【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~   作:マカーブル

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 本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
 誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。

 作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
 AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。


 今話はハロウィン回の11話目です。先に前10話を読後の上でお楽しみください。

 予想を遥かに超えて長期連載となったハロウィン回も、ついに正真正銘の最終回を迎えました。
 いや、マジで長かった。当初は単なる思い付き短編のつもりだったのに(ォ
 「出題編」「解答編」「収穫編」と続き、今回の「獲得編」にて締めとなります。
 面白かったと思っていただければ幸いです^^

 注:三馬鹿ラスの設定周りに、本作の独自設定があります。
  貧弱一般メガテンプレイヤー様、ご相談した際に快諾していただき、ありがとうございました。




番外編 ハロウィン回 ラストゲーム④ 期待に応えた功労者には、相応の報酬があって然るべきだろう?


 

 

 

 

前話のあらすじ

 

三馬鹿ラス、山崎イカボットと化す

 

 

 

 


 

 

 

 

 三馬鹿ラスが黒死ネキのパイ投げ(【マハムドダイン】)で山崎イカボットと化してからしばらくして……

 

 

「カヒューー……カヒューー……ゲホゲホ…………ヒューヒュー……」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 そこには息も絶え絶えで天を仰ぎ、笑い泣きのまま表情を引き攣らせ、プルプルと震えて過呼吸になっている黒死ネキの姿があった。

 

 

「お、そろそろ落ち着いてきたか。たっぷり五分は笑い転げていたし、マジで笑い死に直前だったんじゃないのか?」

 

「今回は前回の〝蒐集〟からいつも以上に期間を開けたそうですからね。今回のイベントに合わせて我慢していた分、一気に笑いの波が来たんでしょうね。おかげで良いリアクションが撮れました。もちろんバラエティ的な意味で」

 

「で、黒死ネキが元々ゲラであると言う事も相まってこうなる、と。いつか冗談で言っていたショタおじを笑い死にさせると言うのも、いずれは『嘘から出た(まこと)』になったりするか?」

 

「ふふふ、〝それ〟を本気で目指していると言ったら信じてくれますか?」

 

「もちろん応援するぞ? と言うか、私も一枚噛ませろ

 

「ええ、是非またお願いしますね」

 

 

 笑い死にせずに済んだ黒死ネキが復調しつつあるのを横目に、幼女ネキと探求ネキは気軽に会話を続ける。

 これでメイン所の撮影も終了だし、後は黒死ネキが落ち着けば()()()をやってから締めに入れば良いのだが───

 

 

 

「……あはははは……はぁはぁ……ああ、幼女ネキ」

 

「ん? どうした?」

 

「ちょっと私を殺してくれないか?」

 

「なんで!?」

 

 

 

 ───唐突な黒死ネキからの殺しの依頼に、脈絡が無さ過ぎて思わずツッコむ黒レザーようじょ。

 

 

「ああ、ネタバレでも踏みましたか?」

 

「ゲホゲホ……ああ、こいつら、例によってオモシロ下らない事を企んで……ああ、いや、私が言う訳にはいかないな……」

 

「なるほど。偶にあるパターンですか。今回は〝蒐集を無かった事にする〟程だったと? ある意味今後の楽しみが出来たと言う事ですね」

 

「……良く分からんが、この馬鹿どもが何かを企んでいて、黒死ネキは〝蒐集〟でネタバレを踏んだと?」

 

「ああ、そうなるな」

 

「それは分かったが、何でそこから私に殺してくれと言う話になる?」

 

「私がこの手の『情報』の管理に長けていて、〝蒐集〟のトリガーは『対象者が死ぬ事』だと言うのは知っていると思うが、それはつまり、私が〝蒐集〟経由で記憶操作を行うのなら、対象者は死ぬなり殺されるなりする必要がある訳だ」

 

「……ええと……要するに、踏んだネタバレの記憶を操作して封印したいから、権能行使の発動条件として私に殺して欲しいと?」

 

「そうなるな」

 

「……色々と質問、と言うか、ツッコミどころが多いから言わせてもらうぞ? まず、わざわざ権能とか使わないで、普通に自前の術式で記憶を封じれば良いんじゃないのか? 出来るだろ? 次に、権能を使うにしても、普通に自殺すれば発動条件を満たせるんじゃないのか?」

 

「そんなもの、決まっているじゃないか」

 

 

 幼女ネキの「理屈は分かるが、自分だけで簡単に実行できる事を、何でわざわざ他人の手を借りるのか?」と言う質問に対し、黒死ネキはさも当然の事の様に答える。

 

 

「折角の機会なんだから、面白オカシク殺されてみたいからに決まっているだろう」

 

「だと思ったわ、この性癖倒錯者めが!!」

 

 

 余りにも【穢れ】に満ちた黒死ネキの発言に対し、次の瞬間、幼女ネキの右腕には瞬時に甲縛式O・S(オーバーソウル)斑鳩の青いアーマーが部分形成され───

 

 

「ガッデム!!」

 

 

 

 

──────────!!

 

 

 

 ───三馬鹿ラス相手に披露した魅せ動作とは比較にならない速度と威力を持って、黒死ネキの頬を打ち抜いた。

 幼女ネキ渾身のマジビンタ(『禊』)である。

 

 無駄な風切り音や激突音を一切生じさせず放たれた一撃は、黒死ネキの全身をスタジオの壁面へ向けて水平に()()する。

 このまま壁に激突すれば、先ほどまでの三馬鹿ラスによるギャグ的な物と違い、施設そのものが倒壊するであろう衝撃が発生する事になるが───

 

 

 

「こう言う戯れも、彼女たちらしいと言えばそうなんでしょうねぇ」

 

 

 

 ───そう苦笑しつつ、探求ネキがノータイムで発動させた【物理反射障壁(テトラカーン)】を基礎とした複合型の多重保護結界によって防がれる事となる。

 

 なお、この結界は衝撃吸収型ではなく反射型なので、そのまま壁に激突した際の倍以上のダメージが吹っ飛ばされてきた黒死ネキの身体に反響する事になる訳だが、幼女ネキと探求ネキはもちろん、当の黒死ネキすら気にしていなかった。

 なんなら、結界への激突の衝撃で黒死ネキの頭部と胴体は分断され、ある意味デュラハン(本日の仮装)に相応しい有様へと変わっている。

 芸の細かい事に、分断された部位は血みどろのグロ画像ではなく、真Ⅳの【幽鬼 デュラハン】的な球体ジョイント仕様であった為、一層バラエティ感を増していた。

 

 

「……頭部と胴体は原形が残るようにさり気なく強化して、その上で私にぶっ飛ばされつつ、首だけは巫山戯た形で分断する芸細っぷり。ここまで仕込んだ挙句に、きっちり自分は死んで見せて目的を達成、と? 本当に良い空気吸ってるな、こいつ」

 

「私がスタジオの倒壊を防ぐ為に動く事も予想済みでしょうしねぇ。バラエティ的にも美味しい映像になっているあたり、勝手な行動と責めづらいんですよね。相変わらずの質の悪さです」

 

「それな。あと、探求ネキが妙に訳知り顔だったのは……」

 

「お察しの通り、これが初めてでは無いからですね。彼らからの〝蒐集〟の際に、稀によくある事です。黒死ネキには、その度に役得とばかりに殺しを頼まれていますので」

 

「黒死ネキも、ホントにアレだな。探求ネキも断らないのか?」

 

「黒死ネキの癖はともかく、彼女には私の不死殺しの術式の検証に付き合ってもらっている側面もあるので、その辺りはお互い様でもありますね」

 

「こっちはこっちで大概だった」

 

 

 『笑ってはいけない人生禄』シリーズのメインスタッフ二人の、余すところの無い公私混同っぷりに、普段の自分の傍若無人っぷりを棚に上げつつ呆れる幼女ネキ。

 そうこうしている内に記憶情報の整理も付いたのか、黒死ネキ(の身体)が起き上がり、胴体の横に転がっていた自分の首を持ち上げ左手に抱える。

 殺される気満々で無防備に幼女ネキの一撃を喰らい、実際に死んで(『DYING』して)見せた筈だと言うのに、あっさりと理屈不明な蘇生を披露する。そもそも本当に死からの蘇生なのかどうかも疑わしい。

 

 

「ふむ、良い一撃だったぞ幼女ネキ。おかげでスムーズに死ねてネタバレの封印も滞りなく済んだ。感謝するぞ」

 

「どういたしまして……で良いのか、これ? 全然殺せた気がしないんだが? カス子ネキといい、脳缶ニキといい、これだから殺してるのに死な(『DEAD』し)ない連中は厄介だな。

あと、いつまでも遊んでないで首は元に戻したらどうだ」

 

「おっと、これは失敬」

 

 

 そう軽口を叩きつつ、左手で抱えたままの自分の首を、等身大フィギュアを組み立てるが如く〝キュポン〟と軽い音を立てて首の球体関節へはめ込む黒死ネキ。

 次の瞬間には継ぎ目も消え、シミ一つない綺麗な肌へと【変化】は完了していた。

 これで自己認識も実際の種族判定も超越者(人間)だと言うのだから、理不尽極まる。

 

 

「さて、少々脱線したが、表彰式の時間だな。待たせて済まなかった」

 

「大して時間もかかっていませんし、大丈夫ですよ。ところで、今回のネタバレの解禁はどのくらい先になりそうですか?」

 

「ふむ、そうだな……」

 

 

 三馬鹿ラスのオモシロ下らない企み。

 わざわざ死んでまで情報を封印し、本番でのお楽しみを優先したその開催時期は───

 

 

 

「今からだと、おおよそ二ヶ月ほど先の話のようだな」

 

 

 

 ───ハロウィン(10月末)から二か月後、クリスマス(12月末)の時期だった。*1

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、表彰式へ移りましょうか」

 

 

 司会の麗人たちは勝者を称え表彰する。

 ガイア連合におけるトップクラスの実力者である三名が手放しに称賛するのは、日頃より確かな実力を発揮し、多くの者に認められてきた存在。

 

 

「貴方は見事にラストゲームで正解を選び、景品の交換権を三つ獲得しました。その栄誉を称え、これを表彰します」

 

「実に見事だったぞ、迷う事無くチャイカに化けていた私を本物だと見抜いたのは」

 

「ああ、確かな実力を見せてもらった。お前の活躍には今後も期待しているぞ」

 

 

 縁の下の力持ち、影の立役者、黒衣(くろご)に徹する……様々な言い方はあれど、決して目立つ事は無く、主役たちを支え続ける名脇役にして影の主役。

 

 

「それでは、改めてこれが景品の目録になります。この中から好きな景品を三つ選んでくださいね」

 

「あいつらの事は気にせず、お前が望むものを選ぶと良い。そっちの方が面白くなるだろうからな」

 

「改めて、見事だったぞ。そして、いつもお疲れ様だな」

 

 

 『笑ってはいけない人生禄』でも三馬鹿ラスと同様に、ある意味彼ら以上に人気のある存在。

 「報われて欲しい」「彼(?)の処遇改善を求む」「苦労人カワイイ」等々、多くのユーザーから愛され、幸せな未来を望まれる、その存在は───

 

 

 

「「「これからも宜しく、アガシオン」」」

 

 

 

 ───探求ネキから受け取った景品の目録をその小さな手に掴んで、フヨフヨと宙に浮かんでいた。

 

 

 三馬鹿ラス? パンプキンパイ改め、カボチャサラダの具になってるよ?

 

 

 

 

│アガシオン視点の回想シーン

 

 

 

 

 主人たちがパーティーに参加するからと留守番を頼まれた。

 命令ではなく頼みと言うのが、主人たちのお人好しっぷりを示しているとも言える。

 

 しばらくすると、主人たちが良く利用している同人サークルから配達用の使い魔がやって来た。

 配達票を見れば『要:本人受け取り』と書かれていた為、主人たちの所へ案内する事にした。放置してたら色んな意味で恥をさらす事になりそうだし。

 

 到着すると、何やらイベントの真っ最中。

 自分は聞いていないが、あの魔女たちのいつもの娯楽だろう。主人たちはいつものようにハメられたようだ。

 自分が配達用の使い魔をここへ案内するのも魔女たちの仕込みらしい。

 どこからだろうか? 普通に同人誌の作成前から仕込んでいたとしても不思議では無いと思う。

 

 ちょうど今からイベントのクライマックスらしい。ラストゲームとやらのルールが表示される。

 

 

 

ケース:Final chalk and cheese(似て非なるもの)

 

ルール(一部抜粋)

・出題者は()()()()()()()()

・回答者は()()()()()()()()

 

 

 

 ちらりと魔女たちの方へと目を向ける。

 これは、つまり()()()()()なのかと。

 ルールの把握に手一杯になっている主人たちを横目に、魔女たちはこちらを向いて微笑んだ。

 なるほど、()()()()()らしい。

 つまり、「お前も参加しろ」と言うメッセージだ。拒否権? ある筈も無い。

 

 そしてルールの説明と確認は進み、いよいよゲームが始まるらしい。

 赤いコートの魔女が煙幕を張ると、中から銀髪の少女が出て来た。

 第六感が封じられている為、種族の判別は出来ない。その手の抜け道は塞がれていると言う訳か。

 銀髪の少女は目を閉じ、少し咳き込みながら主人たちの脇を抜け後方へと陣取った。妙に動きがスムーズだ。これは何かある?

 

 煙幕が晴れると、そこには大中小の三人の『幼女ネキ』と呼ばれる魔女がいた。

 …………一人、あからさまに瞳の色が違わないか? 何故、主人たちは気付かない?

 そして、あの瞳の色……紫色の瞳は、自分にも見覚えがある。

 

 そう思い、後ろを振り返る。

 目に映るのは、()()()の銀髪の少女。なるほど、()()()()()か。

 主人たちを見れば、壇上の三人の中の誰が正解なのかで盛り上がっている。

 ならば、自分に求められる役割は決まった。

 この場、この状況で、もっとも主たちの為になる行動を取る事にする。

 

 特に迷いもなく、フヨフヨと赤い瞳の銀髪の少女の所へと向かい、ヒトと比べて短い指を向けて意思表示をする。

 少女は一瞬キョトンとした目をこちらへ向け、次に力強く微笑み、自分を掴んで胸元へと抱きしめた。

 

 

「流石だな」

 

 

 どうやら、自分は色んな意味での『正解』を選べたらしい。

 

 

 

 

 その後の展開については、それらを一言で表す言葉を、これまでの経験から自分は学んでいる。

 

 確か、こう言うはずだ。 『お約束』と。

 

 そして、自分は『幼女ネキ』と呼ばれる魔女の胸に抱かれたまま、魔女たちから〝表彰〟を受けている。

 図らずも手にしてしまった過分な権利だが、魔女たちは「自分の為に使え」と言っている。

 

 ふむ、自分の為……そうなると、自分の選ぶべき三つの権利は…… 

 

 

 

 

│以下、エピローグ。もしくは、こんなIF。

 

 

 

 

「「「はっ!?」」」

 

 

 三馬鹿ラスはハロウィンパーティーの休憩室で目が覚めた。

 あれ? 何でこんな所に? 確か自分たちは探求ネキから何か手紙を受け取って……

 

 

「ん? テーブルに手紙?」

 

「なになに……? <お疲れ様でした。今回の『人生禄の()()』は滞りなく終了しました。報酬は後日指定の口座に振り込まれますのでご確認下さい>……? 何だコレ?」

 

「……あっ!! コレはアレですよ!! 探求ネキの言っていた私たちのドキュメント番組の件!!」

 

「「ああっ!!」」

 

「そっか、定期的に俺らの事を【過去視】したり主観情報? ってのを専門のスタッフが収集したりするって言ってたもんな」

 

「って事は、今の俺らはそれが終わって、記憶を消されてここに寝かされてたのか?」

 

「そう言う事でしょうね。あと、恐らくはこの会話の内容も記憶し続けれらずに、その内()()()と思いますよ。今は自然に日常に戻る為の移行期間ってやつでしょう」

 

「マジかよ。探求ネキパネェ……」*2

 

「下手に覚えてて要らん事しないように、って事なんだろうなぁ。俺らの事だし、『覚えてない』が一番お互いの為ってこったろ。ジッサイ安牌」

 

「恐いと言えば恐いですが、探求ネキがわざわざ私たちをハメてまで悪いようにはしないでしょうし、後遺症とかも無いでしょう。ぶっちゃけ、あったとしても抵抗とか出来る筈も無いですし」

 

「「それな」」

 

「んじゃまぁ、俺らはいつも通りに過ごすのが全員の為ってことだな。今何時だ? ハロウィンパーティー、まだ終わってないよな?」

 

「えーと? うお、結構時間たってるな!? 今からだともう後夜祭*3の準備とか始まってるんじゃね?」

 

「ホントですね、ちょっとどころじゃなく出遅れてますよね、これ」

 

「急ぐぞ、お前ら。ちょっと遅れたからって俺らが祭りに参加しねぇとかあり得ねぇ!!」

 

「「おうっ!!」」

 

 

 三馬鹿ラスの語る転生者五つの誓い

一つ エンジョイ&エキサイティング

一つ 考えても分からない事は考えない、それより面白い事を考えよう

一つ Y談をする時は誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。三人で静かで豊かで…… 

一つ 都合の悪いことは忘れよ!! 転生者には記憶力の欠如が必要だから

一つ 破ったものは(夜の)オカズ抜き

 

 

 考え無しと言う訳では無いが、思考放棄とも言える行動。

 考えた所で、現状を打破する手段が無いと言うのであれば、他の道へ向かう。

 

 こう言った行動は往々にして現実逃避と捉えられ、良い印象を抱く者は少ないだろう。

 だが、見方を変えれば、『身の程を理解した上で人生を精一杯楽しむ』と言う信念とも受け取れるものである。

 

 もちろん、三馬鹿ラスはそんな高尚な事を考えているはずも無いのだが、それでも彼らの生き様は多くの者を笑顔にしている。

 もっとも、それ以上に多くの者を呆れ顔にさせているのはご愛敬ではあるのだが。

 

 

「おーし、後夜祭の開始にはまだ間に合うな。とりあえず、ドクターネキを誘いに行くか」

 

「だな。おっと、悪ガキどもにたかられても大丈夫なように、菓子の準備も忘れないようにしねーと」

 

「そこ忘れると悲惨ですからね。あのくらいの子供たちって、イタズラして良いってなるとホントに容赦しませんし……」

 

 

 ある者は彼らに不満など無いと語り、ある者は不満しかないと語る。

 ある者は彼らに感謝し、ある者は恨み言を口にする。

 ある者は彼らを認めており、ある者は侮蔑の視線を向ける。

 

 三馬鹿ラスに対し周囲の声は賛否両論あれど、概ね一つの答えに収束する。

 

 すなわち───

 

 

「あれ? そう言えば前に注文してた同人誌(お宝本)って、届くの今日じゃなかったか?」

 

「は? 確か使い魔便で注文したやつだよな? アレって本人受け取りじゃなきゃダメなやつじゃなかったか?」

 

「ちょ、ヤバいですよ!? それって受け取らなかったらその場に放置して帰られるじゃないですか!!」

 

「やっべ!! 急いで帰って確かめるぞ!!」

 

 

 ───こいつら馬鹿だと。

 

 

 

 


 

 

 

 

 そして、自分たちの部屋へと急ぐ三馬鹿ラスの姿が見られた。

 

 すっかり日も暮れ、10月31日のハロウィンも終了の時間に差し掛かかっているが、実際にはこの後も後夜祭と言う名目で数日間は祭が続くのである。

 そんな、祭りから祭へと移り変わろうとしてる、寂しくも楽しい、そんな時間帯。

 

 そんな時間帯に、エロ同人誌が衆目に晒される危機に瀕している事に気付いて自室へと急ぐと言う、なんとも馬鹿な動機で早足に駆ける三馬鹿ラス。

 普段からY談で盛り上がっているが、それはそれとして自分が購入したナマモノ本が衆目に晒されるのは恥ずい。

 そんなDTの様な───DTだったわ、こいつら───DTそのものの理由で道を急ぐのであった。

 

 

「よし、次の角を曲がれば到着だ」

 

「正直、時間的にはもう間に合わねぇかも知れねぇが、放置されてない事を祈るしかねぇな」

 

「アっくんが受け取ってくれていたら良いんですが……いや、本人にしか受け取れないタイプですから、やはり無理……」

 

 

 実際は既に手遅れなのだが、その記憶も曖昧になり忘れている三馬鹿ラスは気付かない。

 とにかく急いで部屋へ戻ろうと曲がり角へ向かおうとしたその時の事だった。

 

 

「えっ?」

 

「おお?」

 

「はい?」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 理想がそこに居た。

 

 

 

 


 

 

 

 

 サスケニキ

 彼の理想のタイプは、金髪でナイスバディな大人の女性。

 

 ヨロイニキ

 彼の理想のタイプは、引き締まった尻のボーイッシュな美人。

 

 クロマニキ

 彼の理想のタイプは、きらら系漫画の様な百合の園の住人。

 

 

 彼らの目の前の存在は、あまりにも非現実的な美しさだった。

 

 金髪にも見えるライトブラウンのロングヘアは、美しさや艶やかさだけではなく、アホ毛と呼ばれる寝ぐせにも似た一房が親しみを演出する。

 170cmを少し超えたくらいだろうか? 女性としてはやや長身と言えるその体つきは、完璧とも言えるバランスで成り立っており、下手な巨乳などより余程ナイスバディと言う言葉がふさわしく思える。

 

 ゆったりとした白いワンピース越しにもはっきりと分かる、柔らかくも引き締まっているであろう臀部は、健康美や淫靡さを超えてある種芸術的ですらある。

 完璧な造形の美女。そう評すべき容姿であるにも関わらず、それでいてどこか『かっこいい』『可愛い』と言った、快活で可愛らしさのある少年の様な、いわゆるボーイッシュな雰囲気すら醸し出している。

 

 世の男性全てが惚れ込んでもおかしくない程の容姿であるにも関わらず、同時に世の全ての女性が慕ってもおかしくない程の圧倒的とも言える包容力。

 打算無き思いやりを連想させるその雰囲気は、自然と「お姉さま」と言う呼称を呼び起こす。

 まるで、百合の園で最も美しく咲き誇る大輪の花の如く。

 

 

「「「……………………」」」

 

 

 言葉を失い、心を奪われる。

 そんな陳腐な言い回しが、現実となる。

 『理想』が形を持たない妄想から現実となって、今、自分の目の前に居る。

 その事に理解が追い付かない。現実を把握できない。

 

 

「──────♪」

 

 

 呆然とする事しか出来ない三馬鹿ラスだが、彼らをその様にした者は彼らを一瞥し、ほんの少しだけ微笑んで曲がり角の先へと姿を消した。

 

 

「──────っ!? あ、ちょ!?」

 

「──────っ!? 待って!!」

 

「──────っ!? あの、どうか!?」

 

 

 忘我の態から我に返り、慌てて声を掛けようとする三馬鹿ラスだったが、既に声を掛ける対象は曲がり角の先へと行ってしまった。

 もしかしたら、また会えるかもしれない。もしかしたら、二度と会えないかも知れない。

 そんな焦燥感に駆られ、三馬鹿ラスは我先にと曲がり角の先へと駆け出して行く。

 

 そして、彼らが曲がり角の先へたどり着いた先には───

 

 

 

「…………いない」

 

「…………見間違い……じゃ、ねぇよな?」

 

「…………〝居た〟のは間違いじゃないと思います……けど……」

 

 

 

 ───『理想』は既にその姿を消しており、見えるのはハロウィンの後夜祭の開始を楽しむ雑踏と、自分たちの部屋への見慣れた道のりだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「何だったんだろうな? つか、さっきの幻覚って訳じゃ無いよな?」

 

「幻覚だとして、どんな理由で俺らがそんなもん見せられるんだよ?」

 

「そんな理由なんて私たちには……いや、あるかも知れませんけど?」

 

「流石にそんな悪趣味な真似をされる謂れは無い!! ……と、思う」

 

「自信もって断言できるかって言われると……なぁ?」

 

「日頃の行いって大事ですよねぇ……」

 

 

 自分たちが見たのは何だったのか? 夢か現か、もはやそれすらもはっきりしない。

 とりあえず、当初の目的通り自室へと戻ろうと歩みを進める三馬鹿ラス。

 そして、特に何事も無くたどり着き、留守番を頼んでいたアガシオンが三人を出迎える。

 

 

「ただいまー。アー坊、留守番ありがとうな~」

 

「早速で済まねぇけど、俺ら宛てに届け物とかなかったか?」

 

「受け取りが本人にしか出来ない奴なんですけど、玄関に放置されてたりしませんでしたか?」

 

 

 そんな三馬鹿ラスの言葉を受け、彼らのアガシオンはフヨフヨと居間へ向かい、()()()()()から返却されたナマモノ本を取って戻って来る。

 

 

「おお、アー坊が受け取ってくれてたのか」

 

「助かったぜ、ア太郎。うっかり忘れてて、大惨事になるところだったからなぁ」

 

「本人しか受け取れないと思ってましたけど、使い魔やシキガミでもOKだったんですかね? 何にせよ助かりましたよ、アっ君」

 

 

 既に大惨事は発生しており、酷い目にも遭っている。

 もちろん、その事は三馬鹿ラスは覚えておらず、アガシオンが回収してくれていたのかと勘違いして安堵するのであった。

 

 

「さて、それじゃあ改めてハロウィンパーティーの後夜祭に出発だな」

 

「ドクターネキを待たせんのも悪いし、早く行こうぜ」

 

「そうですね、急ぎましょう」

 

 

 差し迫った危機は脱した*4ので、改めて祭りを楽しもうとする三馬鹿ラス。

 そんな彼らを見て、留守番に戻ろうとするアガシオンだったが───

 

 

 

「そうそう、折角だからアー坊も一緒に行こうぜ。やっぱ祭りの時に留守番とかジッサイツマラン」

 

「だな。後夜祭は屋外だし、ア太郎が来ても問題ねーだろ」

 

「ドクターネキもゾイドたちと一緒でしょうしね。彼ら……もとい、彼女たちもアっ君とも会いたいでしょう」

 

 

 

 ───三馬鹿ラスの言葉に、その動きを止める。

 

 

 良いのか? とばかりに首を傾げる動きをするアガシオンに、三馬鹿ラスは口々に「一緒に行こう」と笑って誘う。

 別に特別な事ではなく、ごく当たり前の事を言っているだけ。

 

 そんな三馬鹿ラスに、彼らの保護者(アガシオン)は「仕方ないな」と言わんばかりに、ほんの少しだけ肩をすくめて、フヨフヨと彼らの後を追うのであった。

 

 

 

 

 

 

 そして夜は更けていく。

 

 収穫祭の恵みは皆を楽しませ、満たし、笑顔へと変えていく。

 参加者もまた、誰かを笑顔にし、誰かから笑顔にしてもらう。

 

 収穫した者も、収穫された者も。

 覚えている者も、忘れている者も。

 得た者も、得られなかった者も。

 

 文明の灯が消え去るまでに残された僅かな時間を、逃避ではなく正しく〝楽しむ〟為に、思い思いの時を過ごし始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
 貧弱一般メガテンプレイヤー様 作 【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。

 20話目 クリスマスで馬鹿をやる三馬鹿ラスのお話へと繋がる。

 黒死ネキによるネタバレ回避。

*2
三馬鹿ラスは、これまでに黒死ネキに〝蒐集〟され続けている事を覚えていない。

*3
ハロウィンの後夜祭(11月1日以降)は、10月31日当日の熱狂を振り返り、余韻を楽しむ配信やイベント、あるいはメキシコの『死者の日』のように、関連する死者供養の祭典を指すことが多い。

*4
実際は既に手遅れ




 お読みいただき、ありがとうございます。


 これにて、長かったハロウィン回も完結となります。
 去年の10月に始めて、3月の頭までかかるハロウィンって何ぞ?^^;
 お楽しみいただけたのなら幸いです。 

 なお、三馬鹿ラスは〝蒐集〟されて記憶を消されていますが、この後のドクターネキとの交流で軽くビデオメッセージの件などのやり取りがあって、みたいな感じでしょうかね。
 それで、三馬鹿ラス本家の19話目の「ドクターネキは不満は無いって言ってたけど……」的なやり取りに繋がったと言う事で。
 これで作品間での矛盾も解消したな、ヨシ!!

 次は流石に半年間ストップしたままの本編を進めないとな~





以下、設定資料。もしくは、例えばこんな選択肢(IFルート)

権利①:高級式神ボディへのコンバート
権利②:三馬鹿ラスとの【魔絶式】(魂の保護術式)の構築
権利③:【擬態】のスキルカード(黒死ネキ製、Sランク)


容姿:宮小路 瑞穂
原作:『処女(おとめ)お姉さま(ボク)に恋してる』(R-18 PCエロゲ) 
   『乙女(おとめ)お姉さま(ボク)に恋してる』(一般向けに改題)
   通称『おとボク』 CVは『PC版:神村 ひな』『アニメ版:堀江 由衣』

 宮小路 瑞穂は同作品の主人公 兼 メインヒロイン。 
 生物学的にも性自認的にもれっきとした男性
 祖父の遺言で女子高へ通う事になり、その余りの才色兼備さで全校生徒から「お姉さま」と慕われるようになる。
 公式HPでの人気投票でも圧倒的1位となっており、メインヒロインの呼び名が高い。
 男の娘の中でも特に代名詞的存在の一人であり、先駆け的存在の一人でもある。
 ぶっちゃけ、作中の他のどのヒロインよりも魅力的。性別とかマジでどうでも良くなる。

 三馬鹿ラスの性癖を全て満たす『理想の女性像』と言うお題で考察してみたら、瑞穂きゅんが該当した。ベストマッチだった。男? 何か問題でも?

 作中で幽霊の一子に憑依されて、ガチ女体化した際は普通にナイスバディだったし、男のままでもケツのエロさ(一枚絵あり)は実際にプレイしたユーザーなら絶対に納得する。
 ボーイッシュ? 男なんだから当たり前だよね☆
 男なのに女子高で全校生徒からの憧れの的となり「お姉さま」と慕われるとか、普通にきらら系の四コマ漫画で連載しててもおかしくないストーリーじゃね?

 正直、ここまで都合よく「あれ、三馬鹿ラス共通の理想ってこのキャラじゃね?」的な存在が居るとは思わなかったw
 金髪にも見えるライトブラウンのロングヘアで、ナイスバディで、ケツが最高で、ボーイッシュで、百合の園のお姉さまですよ?w




 と、ここまで書いといてなんですが、この設定はあくまでもIFルートです。

 作者的には『アガシオンに景品交換権三つをプレゼント』が主目的なのであって、「今後はこの設定を使え」と言う意図は有りません。
 繰り返しますが、あくまでIFルートです。
 これを採用するか否かは、各作者様方、何より三馬鹿ラスの生みの親である、貧弱一般メガテンプレイヤー様にお任せします(責任転嫁

 ……うん、作中ではあくまで匂わせだけだし、明言はしてないからセーフ!!
 瑞穂お姉さまのそっくりさんが三馬鹿ラスのアガシオンとは言ってないし、黒札の誰かだったり、シキガミ嫁の誰かだったりする可能性はもちろんある!!
 
 いやまぁ、真面目な話、三馬鹿ラスに過度な報酬を渡すのは解釈違いだし、なら、アガシオンに渡せば問題なくね? と言う誰もが納得するであろう結末を用意しました。
 で、アガシオンが報酬に何を選ぶのか? と言うと、今回みたいなIFルートが生まれると思うんですよ。
 もちろん、他の選択肢も否定したくないんで、あくまでもIFルートと言う事で。
 「自分だったら、こんな景品を選んでいた事にする」的なネタがあれば、むしろ私も見たいので。


 この件で貧弱一般メガテンプレイヤー様に確認したところ、

・アガシオンの人格は男性よりの無性
・三馬鹿ラスはその場のノリや勢いで割とコロコロ理想が変わる連中なので、例えば各作者様が別の理想の女性を描写したらそのタイミングでは理想がそれだった、としてもらっても良い

 との事ですので、生みの親公認やぞ、ヤッター(ォ



・黒死ネキ(享楽主義のゲラ)
 最初から最後まで好き勝手に楽しんだ。マジで良い空気しか吸ってない。
 今回はマジで笑い死に寸前までいった。次回が今から待ち遠しい。
 幼女ネキに殺された際も、きっちり映像化した際の事を考えてコミカルに首を分断する。別にスプラッタでも良かったけど「バラエティ作品をR-18Gにする訳にはいかんだろ」と変な所で常識的。
 『情報』提供後の編集作業には敢えてノータッチ。そこは探求ネキに任せて、完成版の試写会を楽しむつもり。


・幼女ネキ(唯我独尊で感情豊か)
 予想以上に三馬鹿ラスに禊ビンタをかます事になって呆れているが、イベント自体は楽しんだ。
 アガシオンの事は普通に三馬鹿ラスの保護者と認識しているので、今回のイベントが実質的に「アガシオンに報酬を渡す為の仕込み」である事に文句は無い。
 黒死ネキからの殺しの依頼については、威力だけなら割と全力でツッコミを入れた。一応、死んだっぽいけど全然殺せた気がしない。これだから生と死がインチキ系の連中は……
 出演者特権で、今回のイベントの映像作品は優先的に回してもらう契約。出来上がりを楽しみに待ちつつ、自分でも楽しみを見出していく気満々。


・探求ネキ(澄まし顔イメージ戦略)
 内心大笑いしつつ、澄まし顔は崩さない。イメージって大事だよね。
 今回みたいなイベントだと自分が出しゃばらないでも、ゲラ二人が高いアドリブ力で面白オカシク回してくれるから結構楽。普通に司会進行をしつつバランスを取っていた。
 予想通り予想以上に名場面が量産されたので、自分の力の見せ所は、この後の編集作業だと思っている。
 仮にアガシオンの希望した景品が上記の通りだったら、費用的にどのくらいですか? 彼ら三人の年収十年分くらいですかね?(三人の月収を十万マッカくらいとして計算)
 私たちだったら? 深層での日給です。 三人分? いえ、個人のですね。 


・三馬鹿ラス(身の程は知ってる人生エンジョイ勢)
「「「なんの成果も!! 得られませんでした!!」」」
 こいつらなりに真面目に頑張った。いや、ラストゲームの質問はアレだったけどw
 あらゆる言動が何かしらの笑いに繋がる、割と明確に笑いの運命に愛されている連中。
 人生を楽しみ、人を笑顔にできて、人を恨まない。
 ……これだけ見たら、まるでこいつらが一廉の人物の様に聞こえると言う不思議w
 最終的に黒死ネキに〝蒐集〟され、このイベントでの記憶は消されるが、『記憶を消された』と言う事は自覚しており、「そう言う契約だし」と納得はしている。なお、『誰に』記憶を消されたのかはガチで思い出せない仕様。
 不意に遭遇した自分たちの理想が、実在したのか、違うのか、嫁作りの参考にするのかしないのか、全てはこいつらの選択次第^^


・アガシオン(自分に出来る事を普通にやる)
 三馬鹿ラスの保護者。超有能使い魔。
 『笑ってはいけない人生禄』シリーズのユーザーから、完全に三馬鹿ラスの飼い主扱いされており、客観的に見て間違っていないと言う事実w
 今回、仕組まれた飛び入り参加を果たし、結果的に景品交換権を三つGETする。何この棚ボタ?
 後に映像化した先に「報われて良かった」「最高の演出」「これからも頑張って」等々、ユーザーから熱い支持を得る。これが三馬鹿ラスとの人徳の差である。
 常日頃から「仕方ねぇな、この主人たち」と思っているが、何だかんだと慕っている。
 なので、アガシオンの選ぶ景品は「自分の為 = 三馬鹿ラスの為」で選ぶと思われる。
 これからも三馬鹿ラスの事をヨロシク!!


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