美咲は俺が<分解修復>で改造した刀を使いウィング・ワームと対峙する。
ウィング・ワームは細長い体を蛇行するように曲げその後、急に体を真っすぐに伸ばしその勢いで空中に飛び立った。
空中に浮きそのまま翼を動かしながらこちらへ飛んでくる。
滑稽な姿であるが、それとは裏腹に翼が風を打つ度に強風が吹き荒れる。
美咲の髪が風になびかれてさらさらと動く。
「前髪が崩れるから止めてくれるかしら」
『シャァア!!!』
「魔物に言っても意味なかったわね」
美咲は前髪を整えながら魔物に文句を言うと刀を振りウィング・ワームの左翼を切り裂く。
『シャァア!!!!!!』
「あら、気に入らないのかしら?確かに見栄えが悪いものね。こっちも削ぎ落しましょうか」
そう言うと美咲は左翼を切り裂かれ地面に打ち付けられたウィング・ワームの右翼を切り裂きプロト・ワームに退化させた。
『シャァ、ァア……』
「苦しめるつもりは無いわ」
そう言うと美咲は力尽きたウィング・ワームの頭部?に刀を突きさし絶命させる。
苦しめるつもりは無いと言いつつ見栄えが悪いからという理由で両翼を削ぎ落す女神様。
なんとお優しいことでしょうか。
「春は……終わったようね」
「まぁね。ステータス差もあるけど<分解修復>があるからね」
美咲は俺の足元に転がっている魔物の素材―――ウィング・ワームの欠片たちを見ながら呟いた。
「これもお願いするわ」
「へいへい」
女神様から依頼を受けた俺は足元に転がっている死骸を綺麗な素材へと<分解修復>を使用する。
俺が触ったウィング・ワームは、翼、鱗、魔石にそれぞれ分かれ綺麗に修復していった。
「魔物の素材を綺麗に剥ぎ取ると冒険者ギルドに卸した時、高値で買い取ってくれるらしいよ。俺の<分解修復>ってその面でもありがたいよなぁ」
「あら、春は冒険者になるつもりだったの?てっきり喫茶店を開きたいのだと思っていたわ。前の世界でいつも言ってたじゃない」
「勿論、それもある。でもやっぱり剣と魔法のファンタジー世界に来たなら冒険したいでしょ!……ごめん、大声出して」
「ふふっ。男の子っぽくて可愛らしいわね、春」
恥ずかしいじゃないか。
でも定住地を見つけたらそこで喫茶店開くのもありだな。
売り込みは娘、受付は息子、俺と美咲は2人でメニューを作る。
うん、理想的な将来だ。
俺の長期目標に付け加えるとしようかな。
俺は<分解修復>で素材に変えたウィング・ワームを魔法袋に入れながらそんなことを妄想した。
それにしてもこの魔法袋、一体どこまで入るのだろうか。
勇者4人と王国騎士団長、副団長withクラスメイトで討伐したベヒーモスはその巨体から大きく大量な素材となったが、俺の魔法袋に全て納まった。
俺がダンジョンの奈落に落ちた時からここまで辿り着くまでの間に討伐した魔物を入れても終わりは来そうに無い。
ガゼフが言うにはこの魔法袋には空間魔法が付与されているらしいが、よほど高度な付与術師もしくは<空間>系のユニークスキルが持っている者が関わっているのかもしれない。
試したこと無いけど<土魔法>で家を作ってから魔法袋に収納したらいつでも家に帰宅できるじゃあないかッ!
インフラ整備と安全は保障されないが。
閑話休題。
その後、俺たちは順調にダンジョンを攻略していき現在は落ちた先から3階層進んだ場所つまり4階層目に居る。
ここまで登場してきた魔物は、プロト・ワーム、ウィング・ワーム、ベビードラゴン、レッサードラゴンだ。
……、言いたいことは分かる。
美咲は可愛いということだろう?
え?違う?そうですか、そうですか……。
ボケは置いといて何故か分からないが途中からワームではなくドラゴン種が出現するようになった。
美咲も「春みたいに変だわ」と言っていたが、本当にその通りだと思う。
まぁ、正直ベヒーモスが出現した場所よりも階層が深いのにワームしか出ないのは怪しいとは思っていた。
だから途中でドラゴン種が登場した時、やっとかと思ったけどそれと同時にボス部屋行ったっけ?とも思った。
もしかしてワーム系統種族的な進化先はドラゴン種ということなのかな?
王城にあった魔物関連の本は、ワームとドラゴン種が近縁という説は見当たらなかったなぁ。
そんなことを考えつつ<分解修復>を使って安全地帯を作り魔法袋から寝袋を取り出す。
「おやすみ美咲」
「おやすみなさい春」
ミノムシみたいな寝袋に入り俺たちは眠った。