは『それなり以上』にやらかした馬鹿ども。
結局は何もかもが他力本願だった事にすら気付かずに、怒れる【穢者】たちに飲まれて『神の御許以外』に連れていかれた。