分解修復勇者の異世界道中   作:フリー123456789

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第13話 おや!?俺の様子が……!

 やる気を出した俺は、改めてドラゴンを見る。

 

 火炎竜王。

 

 王城にあった本には載っていなかったが、ステータスの職業と称号によるとダンジョンボス兼ドラゴンの王様といった感じだ。

 

 レッドドラゴンやアイスドラゴンといった属性を持つ種族よりも上位の個体なのだろう。

 

 火炎竜王は、マグマのような灼熱の色をした鱗が頭から背中、尻尾にかけてレッサードラゴンとは比べものにはならないほど分厚く硬そうに覆われており、頭や背中に金色の鋭い突起物のような物が生えている。

 

 かぎ爪は、火炎竜王の頭と同じくらい大きく一体何と戦うために発達したのか分からない。

 

 ベヒーモス戦よりも緊張感が無いのは、<恐怖耐性>を取得しておりレベル差があまり無いからだろか。

 

 逆に言うと<恐怖耐性>が無く俺よりもレベルが低いが冷静でいられる美咲は異常だ。

 

 やはりユニークスキルは恐ろしい程頼もしい。

 

 観察を終えた俺は、火炎竜王討伐のための作戦を美咲と考えた結果、<完全偽装>で気配を消して近付き<分解修復>を使う。

 

 ベヒーモス戦のようにシンプルだが、これが最も安全で確実な方法だ。

 

 早速、討伐するために<完全偽装>をかける―――ことはできなかった。

 

『GRUOAAAAA!!!』

 

 突如、火炎竜王が体を起こし雄叫びを上げる。

 

 雄叫びはボス部屋中に響き渡り、床が揺れた。

 

「ちょっと!」

 

「悪い!」

 

 俺は美咲を避難させるために横抱きにし、ボス部屋の入口まで戻る。

 

 ダンジョンのボス部屋は、ボスを倒すまで転移魔法陣が出現しないため前の階層に戻ることができない。

 

 安全地帯を作りたいが、火炎竜王の攻撃は部屋全体に影響を及ぼすだろうから意味が無い。

 

 現状を把握するために振り返るとそこには、8体のレッサードラゴンと2体のこれまで出現していないドラゴンが居た。

 

 新しいドラゴンは、レッサードラゴンと火炎竜王の中間程の大きさで赤色の鱗に覆われている。

 

 <鑑定>を掛けるとレベル58でステータス値が幸運以外Aランクのレッドドラゴンだということが分かった。

 

 ドラゴンたちは、火炎竜王を守るような陣形を形成し俺たちを睨みつけている。

 

 先程の咆哮は仲間を呼ぶためのものだったのだろう。

 

 冷静に状況を分析した俺は、作戦を組み直すために横抱きのままにしていた美咲を優しく降ろした。

 

「仲間呼ばれちゃったね。俺も叫べば高橋達が来るかな?」

 

「何言ってるのよ。そんなことよりも作戦を立て直すわよ」

 

「は、はい……」

 

 俺の渾身のボケはどうやら気に入らなかったらしい。

 

 だが、これからもめげずにボケ続けようと思う。

 

 閑話休題。

 

 美咲の言う通りタイマン用の作戦ではなく複数体を相手するための作戦を立てる必要があるが、俺も美咲も範囲攻撃は持っていな―――いや、ある!

 

 あるじゃないか!

 

 <分解修復>について考えている時に思いついたことが!

 

「―――とは言ってもどうすれば良いのか思いつかないのだけど……」

 

「美咲、1つだけやってみたいことがあるんだ」

 

「やってみたいこと?」

 

 俺は美咲に思いついたことを言うと「本当にできるの?」といった表情でこちらを見てきた。

 

「ああ、できるさ!」

 

「はぁ、分かったわ。私の命、春に預けたわ」

 

 女神様の命運を握っているのは俺だということを自覚したことで余計に興奮してきたが、成功させるために息を整えて冷静になる。

 

 ドラゴンたちはボス部屋の中央からこちらを睨みつけるだけで近付いてこない。

 

 『ダンジョンについて』では、ボス部屋の魔物たちは入口付近まで行けないとは書かれていなかったので不思議だ。

 

 もしかしたら俺たちを警戒して不用意に近づいてこないのかもしれない。

 

 火炎竜王が<鑑定>を持っていて俺を調べたのかもしれない。

 

 疑問は尽きないが、いつまでもこのままで居られないため作戦を実行する。

 

 今からやるのは、俺がいつかやってみたかったロマン技だ。

 

 念のため美咲に<完全偽装>を掛けて気配を消させる。

 

 そして俺は入口から1歩出てしゃがみ込み床に手を当て唱えた。

 

「<分解修復>」

 

 次の瞬間、ボス部屋の壁や床、天井から槍のような物が飛び出しドラゴンたちを串刺しにしていく。

 

 レッサードラゴンは即死、レッドドラゴンも何度かはその鋭利なかぎ爪で応戦しその度にけたたましい程の金属音が鳴り響いていたが、それも徐々に消えていき最終的には、火炎竜王を残して立って居るドラゴンは居なくなった。

 

 火炎竜王は、仲間が無残にもやられたことに激怒することなく逆に冷静に入口前に居る俺を見定めるように睨みつけてきた。

 

 1対1となったことでやりやすくなった俺は、当初の作戦とは異なり「1人で行ける」と思い火炎竜王の元まで<縮地>と<風魔法>を使い俺が出せる最高速度で向かった。

 

『GRUOOO!!!』

 

「ちッ!」

 

 火炎竜王は翼を大きく広げるとその膜から炎でできた巨大な槍を数えるのが億劫になるぐらい生成させこちらへ向けて放つ。

 

 先程の<分解修復>の意向返しのように大量に出現した火炎槍は、床にぶつかるとマグマのように溶かしていく。

 

 今日のダンジョン天気はドラゴン時々火炎槍でしょう。

 

 そう言いたくなるほどの槍の雨を抜け火炎竜王の元に辿り着く。

 

 足を1歩前に出して腕を伸ばせば届く距離だ。

 

 俺は勝利を確信しながら火炎竜王に触れる。

 

『GRU―――』

 

「<分解>!」

 

『―――OOO!!!』

 

「まじかッ!」

 

 俺は火炎竜王の足に触れ<分解修復>を使ったが上半身を残して耐えてきた。 

 

 火炎竜王の上半身がそのまま自由落下してくる。

 

 可視化できるぐらい魔力を口元で凝縮させながら。

 

 これから何が起きるのか理解できたが<分解修復>に耐えられたショックで思考が追い付かない。

 

 ゆっくりと時間が過ぎる中で火炎竜王は口が裂けるほど大きく開け俺に向けた。

 

『GRUOOOOOO!!!!!』

 

「ッ!」

 

 死ぬと思った瞬間、停止していた思考が加速し俺の意思を無視して生き延びるために伸ばしていた右腕から<土魔法>で盾が生成された。

 

 だが、その程度でドラゴンブレスを完全に防げるわけがなく防御できなかった左半身に受けてしまった。

 

「く……ッ!」

 

 <痛覚耐性>があるためダンジョンに入ってから痛みで怯んだことは無かったが、ドラゴンブレスは<痛覚耐性>を貫通して俺にダメージを負わせる。

 

 これでベテラン冒険者の仲間入りだ、と言いたいところだが生憎と冗談を言えるほど余裕は無い。

 

 鋭い痛みが左半身に走る。

 

 左側は地獄のように痛いのに右側は普通という状況に頭がおかしくなりそうだ。

 

 火傷の痛みを紛らわせるために床に体を擦り付けていると急速に火傷の痛みが引いて行った。

 

 喜びたいところだが、今は安全を確保するのが優先であるため火炎竜王がどうなっているのか確認するために顔を上げると火炎竜王と目が合った。

 

 だが、その目に生気は宿っておらず虚空を見つめている。

 

「勝てた……」

 

 小さく呟くと同時に遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきたことで安心した俺は、意識を手放す―――ことなく立ち上がる。

 

 そして俺に向かって走ってくる美咲を出迎えた。

 

「何で1人で行ったのよッ!?」

 

「ごめん、一人でいけると思ってつい……」

 

「ついって―――ッ!火傷大丈夫なのッ!?」

 

「ああ、何か平気っぽい。多分耐性が付いたんだと思う」

 

 当初の予定とは異なり1人で行ってしまったことを攻められてしまったが、正直なところ1人で行って正解だったかもしれない。

 

 元々の作戦では、陽動とか考えずに俺に向かって来る攻撃を全て美咲が防いで俺は<分解修復>に全力を注ぐ手筈だった。

 

 だが、<分解修復>は完全には効かず火炎竜王は上半身を残して耐えてしまった。

 

 スキルに<即死耐性>のようなものがあったのか、はたまた火炎竜王の職業や称号が影響しているのか分からないが。

 

 俺と火炎竜王のレベル差が10も無かったからこの程度で済んでいたが、仮に美咲がドラゴンブレスを食らっていた場合、肉体は焼けて保っていなかっただろう。

 

 作戦通りに行動していると美咲が死んでいたかもしれないことを考えていると美咲が意気消沈しながら俺に尋ねてきた。

 

「その火傷……どうするのよ?」

 

「これなぁ~。……ホントどうしようか?」

 

「あ、あなたねっ!もう少しまじめに考えなさいよ!」

 

 傷の治療方法について悩んでいると美咲から注意されてしまった。

 

 だが、俺も美咲も回復系のスキルを持っていない。

 

 冒険者であれば、冒険者ギルドに依頼すれば回復系スキルを習得している者を紹介してくれるらしいがこの傷を治療できるレベルはそうそういないだろう。

 

 いるとしても国に使えているのが落ちだ。

 

 ただの一般人に貴重な人材を派遣してくれるわけないし、かと言って勇者として向かえば、治療はしてくれるだろうがその代わり鎖を付けられるのは必至。

 

 しがらみから解放されて自由にこのファンタジー世界を謳歌したいのにそれでは本末転倒だ。

 

 どうしようか、と悩んでいると天啓のように1つのアイデアが降りてきた。

 

「合体すればいいのか……」

 

「え?何言って―――」

 

 俺は美咲の言葉を最後まで聞かなかったので「ちょっと!教えなさいよ!」と美咲に抗議されたが、止まることなく火炎竜王の死体のところまで歩いた。

 

 改めて火炎竜王の死体を見てみると上半身は禍々しい魔物の頂点であるのに対し、下半身は最上位の素材となっている。

 

 その中には勿論、肉もあり一体どれくらい旨いのか考えるだけで口の中が洪水になったが、それを我慢し火炎竜王の死体に<分解修復>を施し生前の姿に戻す。

 

「何するつもり?」

 

「うーん、実験。<分解修復>で治療できるか」

 

「治療って……。まさか自分に使うつもり!?」

 

「うん、やってみる価値はあると思う」

 

 俺の考えを美咲に伝えると頭おかしいのか?と言っているかのように絶句されてしまった。

 

 悲しいが俺の考えは既に固まっており変えるつもりは無いし他に方法は無い―――と思うかな。

 

 俺は右手で火炎竜王の死体に触れ左手で俺の胸に手を当てる。

 

 美咲が息を吞む音が静かなボス部屋に響く。

 

 大丈夫、俺を信じて欲しい。

 

 具体的には俺の器用さEXと<分解修復>を。

 

「<分解修復>」

 

 火炎竜王と俺の融合―――究極生命体の誕生だ。

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