【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。
作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。
今話はハロウィン回の3話目です。先に前2話を読後の上でお楽しみください。
大変長らくお待たせいたしました。
既に11月も半ばだってのに、未だにハロウィン回が終わらないのは何でなんだろうね?
後編のつもりで書き始めたら、結局分割して後編その一になる悪癖がやべぇ。
リアル事情がヤバかったり、納得いかなかった描写を書き直したりしてたらこんな感じになりました。
参考資料に元ネタのDVDをレンタルして鑑賞しましたが、やっぱ笑いが止まらないですねw
前話のあらすじ
・ハロウィンパーティーにちなんだ『イベント』にご招待された三馬鹿ラス。
・そこは、『笑ってはいけない
・三馬鹿ラスに襲い掛かる、腹筋崩壊映像の数々。
・そして、試される三馬鹿ラスのケツの耐久性。
・ケツの限界を迎える三馬鹿ラスに、緊急事態を告げるアナウンスが響き渡る。
・
・そこに、常ならぬ邪悪な笑みを浮かべた
「それでは、『緊急事態』ですので皆さんを隣のスタジオへご案内しますね。ちょっとしたドッキリも成功しましたし」
「え? ドッキリ!? マジでドッキリなの、これぇ!?」
「あの、どう見てもマジモンの死体なんですけど!? 緊急事態ってコレの事じゃないの!?」
「それにあの、さっきまでの「笑ってはいけない」って、アレですよね? 前世の年末バラエティの……」
言いたい事と聞きたい事が山ほどある三馬鹿ラスであったが、そんな彼らを一瞥し、麗人は先へと進んで行く。
とは言え、目的地は
「ここですね。撮影準備も完了して、中でゲストも待機してもらっています」
「あっ、はい」
「……なぁ、これ今からでも逃げた方が良いんじゃねーか?」
「……正直賛成したいですが、手遅れです。さっきまでならともかく、今から逃げたら『契約違反』待った無しですよ?」
「「だよなぁ……」」
これから訪れるであろう、碌でも無い未来にゲンナリしつつ、それでも『契約違反』は恐いのか渋々とスタジオの扉を開き中へと進む三馬鹿ラス。
きっと、中では自分たちを襲う『笑いの刺客』が待ち受けているに違いない。
そう思って見渡すと、コンサートホールを思わせる豪華な作りのスタジオ内には、彼らの予想だにしない人物が立っていた。
「ようこそ、三馬鹿ラスの皆さん。お待ちしておりました」
「え? あれ? 探求ネキ?」
「あれ? 俺ら、たった今、探求ネキに案内されてここに来たのに?」
「探求ネキが二人? それでは、私たちと一緒に居たのは……」
先程まで自分たちを道案内してきた麗人と、まったく同じ外見の麗人の出迎えに、戸惑いを隠せない三馬鹿ラス。
最初は戸惑い、次に疑問、そして、次に感じるのは不安と恐怖だ。
普段から方々で有力者*1にボコられ、時にはマジで殺されたりしている三馬鹿ラスであるが、彼らの生存能力───本能とも言える才能───は特筆すべき点がある。
馬鹿ではあるが愚者ではない彼らは、その才能により状況を瞬時に悟る。
「騙された!!」 「案内してくれた探求ネキはニセモノだったんだ!!」 「スタジオに居る方が本物です!!」 「良く考えたら、案内してくれた方の目つき、めっちゃ邪悪だったし!!」 「だよな!! スタジオの方は優しそうな表情だし!!」 「つか、そもそも死体の傍にカボチャの破片が散乱してて、そこにジャック・オー・ランタンを浮かべながら登場だよな、さっきまでの探求ネキ!!」 「何でそこで怪しまないんですか、このお馬鹿!!」 「「お前も気付かなかっただろうが!!」」 「いや、待って下さい!! 重要なのはそこじゃないですよ!!」 「てめぇ、誤魔化そうったってそうは……」 「違うから!! そんな事より、
ここまで、全てがアイコンタクト。
無駄にレベルの高い思考速度で、無駄に高度な瞬時のやり取りを行い、自分たちが置かれている危機的状況を把握し、生存本能に従い後方へ振り返る。
そして、彼らの目に映ったのは……
│
│
│
│
│ ここから回想シーン
│
│
│
│
│
彼は行き詰っていた。
最初の頃は良かった。特に問題無くレベルを上げる事が出来たし、大した苦戦もして来なかった。
ガイア連合に参加した時期こそ先達よりもかなり遅くなったが、その内追いついて見せる。
そう意気込んで、レベル上げに勤しんだ。
聞く所によると、修羅勢と呼ばれて一目置かれるようになる為の基準は、レベル30からだとか。
なら、当面の目標はそこだ。自分なら直ぐに達成出来る。
特典で手に入れた式神を遠征させるだけでも簡単にレベルが上がるし、実際にレベル10まではあっという間だ。
そこからは、式神の魔法で敵を削って、前衛用の使い魔*2を盾にしつつトドメを刺してレベルを上げるだけの簡単なお仕事だ。これでレベル20までは行ける。
この調子なら、修羅勢入りなんて簡単だ。そうなれば、自分も一目置かれる存在になれる。
だが、簡単だったのはそこまでだった。
否、そこまでですら簡単と感じられたのは、単なる幸運に過ぎなかった。
攻撃を喰らうようになった。痛い。凄く痛い。耐えられるはずが無い。
より慎重な立ち回りをするようになった。臆病風に吹かれるようになったとも言う。
理想と現実は乖離を見せ始め、「自分は真面目に上手くやっているはずなのに」と言う不満が抑えきれなくなって来る。
それでも、「自分は優秀で一目置かれるべきなんだ」と言う意地で、少しずつでもレベルを上げた。
何とかして痛い思いをしないように、可能な限り一方的に倒せる相手を見繕い、コツコツと強くなって行った。
それも、レベル20台の後半にもなれば行き詰る。
一方的に倒せるような低レベル相手では、もうレベルは上げられない。
レベルを上げられるような強い相手では、無傷で倒すのは不可能だ。
理想と現実の乖離は顕著となり、「自分は大した事はない」と言う現実を否定する方に注力するようになる。「自分は真面目に上手くやっているはずなのに」と。
それでも、否、それだけに『自分よりも下の奴』を見ると優越感に浸れた。
「自分は誰かよりも優れている」 「あんな連中と自分は違う」 そう思えた。
『
我慢できなかった。運だけで得をした『自分よりも下の奴』が凄く目障りだ。
同時にチャンスだと思った。行き詰まりを解消する『便利なアイテム』を手に入れる事が出来る。
そうだ、元からあんな連中には分不相応な代物だ。自分なら有効活用できる。そうに違いない。
だから、本来なあの連中は喜んで自分に差し出すべきなんだ。だって分不相応なんだから。
なのに、無駄にずる賢い連中は逃げるのだけは達者だった。手を変え品を変えてコソコソと。
いい加減、連中に
何より『三馬鹿ラスに一杯食わされて逃げられた奴』なんて呼ばれ方、絶対に許せるわけがない!!
証明してやる。自分は優秀で一目置かれるべきなんだ。
そんな強迫観念にも似た思いでハロウィンパーティーに参加し、三馬鹿ラスに気付かれない距離から目で追い続けチャンスを伺う。
すると、連中はパーティー会場から離れて。娯楽部門のスタジオの方に向かっていくではないか。
パーティーを抜け出して遊びに行くと言う腹だろうか? どこまでも巫山戯た連中だ。
だが、チャンスだ。今度こそ連中から『探求ネキの知識』を
「ここだな、祭りの場所は。精々遊んでやろうじゃねぇか……」
そして、彼は三馬鹿ラスの入って行ったスタジオの前にたどり着いた。
気分を奮い立たせるべく一言呟き、いざ突入しようとした次の瞬間───
「祭りの場所は、ここかァ……遊んでくれよ」
───元ネタ*3のダウナーさとは違い、どこか無邪気さすら感じられる死神の声が彼の後方から響き渡った。
最初は驚いた。次に怒りを覚えた。二番煎じか、と。
これまでも、探求ネキの知識を狙う者たちから、三馬鹿ラスは無駄な機転の良さと逃げ足の速さを無駄に発揮して逃げ続けて来た。*4
時に偽物の本を使い、時に変装し、時に落とし穴を用い……無駄に手を変え品を変え、格上の者たちから逃げおおせて来たのだ。
その手段の中に、『ちひろネキや黒死ネキの声マネして動揺した集団の中を敵中突破』と言うものがあった。
誰もが頭の上がらない人物や、誰もが恐れる人物の、無駄に高度な声帯模写により動揺を誘うその手段には、彼も一度は引っかかった。
それ故に『三馬鹿ラスに一杯食わされて逃げられた奴』の一員扱いをされたのだ。忘れるはずも無い。
だからこそ怒りが込み上げて来た。「またか」と。「二番煎じが通じると思ったのか」と。
一瞬で頭に血が昇り、殺意へと変わる。思考が「殺してでも奪い取る」一色に染まる。
彼の獲物は日本刀だ。多くの日本人が『強い武器』『見栄えの良い武器』と認識しているから、彼もそう思って愛用している。
今までは格下だと思って
振り向きざまの一閃で首を刎ねて、身の程を教えてやる。
「しぃっ!!」
吐く息は鋭く短く。
鞘から刀が抜かれ、空気を断ち切りながら後方の身の程知らずへと襲い掛かる。
「(取った!!)」
彼は確信する。
三馬鹿ラス如きには躱す事はおろか、認識する事すら出来ないであろう一閃。
このまま自身が後方へ振り向く頃には、先んじて上下に両断された三馬鹿ラスを拝めるはずだ。
そんな彼の予想……否、妄想は───
「え?」
───事も無げに刀を
「え? あれ? え?」
動かない。否、動けない。
右腕で降り抜こうとした刀は目的を遂げる事無く掴み取られ、強制的に動きを止められた彼は、振り返る事は出来ずに半身のまま呆然と後方へ目を向ける事しか出来ない。
「え? うそ? 何で……」
赤いコートの少女が掴んでいる───正確には少女の右手の親指と人差し指の二本で
それも、刃を正面から掴むのではなく、
つまり、赤いコートの少女は、迫り来る刃の軌道に指を割り込ませるのではなく、
仮にもレベルを20代後半まで上げた『達人』の領域に在る彼には、それが理解できた。出来てしまった。
そして、軽く摘まんでいるようにしか見えないにも関わらず、彼が全力で押し込もうと、あるいは引き戻そうとしても微動だにしない。
物理法則など意味を成さない、隔絶としたレベルの差がそこには存在した。
「あああああ、うそ、嘘だ!! どうして……どうして……」
そして、何よりも信じたくなかったのは、目の前に居る赤いコートの少女の存在だ。
だって、もしもこの赤いコートの少女が彼の知る者だとしたら、もう取り返しなんてつかないのだから。
直接相対した事なんてあるはずが無い。そんな度胸も自殺願望も自分には無い。
何時だったか、彼女を見た目で侮り喧嘩を売った馬鹿な同期が、嬉々とした表情の彼女に文字通りの意味で細切れにされたのを目にして以来、彼にとっての恐怖の象徴は彼女となった。
何事も無かったかのように蘇生され、それ以来引き籠りとなった同期の事なんてどうでも良かった。
「ふむ、中々のサプライズだな? だが、「
「や、あの、その!? ……い、いや、これは、その……!!」
もう取り返しなんてつかない。自分は彼女に刃を振るってしまった。
彼女に〝殺し〟の建前を与えてしまった。
今からでも必死に謝るか? 否、許すも許さないも無い。彼女は
「……あ、あははは……しまったなぁ……あ、余りにハロウィンパーティーが楽しくて、つい……先走っちゃいまして……その……」
「ほう?」
人間は死の危険に直面した際に、脳が助かる方法を模索しようとして記憶を映像的に蘇らせたり、アドレナリンなどのホルモンが脳の変化を促したりする。
俗に言う走馬灯の原理だが、その中に偶々『彼女はユーモアを解する方である』と言う情報があった。
少なくとも〝人違いで斬り殺しにかかった〟と謝罪するよりも、〝ハロウィンのいたずらが先走った〟で通した方がまだマシだ。
実際、彼の全力の不意打ちなど彼女にとっては いたずら未満でしかなく、気分を害する事すら出来ていない。
だったら、このまま「いたずらでした」で通すしかない。幸い、自分が三馬鹿ラスを殺そうとしていた事など、彼女が知るはずが無いのだから。
「なるほど、なるほど。そう言う事なら仕方ないな。ああ、お前の気持ちは良く分かるぞ。ハロウィンだものな。ついつい、いたずらを仕掛けたくなると言うものだ」
「…‥は、はい!! つい、気持ちが逸って!!」
助かる!? 死なないで済む!?
滝の様な冷や汗を流しつつも、彼の心は生存の可能性を掴み取った事による歓喜で打ち震えていた。
間違いなく、やらかしてしまった現状から、生存の可能性を掴み取る最適解を彼は選ぶ事が出来た。
…………だが───
「では、私も〝いたずら返し〟をさせて貰うとしようじゃないか。「Trick or Trick!!」……なんてな♪」
───それで助かるかどうかは、また別の話なのだが。
「──────!!!???」
「どうした? 可憐な少女の他愛無い
「……ち、ちなみに、いたずらって、どんな事を……するんで、しょう、か……?」
「なに、ちょっとスリーピーホロウ*5ごっこがしたくてな。
そう言って、彼女が手にするのは直径30㎝程のジャック・オー・ランタンだ。
先程から彼女の周りをフヨフヨと浮かんでいたそれは、彼女曰くパンプキンパイらしい。
恐怖のあまりボヤけそうになる視線で【アナライズ】をしてみれば、確かに『スキルで浮遊しているジャック・オー・ランタンの形のパンプキンパイ』と表示された。*6
「あ、はい。お手柔らかにお願いします」
やった、死なないで済む!!
それが彼のこの場での最後の思考で───
「Happy Halloween ♪」
───それが、彼が後に引き籠りの人生を選ぶ前に聞いた最後の言葉だった。
「騒がしいと思って来てみれば、何ですか?
「ああ、探求ネキか。騒がせてしまったようだな。なに、折角の祭りに水を差そうとした馬鹿の末路だ。ちょうど良いから、しばらく舞台装置にでもなってもらうさ」
そう言って赤いコートの少女───『デビルチルドレン』に登場するデビルであるデュラハンの仮装をした黒死ネキは笑う。
普段なら三馬鹿ラスが探求ネキの知識目当ての厄介ファンに狙われようと、別に助ける事無く傍観していただろう。そっちの方が面白いし。
しかし、現在は大事な企画の撮影中。予定外の外野の乱入は好ましいとは言えない。
同時に、後のディレクターズカット版と言う名の「裏で何があったのか」を記録しておく事自体は悪くない。メインの撮影に割り込まれるのは遠慮願うが、単に排除するだけと言うのももったいない。
なので、ちょっと からかいに行ってみたら、何かいきなり攻撃してきた。
刃が自分に到達するまでの間にどんなアドリブをするか
なお、他の候補も『ワザと首を斬られてリアルデュラハンごっこ』『攻撃を【穢れ】で受け止めて武器を
「ふむ……このジャック・オー・ランタン……構成は各種暗黒魔法由来の呪霊で、『スリーピーホロウ』の伝承になぞらえて、〝一般人が投げつけられても明確な死には至らない〟と言う簡易概念が込められていますね。威力は単発の【ムドダイン】程度で、仮に修羅勢以上が受けたのなら〝痛いけど死にはしない〟止まりですか。これ、修羅勢未満の覚醒者が喰らえば普通に死にますね」
「こいつもレベルだけなら修羅勢一歩手前程度はあったようだがな? ただのパンプキンパイだと思い込んでノーガードで受けた結果がコレだ。注意力も覚悟も経験も足りないな、色んな意味で。まぁ、
「黒死ネキの【隠蔽】と【偽装】を事前準備無しで抜けるのは、ショタおじと霊視ニキくらいのものでしょうに。ですが、言わんとする事は分かりますし、確かにその通りではありますか」
「事前準備有りなら抜けて当然だし、無くても咄嗟に対応出来なければ殺されて終わりだからな。ああ、その点、前回の死合い*8は素晴らしかったな。私対策として『看破特化』とはな」
「黒死ネキ相手に『浄化特化』で相対したところで、いずれは超克されますからね。ある程度の長期戦を想定するなら、これが最適解でしょう。何しろ貴女の行動は、ほぼ全てが初見殺しで対応困難なデスコンボですからね」
「初めての殺し合いを思い出すなぁ。あの時も霊視ニキに見抜かれ続けたが、探求ネキの対応力でそれをされると、ああも封殺され続けるか。折角【看破】に対して耐性を得ても、構成違いの【看破】が次々に控えていたしな」
「一応、108通り程準備はしていましたからね。死合いの制限時間を設定していなかったら、私が黒死ネキを殺し切るのが先か、黒死ネキが全てを穢し尽くすのが先かになっていたかも知れませんが」
「準備していたのが108通りだけでも、死合い中に追加で新たな術式を構築し続けていたんだろう? 私を殺し切るまでに品切れになったとは思えんがな? 時間切れは残念だったが、十分楽しめたとも。是非また殺り合いたいものだ」
「それはまたの機会に、ですね。さて、予定ではこの後、彼らをスタジオへ呼び出す事になっていますが、案内はどうしますか?」
カボチャにまみれた惨殺死体の横目に、ガイア連合における修羅勢最上位陣の二人は和気藹々(?)と歓談を済ませ、次の撮影の予定を確認する。
「当初はチャイカに案内させるつもりだったが、折角だ。
そう言って黒死ネキは【魔装術】と【変化】により、その姿形を別人へと変えていく。
そして、完成したのは目の前の
「ああ、そう言う趣向ですか。では、私はスタジオ内で待機していますね。ちょうど
「話が早くて助かります。それでは、アナウンスの後、彼らをスタジオへ案内しますので」
こうして、『ちょっとしたドッキリ』の準備も整い、緊急事態のアナウンスの後、三馬鹿ラスは
│
│
│
│
│ 回想シーン終了
│
│
│
│
│
「やあ、三馬鹿ラスの諸君。本日のイベントは楽しんでいただけているかな?」
「「「やっぱりぃいいいいいいい!!!!!!」」」
自分たちが置かれている危機的状況を把握し、生存本能に従い後方を振り返る。
そして、彼らの目に映ったのは、長い黒髪をポニーテールにまとめ、赤いコートと黄色のマフラー、黒い手袋と黒いタイツ、茶色のブーツでコーディネートした、いわゆる『デビルチルドレンのデュラハン』の装いをした黒死ネキこと四条 灯だ。
「驚いてくれたようで何より。私もドッキリを仕掛けた甲斐があると言うものだ。改めて、ようこそ、三馬鹿ラスの諸君。歓迎するぞ♪」
「こ、こここここ……黒死ネキ!?」
「やっぱり、さっきまでの探求ネキって、黒死ネキが化けて!?」
「あの、これって私たちのドキュメントの撮影だと聞いていたんですが、それにしては、その……」
「ああ、お前たちの疑問はもっともだし、そこはちゃんと説明するとも。まず、事の経緯だが───」
そして、黒死ネキの口から語られる、今回の『笑ってはいけない
自分たちのドキュメントが人気コンテンツであるが故に、ユーザーからの要望で実現する事になったと聞いて「自分たちが人気者!?」と言う嬉しさと、「自分たちは森田のおっさんと同じ枠!?*9」と言う驚愕を同時に覚える。
良いリアクションをしつつ、先程までの腹筋とケツの耐久チャレンジがごとき一連の流れにも徐々に納得の表情を浮かべていく。
「なるほど、やはりコレは前世の年末バラエティを意識したものだったのか」と。
それと同時に、契約書に書かれていた「専門のスタッフが、痛みも後遺症も無く情報を収集する」と言う一文についても、
「え? 情報の収集って、もしかして……いや、もしかしなくても」と。
「……と、言う訳でお前たちにはここに集まって貰った訳だ」
「ご足労頂き、ありがとうございます」
黒死ネキと探求ネキが説明やその補足を終え、改めて三馬鹿ラスへと向き直る。
そこには、事態を納得した三馬鹿ラスが───
「「「死にたくなーい!! 死にたくなーい!!」」」
───と、何とかして逃げようとして即座に捕縛され、元気に叫んでいた。
『前門の探求ネキ、後門の黒死ネキ』とでも言うべき状況から逃げ出す事の出来る者など、三馬鹿ラスに限らずガイア連合全体を見渡しても、ほとんど存在しないので当然の結果であった。
「まぁ、そう悲観する事は無いぞ。この企画はバラエティでもあるからな。出演者からの一方的な搾取では面白みに欠けると言うものだろう? そこで、だ」
「これまで多くの者たちに笑顔を提供していただいたお礼も兼ねて、ドキュメンタリーの肖像権料とは別に、この企画内での景品として報酬を用意する事になりました」
「え? 俺らに報酬?」
「それも、前に聞いた肖像権? ってやつとは別の?」
「企画内での景品と言うと、バラエティ番組で良くある「クイズに正解したら」みたいなアレですか?」
「そう言うのだな。もっとも、以前の『探求ネキの知識を記した本』みたいな残る物では方々に迷惑がかかるようだからな。今回の報酬は基本的に消え物とさせて貰うぞ」
「ちなみに、いくつか種類を用意しています。上手くすればこの中から複数を得られる事もあるかも知れませんよ?」
そう言って探求ネキはカメラには映らず、三馬鹿ラスにだけ見える角度で予定景品の一覧を提示する。
「「「──────!!!???」」」
その一覧を目にした三馬鹿ラスは、内容の余りの豪華さにその身を硬直させる。
口にするには相当貯蓄をしなければならない希少食材を使ったフルコース料理や、金で手に入る訳ではない貴重な権利等々、一つでも手に入るのなら先程までどころか、この先に待ち受けるであろう苦難でさえも乗り越えられると思えるラインナップであった。
「……マジかよ、ヤバすぎんだろこの報酬……」
「え? 俺らのお笑い映像って、そんなに儲かってんのかよ?」
「探求ネキや黒死ネキからしたら大した事は無いのかも知れませんが、正直破格が過ぎますね……」
「じゃあ、諦めんのか? 正直、この一覧を見た後に諦めんのは逆にきついぞ」
「だよな? ぶっちゃけケツは限界だが、挑む価値はある……よな?」
「それもありますが、恐らくこれって、どう足掻こうと最終的に断れないやつですよ?」
「あん? どういう事だよ?」
「『撮影契約』の事もありますが、もっと根本的な事です。二人とも、暴力はもちろん、口で探求ネキや黒死ネキに勝てますか?」
「「「………………」」」
想像してみる。
他の馬鹿二人はさておき、カッコ良く立ち回り、探求ネキや黒死ネキをやり込める自分の姿を。
想像するのは常に最強の自分なのである。
「「「無理だな!!」」」
秒で諦めた。
そもそも三馬鹿ラスは馬鹿だが愚者ではなく、馬鹿だが身の程知らずでもない。
比較する事すら論外である隔絶した強者の二人を上回る想像など、妄想ですら出来るとは思えなかった。
「良し!! 退路なんて元々無かった!!」
「なら、いっそ迷わずに前に進むのみ!!」
「ええ、それでこそ私たちらしいと言うもの!!」
そして、三馬鹿ラスは誰からともなく円陣を組み、まとめ役でもあるサスケニキが音頭を取り叫ぶ。
「転生者五つの誓い!! 一つ!!」
「「「エンジョイ&エキサイティング!!」」」
「一つ!!」
「「「考えても分からない事は考えない、それより面白い事を考えよう!!」」」
「一つ!!」
「「「Y談をする時は誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。三人で静かで豊かで……!!」」」
「一つ!!」
「「「都合の悪いことは忘れよ!! 転生者には記憶力の欠如が必要だから!!」」」
「ラスト!!」
「「「破ったものは(夜の)オカズ抜き!!」」」
「っし!! いくぞお前らぁ!!」
「「応ッ!!」」
半ばヤケクソとは言え、三馬鹿ラスなりに覚悟を決め、この先に待つであろう過酷な運命と向き合う事を決める。
美味しすぎる景品をGETする事を、あわよくば他二人よりも良い思いをしつつマウントを取る事を夢見て!!
一方、司会役の二人は───
「……クククッ、あはははは。 ……あいつら、コレで
「……フフッ、フフフフ。……ええ、本当に彼らは天然のエンターテイナーなのでしょう。良い物ですね、『人を笑顔にする才能』と言うのは」
───三馬鹿ラスの名シーンに自分たちの笑い声を被せる訳にはいかないと、声を押し殺して笑うのであった。
「さて、皆さんで話もまとまったようですし、こちらも話を進めさせていただきましょうか」
「「「あっ、はい」」」
「そもそも、皆さんに
「緊急事態……そういや、アナウンスでそんな事言ってたな」
「え? それってさっき見たカボチャまみれのやつの事なんじゃ?」
「このお馬鹿!! アレは黒死ネキがドッキリだって言ってたじゃないですか」
「続けますよ?」
「「「あっ、はい」」」
「皆さんのドキュメントシリーズはユーザーから好評で、「笑顔になれた」と言う反響も多数いただいています。ですがそれだけではなく、皆さんに言いたい事のある方々もいるようなのです」
「俺らに言いたい事?」
「何だろう? 思い当たる節が無くても、心当たりは結構あるような……」
「何かした覚えが無くても、何かしちゃってたケースなんでしょうかね?」
「そこで、本日は代表としてとある人物に急遽お越しいただいております」
その探求ネキの言葉と共に、突如として鳴り響くBGM。
曲名は『Martial Arts』。
前世においてデンマークのネオクラシカル・ハードロックバンド、『ROYAL HUNT』が1992年に発表した1stアルバム、『Land of Broken Hearts』に収録された名曲である。
この曲は日本においては、とある人物のテーマ曲として有名であり、その名前違いのタイトルは『CRASH 〜戦慄〜』と言う。
そして、その人物の決め台詞もまた有名だ。
すなわち───
「ガッデム!!」
───と言う、レジェンドヒールレスラーとしての決め台詞である。
その決め台詞と共にホール中央より堂々たる足取りで現れたのは───
「アイエエエ!! 幼女ネキ!? 幼女ネキ何で!?」
「マジで何で!? 何でこのBGMでそのコスチューム!?」
「蝶〇!? よりによって、ここで〇野なんですか!?」
───黒いレザージャケットと同色のレザーパンツ、厳ついサングラスを身に着けてハンドポケットで入場すると言う、実年齢や容姿的にはミスマッチ極まる出で立ちであるにも関わらず、存在力と言う一点において、一切の不足を感じさせることの無い迫力を備えた幼女ネキであった。
このセリフは『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』に客演した時のもの。
11話目 より
元はネトゲのNPCで、個人戦力最強キャラとしてデザインされた吸血鬼。
制作者の性癖の集大成でもあり、レズビアンでネクロフィリア、貧乳だけど胸パット特盛、普段は郭言葉でも素の口調は普通、基本的にポンコツ、等々、属性てんこ盛り。
原作三巻で、格下の居合い斬りを掴み取る舐めプを披露した。
131話目 120:娯楽は黒札の優先事項なので…… より。
『笑ってはいけない人生禄』シリーズ制作に協力した際の報酬。
120話目 第120話 リアルドキュメンタリー【スナックバス江】 より。
森田に無許可で行われている盗撮動画配信。
お読みいただき、ありがとうございます。
書き始めた当初は、「モブをサクッと殺してドッキリ場面から~」とか考えてたのに、気付いたらモブの詳細な人生禄書いてんのマジで何なん?(ォ
こう言う事するから無駄に文章量が増えるってのに……
前書きにも書いた通り、既に11月も半ばだと言うのに未だにハロウィン回やってるの季節感的にどうなんでしょうね?
まぁ、雰囲気は既に『笑ってはいけない』の元ネタにシフトしているかもですが。
流石にこの企画で『ハメるだけハメて、痛い思いだけさせてハイ終わり』では三馬鹿ラス相手とは言え筋が通りませんからね。豪華景品を用意しました。消え物だから厄介ファンも付かないじゃろ。
……まぁ、三馬鹿ラスのやる気を出させて映像映えを良くするためのエサと言えば否定はできませんが^^;
具体的にどんな景品なのかは、次回をお待ちください。
幼女ネキが蝶野ポジなのは、前話から予想してくれていた方も多かったと思います。ええ、その通りですよ?w
何でこの子、こんなに黒レザー姿が似合うんだよw
リアルの蝶野正洋氏は「素人(当時の山崎方正)にビンタするのは怖かった」と語っていますし、幼女ネキ自身も理由の無い騙し討ちや暴力は嫌いでしょうが、残念だけどコレ契約書のある撮影なのよね。
・黒死ネキ(デュラハンコス)
『笑ってはいけない人生禄』の製作スタッフの一員。主に演出と主観情報の蒐集を担当。
普段から良い空気しか吸っておらず、隙あらば享楽的な行動をとるクソガキ。
その為の根回しを含めた事前準備も、所属組織への貢献もしっかりやるから余計に質が悪い。
今回のモブ殺しに関しては「撮影の邪魔だし、ちょっと遊びつつ有効活用するか」程度の認識。
出演者として三馬鹿ラスと戯れるのは、殺し愛とは別ベクトルで楽しむ気満々。
・探求ネキ(ヨル・フォージャーコス)
『笑ってはいけない人生禄』の製作スタッフの一員。企画立案、製作総指揮を担当。
今回は基本的にナレーションと司会進行を務めている。三馬鹿ラスへの容赦? 無いよ?
シリーズ制作にあたっての黒死ネキとの死合いでは、対黒死ネキ専用に構築した『看破特化』の術式を事前に用意していた。言うなれば〝霊視ニキ並に見抜いてくる探求ネキ〟と言うインチキが完成。肉弾戦以外が完全無欠になるやつ。実際に黒死ネキのデスコンボを封殺し続ける事に成功。
仮に制限時間を設けなかったら、両者の継戦リソース的に普通に一ヶ月以上死合いが続いていた可能性もあった。結果として判定勝ち。
・幼女ネキ(蝶野正洋コス)
『笑ってはいけない人生禄』にゲスト出演。今回は顔見せだけ。
これが単なる騙し討ちなら断っていたが、三馬鹿ラスは一応正式な撮影契約を交わしているし、自分も元ネタの番組は好きだったしで出演を引き受ける。〝理由のある暴力〟の行使に躊躇いなど無い。
実年齢や容姿的に、普通なら黒レザーとか服に着られる事になるはずだと言うのに、その存在力であっさりと着こなす。マジで似合う。
次回は三人のザキヤマポジに、幼女のビンタが炸裂する!!
・三馬鹿ラス(ハロウィンカラー)
今回の撮影の趣旨を理解し、「それって最終的に黒死ネキに殺されるじゃん!?」と逃走を図るも成功するはずも無し。
逃げられない&景品のラインナップが自分たちの稼ぎでは届かない物ばかり、と言う状況に「いっそ開き直って楽しもう」と半ばヤケクソではあるが前向きに。
そして、その直後に蝶野コスの幼女ネキを見て、「俺らザキヤマポジ!?」と驚愕するのであった。
上げて落としての繰り返しでリアクション芸も冴えわたっている。
・モブ黒札
身の程知らずな舞台装置。拗らせちゃった人。
レベルだけなら三馬鹿ラスより高いが、仮にこいつと三馬鹿ラスがガチったら勝つのは三馬鹿ラス。
式神&前衛使い魔ありで格下にトドメを刺すだけのレベル上げしか出来なかった奴と、式神無しで仲間との連携でレベル20以上まで上げた馬鹿ども、と言う比較なら、そりゃ後者が勝つでしょ。
三馬鹿ラス的には「あの人ら、俺らよりレベル高いみたいだし、逃げとけ逃げとけ」「あの連中と戦っても良い事なんて何も無いし」「三十六計逃げるにしかず」と、こんな程度の意識で逃げ回っていた。