数時間後、次の階層に行くための魔法陣を見つけた俺たちは、その近くで野営の準備をした。
<分解修復>でダンジョンの壁を削って空間を作ったり<土魔法>を使って補強したりしていつもの豆腐ハウスを作る。
魔物の攻撃で壊れそうだと思うが、攻撃が通らないぐらい奥まで掘ってから再び壁を作る。
だからそもそも魔物に気付かれることは無いし、気付かれても俺たちがいる場所まで行くのにかなり時間がかかるため危険な目に遭う前に対処することができる。
ダンジョンに潜る際、複数人の方が良いとされる理由は休憩の時に見張り役が必要だからだが、俺の場合そもそも安全地帯を自分で作ることができるためやろうと思えば、俺1人で潜ることもできる。
女神様を置いて1人で潜ることは無いだろうが。
閑話休題。
安全地帯を作った俺は、魔法袋から火起こし用の魔道具とテーブルを取り出し<土魔法>で作った焼肉用の道具をセットする。
「よし、準備OK」
準備を終えた俺は、外で素振りをしている美咲を呼び小さなテーブルを間に挟んで座る。
魔法袋から本日の目玉であるレッサードラゴンの肉を取り出しこれまた<土魔法>で作ったお皿に乗せる。
「見た目はテレビで見たことがある高級牛肉みたいだなぁ」
「そうかしら?これぐらいなら普通だと思うけれど」
これだからお嬢様は。
常識の違いをこんな所で感じた俺は、変な気持ちになったが目の前のタスクに集中する。
レッサードラゴンの肉を焼き網へと乗せる。
肉が焼ける音と時間が経つにつれ食欲が注がれる香ばしい匂いが安全地帯に充満した。
最初は期待外れといった感じの様子を見せた美咲だったが、匂いにつられたのか肉が焼けるにつれ焼けるのが待ち遠しいといった表情を見せるようになった。
丁度いい具合に焼けた肉を取り皿に移す。
タレがあれば使いたいが、異世界にそんなものはない。
俺は豪快に肉にかぶりつく。
「こ、これはッ!?」
肉を噛んだ瞬間に広がる旨み、そして追い打ちのように口を満たす肉汁。
素焼きでこれならタレやレモンを用意したらどれくらい化けるのだろう。
これでレッサードラゴンならグレートドラゴン、ひいては属性ドラゴンの肉は一体どれだけ旨いというのか。
ヤバい、土網から肉を拾う手が止まらない。
洗脳されたかのようにレッサードラゴンの肉に虜となった俺は、土網で焼かれている最後の肉に手を付け―――る前に美咲に取られてしまった。
「ッ!?美咲、一旦落ち着こう。冷静になれば分かるはずだ……ッ!」
「嫌よ、これは私の物だわ。春が新しく焼けばいいじゃない」
「くっ!」
これが惚れた弱み、か。
俺は大人しく女神様の神託に従い新しい肉を焼いた。
★★★
焼肉パーティーが終わった安全地帯の中は、美味しい匂いが充満している。
だが、これから眠る俺たちには少し刺激が強い。
俺たちは<風魔法>を覚えていないため新しく安全地帯を作ろうと思い外に出ようとしたが、その時何故か風を操ることができると直感した。
疑問に思った俺は、ステータスを開く。
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名前:桜木春
年齢:18
種族:人族
職業:無職
Lv :27(89)
MP:159/159(1251/1251)
攻撃力:C(A)
防御力:D(A)
魔法防御力:D(A)
素早さ:C(A)
器用さ:B(EX)
知力:B(EX)
幸運:D(B)
エクストラスキル:【多言語理解】(完璧偽装)
ユニークスキル:(分解修復)(学習)(自動行動)
スキル:【刀術】【剣術】【格闘術】【風魔法】【家事】【速読】【縮地】【飛行】【騎乗術】【恐怖耐性】【忍び足】【鑑定】【空腹耐性】【痛覚耐性】(土魔法)(自動MP回復)(最大魔力量増加)
称号:≪異世界人≫≪読書愛好家≫≪竜殺し≫(偽る者)
():偽装中
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どうやら以前見た時よりも4レベル上がっておりそれに伴い魔力量も上がっているのはいつも通りだ。
変化したのはスキルだ。
スキルに新しい<風魔法>が追加されていた。
ウィング・ワームと戦闘を繰り返した結果、ユニークスキル<学習>で習得したのだろう。
それにしても習得順番に違和感を感じる。
<飛行>は<風魔法>が前提のスキルだと思うのだが、これいかに。
<風魔法>を持っていることを確認した俺は、安全地帯を換気し気分爽快の中、2人用になった寝袋を敷き美咲と一緒に眠りについた。