目が覚めた俺は、昨日食べたレッサードラゴンの肉の味を思い出した。
味が忘れられない俺は、まだ寝ている美咲を置いて安全地帯から出て魔法袋から肉と焼き肉道具を取り出す。
道具をセットして火種がでる魔道具を使い肉を焼く。
数分経つと香ばしい匂いがダンジョン全体に広がる。
朝から焼肉は重たいが、それでも食べたくなる味だ。
焼きあがった肉を口に放り投げる。
やはり、レッサードラゴンはいつ食べても旨い。(昨日が初めて)
その後も俺は一人焼肉に勤しむ―――ことはできなかった。
『GRUU……』
どうやら焼肉の匂いにつられてレッサードラゴンがこちらにやって来たらしい。
レッサードラゴンの肉は、沢山あるので別に食べられても構わないが共食いになるのではないか心配だ。
『GRUAAA!!!』
「おっと」
レッサードラゴンは狙いを定めると焼き肉に向かって突進する、わけではなく俺に向かって突っ込みながら鋭い剣のような爪でこちらへ攻撃してきた。
爪から放たれた斬撃は、うるさい音を鳴らしながらダンジョンの壁を破壊する。
辺りに砂煙が舞う。
焼肉は網からこぼれることは無かったが、このままだと砂利の味がトッピングされてしまう。
それはそれでサバイバル感があって風情だが、それは少なくとも今じゃない。
ここまで約1秒未満で思考した結果、俺は<風魔法>で砂煙を巻き取り<土魔法>で土に変えた。
ステータスを確認しながらやっていたため面白いことが分かった。
どうやら先程の<土魔法>は魔力を消費していないようだ。
戦闘の際は、MP消費を抑えるため周りを破壊しながら<土魔法>の贄にしよう。
『GRUAA……』
レッサードラゴンは、突撃からの<爪術>が通じないことが分かると俺の体が引き込まれるほどのブレスをした。
するとそれに呼応するようにレッサードラゴンの腹から濃密なエネルギーが込み上げられ、口元が赤く輝る。
その熱量は、少し離れている俺のところまで伝わりダンジョンの温度をどんどん上昇させていく。
ドラゴンの代名詞、ドラゴンブレス。
弱者であれば触れた瞬間に蒸発し、たとえ強者であろうとも真正面から受ければ重症を負うことになる。
中級程度の回復魔法では、まず火傷は治らない。
後遺症のように残る焼け跡は、ベテラン冒険者の証とも言われているとか。
俺は、ドラゴンブレスを真正面から受け止めるために<自動行動>をオフにする。
<火耐性>と<火魔法>を習得するためだ。
「来いッ!」
『GRUAAA!!!!!!』
次の瞬間、ダンジョンの温度が最高度に到達し、後ろにある安全地帯を巻き込むほどの破壊の火炎熱風が広がる―――ことは無かった。
レッサードラゴンの口元までエネルギーが上って来たがそれを豪華の息吹に変換することができず逆に口元を火傷させた。
『GRU、GRUAA……』
「あー。その、楽にしてやるよ」
俺は火傷に苦しむレッサードラゴンを楽にさせてあげるため<縮地>で近付きレベルの暴力でハートキャッチをかます。
ドロドロと流れる血を無駄にしないために<分解修復>で材料に変え魔法袋に入れる。
「朝からうるさいわね……。何やってんのよ?」
「起こしちゃった?レッサードラゴンを狩ってたんだ」
「相変わらず食い意地が張ってるわね」
「否定できない……何してるの?」
俺とレッサードラゴンのお話に起こされた美咲は、不機嫌そうにした後、焼肉をセットしている場所に座り込み俺を顎で呼んだ。
「何って狩ったのでしょう?なら食べるしかないじゃない」
「流石、お嬢様」
「ここでもそれは止めて頂戴」
「ごめん。今用意しますよ、女神様」
「はぁ、お願いするわ」
前の世界のノリをそのままやった結果、割と止めて欲しそうだったので直ぐに女神様をしながらもてなす。
焼肉2回戦行きますか!
★★★
腹を満たした俺たちは、次の階層へ向かうための魔法陣に乗る。
普段であれば浮遊感と共に次の階層へと渡っているが、今回は何故か乗った瞬間に赤い稲妻と雷音が鳴り響き魔法陣が激しく回り次の階層へと渡った。
前の階層とは違い広い空間に出た俺たちは、自然と目の前に鎮座するドラゴンに目が行った。
ドラゴンはこちらに気付いた様子を見せず謎の大きなクリスタルの前で堂々と眠っている。
俺は目の前のドラゴンを調べるために<鑑定>を使った。
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名前:無し
種族:火炎竜王
職業:ダンジョンボス
Lv:96
MP:測定不能
攻撃力:測定不能
防御力:測定不能
魔法防御力:測定不能
素早さ:測定不能
器用さ:測定不能
知力:測定不能
幸運:測定不能
ユニークスキル:【竜因子】???????
スキル:???????
称号:≪ダンジョン産≫≪ダンジョンボス≫≪竜王≫
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「ふぇ……。化物じゃん。レベル以外ほとんど分からないよぉ~」
あまりの鑑定結果に思わず変な声が出てしまった。
美咲に笑われると思い振り返ってみると真剣な表情でドラゴンを見ながら呟いた。
「春、勝てそうなの?」
「ドラゴンに触れたら何とか。素早さのステータス値が未知数だから何とも言い得ないけど、俺よりもレベルが高いからヤバいと思う」
「……そう、絶望的ね。ベヒーモスに比べればどうってこと無いけど」
そう言うと美咲は俺に笑いかけた。
「このくらいの危機は乗り越えられるでしょ?」と言われているみたいだ。
良いだろう。
女神様の試練、突破して見せる!